法人成りしたらインボイス登録は必要?個人事業主との違いや手続きを解説

法人成りすると法人として新たにインボイス登録が必要

法人成りしたらインボイス登録は必要?
個人事業主、フリーランスから法人を設立する、いわゆる法人成りすると同じ事業でも様々な違いが生まれます。
中でも「法人成りをするとインボイス登録はどうなるのか」と不安に思う人は多いでしょう。
法人としてインボイスを発行するには、設立後にあらためて適格請求書発行事業者の登録申請を行わなければいけません。

この記事では、登録が必要になるケースや手続き、注意点までわかりやすく解説します。

この記事の目次

法人成りするとインボイス登録はどうなる?

法人成りをした場合のインボイス登録注意点
法人成りによってインボイス登録がどう変わるのかを理解するには、まずインボイス制度上の基本的な考え方を確認しておくことが必要です。
以下では、個人事業主と法人の違いや登録番号の扱い、申請の要否について順におさらいしています。

個人事業主と法人は別人格のため登録は引き継がれない

個人事業主として働いている時にすでにインボイス登録を済ませている人も多くいます。
しかし、法人を設立すると新たな法人格が生まれるため、個人事業主時代のインボイス登録情報は法人へ自動的に引き継がれません

同じ事業主が経営していても、消費税法上では個人事業主と法人は別々の課税事業者として扱われるため、登録の効力もそれぞれ独立して判断されます。
法人としてインボイスを発行するためには、個人時代の登録の有無にかかわらず、あらためて登録手続きを行ってください。

個人事業主時代の登録番号は法人では使えない

個人事業主としてインボイス登録した時の適格請求書発行事業者の登録番号は、事業者ごとに個別付与されたものです。
そのため、個人事業主時代の番号を法人で使い回すことはできません。

法人として登録を受けると、個人時代とは異なる新しい登録番号が税務署から発行されます
請求書や領収書に記載する登録番号を誤ると適格請求書として認められないため、個人から法人への切り替え時期の管理が重要です。

法人として新たに適格請求書発行事業者の登録申請が必要

法人としてインボイスを発行するには、設立後に管轄の税務署へ適格請求書発行事業者の登録申請書を提出してください。
通常の登録申請では、提出から登録までに一定の期間を要します。

ただし、新設法人には登録時期に関する特例があります。
一定の期限までに登録申請を行うことで、設立日から適格請求書発行事業者として登録を受けたものとみなされる場合があります。
適用には所定の要件があるため、国税庁の案内を確認してください。 利用するには、登録申請書に記載してください。

法人成り後にインボイス登録が必要になるケース

インボイスはすべての法人が必ず登録すべきというわけではありません。取引先や事業内容によって登録の必要性は異なります。
ここでは、登録を検討すべき代表的なケースを紹介します。

取引先からインボイスの発行を求められる場合

法人間取引では取引先がインボイスの発行を求めるケースが想定されます。取引先からの要請に対応できないと取引継続や新規契約に影響するリスクも考えなければいけません。

登録前は適格請求書を発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けるための要件を満たせない可能性があります。
そのため、価格の引き下げ交渉や取引先の変更を打診される要因になりかねません。

既存の取引先から登録の予定を尋ねられた場合は、早めに方針を伝えておくことで信頼関係を維持しやすくなります。

課税事業者として仕入税額控除を受けたい場合

適格請求書発行事業者になると、消費税の課税事業者となり仕入れにかかった消費税額を仕入税額控除として差し引けるようになります。

設備投資や仕入れが多い事業では特に、仕入税額控除を受けられることで消費税の納税負担を抑えられる場合があります。
ただし、インボイス登録すれば免税事業者ではいられなくなるため、消費税の申告・納税義務が新たに発生する点に注意してください。
どちらのほうがメリットが大きいかによって判断しましょう。

今後法人向け取引きを増やしたい場合

BtoB取引の拡大を目指す法人にとって、インボイス登録は取引先からの信用を得るための重要な要素のひとつです。
インボイス発行事業者であることは、新規の取引先開拓や見積もり時の比較検討の場面において、プラスに働く場合があります。

現状でインボイス登録をしていなくても、将来的に取引先を増やす、事業を拡大していく可能性がある場合は、早い段階で登録を済ませておくと機会損失を防ぎやすくなります。

法人成り後にインボイス登録をしないという選択肢はある?

