“仮想通貨業界のルール”を創った起業家 bitFlyer代表加納氏インタビュー

創業手帳

「仮想通貨元年」となる2017年。日本はどう変わる?

(2017/02/16更新)

ビットコインとは、インターネット上で取引ができる仮想通貨のこと。政府や中央銀行を介さず直接的に取引ができるため、手数料が安く、国際間の取引がスムーズに行えるという特徴があり、世界中で注目されています。ただ、2014年に世界最大であった仮想通貨取引所「マウント・ゴックス社」が破綻し、大量のビットコインや預り金が消失する事件が発生。仮想通貨の信頼性を疑問視する声もありました。

しかし、日本では2017年に法制度も整い、金融庁の事業登録のもと、安心・安全な取引ができるようになります。今後は安全な決済手段として、一般的な認知度も広まっていくと期待されています。

今回は、日本最大のビットコイン・ブロックチェーン企業、bitFlyerの代表取締役・加納裕三さんにお話を伺いました。第一回は、規制の厳しい金融業界で起業した背景や、ビットコインの将来性、事業としての展望について教えていただきます。

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加納 裕三(かのう ゆうぞう)
1976 年生まれ。2001年に東京大学大学院工学系研究科修了。ゴールドマン・サックス証券に入社し、エンジニアとして自社決済システムの開発に従事。その後、デリバティブ・転換社債トレーダーとして活躍。2016年には、欧州中央銀行総裁のマリオ・ドラギ氏等と並んで、国際銀行間通信協会(SWIFT)が開催する国際会議サイボスにおいて、フィナンシャルイノベーター(金融イノベーター)の一人として選出された。2017年2月14日には、三井住友銀行グループ、みずほフィナンシャルグループ、第一生命保険株式会社を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施。資本金は約41億円に上る。

ビットコインの世界が変わると確信して起業

ー金融系のエンジニアとして開発をされてきた中で、ビットコインの仕事を始めたきっかけは何ですか?

加納:もともと、フィンテックの分野で起業したいという気持ちがありました。金融のビジネスサイド(フィン)も、金融のエンジニア(テック)も経験していたので、まさにピッタリの分野だと思っていたんです。2010年にビットコインを知って2014年に起業したのですが、そのきっかけとなったのは元FRB議長のベン・バーナンキさんが2013年にビットコインの容認発言をして価格が暴騰したことです。
それを見て、「世界が変わるな」と思って、起業を決意しました。

ーどこかの企業に所属してビットコインの事業に携わる、という選択肢もあったと思うのですが、あえてそこで「起業」を選んだのはなぜですか?

加納:当時、そういった会社がマウント・ゴックス社しかなかったというのもありますね。あとは、「起業したい」という気持ちが前提にあったからでしょうか。サラリーマンを続けたいという訳ではなかったんです。

ですから、15年来の知り合いである小宮山と事業を立ち上げました。

ーアイディアは、どちらが考えられていたんですか?

加納:ビジネスアイデアは全て私が考えていました。「こういうビジネスモデルでやりたい。これは絶対大きくなる。」と説明して。当初は2人きりでしたから、最初は私も開発に関わり、プログラムを書いていました。

ひと通りシステムとビジネス基盤ができたところで、社長業にシフトしたという感じです。

「Fintech」は、法をかいくぐってはダメな業界

ーbitFlyerは名立たる企業(三菱UFJキャピタル、SBI Investment、リクルート、GMO、電通など)から出資を受けていますよね。起業当初から、資金集めはスムーズに進んだのですか?

加納:出資に関しては、当初は厳しい思いもしました。

銀行ローンだったら、個人保証をつけて1千万円程度であれば不可能ではないと思うのですが、株だと個人投資家かベンチャーキャピタルに頼るしかなくて。ベンチャーキャピタルから出資を受けられる確率は圧倒的に低いので、そういった意味では普通のベンチャーと同じように苦労したと思います。

ーそんな中で、大企業の出資を受けられた背景には、何があると思いますか。

加納:当初は、私と小宮山のゴールドマンでのキャリアと、ビジネスプランの実現可能性を評価してもらったと思います。
シリーズを重ねていくと、ビジネス自体の実績が見られますから、bitFlyerとしての競合優位性・収益性などを説明できたことで、着実に資金調達の目標を達成できたのだと思います。

ーたしかに、30代後半での起業となると、ある程度の実績をPRできる方がいいですよね。特にブロックチェーン(※)のbitFlyerの場合には、アイディアだけでなく専門性が求められますから。

※ブロックチェーンとは:ビットコインの根幹をなす技術。取引データを特定の管理者に依存せず、データや承認を分散管理し、且つ過去のデータに依存した承認体系をとることで改ざんされにくいデータ構造を持つ技術。ブロックチェーンの種類によっては、すべての利用者がすべての全取引データを確認できる。取引データは、一定数ごとに「ブロック」としてネット上の台帳に保管され、このブロックを連続して記録していく形態から「ブロックチェーン」と呼ばれている。

加納:そうですね。フィンテック分野はアイディアだけでの資金調達は難しいと思います。特に、フィンテックは経験者も多く、経営者の年齢層も高い分野です。マネーフォワードの辻さん、お金のデザインの北澤さん、ウェルスナビの柴山さんも、1975~1977年生まれで76世代と呼ばれています。つまり、15年以上の経験を積んだ人たちが起業していることになります。

一般的にベンチャーは学生で起業されることも多々あると思います。残された時間的余裕もありますし、海外のモデルを参考にすることもできて、ある意味「何度か失敗できる。」という側面もあります。でも、30台後半で起業した人には残された時間が限られていて、失敗を繰り返せない。信用を失わないためにも諦めずに全力投入するしかないわけです。

