Dash創業者 Jamyn Edis|米国エリートビジネスマン〜大学教授を経て起業家へ

創業手帳
※このインタビュー内容は2015年04月に行われた取材時点のものです。

Dash創業者 Jamyn Edis氏(創業手帳・海外支社の直撃インタビュー)

米国のイノベーティブな創業者に、創業手帳・海外支社が直撃インタビューする当シリーズ。
今回は、アプリの正式ローンチ(2014年1月)後わずか1年で20万ユーザーを達成し、米国エネルギー省、クラウドイノベーションワールドカップなどから数々のアワードを受賞したDash Labs Inc.(以下Dash社)の創業者で、ニューヨーク在住のJamyn Edis氏に話を伺った。

Jamyn Edis (Dash Labs Inc. CEO and Founder)
1975年生まれ。ケンブリッジ大学/ハーバードビジネススクール卒(MBA)、アクセンチュア、HBO、ニューヨーク大学での教職を経てDash社を創業。

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そもそもDashって、どんなアプリ?

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DASHは、Bluetoothを介して、自動車の状態や、運転の状況を管理出来るアプリです。走行記録はもちろん、独自のアルゴリズムで運転状況を解析してスコアで示してくれたり、さらに今後より良い運転をするにはどうしたら良いかまでを示してくれます。GPSで地図や駐車場を探すなどのカーナビ機能に加え、最寄りでより安いガソリンスタンドを調べたりする事もできます。また、急ブレーキをかけたときやガソリンが減ってきたときにアラートを出したり、車の調子が悪い時には、修理にどれ位のコストがかかるのかまでも見積もってくれます。運転状況のスコアをFacebookやTwitterなどのSNSで共有して、安全で燃費の良い運転テクニックを友人達と競う事もできます。
*2015年4月現在、米国、カナダ、メキシコ、欧州の大半で利用が可能ですが、残念ながらまだ日本ではローンチされていません。

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Jamyn Edis氏インタビュー

では、創業者のJamyn Edis氏はいったいどういった経緯でこのDashを開発したか。編集部のカトリーナが直接聞いてみた。

Dashの技術は、ユーザーデータの解析・活用

―Dashは、スマートフォンと自動車をつなげることでブレークスルーを起こしました。
この技術についてもう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

Jamyn Edis氏:Dashは、拡張性のある自動車関連プラットフォームです。
米国では、1996年から自動車にOBD2(On Board Diagnostic) portという「自動車の自己診断機能」が設置されていますが、この機能を経由してスマートフォンと自動車をつなげています。またその為には、Bluetoothを基盤としたアダプターを利用しています。同時に、IFTTT.comというWebのプラットフォームも利用していて、ユーザーが走行データや位置情報等を手軽にWebサービスに送れるようにしています。

1996年以降に米国で作られた車で、Android4.0、iOS8.0以降のスマートフォンでしたら利用が可能です。

参考:自動車の自己診断機能

 

―どのように運転を改善することができるのでしょうか?

Jamyn Edis氏:例えば自動車がエンジン警告灯を表示していたとしても、Dashは関連するトラブルも解釈し、その深刻度や、米国中の修理工の料金まで示す事ができます。数百ものデータポイントを収集し、凝縮して分かりやすいインターフェイスで、運転手が何をすべきか、しないべきかを定量化する事で、改善を重ねていけるのです。

自動車の内部構造の大部分はいまだにブラックボックスです。Dashは、例えば消費燃料や走行履歴や時間、急ブレーキや急発進、エンジントラブル、アイドリングなどスコア化されたデータを利用者に提供し、より正しい判断ができるようにしたいのです。

私たちは独自の視点でデータのアルゴリズムの解析に時間を費やしてきましたが、これから先も利用者からのフィードバックデータが増えることで増々解析の精度を上げていけると考えています。

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―どのようなきっかけでこのサービスを思いついたのでしょうか?

