今年こそ「地方で起業」を形にする。移住創業のメリットと2026年度支援制度ガイド
2026年内の地方移住創業に向けて最新の支援制度を把握しておこう

都市部はビジネスチャンスに恵まれている一方で、高コストや激しい競争率などの影響から、地方での起業を検討する人は多いです。
しかし、地方での起業は決して「逃げ」ではなく、あえて地方を「攻めの拠点」として捉え、地方起業を選択する人が増えています。
この記事では、4月の新年度スタートを機に、2026年中に地方への移住・創業を実現するためのステップと、最新の支援制度について紹介します。
移住創業のメリットや、実際に地方で起業した人の経験談も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
地方で起業するからこそ得られるメリット

地方で起業することで、主に以下のメリットが得られます。
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- 固定費を削減できる
- 競合が少ない
- 人との距離が近い
- 補助金などを利用できる
都市部に比べてオフィスや住居費が安いことから、固定費を削減しやすい点は地方起業における大きなメリットです。
削減できた分はプロダクト開発や広告費などにも回せるようになります。
地方には高齢化やDXの遅れなど地域課題も多く残されており、業種によっては競合も少ないことから、先行者優位を取って仕事に取り組めます。
また、行政や地元企業との距離も近く、顔を合わせて信頼関係を構築することで、受注や連携もしやすいです。
さらに、国をはじめ各都道府県・市区町村では地方創生を目指し、各種補助金制度も実施されています。
この補助金を活用すれば、創業コストを抑えつつ起業することが可能です。
【2026年度最新】見逃せない公的支援と補助金

