ガイアックス上田祐司 氏が語る、人と人がリアルに繋がる「シェアリングエコノミー」の可能性(インタビュー前編)

創業手帳
※このインタビュー内容は2017年08月に行われた取材時点のものです。

起業は世の中のニーズや悩みごとを解決するためにするもの

(2017/08/08更新)

「学生の頃から、人に喜んでもらうことに生きがいを見出していた」という、株式会社ガイアックス代表執行役社長 上田祐司氏。持ち前のプログラミング技術を活かして「人と人をつなげる」をミッションに、今でいうソーシャルメディアの分野で起業しました。
前後編にわたってお送りする今回のインタビュー。前編は、企業に至る経緯や、急成長しているシェアリングエコノミーの市場の展望についてお話を伺いました。

上田 祐司(うえだ ゆうじ)
1997年の大学卒業後に起業を志し、ベンチャー支援を事業内容とする会社に入社。一年半後、同社を退社。1999年、24歳で株式会社ガイアックスを設立する。30歳で名証セントレックス市場へ上場。
AppBank株式会社、ピクスタ株式会社、株式会社東京個別指導学院の社外取締役、また、一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事、一般社団法人日本ブロックチェーン協会理事を務める。同志社大学経済学部卒。

「人と人をつなげる」をミッションに起業

ーまず、起業された動機はどのようなものだったのでしょうか?

上田:もともと学生時代からいろいろなアルバイトや、商売ごっこみたいなことをしていて、自分でアイデアを出して、お客さんに喜んでもらうことがすごく楽しかったんです。そのような生活を続けていって、大学卒業後に、独立する志がある人しか採用しないというベンチャーリンクに入って、その中で同期の山根麻貴と出会い、2人で起業の準備を始めました。

山根は大学1年からシリコンバレーでインターンをやったような子で、僕は昔からプログラミングをしていました。「インターネットの中で人と人をつなげる」という革新的なことが生まれつつある時代でしたし、僕らもそういう方向でサービスを展開しようと、今でいうソーシャルメディアの分野で起業しました。

ー当時、Facebookのようなソーシャルメディアのツールは、あまり普及していませんでした。成功するイメージはあったんですか?

上田:いずれ、ネット上で人と人がコミュニケーションをする時代になると見ていました。当時はECサイトやニュースサイト、旅行に関する情報サイトなどが主たる時代で、コミュニケーション系のサイトのページビューは全体の1~2割だったと思います。でも、これがやがては8~9割になると思っていました。

国内でガイアックスドットコムというサービスをやっていて、当時は結構ページビューが多く、国内10位には入っていました。

ーその後、事業を拡大して上場に至りますが、会社が飛躍したきっかけは何ですか?

上田業態をBtoC(個人顧客相手のビジネス)からBtoB(法人顧客相手のビジネス)に転換したことです。

当時はソーシャルメディアという単語すらなく、オンラインコミュニティと呼んでいました。これが企業経営にいかにプラスなのかを説明するのが難しく、そこにコストをかけられる体力のある企業は少なかったんです。ただ、その数少ない大手企業とお付き合いできたのが大きかったです。

ーそういう大きい所を、どうやってお客様として取っていったのですか?

上田:まず一つは、山根麻貴の営業が強く、突破力が高かったっていう点です。もう一つはソーシャルメディアに関しては、大手の※SIer(エスアイアー)も全然理解していなかったという点です。

我々が強い分野で構成していったので、当然強いポジションにいたということですね。
当時はうちほど早くて大きな規模で展開しているところはいなかったです。

※SIer(エスアイアー):社会に必要不可欠なあらゆる「しくみ」を、ITを使って構築する情報サービス企業のこと。

センスある若者を引きつけるソーシャルメディアの未来

ー起業した時に大変だったことがあれば教えてください。

上田:常に楽しすぎて、別にそこまで大変だと思ったことはありません。
創業して3~4年はずっと会社に泊まり込んでいましたし、食べるものも食べず、みんながやせ衰えてくような環境で働いていました。次から次へと難問はくるものの、振り返ると楽しい思い出しかないですね。メンバーも若手が多くて、チームのコアメンバーの半分ぐらいは学生でしたし、いっても社会人2~3年目以下で、血気盛んな人ばかりでした。

ーそういったメンバーが集まるのは、社長のビジョンが良かったからでしょうか。

上田事業のビジョンとかミッションを大切にしていたというのもありますが、ソーシャルメディアというもの自体の可能性が大きかったんだと思います。

未来に対して可能性あふれる分野ですから、センスがいいメンバーが多く集まってくれました。採用には力を入れていましたし、ベテランで仕事ができる人もたくさん入れていたんですが、あまりにも新しいジャンルすぎたので、ベテランでも学生でもパフォーマンスはさほど変わりませんでした。そういう意味で優秀な学生を結構採用しましたね。

ー組織のトップとして、上田社長が大切にしているものは何でしょうか?

