リクルートから女性起業家へ。美人マーケター猪熊氏が目指す”リアルな女性たちの代弁者”としての会社作り

創業手帳

株式会社OMOYA 猪熊真理子氏インタビュー

2007年にリクルートに入社後、「ゼクシィ」や「Hot Pepper Beauty」等のサービスに携わり、2014年に起業したという猪熊さん。起業の背景には、どんな想いがあったのでしょうか。

今回は、創業の経緯、起業時に苦労したこと、女性起業家であることのメリット・デメリットなどについて取材しました。

株式会社OMOYA 猪熊真理子さん

猪熊 真理子(いのくま まりこ)
株式会社OMOYA 代表取締役。東京女子大学文理学部心理学科卒業。認定心理士。
2007年(株)リクルートに入社時には、「ゼクシィ」や「Hot Pepper Beauty」などの事業で事業戦略、ブランドプロモーション戦略、マーケティングなどに携わる。2014年2月にリクルートを退職し、3月に株式会社OMOYAを設立。株式会社OMOYAでは、主に女性消費を得意とした、経営・ブランドコンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティーマネージメント改革、企業内の女性活躍推進などを行う。
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ー簡単なご経歴と創業の経緯を教えてください。

現在は、株式会社OMOYA 代表取締役と、働き方を選択できる社会を目指して活動している(一社)at Will Workの理事、(一社)全日本伝統文化後継者育成支援協会の役員と、大きくは3つの法人を経営しています。

東京女子大学文理学部心理学科在学中に「女性の自信の形成」に興味を持ち、女性支援の活動を始めました。その後に認定心理士の資格も取得しました。

新卒では、2007年(株)リクルートに入社しました。「ゼクシィ」や「Hot Pepper Beauty」などの事業で事業戦略、ブランドプロモーション戦略、マーケティングなどに携わり、女性消費の経営戦略やマーケティングの経験を積んできました。2014年2月にリクルートを退職し、同年3月に株式会社OMOYAを設立しました。

―OMOYAの事業内容やコンセプトを教えてください。

OMOYAのコンセプトは「あなたの想いが道になる」です。
法人のお客様も、個人のお客様も、それぞれが叶えたい想い(理念や目標)を叶えるためのお手伝いをしていくのが私たちの役割です。
 
またOMOYA Inc.の理念としては、

それぞれが多様な想いや価値観を持ちながら、
自らの原点を理解し、想いに対して誠実に歩める世の中へ
。”

女性の力を日本の中心に。
女性たちの可能性を最大化できる社会へ
。”

という2つを持っています。

具体的な事業内容としては、主に女性消費を得意とした、経営・ブランドコンサルティングや企画マーケティング、組織のダイバーシティーマネージメント改革、企業内の女性活躍推進などを行っています。

経営コンサルティング・ブランドコンサルティング事業では、事業や商品・サービスに込められた想いを、消費者や生活者の皆様に分かりやすく伝え、消費者心理を理解し、事業をさらに成長させていくお手伝いをさせて頂きます。

企画・マーケティング事業では、最近、「ウーマノミクスマーケティング」という言葉を新しく提唱しています。日本は古くから「女性がお財布を握っている」とよく言われますが、消費者としての女性を分析・理解し、それを商品やサービスに反映させていくマーケティング手法です

また、社会人女性の学びの場として「女子未来大学」という教育事業も運営しています。2年間で10代〜70代まで約900名の方にご参加頂いているのですが、参加者の多くは20〜30代の女性たちで、キャリア・働くことやライフイベント(結婚・妊娠・出産・引っ越しなど)を経験しやすい世代の女性たちが、主体的に自らの意志で人生を選択できるような、キャリアの講座や女性の知性や感性を高めるための様々な講座を展開しています。

未来大学ポスター

ー創業時に苦労したことは何ですか?

リクルートを辞めて、本格的に起業をしようと決めたのは退職する1年くらい前なのですが、本当に会社を辞める2月くらいまで、会社名はおろか、具体的な事業内容も決まっていませんでした。

その頃、リクルートという看板を外しても自分には何かできるのか、「自分は本当に社会の役に立てる人間なのか?」ということに疑問が湧いてきてしまいました。大きな組織を急に離れる時に起こりがちな“アイデンティティ・ロス”に自分もなってしまったんですね。

そこで、自分が人生をかけてやりたいこと(使命)、興味・関心のあるテーマ、それをビジネスに転換するとしたらどんなやり方があるかなどを自分で分析するワークをして、もう一度自分の作る会社や事業が社会の中でどんな役割を果たしていく存在であるべきか、向かい合ったんです。そして事業内容より先にまず、理念を作りました。

ー女性起業家であることのメリットやデメリットはありますか?

