ササフネ 亀山 政典|物価高でも低価格の海鮮丼で急成長!人気チェーン「丼丸」の自由すぎる経営とは

※このインタビュー内容は2026年09月に行われた取材時点のものです。

50代飲食未経験から2代目社長へ。異業種参入と事業承継を成功させた経営の極意

株式会社ササフネ 代表取締役 亀山政典氏
食材費や人件費、光熱費などの高騰に直面している飲食業。参入が多い一方、廃業も増えているのが現実です。こうした中で500円~700円という驚くべき価格で海鮮丼を提供して急成長しているのが、テイクアウト専門海鮮丼チェーン「丼丸」です。

「低価格でも質のよい商品を提供できるのは、徹底的に無駄を省いているからです。また独自のフランチャイズ制度によるところも大きいですね。」と語るのは、「丼丸」を運営する株式会社ササフネの代表取締役を務める亀山政典さん。

アパレルメーカーの経営者だった亀山さんは、50代で飲食業へ転職したという異色の経歴の持ち主。2020年には創業者である前代表から引継ぎ、代表取締役に就任しました。「異業種からの転職でしたが、全く不安はありませんでした。」と語る亀山さん。今回は亀山さんが転職したきっかけや、業界の常識を超えた同社の取り組みについて伺いました。

株式会社ササフネ 代表取締役 亀山政典氏
亀山政典(かめやま まさのり)
株式会社ササフネ 代表取締役

1994年、38歳で婦人服メーカーを創業。順調に経営を続けていた2010年、53歳の時、通勤途中に目にした「ワンコイン丼」の看板をきっかけに、「丼丸」に参画。未経験の飲食業に飛び込むにあたり、経営者としてのプライドを一度脇に置き、清澄白河店で調理からスタート。半年で店長を任され、数々の店舗立ち上げや人材育成を手がけた後、2020年に社長就任。

アパレル経営から50代で未経験の飲食業へ。でも不安は全くなかった

株式会社ササフネ 代表取締役 亀山政典氏

-亀山さんは30代でアパレルメーカーを起業、その後50代で現在のササフネ社へ転職されたとお聞きしました。どんなきっかけがあったのでしょうか?

亀山:アパレルをやっていた頃は、中国をはじめ海外の勢いがどんどん増していた時期でした。人件費も圧倒的に海外の方が安かったですし、日本の大手アパレルメーカーがどんどん海外へ投資をしていました。そういう中で、このまま続けるのは厳しいかなと感じていたんです。

そんな時たまたま近所に「丼丸」の店舗がオープンして、500円で海鮮丼が食べられるというのを見てとても驚きました。そこから興味を持って、面白そうなビジネスだなと思ったのが転職するきっかけですね。もともと釣りが好きだったということもあります。

-50代で全く異なる業界に進むことに不安はありませんでしたか?

亀山:不安は全くありませんでした。小売業、流通業という部分は同じだと思っていましたので。商材が違うだけで、商品をお客様に届けるということは私がずっとやってきたことです。以前から小売にとって、良いものを低価格で届けることが大切ということを実感していました。ですから「丼丸」のビジネスはすごくいいと思いましたし、将来性があると感じました。

-ササフネ社へ入社後、まずは店舗の現場からスタートしたそうですね。その辺りは大変だったのではないでしょうか?

亀山:確かに想像以上に忙しかったですね。ただオペレーション自体はそれほど複雑ではありませんし、もともと魚が好きということもあって、調理や接客も楽しみながらやっていました。特にお客様の反応をダイレクトに感じられるところは、すごくよかったですね。

あとは現場にいると、頑張った結果が売上として数字で出てきます。これがモチベーションになりました。

入社してから約10年経った頃、代表取締役になりました。入社当時から社長になりたいと思っていたわけではありませんが、さまざまなところでの実績を評価してもらえた結果だと思っています。創業者である前社長からのバトンタッチというと、大変だったのではと聞かれることもあります。でも実際は、全然問題ありませんでしたね。常務だった時からずっと前社長と一緒に仕事をしていましたので、スムーズに移行できたと思います。

売上連動のロイヤリティはゼロ。テイクアウト特化と独自の「のれん分け」戦略

丼丸の海鮮丼

-あらためて御社の事業内容について、教えていただけますか?

亀山:テイクアウトの海鮮丼専門店「丼丸」を運営しています。直営店とフランチャイズあわせて、全国で約300店舗を展開しています。

「丼丸」は創業者である前社長が営んでいた寿司店がルーツなんですよ。今から18年前に「丼丸」という海鮮丼の店舗にシフトしまして、その後現在のテイクアウト専門という業態になりました。寿司店だったということもあり、仕入れなど魚に関するノウハウには自信があります。

-テイクアウトに特化しているのは、どんなメリットがありますか?

亀山:大きなメリットが、固定費を削減できる点です。イートインを併設するとなると、やはりある程度のスペースが必要となります。

しかしテイクアウト専門であれば、3坪や5坪といった狭いスペースで店舗を構えることができ、家賃を節約できます。またイートインを設けるとなると調理の他に接客スタッフが必要となりますが、テイクアウト専門にすることで人件費を抑えることも可能です。

私たちは、低価格でいいものを提供することをとても大切にしています。ですから、テイクアウト専門にすることで経費を抑え、その結果よいものを低価格で提供できるというわけです。特に最近は物価高で、いろいろなものの値段が上がっていますよね。そういった中、1,000円以下でおいしい海鮮丼を提供できるのは、私たちの大きな強みだと思っています。

また私たちの店舗では、基本的に作り置きをしません。ご注文いただいてから作りますので、それだけロスが少なくなります。出来立てを提供したいという思いもありますし、食品ロスを減らすことで、価格を抑える効果もあります。

コロナ禍で外食産業が大きな影響を受けた時期でも、私たちはテイクアウト専門だったため売上を伸ばすことができました。もちろん最初からそれを狙っていたわけではありませんが、結果的にはテイクアウト専門にしたことで、いろいろな環境の変化にも対応できるんだなと感じています。

-御社のフランチャイズ制度はすごく独特だと聞きました。詳しくお聞かせいただけますか?