上田僕は会社っていうのは地球の中におけるプロジェクトだというふうに考えていて、世の中のニーズとか悩みごとだとか、もしくはそういった生活スタイルを一変できるようなものを作り出して定着させるために存在するのが企業だと思っています。

そういったミッションをしっかり掲げて、それに最適な形で組織とかまわりとの関係性を作っていくのが大切だろうと思っています。

人と人がリアルにつながる「シェアリングエコノミー」

ーソーシャルの事業の他に、いろいろな企業に投資をされるなど、様々な仕掛けをしているように見えます。そのあたりの意図と、今後どういった方向に伸ばしていこうとされているのか、お聞かせください。

上田:これまで、ソーシャルメディアでは、オンライン上で情報を交換したりコミュニケーションしたりシェアする、いわば情報のやりとりが中心でした。ところがスマホが普及してきたことで、情報だけでなく、実際に人と人が会ったり、助け合ったり、シェアしたりと、リアルに接触することが起きています。

そのことは「シェアリングエコノミー」と呼ばれていますが、我々からすると、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミーは一体で、人と人とがつながっていく中での、より進化した形なのだと思っています。

ただ、事業として見た場合、みんなが無料で情報を書き込めて、無料で閲覧できるネットの情報だけでは、収益を生むビジネスモデルは組みづらいんです。
一方で、例えば実際にものを貸し借りした時には、2,000円とか3,000円とかお金を払うわけで、情報だけよりも「人と人がリアルに接触するところ」に落とし込んだほうが、ビジネスモデルを組みやすいんです。

世界でもユニコーン企業(未上場の有望ベンチャー企業のこと)を時価総額の大きい順に並べると、おそらく半分ぐらいがシェアリングエコノミー関係だと思います。我々も、ここは急成長する分野だと思っていて、シェアリングエコノミーの企業には、BtoCもBtoBも多大な投資を行っています。

ーシェアリングエコノミーの世界では、「この人、本当に信用できるのかな?」ということで、安全性を確保するのが難しいという問題点がありそうですね。

上田:そうですね。ですが、そのなかでも「シェアリングエコノミーのサービスは、自分と変わらないような人たちがやっている」という認識がどんどん広がっています。

情報量が増えて、多くのレビューが入っていくことが、サービスの信頼性と安全性を高めることにつながっています。ソーシャルメディアの世界では、一企業が発信する情報よりも、食べログやクックパッドなどのような口コミのほうが信用されます。そういった感覚が普及している状況です。

もう一つ言えるのは、すべてのやり取りが記録されるため、提供されたサービスのほぼすべてが可視化されるということです。

そのため、サービスレベルでは格段にレベルアップしていくわけですから、消費者として期待値通りのサービスを受けられる可能性が高いと思います。

ー自社で展開しているサービスで、特に注力してやっているのはどの領域でしょうか。

上田:1つ目はライドシェア、車の乗合いですね。2つ目は、ミールシェア、食べ物のシェアです。理想的には人の家でごはんを食べるサービスを提供していきたいんですが、法律的には禁止されています。自宅でレストランを開くには、許認可がないと開けないので、料理教室というスタイルでやっています。一緒に料理を習って、一緒に作って、それを食べるというスタイルです。

3つ目が体験とかエンターテイメントのシェアです。これまで、消費者が何かを楽しもうと思ったときは、企業からサービスを受けていたんですね。例えば、パラグライダーですとか、工場見学なんかも、企業がサービスとして提供していました。それを個人でも提供できるようにするサービスを運営しています。例えば、かまぼこ屋を見学できるとか、農家さんによる農業体験とか、消費者に対して個人が体験を提供するという体験シェアリングをやっています。

隙間を活かす軒先ビジネス
軒先株式会社 西浦明子氏インタビュー

(取材協力:株式会社ガイアックス/上田 祐司
(編集:創業手帳編集部)

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