国や各都道府県・市区町村が連携し、地方移住と創業者を支援する制度は多岐にわたります。
ここで、代表的な支援制度の概要と対象要件を解説します。どのような支援制度があるのか正確に把握し、申請機会を逃さないようにしてください。
移住支援金(地方創生移住支援事業)
移住支援金(地方創生移住支援事業)は、地方公共団体が主体の事業で、実施期間や支給額などは各地方公共団体によって異なります。
この制度を活用する際は、必ず移住希望先の自治体が公開している情報をチェックすることが大切です。
概要
この支援事業では、東京23区に住んでいるまたは通勤している人が、東京圏外に移住して起業・就職する際に支給される事業です。
東京圏外とは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の1都3県を指します。
支給額は、世帯だと100万円以内、単身だと60万円以内で各都道府県が設定する金額です。
ただし、世帯の場合は18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合、18歳未満の子ども1人につき、最大100万円が加算されます。
移住支援金には返還制度があり、移住支援金の申請から5年以内に移住先から転出した場合や、虚偽の申請をした場合は支給された金額の返還を求められます。
詳しい条件に関しては、移住希望先の都道府県・市区町村に直接確認してください。
対象者
移住支援金の対象となるのは、移住直前の10年間に通算5年以上、東京23区在住または東京圏の非条件不利地域に在住し東京23区へ通勤していた人で、直近1年以上は東京23区に在住または通勤していることが必須要件となります。
さらに、
移住先での就業要件として、道府県マッチングサイトに掲載された求人への就業やテレワークによる業務の継続、市町村ごとの独自要件、地方創生起業支援事業の活用のいずれかに該当する必要があります。
そもそも移住希望先で地方創生移住支援事業が実施されていなければ意味がないため、事前に内閣府地方創生のWebサイトから事業を実施する自治体を確認してください。
なお、条件不利地域とは、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」や「山村振興法」、「離島振興法」、「半島振興法」、「小笠原諸島振興開発特別措置法」の対象地域にある市町村および、2010年から2020年に人口減少率が10%以上の市町村を指します。
つまり、非条件不利地域は上記の法令における対象地域ではなく、人口減少率も2010年から2020年で10%未満の地域になります。
地域課題解決型起業支援事業
地域課題解決型起業支援事業は、都道府県が実施主体となり、地域に残る様々な課題をデジタル技術によって解決する起業を対象に、支援金や伴走支援を行う事業です。
ここでは、2025年度の北海道の例を参考に、事業の例や対象要件を紹介します。
参照元:地域課題解決型起業支援事業│公益財団法人 北海道中小企業総合支援センター
概要
デジタル技術を活用して、それぞれの地域が抱える課題の解決につながる起業をする場合、経費の一部を補助してくれます。
公益財団法人 北海道中小企業総合支援センターが2025年度に実施した例だと、補助率は対象経費の1/2以内で、交付限度額は200万円でした。
補助対象経費は人件費や店舗等借料、設備費、原材料費、広報費、外注費など多岐にわたっており、事業の立ち上げに必要なコストのほとんどを対象経費として計上できます。
採択事業者は、実施機関による伴走支援も提供されるため、初めて起業する人も事業の実現可能性を高めつつ、起業に向けた準備を進められます。
対象者
本事業の対象となるのは、事業を営んでいない個人であり、補助事業の期間完了日までに都道府県内で個人事業の開業届や、株式や合同などの会社を設立し、その代表者が対象になります。
上記の要件に加え、以下の要件もすべて満たしている必要があります。
-
- 応募する都道府県内に居住している、もしくは補助事業の期間完了日までに居住を予定している
- 未成年が代表者の場合は法定代理人の同意を得ている
- 法人の登記または個人事業の開業届は応募する都道府県内で行う
- 都道府県税や消費税、地方消費税を滞納していない
日本政策金融公庫の地域活性化・雇用促進資金
日本政策金融公庫の地域活性化・雇用促進資金は、地方での雇用創出や地域経済の活性化に取り組む企業を支援する融資制度です。
補助金とは異なり、あくまで融資を受けていることになるため、返済する義務が発生するものの、長期間かつ低利率で借りられるため、創業期に負担を極力抑えて資金調達したい場合に適しています。
参照元:地域活性化・雇用促進資金│日本政策金融公庫
概要
地域活性化・雇用促進資金は、過疎地域や半島地域、離島地域などで3人以上の雇用創出効果が見込まれる設備投資を支援します。
融資限度額は直接貸付だと7億2,000万円、代理貸付では1億2,000万円まで融資を受けることが可能です。
返済期間も設備資金が20年以内(うち据置期間が2年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間が2年以内)としています。
さらに、利率は過疎地域などで雇用創出効果が見込まれる設備投資を行った場合、特別利率が適用され、通常よりもお得に長期借入が可能です。
まち・ひと・しごと創生法に基づいて策定された総合戦略によって、地方創生に資する事業だと地方公共団体から認められた事業を行う人も対象に含まれます。
これにより、自治体の地方創生計画に連動した事業計画を策定すれば、申請要件を満たしやすくなります。
対象者
過疎地域や半島地域、離島地域、振興山村、特別豪雪地帯などで3人以上の雇用創出が見込まれる設備投資を実施する中小企業者が主な対象となります。
ただし、地域区分によって必要な雇用創出数が異なるため、あらかじめ確認しておいてください。
また、本社を地方自治法に規定する特別区から地方に移転した人や、店舗・事務所などを地方に新設・増設する人も対象に含まれるため、都市部から地方に拠点を移したい起業家にも適しています。
社会保険および労働保険の加入義務がある法人に関しては、加入済みであることが融資要件になります。
そのため、法人設立後に融資を受けたい場合は、速やかに各保険の加入手続きを済ませてください。
サテライトオフィス設置補助関係
各自治体では、IT関連事業者に向けてサテライトオフィスの設置に関する支援制度を設けています。
移住希望先にサテライトオフィスの設置に関する制度が設けられているか確認してみてください。今回は静岡県三島市と長野県飯田市の例を紹介します。
静岡県三島市
三島市サテライトオフィス等進出事業費補助金は、新たに賃借でオフィスや工場などを開設する際にかかった家賃・施設改修費用などの一部と、三島市民の新規雇用に対して助成する制度です。
三島市は品川駅から新幹線で最速37分とアクセスも比較的良好であり、首都圏企業の分散拠点としての活用が見込まれます。
助成内容は、オフィスや工場などの賃借料だと補助率1/2以内、限度額は月額10万円(3年で最大360万円)となります。
また、オフィスや工場などの改修費および通信環境整備費は補助率が1/2以内、上限は100万円までです。
さらに、賃貸借契約日から事業が開始される日までに三島市在住の人を正社員として雇用した場合、上限2人分で1人あたり25万円まで補助を受けられます。
この制度を活用するには、三島市内でオフィス・工場などを開設する前に原則1年以上の事業実績を有することや、床面積25㎡以上、常時雇用者が3人以上(うち正社員1人以上)配置していること、開設後3年以上事業を継続させることが必要です。
事業継続も条件に入っていることから、本格的に拠点の移転や分散を計画している企業向けの制度といえます。
長野県飯田市
飯田市のサテライトオフィス等開設支援補助金は、飯田市内にサテライトオフィスなどを開設する場合に補助金が交付される制度です。
補助額は進出支援金として50万円、さらにオフィスの改修にかかった経費の1/2(最大150万円)まで支援してもらえます。
ただし、オフィスの改修工事は市内の業者に施工を依頼する必要があります。
補助対象者は、飯田市内にサテライトオフィスの開設、または事務所機能を移転させる飯田下伊那地域外の事業者です。
また、飯田市に進出後、3年以上は事業活動を行う必要があります。
さらに、オフィス開設をホームページで公表でき、地域での移住体験をSNSなどで情報発信することも要件に含まれています。
対象施設は産業振興拠点「エス・バード」のインキュベート室や環境技術開発センター、市内の空き物件が利用可能です。
この補助制度とは別で、現地で実際に体験したい事業者に向けて「おためし利用支援」も活用できます。
おためし利用支援は、交通費や宿泊費、オフィス利用料などを上限10万円で補助してもらえる制度です。
地方への進出を検討するタイミングから段階的にサポートを受けられる仕組みが整っています。
失敗しないための「今年から」のスケジュール

