【第二回】福岡市 グローバル創業特区2年目の挑戦

創業手帳
※このインタビュー内容は2015年07月に行われた取材時点のものです。

福岡市長 高島宗一郎氏インタビュー

(2015/07/14更新)

「国家戦略特別区」とは、経済活性化のために、地域限定で規制や税制を改革した特別区域のことです。2014年5月に「グローバル創業・雇用創出特区」に指定された福岡市。特区指定2年目を迎え、今後どのような施策を行っていくのか、福岡市の未来像をどのように描いているのか、改革の第一人者である市長の高島宗一郎氏に、お話を伺いました。

前回の記事はこちら>>【第一回】グローバル創業特区・福岡市が発信する次世代の創業支援
高島市長

高島宗一郎(たかしま・そういちろう)
1997年KBC九州朝日放送に入社。福岡の朝の顔としてワイドショーや環境番組のキャスターを務める。2010年12月に福岡市長就任。創業支援に注力し,2014年3月には国家戦略特区を獲得。規制改革等による新しい価値を生み出す環境づくりに精力的に取り組む。

政治に興味を持つことが規制緩和につながる

ースタートアップ支援2年目として、起業家の声や支援の手ごたえを感じていらっしゃると思います。

高島:福岡は今、非常に注目をいただいてきております。4月には、「SLUSH ASIA」というフィンランドの世界最大級のベンチャーイベントで講演させていただきました。ベンチャー企業と政治のコラボレーションによって、新しい価値が生まれていくということをお伝えしたかったからです。

このときうれしかったのは、福岡の存在感があったことです。会場には福岡大学や九州大学の皆さんをはじめ、福岡の人たちがたくさん来ていました。このイベント自体を取材に来た東京のメディアの方も、「福岡の方からこのイベントを聞きました」とおっしゃっていましたしね。

「俺も日本を変えてやる、世界を変えてやる」という思いを持つ若い人はたくさんいます。しかし、そういった皆さんのこれまでになかったようなアイデア、世の中を変えるアイデアは、実は規制があってできないということが多いんですね。だから、皆さんに政治に興味を持ってもらって、皆さんがどんな社会にしていきたいか、自分たちのビジョンを本当に応援してくれるような政治家を応援してほしいですね。これは大事なことだと思います。

ー起業家こそ、政治に興味を持ってほしいということですね。

ベンチャー企業は政治と一番遠いところにいて、政治は特許を持った既存企業の人たちがやっているようなイメージでしょう?イノベーション力がなくなると、市場を独占するために政治を使って、自分たちが独占状態にあり続けるように努力する。それはすべて知恵なんですよ。

しかし、イノベーション力がある皆さんこそ、そうやって新しい社会の在り方というものをどんどん提案していく、作っていくというのが大事です。

既存企業とのコラボレーションがイノベーションを生む

高島市長

ー2年目として、これからの福岡市の取り組みをいくつかお聞かせください。

高島:今年度は、特区関連事業として40事業を行ないます。今取り組んでいるのは電波法の規制緩和です。これからIoT市場が大きくなる中で、先んじて電波法の規制緩和を勝ち取っていきたいと思っています。このことは、ドローンなどいろいろなものに関わってきます。そういった分野の起業家のためにも、規制緩和をして、産業競争力を高めていきたいと思います。

また、福岡市、そして日本自体が盛り上がるためには、ベンチャー企業だけ元気で儲かりましたというわけにはいきません。ベンチャー企業に足りない資金、販路、経験。こういったものは、既存企業の皆さんが持っています。既存企業とベンチャー企業がいかにコラボレーションするかが大事になるんですね。

ーベンチャー企業と既存企業が協力し合うということですね。

社会がこれだけのスピードで変わっている、技術革新もこれだけのスピードで起こっている、震災以降、価値観だって大きく変わっているという中で、既存企業の皆さんだって、どんどん変わっていかないといけません。ニーズに合わせて自己イノベーションをして、できるところまでチャレンジしていただきたいと思います。また、自らできないことは、ベンチャー企業がもつ、最先端のすばらしい技術・サービス・アイデアとどんどんコラボしてもらって、一緒になって大きくなっていくことが大事だと思います。