インボイス登録はあくまで任意の制度であり、登録しない場合でも法人としての事業運営は可能です。
ここでは、登録しない選択をした場合のメリット・デメリットを整理します。

免税事業者のままでも事業は継続できる

インボイス登録はあくまで任意の制度なので、要件を満たせば免税事業者のまま法人としての事業を継続できます。
消費税の免税事業者であれば、原則として消費税の申告・納税義務は生じません。そのため、経理処理にかかる負担を抑えられるメリットがあります。

特に取引先からインボイスの発行を求められにくい業態では登録を急ぐ必要性が低く、そのまま事業を継続したほうが合理的なケースも多くあります。

登録しない場合に考えられるデメリット

取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、値下げ交渉や取引条件の見直しを求められるリスクがあります。
法人間取引が中心の業種では、インボイス未登録であることを理由に新規の契約を敬遠されるケースも想定しなければいけません。

将来的に登録しようと考える場合でも、申請から登録までには一定の期間がかかります。
インボイス登録を避けていると、取引きを開始する直前になって慌てて対応するといった事態に陥ってしまうかもしれません。

BtoC中心なら登録を急がなくてもよいケースもある

一般消費者を主な顧客とする事業では、インボイスの発行を求められる場面が少なく、登録を急ぐ必要性は低い傾向にあります。
ただし、将来的に法人向け取引を拡大する可能性がある場合には、あらかじめ登録の要否を検討しておいたほうが安心です。

今後の業態や取引先構成の変化を踏まえたうえで、登録のタイミングを柔軟に見直していく姿勢が求められます。

法人成りとインボイス登録の手続き・流れ

インボイス登録の手続き・流れ
法人成りからインボイス登録の完了までは、いくつかの手続きを順番に進めていく必要があります。ここでは、設立から登録完了までの一連の工程を流れに沿って説明します。

①法人設立を行う

法人成りするには、法人の設立が必要です。会社形態に応じて定款を作成し、必要書類をそろえて法務局へ設立登記を申請します。
株式会社は定款認証が必要ですが、合同会社は不要です。

設立登記が完了すると、法人としての基本的な事業活動を開始できる状態になります。具体的には、金融機関での口座開設や各種契約や取引きが開始できる状態です。
登記が完了した後は、必要に応じて登記事項証明書を取得しておくと、その後の各種手続きを進める際に便利です。

②法人の開業届・税務手続きを行う

法人設立後は、管轄の税務署へ法人設立届出書を提出し、法人としての税務上の手続きを行う必要があります。
青色申告の適用を受けたい場合には、青色申告の承認申請書を提出してください。
青色申告承認申請書も提出先が税務署なので法人設立のタイミングでまとめて提出しておくことをおすすめします。

これらの税務手続きは、インボイス登録の要否を判断する上での前提です。
法人の事業状況の整理にもつながるので、法人成りをきっかけとして今後の道筋を明確にしましょう。

また、個人事業を廃止する場合には、個人事業の開業・廃業等届出書と消費税の事業廃止届出書を提出します。
事業廃止しないと、不要な手間が発生することもあるので忘れないようにしてください。

③適格請求書発行事業者の登録申請を提出する

インボイス登録を行う場合は、適格請求書発行事業者の登録申請書を作成して、管轄の税務署へ提出します。
インボイスの登録申請は、会社設立前に申請できません。登録申請は書面での手続きのほか、e-Taxを利用したオンライン申請にも対応しています。

登録時期の特例を利用する場合は、所定の期限までに登録申請書を提出し、必要事項を記載することで設立日から登録を受けたものとみなされる場合があります。

ただし、インボイス登録が通知される前に発行した請求書には登録番号を記載できず、取引先が仕入税額控除を受けられない可能性がある点に注意が必要です。
申請から登録までは一定の期間を要するため、取引先との取引開始時期を踏まえて余裕を持って提出するようにします。

④登録番号を請求書・領収書へ反映する

登録が完了すると税務署から登録番号が通知されます。速やかに請求書や領収書の様式に反映させるようにしてください。

会計ソフトや請求書発行システムを利用している場合は、登録番号や税率区分などの設定変更もあわせて行います。
登録番号の反映漏れがあると適格請求書として認められない可能性があります。
インボイスに必要な記載事項を満たしているかどうか、切り替え後の書類は慎重に確認しなければいけません。

法人成りで見落としやすいインボイスの注意点

法人成りの際には設立手続きは手間がかかるものもあり、インボイスに関する実務対応が後回しになりがちです。
ここでは、インボイス登録をするにあたって特に見落としやすいポイントを整理します。

