ITで農業が変わる!世界に売る!(株)GRA岩佐氏が 故郷で作る一粒1,000円の「ミガキイチゴ」(後編)
日本の農業はこれからものすごい伸びしろがある
(2017/07/28更新)
「農業を強い産業とすることで地域社会に持続可能な繁栄をもたらす」ことをミッションとする(株)GRAの代表取締役 岩佐大輝氏。後半では、イチゴビジネスの海外への広がり、そして日本の農業のこれからと、起業家に向けて熱いメッセージをお届けします。
1977年、宮城県山元町生まれ。株式会社GRA代表取締役CEO。
大学在学中に起業し、現在日本およびインドで6つの法人のトップを務める。
2011年の東日本大震災後には、大きな被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。先端施設園芸を軸とした「地方の再創造」をライフワークとするようになる。イチゴビジネスに構造変革を起こし、一粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。
著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)がある。
日本のイチゴは美味しさ世界一。でも世界で負けている!?
その理由とは
岩佐:グローバルに見た時には、国々によって嗜好性が全く異なるのでなんとも言えませんが、単純に言うと、世界で一番甘くて、香りの強いイチゴを作れるのは日本です。なので、アジア全体で日本産のイチゴっていうのは圧倒的な人気があります。
ですが、例えば熱帯地域であるシンガポールでのイチゴのシェアは、5割がアメリカ産、あと3割が韓国産です。
つまり「人気では勝っているが、シェアでは負けている」というのが日本の農業の海外での姿です。
これには製造原価が高すぎて価格競争力が無い、輸送性が悪い、など理由はたくさんあります。
一方でアメリカだと対外向けのブランドは統一されていて、それがオールUSAのブランドで輸出しています。韓国も同じです。なので、日本産品のシェアを上げるっていうことをやっていかないといけません。
あと最近言われているのは、国際認証、国際基準で作ることに、日本は出遅れている、という点です。
実は、日本の農作物は海外で生産するための基準をクリアしつつあります。ですが、日本は国内のマーケットが大きいっていうことでちょっと変な自信があったり、一農業経営体の規模が小さいので国際認証を取る固定費が集まらない、といった理由があって進んでないのが海外で戦うための大きな欠点ですね。
岩佐:インドでは実際農場を持って、イチゴ農業生産法人をやっています。同時に、国内と同じように技術系のフランチャイズ事業を立ち上げて、ハイデラバードっていうところでイチゴの生産技術の横展開事業をスタートしています。
どうせ失敗するなら思いっきりやれ
岩佐:「農業は、人々の生活や命を支える産業です。なので、どんどんチャレンジしてください」というのがメッセージですが、一方で「いつでも安い価格で手に入れたい」という消費者の願望が非常に強い業界でもあります。普通のビジネスとちょっと違う部分もあるので、そのあたりが一筋縄ではいきません。
ですが、これまでの日本の農業の場合は、効率化、規模化、仕組み化がほとんどされてこなかったので、伸びしろがものすごくあります。我々も数年やっただけで単価が何倍になったり、生産性が1.5倍になったりするような領域ですから、どんどんプレイヤーが入ってきてもらって、改善することで大きなチャンスを掴むことができると思います。
何より、農業者の平均年齢は67歳です。我々が食べているごはんを作ったのは67歳だと思うと結構びっくりするじゃないですか。実際にはもっと年老いていく傾向がありますから、若い人に入っていただいて、もっと盛り上げていってほしいと思います。
岩佐:老化もそうですし、もうひとつ問題があります。
日本は海に囲まれているので、輸出競争力のある商品だけを作っても、実際に食べるものは日本国内で作っていなければ、飛行機や船で輸入することになります。そうすると海を越えて輸入するのはコストも高くなって現実的ではないんですね。なので、日本国内で食べる生野菜などは、ある程度の生産量を確保しておかないと、おいしいものが食べられなくなります。そこが課題ですね。
岩佐:こう言うとネガティブに聞こえるかもしれませんが、だいたい10年生存率が1割くらいだそうです。どうせ失敗するんですよ、みんな。なので、ほとんど失敗すると思って、思いっきり挑戦をするっていうことが大事だと思います。
岩佐:そうですね。失敗は早ければ早いほどいいから失敗しまくったほうが良いです。数打たないと成功しませんし。よく「PDCAじゃなくてPDPDPDCAっていうサイクルにしなさい。」と言っていますが、PD(Plan Do)の球数を多くするんだっていうことです。
これだけ情報のスピードと量が多くなると、昨日のビジネスの勝ちパターンが今日には負けパターンになることがよくあります。特にインターネットとかIT業界では、球数多く打たないと勝つのはもう不可能なんじゃないかと個人的には思っています。ただ球数を多くするっていうことは、当然失敗する数も増えるので、失敗をある程度許容しつつ、挑戦の数を多くしたほうが良いと思います。
(取材協力:農業生産法人 株式会社GRA 岩佐 大輝)
(編集:創業手帳編集部)