亀山:一般的なフランチャイズ契約では、本部の指示が厳しいことが多いですよね。しかし私たちの場合、例えば商品価格や仕入れ先なども、オーナーさんが自由に決めることができるんですよ。この自由度の高さが大きな特徴です。地域や環境によって、当然ですが店舗経営の仕方は変わってくるはずです。できるだけ地域に根差した店舗を経営して欲しいという思いで、今のようなオーナーさんにとって自由な仕組みになりました。

売上の数%をロイヤリティとして本部に払うという制度もありません。オーナーさんが本部に支払うのは、毎月固定の金額である33,000円だけです。ですから私たちは一般的なフランチャイズと差別化するため、「のれん分け制度」と呼んでいます。「丼丸」というブランドは使っていただくけれど、その他の経営については基本的にオーナーさんで行っていただくというスタンスです。その方が、当然オーナーさんのモチベーションも高くなります。

その分オーナーさんの責任は大きくなります。売上を伸ばせるかどうかはオーナーさんの手腕次第という意味では、シビアかもしれません。

当然うまくいかないオーナーさんも出てきますが、これは仕方のないことだと思っています。いいものをしっかりお客様に提供していけば、何十年という長いスパンで経営できます。しかし実際には、お客様を第一にするのではなく、自分の懐ばかり見るようなオーナーさんも中には出てきてしまうんです。こういうケースでは売上が伸びないですね。

不振の要因9割は「商品」にある。成功する飲食店経営に必要なのは、信念と顧客視点

丼丸ののれん

-これまでの経営において、特に大変だったことは何ですか?

亀山:売上が出ない時は、精神的に苦しいですね。いろいろな要因が考えられますが、やはり答えは現場にあります。ですから、今でもできる限り店舗に出るようにしています。

スタッフの動きも見えるし、お客様がどんな行動をするかも現場にいれば見ることができる。体力的には大変ですが、売上がしっかり出ると疲れも吹き飛ぶ感じですね。

-飲食ビジネスで起業したいという方も多いと思いますが、そういった方へのアドバイスをいただけますか?

亀山:しっかりとしたビジョンを持つことが大切ということを、伝えたいですね。飲食業の場合、参入自体はそれほど難しくありません。私たちの「丼丸」もオープンの際に必要な開業資金はそれほど高くありませんから。

一方で、売上を出し続けていくことはとても大変です。やはりそこで重要になってくるのが、信念を持ち続けるということです。信念のもと、お客様にどうしたら驚きと喜びを感じていただけるかを常に考えることが大事じゃないでしょうか。これは飲食に限らず、どの商売でも共通していることだと思いますが。

私たちはオーナーさんの研修においても、そこは重視しています。結局のところ売上が出ない理由の9割は商品にあると私は思っています。もちろん立地や社会情勢といった要因もありますが、いい商品を適正な価格で提供できれば、必ずお客様に支持してもらえるはずです。

「丼丸」ブランドを全国区へ。市場ニーズの波を捉え、これから目指す事業展開

海鮮丼のアップ

-今後の目標について、伺えますか?

亀山:店舗数としては、5年後に500店舗を達成したいと考えています。とはいえ、とにかく店舗数を増やそうと無理をすると、さきほどお話したようにうまくいかないオーナーさんも増えてしまいがちです。私たちの理念に共感してもらって、さらに新しいことに取り組めるようなオーナーさんを自然に増やしていければと思っています。

現在のオーナーさんは40代・50代といった方が中心ですが、今後はさらに20代・30代といった世代も開拓して、若いオーナーさんも増やしていきたいですね。最近は、海外での出店を目指したいというオーナーさんも出てきているんですよ。私たちの場合、どこに出店するかもオーナーさんの自由なんです。

それ以外で言うと、やはり認知度をもっと上げていきたいと考えています。「丼丸」というブランドは店舗があるエリアではある程度知られていますが、まだまだ全国的に知名度が高いとは言えません。

これは、まだまだ伸びしろがあるという見方もできます。多くの方に知っていただき、「丼丸」というブランドをもっと確立していきたいですね。

海鮮丼は、牛丼やうどん、ラーメンといった他分野に比べるとまだまだ店舗数は多くありません。似ているとすれば宅配のお寿司屋さんですが、そちらは価格帯がもっと高いので気軽に頼めるという感じではないと思います。そういう意味では、海鮮丼は手軽に楽しめますし、今の健康志向にもマッチしているので、これからもっとニーズが高まると考えています。

もしかしたら、他社が追随してくるかもしれません。ただ私たちの価格を抑える仕組みや自由度の高いのれん分け制度などは、一朝一夕で真似できるものではないと思っています。

ニーズの高まりなどのトレンドをキャッチしつつ、私たちの強みを活かす。「丼丸」というブランドを根付かせるには、この1年、2年が大きなチャンスだと捉えています。

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(編集:創業手帳編集部)