ーベンチャーの中でも、金融系サービスは参入のハードルが高いと思います。

加納:そうですね。金融に関する法律は当然として、当局や金融機関との関係や、金融システムについての専門知識が求められます。また、セキュリティやリスク管理の点に関しても、普通のネットベンチャーをやるより、遥かにハードルが高いと思います。

法や規制をかいくぐる人は、逆にダメな分野ですね。

ーそうですよね。規制とうまく付き合いながら…と言うのは極めて難しいところだと思います。

加納:やっぱり、金融出身者でない人はルール違反をしても良いと思っている人が多い気がします。勝手な解釈でルール違反をして、良くない結果をもたらしているように思います。多くのアイディアが過去に誰かが思いついていて否定されているアイディアだったりします。金融は規制産業の中でも一番厳しい分野なので、当局や弁護士にしっかり確認をしたうえで新規サービスについての経営判断をすることが大事だと考えています。

多くの人が疑問を感じないサービスでも、法律の専門家から違法である、リスクが大きいと意見をもらうことが多々あります。私も何度も新規サービスのアイディアを止められてきました。

ーなるほど。軽い気持ちで始められる分野ではありませんね。

加納:アメリカは規制違反に対してより厳しい態度を示しており、我々の分野でも逮捕者が何人もでています。

私は日本ブロックチェーン協会を通じて、事業者の意見をまとめ仮想通貨に関する自主規制ルールを策定しました。また法律、技術、税務、会計そして国際的な課題を整理し、政府、各種団体、当局と議論、協力してきました。そして改正資金決済法(仮想通貨法)が国会で可決され、法律が今春施行されようとしています。

ルールを破るのではなく、ルールをみんなで話し合って変えていくという姿勢が大切だと思います。

ーちゃんとルールを守っている会社にとっては、好ましい規制であって欲しいですし、古い業界の中で現状に即した新しい考え方を伝えていくのも大切ということですね。

近い将来、ビットコインは支払手段の1つになる

ービットコインは、ずいぶん認知度が高まってきたと思います。ビットコインが一般化すると、お金の価値が根本的に揺らぐ事態にもなるのではと思うのですが、今後はどうなっていくとお考えですか?

加納:難しいですね。日本においては、一部の方が言っている法定通貨がなくなるような社会はそう簡単には来ないと思います。ビットコイン自体は、電子マネーやクレジットカードのような、お金を代替するような支払手段の1つになるんじゃないでしょうか。

クレジットカードは店舗が手数料を負担しており、また売上を手に入れるまで非常に時間がかかります。手数料も安く翌日入金されて国際送金も簡単というのは、ビットコインの他の支払手段に対する大きな優位性になると思います。

ー硬貨や紙幣も、カードなどもそれぞれの役割の中で残るということですね。ビットコインの発行の規模は約1.4兆円ということですが、今後さらに伸びていきそうですね。

新興国では、自国の通貨がビットコインに置き換わるかもしれない

ー今の世の中は、中央集権・一元管理がベースにありますよね。でも、ブロックチェーンの仕組みが普及していく流れの中では、「分散されている方が安全性や信頼性が高い」という状況にもなり得るでしょうか。

加納:ブロックチェーンの文脈での「分散」には、①データを分散して保持する ②中央集権ではなく、民主的に決める という2つの意味があります。

①は単にデータの保持技術の話ですが、②は意思決定に関する根源的な問題。古代から繰り返されてきた壮大な話になるのですが、お金という分野に限って言うと、大きく考え方は変わってくるかもしれません。

例えば新興国で統治機構や中央銀行がない、もしくは機能不全に陥っているという状況であれば、自国の通貨よりもビットコインのほうが信頼され、選ばれる可能性がありますね。

ー一部の新興国では、中央政府があまりにも信頼できないという点で、インフレになってしまう…という問題もありますよね。どこか、注目している国はありますか?

加納:やっぱり、インド、ベネズエラ、アフリカの一部の国は騒がれていますよね。本当に、一部の国の法定通貨がビットコインに置き換わるって考えている人もいます。

ーなるほど。あとは、それ以外の国でも、各国にプレイヤーがいるということですね。世界的に見ると、どうですか?

加納:やはり、中国が強いですね。中国では自国通貨が不安定なので、ビットコイン熱が高い傾向があります。実際のデータが分かりづらいものの、中国に多くのビットコイン取引が集中していると言われています。

ー投資が好き、という背景もあるかもしれませんね。

2017年、日本は「仮想通貨元年」に

ー中国やアメリカと比べて、日本におけるビットコインの普及度合いはいかがですか。

加納:日本の普及は外国に比べて遅れていたのですが、最近はちょっとしたブームになっているように感じます。逆に、中国はビットコインに規制が入り失速しているんです。

私たちは2017年を「仮想通貨元年。」と呼んでいます。関連法律が今春施行されますし、かなり盛り上がっています。今年は日本の仮想通貨の盛り上がりについてかなり期待しています。

ー法的な部分も整備されて、市場環境も良くなってくるだろうということですね。ちなみに、今後は上場を視野にいれていますか?

加納:一般的にスタートアップは資金調達を行った以上、上場かM&Aを目指すのものだと思います。成長を期待されて出資を受けているので、株主はリターンを期待しており、それを無視した経営は難しいと思います。株主に限らずお客様を含めた全てのステークホルダーに対して結果をだせるよう努力していきます。


ビットコイン取引所の運営などの「bitFlyer」が30億円調達!

(取材協力:株式会社bitFlyer/加納 裕三)
(編集:創業手帳編集部)

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