登録番号が変わるため取引先へ案内が必要

法人成りしても、個人事業主として付き合ってきた取引先との関係が続くケースは多いでしょう。
個人事業主時代と法人成りしてからでは登録番号が異なります。そのため、取引先には、切り替え時期を事前に案内しておかなければいけません

新しい登録番号の案内が遅れてしまうと、取引先が誤った登録番号をもとに仕入税額控除の処理を行ってしまう恐れがあります。
請求書の様式が切り替わる時期についても、メールや書面などで早めに周知しておくと、切り替えに関わる混乱を防ぎやすくなります。

請求書の様式や会計ソフトの設定を変更する

法人成りにともなって、会社名や登録番号が変わります。そのため、請求書や領収書といった書類のフォーマットを見直さなければいけません。
会計ソフトや販売管理システムに登録している事業者情報も、法人名義へあわせて更新しておく必要があります。

設定変更を怠ると、旧情報のまま、古い登録番号が記載された請求書や領収書が発行され続けてしまうリスクがあります。
取引先とのトラブルにつながることもあるので書類の様式や会計ソフトの設定の切り替えのタイミングは徹底するようにしてください。
古い様式の書類は使うことがないように削除をおすすめします。

個人事業の廃業と法人設立で請求書の管理が変わる

法人成りにあたっては、個人事業の廃業手続きと法人設立の手続きをそれぞれ適切に進めるようにしてください。
個人事業主時代の書類は、個人事業主の時の登録番号などの情報が記載されていることがあります。
混乱を防ぐためにも、個人事業主時代の請求書・帳簿と、法人設立後の請求書・帳簿は分けて保管・管理するようにしましょう。

廃業時期と設立時期の前後関係によっては、インボイスの発行主体が一時的に不明確になる可能性もあります。
取引先への影響が大きくならないようにタイミングを調整してください。

法人成りとインボイスに関するよくある質問

個人事業主の登録番号はそのまま使える?

個人事業主の登録番号は法人成りによって新しい登録番号になります。
個人事業主時代の登録番号は法人へ引き継がれないので、法人として新たに登録番号の交付を受けてください。
登録番号は事業者ごとに個別に付与される仕組みであり、法人成りで名義が新しくなるので、番号も変更になります。

個人事業主としてインボイス登録した人の場合には、個人事業主時代の番号を法人の請求書に記載してしまわないよう注意が必要です。
書類やパソコンに登録番号のデータが残っている場合には漏れなく新しい番号に切り替えてください。

法人設立後すぐに登録しなければならない?

インボイス登録は法人をすぐに設立しなくても問題はありません。
インボイス登録は義務ではないため、取引先の状況や事業内容を踏まえた上で登録時期を判断することができます。

また、設立後の最初の課税期間の末日までに登録申請を行えば、設立日に遡って登録を受けたものとみなされる「登録時期の特例」が用意されています。

登録番号の通知で取引先に迷惑をかけたくない場合は、この特例の期限を踏まえた上で、できるだけ早めに申請しておくようにおすすめします。

法人が免税事業者でもインボイス登録はできる?

法人が免税事業者でもインボイス登録は可能です。免税事業者であっても、所定の手続きを行えばインボイス発行事業者の登録を受けられます。
ただし、適格請求書発行事業者になると、消費税の課税事業者としての扱いになり消費税の申告・納税義務が新たに発生します。

課税事業者になることで納税負担や作業負担は増えると考えられます。
インボイス登録の要否は、免税事業者のままでいるメリットと、課税事業者になった上でのメリットを比較して判断してください。

個人事業のインボイス登録は廃止手続きが必要?

個人事業主を廃業してインボイス登録を取り消すには手続きが必要です。
個人事業を廃業する際は、インボイス発行事業者の登録についても取消しの手続きを行う必要があります。
廃業に伴う個人事業の開業・廃業等届出書とあわせて、事業廃止届出書の提出が必要です。

インボイス発行事業者の登録が残ったままだと、廃業後の消費税の手続きにも影響する可能性があります。
個人事業主としての登録が形式上残ってしまう可能性があるため、廃業時にあわせて確認しておいてください

まとめ|法人成りでは法人として改めてインボイス登録を判断しよう

法人成りをしても個人事業主時代のインボイス登録は引き継がれません。
法人成りした時には、これからの戦略も考えて新たにインボイス登録の要否を判断することが必要です。
インボイス登録を判断するためには、取引先の状況や仕入税額控除の必要性、今後の事業展開などを踏まえて、登録するかどうかを慎重に検討してください。
インボイス登録する場合には、新設法人向けの登録時期の特例や申請期限を踏まえた上で、余裕を持って手続きを進めるようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)