弊社は女性向け消費を中心とした企画・マーケティングや、女性支援の事業を行っているので、デメリットはほとんどなくメリットの方が大きいです。

私たちの仕事の中でも企画・マーケティングの事業は、まさにビジネスサイドと消費者の「通訳」になることが重要です。経営者や創業者の想いや、 商品・ブランド・サービス・その街に込められた想いを、消費者や世の中に伝わるように伝える時にも、マーケットにある潜在的なニーズを探りだし、想いが生活者の幸せに繋がるような企画や事業へと共に成長させていく時にも、私たちはいつでも「リアルな女性たちの代弁者でありたい」と思っています。

女性としての感性や一生活者としての視点。それを基軸に女性たちの幸せに繋がる事業へと成長させていく。その時にも女性としての「共感力」を活かせるメリットは大きいと思っています。

七宝文様ジュエリー(猪熊さんが商品プロデュースを行った、七宝文様ジュエリー)

デメリットはそんなにあるとは思っていないのですが、私個人は人生の中で結婚も妊娠・出産も経験したいと思っているので、必ずしも今の働き方で働き続けられるとは限りません。そういう意味で、経営者として仕事が属人的になってしまいすぎないように、できるだけ体系化したり仕組み化することは意識しています。

―世界的に見て日本は女性活躍が進んでいません。 この現状に対して、どのような考えをお持ちですか?また、 どのようにしたら女性が活躍できる環境になると思いますか?

世界経済フォーラム(WEF)が発表した2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」では、残念ながら、日本の順位が昨年よりも10位低下し111位という過去最低の順位になってしまいました。特にこのジェンダー・ギャップ指数の観点で言うと、その要因の一つは「女性の所得水準の低さ」と言われています

OMOYA Inc.では女性たちが活躍していくためには、下記3つを3本柱で向上させていくことが重要と考えています。

女性たちが活躍するために重要なこと
    1 女性たちの意識
    2 環境(社会制度や働く環境、子育ての環境、男性たちの意識、地域コミュニティなど)
    3 実力(女性たちの可能性を社会に還元していくため必要なスキルや人間力など)

このどれか1つが欠けても、女性が活躍していくことは難しいと思いますし、3つが相乗的に、しかももっと加速したスピードでこの向上が進んでいくことが大切だと思っています。

また弊社では、昨年まで「赤ちゃんと一緒に働く」という取り組みを実施していました。小さい子どものいる、母親である女性たちが働きやすい環境作りが求められている中、子どもを預けて働く働き方だけでなく、企業の中で「赤ちゃんと一緒に働く」労働環境や選択肢を実現していくために始めた新しい取り組みです。
 
「赤ちゃんを抱っこしながら働ける会社」をテーマに、まずは自社から赤ちゃんと一緒に働く環境にトライし、ベストプラクティスを創っていくことで、自社だけではなく、赤ちゃんと一緒に働ける企業を増やし、社会の仕組みとして装着していく取り組みを始めていました。
 
具体的な取り組みとしては、ママスタッフのリアルな環境での労働時間は週2回と設定し、サテライトワークの業務を切り出すことによって拘束時間を削減し、子どもと過ごす時間と働く時間のバランスを生み出していくことに挑戦。
社内MTGでは、私もスタッフもインターンも皆が代わる代わるに抱っこしたり、遊んだりしながら、赤ちゃんがオフィスにいる自然な環境で仕事を進めていきます

結果的には1年間の弊社での取り組みを経て、ママである女性スタッフは自分の会社を起業。子どもを産んだ後の女性が、社会参画していく時に大切なことは、「誰かや社会の役に立てる」という自分の“自信”を取り戻していくことなのだと、感じました。
     
小さな子どもを抱えている子育て中の女性の多くは、子どもを預けて働くか、仕事を完全に休む、もしくは専業主婦になる選択肢しかない状況にあり、子育てを重視しながらも、バランスよく働ける労働環境が少ないことに課題を感じている女性が多くいます。
 
この取り組みによって、社会進出できる子育て中の女性の数を増やすことや、副次的に子どもがいない世代のインターンやスタッフたちがリアルな育児を体感でき、子育てと仕事の両立が当たり前となっていく次世代の人たちにも新たな気づきを与えていくのを感じました。さらに子どもは多様な大人に触れることで、社会性の高い子どもに育つと考えています。

「赤ちゃんと一緒に働く」取り組み(OMOYA Inc.で行っていた「赤ちゃんと一緒に働く」取り組み)
ー女性として、 仕事とプライベートを両立させるためにどのような工夫をしていますか?