そのために、具体的な場を作ります。「福岡スタートアップ・セレクション」です。福岡市のベンチャーの皆さんと、福岡県、九州、日本のたくさんの既存企業の方々がマッチングを行っていきたいというふうに思っています。

ー福岡のローカルな課題解決という点での取り組みはありますか。

地域の隠れた資源を活用していこうと考えています。例えば、福岡はまだ車を使う文化があります。車で出かけると、そこの駐車場が空きますよね。この様に、福岡にある隠れた資源を起業家の皆さんに使っていただきたいと思います。

こういったものをビジネスにするため、「イノベーションスタジオ福岡」という取り組みをしています。新しいアイデアとサービス、ビジネスまでを産学官民一緒になって作ってしまおうというものです。今回は、地域の隠れた資源を活用しようというテーマでスタートします。

それから、「LOCAL GOOD FUKUOKA」(http://fukuoka.localgood.jp/)。これは、地域の課題を見える化し、クラウドファンディングを活用しながらビジネスで解決をしていこうというものです

そして、女性のキャリアアップや創業をサポートする「Growth Hack for Women」プロジェクトも開始します。これは、女性支援のNPO法人、ママワーク研究所とKaizen Platform, Inc.、リクルート、そして福岡市が一緒になり、2017年までに、女性の就業、創業を100人創出するプロジェクトです。福岡市は、特に子育てママなどの就業と創業を手厚く後押しをしていきたいというふうに思っています。

創業の成功モデルを作ることが福岡市の役割

高島市長

これらを聞いて、福岡市で起業しようという方がいるかもしれません。そういった方に向けてのメッセージをお願いします。

高島:福岡市には、大きく分けて二つの良さがあります。一つ目は、田舎と都会の両方のメリットがある点です。ストレスフリーな環境の中で、交通の便も含め都市機能が充実しています。

もう一点は、ビジネスコストが圧倒的に安いということです。例えば、東京と福岡で、1年間の内に同じ資金、仮に200万円の資金を使って運転をすることを考えると、福岡なら何度もトライ・アンド・エラーを繰り返すことができます。だからチャレンジができます。これが福岡の魅力だと思います。

以前から、「テストマーケティング適した場所が福岡だ」と言われています。創業というのもある意味テストマーケティングであって、これが受け入れられるのかどうか、トライ・アンド・エラーしていくうえでは、間違いなく絶好の場所だと思っています。

それから、男性の皆さんであれば、福岡市は若い女性率が日本で一番高いですし、おいしい食事非常に低コストで召し上がっていただけます。「クオリティー・オブ・ライフ」という考え方の中で、普段の生活も充実させながら仕事ができるという環境を大事にされる方が増えていますが、福岡市はまさに絶好の場所だと思います。

ーアジアを狙うとしても、福岡市は距離が圧倒的に近いですね。

高島:間違いないですね。福岡市を中心にして1000キロの円を描くと、日本の主要部分である名古屋・大阪・広島、これが全部入り、かつチンタオ・上海・ソウル、そういったところも全部入ってしまいます。市街から数分で福岡空港に着きますから、アジア進出を考えたときに、福岡市を拠点にすることで、それらが会社の強みになります。

私は以前総理とロンドンに行きましたが、そのとき向こうの方が中国市場を考えていると話してくれました。その拠点をどこにおくかというときに、家族・子どもの教育・医療・治安・衛生などを考え、日本を選択肢に考えているそうです。そうすると圧倒的に福岡市のメリットが際立つから、福岡市を考えているとおっしゃっていたんですね。

福岡市の役割は、創業のために必要なムード、文化、エコシステム、それらの成功モデルを作って行くことだと考えています。若い人には、働くことの選択肢に創業があるんだと思っていただきたいです。既存企業の皆さんも、第二創業というかたちで、新しい分野にもチャレンジしていただきたいです。その成功モデルを、ぜひ福岡市で見せていきたいと思っています。

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(取材協力:福岡市市長/高島宗一郎
(編集:創業手帳編集部)

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