金利上昇で融資はどう変わる?中小企業・個人事業主への影響や注意点を解説

借入金利・返済・借り換え・銀行交渉まで、今確認したいポイントを専門家が解説

専門家に聞いてみた 中小企業・個人事業主への影響は?金利上昇で融資はどう変わる?取材協力 小池俊介氏
日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げることを決定しました。1995年以来、31年ぶりの水準です。

「金利が上がっている」というニュースを目にする機会が増えましたが、これは対岸の火事ではありません。変動金利で借りている場合、中小企業や個人事業主にとっては返済額の増加につながります。また、これから創業融資を検討している人にとっては借入条件そのものに関わってくる話です。

本記事では、「すでに融資を受けている人」「これから融資を受ける人」「金融機関から金利引き上げを提示された人」、それぞれの立場に向けて、今知っておきたいことを整理しました。信用金庫での実務経験を持つ中小企業診断士の小池俊介氏に、金融機関側・中小企業側、双方の視点から伺っています。

株式会社drivest代表取締役の小池俊介氏
小池 俊介(こいけ しゅんすけ)
株式会社drivest 代表取締役/中小企業診断士

神奈川県内の信用金庫に15年間勤務。融資担当、本部管理職として、創業支援から事業再生、債権管理まで金融の現場を経験する。2011年に中小企業診断士登録。沖縄県産業振興公社でスタートアップ支援に携わったのち、神奈川県よろず支援拠点のコーディネーターとして7年間、累計2,000社を超える経営相談に対応した。現在は株式会社フォレストファーム、株式会社drivestの代表取締役として、中小企業の伴走支援を行う。藤沢商工会議所の創業セミナー講師は10年以上。note「教えて小池さん!」を連載中。『8士業が解説 中小企業支援者のための社長の終活』(学陽書房)では、「事業承継の準備」「資金繰りと経営改善」の項を執筆。

金利上昇で、中小企業・個人事業主には何が起こる?

金利上昇のイメージ

ー最近、金利の上昇が続いていますが、中小企業や個人事業主には具体的にどのような影響が出てくるのでしょうか。特に、創業したばかりの事業者が注意すべきポイントも教えてください。

小池:ほんの数年前まで、日本の金利ってほぼゼロだったんですよね。それが2026年9月には、日本銀行の政策金利が1.25%程度まで上がりました。銀行が信用力の高い会社に貸すときの目安になる「短期プライムレート」も、大手銀行で年2.375%(2026年8月から)です。私が信用金庫に入った頃からずっと低金利が続いていたので、正直、景色がだいぶ変わったなと感じています。

小さな会社や個人事業主にとっての影響は、大きく分けると2つです。

ひとつは、今借りているお金の利息が増えること。変動金利の借入は、こうした金利の動きに連動して契約金利が上がり、利息の支払額も増えていきます。

もうひとつは、これから借りるお金の金利が上がること。たとえば日本政策金融公庫の基準利率は、税務申告が2期未満の方で3.75〜5.35%(2026年9月1日時点)になっています。

じゃあ実際にどれくらいの負担なのか、ちょっと計算してみましょう。1,000万円を10年返済(毎月同じ額の元金を返す方式)で借りていて、金利が1%上がったとします。増える利息は、最初の月で約8,300円、1年目で約9.5万円、10年間の合計で約50万円です。

この数字を「意外と小さいな」と感じるか「けっこう重いな」と感じるかは、会社によって違うと思います。ただ、私が相談の現場でいちばん気になるのは、金利そのものよりも、「自分の借入が、金利が上がると影響を受ける契約なのかどうか、そもそも分かっていない」ケースなんです。

創業したばかりの時期は、売上がまだ安定していませんよね。そこに据置期間(元金を返さず利息だけ払う期間)の終わりや、仕入れ値・人件費の上昇が重なると、資金繰りは一気に苦しくなります。金利上昇は、そこに重なる負担の一つなんです。

漠然とした不安も、数字にしてみるとずいぶんはっきりします。まずはご自身の借入を「見える化」するところから始めてみてください。

すでに融資を受けている人は、まず何を確認すべき?