移住創業を年内に実現するためには、4月から来年度末に向けてスケジュールを立て、着実に進めていく必要があります。
四半期ごとにやるべきことをまとめたので、ぜひチェックしてみてください。
・【4月~6月】情報収集と現地視察
すでに移住したい地域が決まっている場合、お試し移住制度などを活用して現地での暮らしを体感しつつ、行政や商工会、地元の起業家などとの接触を目指します。
その地域における人とのつながりを増やすことで、情報収集にも役立ちます。
・【7月~9月】ビジネスプランのローカライズ
お試し移住制度などでわかった地域の実情や地域特性をもとに、事業計画をブラッシュアップさせます。この時期から補助金申請に向けた準備も同時に進めていきます。
・【10月~12月】拠点確保と移住準備
空き家バンクなどを活用して物件を確保し、地域コミュニティへの参加も進めていき、移住に向けた準備を進めていきます。
住民票の異動など行政手続きも集中して年内までに終わらせておいてください。
・【1月~3月】本格始動・登記
残りの3カ月で法人登記や開業届の提出など、法的手続きを完了させます。さらに次年度に向けて資金計画や補助金申請のスケジュールも見据え、事業を開始していきます。
先輩起業家に学ぶ、地方移住の「理想と現実」

地方での起業に成功した人の共通点には、地域に対するリスペクトと外からの視点とのバランスを保ち続ける姿勢があります。
一方で、ネット環境の確認不足やコミュニティへの不参加による失敗などが繰り返されているのも事実です。
創業手帳のインタビュー事例から、地方移住の理想と現実を知っておきましょう。
土屋勇磨氏のケース
軽井沢総合研究所の代表取締役を務める土屋勇磨氏は、リクルートを経て父が携わっていた軽井沢新聞社の事業承継をきっかけに軽井沢へ移住します。
その後、軽井沢総合研究所を立ち上げ、歴史的建造物の再生事業やカフェ運営、ウイスキー復活プロジェクトなど、地域再生に関わる事業を手がけてきました。
土屋氏は軽井沢の豊かな環境でゼロから事業を築けると期待して移住しました。
しかし、財務から営業まですべて1人でこなす必要があり、創業期も設備投資は増える一方で売上が思うように伸びず苦労したと語っています。
地方での創業期を乗り越えるには、特定の人材にばかり頼らない仕組みづくりと、地域の歴史について徹底的に調べた上でコンテンツを開発する必要があるとしています。
地方で事業を継続させるためにも、外からの視点と地域の文脈を掛け合わせることが重要です。
土屋勇磨氏のインタビューはこちら
軽井沢ウイスキーを復活させたい!地域再生の仕掛人・軽井沢総研・土屋 勇磨の挑戦 – 起業の「わからない」を「できる」に
市来広一郎氏のケース
株式会社machimori代表取締役、NPO法人atamista代表理事を務める市来広一郎氏は大学を卒業後、27カ国をバックパッカーとして周遊した経験を持っています。
帰国後はビジネスコンサルティングに従事し、その後は出身地でもある熱海の地域再生に携わっています。
しかし、観光客を誘致するだけでは地元が潤わないという現実に直面します。そこで不動産と新住民の創出を組み合わせたビジネスモデルへと転換していきました。
地元が潤う持続可能な地域再生を実現するには、まず地元民をファンにすることが必要だとする市来氏の考え方は、地方移住創業において「誰のための事業か」を問い直す重要性につながっています。
市来広一郎氏のインタビューはこちら
「熱海の奇跡」の立役者・市来広一郎氏。オリジナルな発想で地域再生を実現する手腕に迫る【前編】 – 起業の「わからない」を「できる」に
まとめ・地方で起業するという選択が強みになる時代
地方移住創業は、固定費の削減やブルーオーシャン市場での事業展開、公的支援などを同時に活かせる「攻めの経営戦略」です。
国と自治体の支援制度を組み合わせれば、創業コストは大幅に抑えられます。
年度初めの4月を起点に各ステップを進めていくことで、年度内に地方移住創業を実現することは可能です。
創業手帳(冊子版)は、地方での起業・創業を目指す人に役立つ情報や最新トレンドなどを紹介しています。
支援制度や補助金・助成金に関する情報も紹介しているので、ぜひお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)
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