Jamyn Edis氏:私も共同創業者も、車をこすってしまったり、小さな交通事故の経験はありましたし、どうやったら道路を安全に、環境に優しいものに出来るのかという事に関心はありました。

ただそれ以上に、デバイスの接続によるモノのインターネット化(IoT:Internet of Things)、ビッグデータを活用し新しいデジタル産業を創ることに対して、とてもワクワクしていたのです。

特に伝統的でソフトウェアサービスが十分ではない自動車産業という分野は、こういったことを始めるには、完璧な「スイートスポット」に思えました。
 

―ニューヨーク大学での教職や、HBO(米国のケーブルTV局)のエグゼクティブという安定した立場から、ベンチャーの創業というチャレンジに踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?

Jamyn Edis氏:それは、思いついたアイデアがどうしても頭から離れなかったからです。
それにHBOで働いていたとき、私は投資や著作権管理の部門にいて、主にデジタル分野のリーダーを務めていましたし、共同創業者のブライアンは野生動物の移動パターンを追跡するインターネット関連機器のスタートアップ企業を経営していましたからね。

ちょうどこの頃、ニューヨークではスタートアップ企業への熱気が再び高まってきており、人材や資本も集めやすい状況でした。タイミングも良いしアイデアは素晴らしい。私たちは目をつぶって思いっきり「えいっ!」と飛び込んだのです(笑)
 

大事なのは「ニーズ」に敏感であること

―創業前には、どのような準備をされましたか?

Jamyn Edis氏:事業計画作りから製品開発、競合調査までとても分析的に行ないました。300回ものカスタマーインタビューや、膨大な量の調査も行いました。

また同じくらい、マーケットが求めているもの、ニーズに対する「直感」もとても大切にしていました。

そういったリサーチの結果、私たちは、皆が自動車をもっと「スマート」にしたいと考えていると知りました。利便性に加え、燃費を良くしたい、安全性を高めて環境に優しいドライブをしたいと考えていたのです。

そこで我々は、安全性や燃費、ソーシャル化に特化することにしたのです。今の所、これは良い選択であったようで、業界でリーダー的なポジションになれたポイントではないかと考えています。
 

―チャレンジの中で、どのような困難を乗り越えてきましたか?

Jamyn Edis氏:私達はまだ蓄えも限られた、小さな会社です。一方、自動車産業には、大きな予算を持つ大企業がたくさんいます。しかし確かなのは、様々な利害関係を調整しなければならない大企業に比べて、私たちは身軽で素早く動けるし、大切なことにフォーカスできる。今では、彼らが我々をわざわざ尋ねて来るようになりましたし、それはそれで悪い気はしませんね(笑)。

ファイナンスに関しては、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など、伝統的な方法を含めた様々な方法で行なっています。
 

―尊敬するビジネスリーダーはいますか?

Jamyn Edis氏:成功とは相対的なものです。他者との比較に時間を費やすつもりはありませんが、イーロン・マスク氏のような成功者を見習うと良いスタートを切れるかもしれないですね。

革新的なアイデアを持つ人に対して、「クレイジーだ」「馬鹿げている」「不可能だ」と言う人もいるでしょう。でも、そういったアイデアこそ、我々の住む世界を変えたり、形作ったりするものなのです。
 

―最後に、起業家に対してメッセージをお願いします。

Jamyn Edis氏:恐れないこと、準備をすること、一生懸命働くことです。そして「そんなの無理だろう」などと言う人の話なんて聞かないことです。

ただし、人が求めていること、ニーズについてはしっかりと聞くことです。そして、何事にも敏感に反応して、決して諦めないことです。

“Don’t be afraid. Prepare. Work hard. Don’t listen to those who say it can’t be done. But do listen to what people want or need. Be responsive. Never give up.”

原典・Great Minds Behind Dash: Interview with Dash Founder Jamyn Edis
執筆・創業手帳グローバル編集部 カトリーナ記者
日本向け編集:東京本社編集部

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創業手帳グローバル編集部
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