ーすでに融資を受けている場合、金利が上がることで返済や資金繰りにはどのような影響がありますか。固定金利・変動金利の違いや、まず確認しておくべき借入条件についても教えてください。

小池:私がいつも最初にお願いしているのは、「借入の契約書と返済予定表を、机の上に全部並べてみてください」ということです。意外と、どこにしまったか分からなくなっている方も多いんですよ。

並べたら、次の5つを確認して、1枚の一覧表にまとめてみてください。

  • ①固定金利か、変動金利か
    固定金利なら、原則として契約期間中は金利が変わりません。創業融資をはじめ、日本政策金融公庫の融資は多くが固定金利です。変動金利の場合は、「何に連動しているのか」(多くは短期プライムレートです)と「いつ見直されるのか」を見ておきます。
  • ②短期の借入がないか
    手形貸付や当座貸越といった1年以内の借入は、更新や書き換えのたびに、その時点での金利になります。変動金利と同じように、金利上昇の影響を受けやすいんです。
  • ③残りの元金と、返済が終わる時期
    残高が大きくて、残りの期間が長い借入ほど、影響も大きくなります。
  • ④据置期間がいつ終わるか
    創業融資だと、据置期間を付けている方も多いと思います。据置が終わると、毎月の返済額はぐっと増えます。創業時は、金利より先にここは確認してほしいです。
  • ⑤信用保証協会の保証が付いているか
    保証付きの融資には、金利とは別に「保証料」がかかっています。実際にかかっているコストは、金利と保証料を足して考えてみてください。保証料は基本的に融資を受けた際に一括で前払いしています。つまり、繰上返済をすると前払いした保証料が戻ってくることがあります。

変動金利で気をつけたいのは、金利が上がると、月々の返済額(元金+利息)がそのまま増えることです。住宅ローンだと、返済額が急に上がらないようにする仕組みが付いているものもありますが、事業の融資には付いていないことがほとんどです。一度、お手元の契約内容を見てみてください。

一覧表ができたら、「金利が1%上がったら、年間の利息はいくら増えるか」を計算します。ざっくり「借入残高×1%」が、1年あたりの増加額の目安です。残高1,000万円なら年10万円前後。この金額を毎月の資金繰りの中で吸収できるかどうか。そこが考えるスタート地点になります。

これから創業融資・追加融資を受ける場合の注意点

融資申し込みの書類と計算機などのイメージ

ーこれから創業融資や追加融資を受けたい場合、金利上昇局面ではどのような点に注意すべきでしょうか。金利だけで金融機関を選ぶべきなのか、借入額や返済期間、資金計画をどう考えればよいのかも伺いたいです。

小池:金利はもちろん大事です。でも、金利「だけ」で選ぶのは、私はあまりおすすめしていません。これも計算してみると分かりやすいです。

500万円を7年で返す場合、金利が0.5%違うと、7年間の利息の差は約9万円です。一方で、返済期間を5年にするか7年にするかで、毎月の元金返済は約8.3万円と約6万円。月に2万円以上も違ってきます。創業期の資金繰りにとっては、こちらのほうが効いてくるケースが多いと思います。