経営者という職業はある意味、寝ている時間以外ずっと仕事していたり、仕事のことを考えているような状況なので、両立というよりも「相乗効果」を出していくことを考えています。良い意味での公私混同ですね(笑)

プライベートで出逢った人や経験したことが仕事に活きてくることもありますし、仕事を通して人間的に成長していくことが大切な人たちを大切にすることに繋がることもあります。ですので、その両方の相乗効果を出せたらいいなと思っています。

あとは、仕事に切れ目がなくなってしまう分、「休息」や「充電すること」は意識して時間をとるようにしています。自然が溢れる場所や神社仏閣に小旅行に行ったり、美術館やギャラリーなどアートに触れたり、海外に行ったりすることもからだの休息や心を充電するためには大切なことだと思っています。

ー今後のビジョンや展望を教えてください。

すべての女性たちが、自分自身の可能性を限定してしまうのではなく、社会や世界の中で生き生きとその人らしい素晴らしさを表現できるような未来を創っていくことです。

そんな未来が実現できるためであれば、手法にはそんなにこだわりは強くなく、ある時は事業を通して、ある時は講演で、ある時は本を通してなどいろんな側面でアプローチできればと思っています。

また、私がいなくても、女性が豊かに自由に生きることや、社会にプラスの力を与え続けられるような仕組みを残して死にたいと思っています。女子未来大学や自事業などの取り組みも、自分がいなくては回らない仕組みではなく、自分がいなくても回る仕組みにして受け継いでいけたらいいなと考えています

ー新しい本を出されますが、どんな内容でしょう?

私は女性支援の活動を続けてきて約10年が立ちます。
女性たちの役に立ちたいと思い続けてきた想いの中に、  

「すべての人に役割があり、
 どんな役割にも優劣はなく、必要な存在で、
 すべてが唯一無二で、美しい。」

   
という信念が根底にあります。
  
女性が自分らしく生きていこうと思う時、   
「“私らしさ”ってなんだろう。そんなもの本当にあるのかな?」
「“私らしさ”を探せば探すほどわからなくなる気がしてモヤモヤする……」 
と悩むことや、人生の中で迷う時期があるかもしれません。
ですが、「私らしさ」のヒントはこの“役割”を見つける旅の中にあります
  
私にとって初の著書12月7日発売の【「私らしさ」のつくりかた】は、私の本というよりも、私が出逢ってきた女性たちの心の声、また同じような悩みを抱える女性たちに、教えてもらったことや気付かせてもらったことを書いた本でもあります。
  
出逢ってきた女性たちが、悩んでいた思いや流してきた涙が報われて欲しい。
一人ひとりが「らしく」生きられる背中を押したい。
だから、私の本ではなく、“みんなの本”です。
  
もともとは自信がなく、悩みつづけていた私が、心からやりたいことを見つけ、なりたい「私」を見つけていくまで。そして、好きなことを仕事に変えて、想いに共感してくれる仲間(=ファン)をつくる方法などを惜しみなく書きました。

私らしさをつくるのに欠かせない、大切な人たちとのエッセイ的なストーリーも、好きなことを仕事にしていくためのマーケティング的なノウハウもその両方を凝縮して、読んで下さるみなさんが「自分らしく好きなことで自分を表現しながら生きていく」ヒントを少しでも見つけて頂ければと思っております

猪熊さん「『私らしさ』のつくりかた」

「私らしさ」のつくりかた(猪熊真理子著) 12月7日発売
amazonで予約受付中

ーこれから創業する女性起業家に対して、 メッセージをお願いします。

「社会にとって本当に必要な価値は何か」を考える力は女性が本来、特性として持つ力だと考えています。女性であるということは、本質的な価値に気付ける力を、強みとして持っているということ

一消費者としての感性や共感力を、多様な女性たちを理解していくことで、マーケットや経済に還元していけるというのは、とてもワクワクすることだと日々感じています。
世の中に、自身の強みやらしさを活かして活躍できる女性の起業家がますます増えていくと嬉しいなと思っています。応援しています!

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