創業される方と一緒に確認しているのは、だいたい次のようなことです。

  • ①資金計画は「何にいくら必要か」を分けてつくる
    設備にいくら、運転資金にいくら、と分けて積み上げます。運転資金は、売上が立つまでの固定費(家賃や人件費など)の3〜6ヶ月分を見込んで計画をつくるのがひとつの目安です。そのうえで、私の基本的な考え方は「運転資金はできるだけ借りない」です。運転資金とは平たく言うと毎月の経費分であり、軌道に乗るまでの経費分は準備してから事業を開始するのが安全だと思います。借入は設備など形に残るものを中心に考え、運転資金は自己資金でまかなえる計画にできないか、まず検討してみてください。
  • ②返済は「利益で返せるか」で考える
    ここは誤解されやすいところなんですが、借入の元金の返済は経費にはなりません。税金を払ったあとの利益から出ていくお金です。事業計画の利益(+減価償却費)で毎月の返済がまかなえるか。ここに無理があると、金利がいくら低くても苦しくなります。
  • ③据置期間は「明けたあと」を先に計算しておく
    据置期間を付けると最初は楽なんですが、明けた月から返済が始まります。その頃の売上で返せるのか、借りる前に一度計算しておくと安心です。
  • ④固定か変動かを意識する
    金利が上がっていく局面では、固定金利のほうが返済の見通しは立てやすくなります。ただ、借りる時点の金利は、変動金利より高めに設定されていることも多いです。返済期間の長さや手元資金の余裕と合わせて、どちらが合っているか考えてみてください。
  • ⑤経営者保証を付けない選択肢も知っておく
    日本政策金融公庫には「経営者保証免除特例制度」がありますし、法人であれば、信用保証協会の「スタートアップ創出促進保証」という、経営者個人の保証が要らない制度もあります。どちらも利用には条件があって、保証料や金利が上乗せになる場合もあるので、窓口で比べてみるといいと思います。
  • ⑥相談先を一つに絞らない
    創業期は、日本政策金融公庫と地元の信用金庫など、2つの窓口に並行して相談するのがよくある形です。一つの金融機関とだけお付き合いしていると、そこの判断ひとつで資金繰りが決まってしまうんですね。
  • ⑦地域の「制度融資」も調べてみる
    もう一つ、都道府県や市区町村が用意している「制度融資」もぜひ調べてみてください。低い金利で長く固定されているものが多く、地域によっては利子や保証料の補助もあります。条件を整えることで、負担を抑えて借りられることは少なくありません。

すでに付いている保証も、外せないと決まっているわけではありません。以前お手伝いした会社では、経営改善計画書をつくり、それをもとに金融機関へ借り換えを相談しました。これからの数字の見通しと、それを管理していく体制を示したことで、借り換えにあわせて代表者の個人保証を外してもらうことができました。そういう事例もあります。

銀行から「金利を上げたい」と言われたら、どう対応する?

ー金融機関から「借入金利を引き上げたい」と言われた場合、そのまま受け入れるしかないのでしょうか。経営者がまず確認すべきことや、金利交渉・借り換えを検討する際のポイントを教えてください。金融機関側がどのような点を見て金利を判断しているのかも含めて教えてください。

小池:「そのまま受け入れるしかない」ということはありません。金融機関から提示された金利は、決定事項というより「ここから相談しましょう」というスタート地点だと私は考えています。

金利引き上げは「決定事項」ではなく相談のスタート地点

一つだけ先に整理させていただくと、変動金利の借入が、契約どおり短期プライムレートの上昇に合わせて上がるのは、当初の約束どおりの動きなんです。ここは交渉の対象にはなりにくい。相談の余地があるのは、それ以外の部分です。たとえば基準の金利に上乗せされている分や、短期の借入を書き換えるときの金利、それから新しく借りるときの条件ですね。

言われたら、慌てずに次のことを聞いてみてください。

  • どの借入の金利を、何%から何%にしたいのか
  • いつから変わるのか
  • 理由は何か。世の中の金利が上がったからなのか、自社の業績や評価によるものなのか
  • 内容を書面やメールでもらえるか

特に3つめの「理由」は大事です。市場金利の話なのか、自社の評価の話なのかで、打つ手がまったく変わってきますから。

金融機関は何を見て金利を決めている?

信用金庫で融資を担当していた頃の感覚でお話しすると、金利はおおよそ次のような要素を組み合わせて決まっています。

  • お金を用意するためのコスト(預金金利などが上がれば、ここが上がります)
  • 貸す相手の信用力(決算の内容、返済の実績、これからの見通し)
  • 担保や保証がどれくらい付いているか
  • その会社とのお取引全体(預金、売上の入金口座、給与振込など)
  • 他の金融機関との競合

交渉は「感情」ではなく「数字と実績」で行う

交渉するときは、感情ではなく、数字と実績でお話しすることです。最新の試算表を持って行って、「売上はこう推移しています」「返済は一度も遅れていません」「自己資本も増えています」と、事実を落ち着いて伝える。ケンカ腰になる必要はまったくありません。決算の数字が良いタイミングで相談するのも効果的です。交渉の材料については、noteでも詳しく書いています。

融資の担当をしていて感じていたのは、何も言わない会社と、数字を持って相談に来てくれる会社とでは、同じような業績でも話の進み方が変わってくる、ということです。金利を据え置いたり下げたりするには、担当者が「なぜこの会社はこの金利でよいのか」を稟議書に書いて、上司や本部を説得しなければなりません。数字の資料を持って来てくれる会社は、担当者にその材料を渡してくれているんです。担当者を味方にする、というのはそういうことだと思います。

売上の入金口座をまとめるなど、「お取引を増やす」お話とセットで相談するのも一つの方法ですね。

借り換えは金利差だけで判断しない

他の金融機関から低い金利を提示されても、金利差だけで決めないでほしいんです。

  • 繰り上げて返すときの手数料や、新しくかかる保証料・担保の設定費用
  • 借り換えたあとの返済期間と、月々の返済額
  • 今の金融機関との関係がどうなるか

トータルでいくらかかるのか。そして、この先困ったときに相談できる相手が残るのか。この2つで考えてみてください。

以前お手伝いした製造業の会社では、金利の高い短期の借入(手形貸付)に頼った資金繰りが続いていました。そこで、まず案件ごとの利益を管理する仕組みをつくり、それを経営改善計画にまとめて金融機関と話し合いました。長期の借入への組み替えや、日本政策金融公庫の「資本性ローン」(金融機関から見ると自己資本に近い扱いになる融資)も活用した結果、年間の支払利息を6割ほど減らすことができました。メインの金融機関も、支援を続けてくれました。

金利を下げてもらうことだけを目指すのではなく、「この会社なら大丈夫だ」と思ってもらえる数字と仕組みを先につくる。遠回りに見えて、それがいちばん確実な交渉なんだと思います。

金利上昇に備えて、今からやっておくべきこと

金利上昇に備えてデータを確認している人の手元

ー金利上昇に備えて、創業したばかりの会社や個人事業主が今からやっておくべきことを、優先順位も含めて教えてください。

小池:優先順位をつけるなら、こんな順番です。1と2は、今日からでも始められます。

  • ①借入の一覧表をつくる
    先ほどお話しした5つ(固定か変動か、残高、返済が終わる時期、据置期間、保証の有無)を、1枚にまとめます。ここがすべての出発点です。
  • ②「金利が1%上がったら」を資金繰り表で試してみる
    6〜12ヶ月先までの資金繰り表をつくって、利息が増えてもお金が足りなくなる月がないかを見ておきます。据置期間が終わる月も、この表に書き込んでおいてください。
  • ③手元資金の目安を決めておく
    「固定費の◯ヶ月分は、いつも口座に残しておく」という自分なりのラインを決めます。創業期なら、ご商売によっても変わりますが6ヶ月分以上あると安心だと思います。
  • ④毎月の試算表をつくって、金融機関に届ける
    決算書だけでなく、毎月の数字をつかむ習慣をつくります。そして、調子が良いときも悪いときも、金融機関に定期的に見せに行く。まだ実績の少ない創業期こそ、この積み重ねが、将来の交渉のいちばんの材料になるんです。悪い知らせほど早めに伝えたほうが、金融機関も一緒に対策を考えやすくなります。
  • ⑤相談できる金融機関を2つ持つ
    日本政策金融公庫と地元の金融機関など、複数の窓口とお付き合いをつくっておきます。困ってから探し始めても、間に合わないことが多いんですよね。
最後に、金利上昇や今後の融資に不安を感じている創業手帳の読者へ、メッセージをお願いします。

小池:金利が上がるというニュースを見ると、不安になりますよね。でも、影響は計算すれば見えてきますし、見えてしまえば手は打てます。本当に怖いのは金利そのものより、「自分の場合はどうなのか」が分からないまま過ごしてしまうことなんです。

どうか一人で抱え込まないでください。地域の商工会議所や商工会、よろず支援拠点など、無料で相談できる窓口は全国にあります。借入の一覧表を1枚持って行くだけで、相談の中身はぐっと具体的になりますよ。

まずは小さく、今日できることから一緒に始めていきましょう。

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