【第一回】グローバル創業特区・福岡市が発信する次世代の創業支援

創業手帳

福岡市長 高島宗一郎氏インタビュー

「国家戦略特別区」とは、経済活性化のために、地域限定で規制や税制を改革した特別区域のことです。2014年5月1日、福岡市は「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されました。起業における福岡市の魅力とは何なのか、行政の起業支援についてどのようなお考えをお持ちなのか、特区指定の立役者である市長の高島宗一郎氏に、お話を伺いました。

(2015/07/14更新)

高島市長

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高島宗一郎(たかしま・そういちろう)
1997年KBC九州朝日放送に入社。福岡の朝の顔としてワイドショーや環境番組のキャスターを務める。2010年12月に福岡市長就任。創業支援に注力し,2014年3月には国家戦略特区を獲得。規制改革等による新しい価値を生み出す環境づくりに精力的に取り組む。

起業家に最適なコンパクト・シティ

ー福岡が国家戦略特別区に選ばれた理由はなんだと思われますか?

高島:実は、福岡市はとても住みやすいという評価をいただいています。都市と地方の魅力の両方が、非常に近いところにあるのがその理由だと思います。

それは自然になった訳ではありません。50年以上前、国よりも早く作ったマスタープランによるものです。具体的には、「市街化はここまで」という線引きをして、それ以上都市化が膨張しないような政策をとりました。

その結果、半径2.5キロ圏内に、空港・駅・港を全部作ったコンパクトな都市になりました。住むところと働くところも近くて住みやすいんですね。

ーなるほど、福岡市はコンパクトにまとまっているのですね。

高島:これまで、住むところと働くところが近いことが、経済と結びつくとは考えられていませんでした。ところが、アメリカのシアトルに行ったときに、ものすごい自分の中でインスパイアされるものがありました。

福岡市の半分の人口のシアトルで、アマゾン、コストコ、シアトルズベスト、スターバックス、ボーイング、マイクロソフト、ベンチャーが生まれています。それはどうしてなんだろうと思いました。

そう思ったときに、シアトルのその特長を見てみると、まさに福岡市と全く同じだったのです。首都から遠く離れた西の港町で、そして海や山が近くて、都市機能がコンパクトに集約されていて、優秀な大学があって、その研究施設がオープンになっているという、全部がまさに「福岡のこと言ってるの?」というくらい酷似していたんですね。

ーシアトルに新しい企業が生まれるなら、福岡市でもできるんじゃないかと。

高島:東京の大企業の支店に依存した経済を克服する、いわゆる「支店経済の脱却」が各地方で言われていると思いますが、多くの地方では、それを本社機能の誘致によって行っているんですね。

もちろん福岡市も力を入れています。しかし、シアトルの「誘致ではなく本社を立ち上げてもらう手法」に、目からうろこが落ちました。

確かに、暮らしやすくてストレスフリーで、かつビジネスコストが非常に安いという環境は、インキュベートにとって非常にいいです。それらの環境がある福岡市は、街自体がインキュベート施設じゃないか、そう思うようになりました。それで福岡市もまちをあげて、フォロー・スタートアップ・創業に力を入れるようになったんです。

諸々の施策を打つ中で、創業特区ということもいただきました。ですから、その特区を取って以降、福岡市での起業は一気に盛り上がりを見せています。特にスタートアップカフェ、これが盛り上がりの核になっていると思うんです。

創業までのプロセスの敷居をバリアフリーレベルに低くする

ースタートアップカフェについてお聞かせください。

高島:創業して自分が社長になることは、ものすごく敷居が高いイメージがあります。また、創業するにはどこに行って何をすればよいのかわからないと思います。住民票しか取りに行ったことのない市役所のどこに行けばいいんだろうと。

そこで、創業までの全てのプロセスの敷居を、とにかく徹底的に、バリアフリーレベルに低くしました。創業したい方が本当に自然に相談を受けられ、すべての情報とアドバイスが得られる環境、それがスタートアップカフェです。

天神にあるスタートアップの拠点・スタートアップカフェ

天神にあるスタートアップの拠点・スタートアップカフェ

ースタートアップカフェに行くとどのようなメリットがありますか?

高島:スタートアップカフェができてから、ビジネスの種を磨くという意味で、人と人がつながるようになりました。例えば、技術を持った人とサービスのアイデアを持った人、理系と文系、このあたりの人材が見事にマッチするようになりました。

やはりつながるということが、すごく力になると思います。いろいろな人がつながり、つながった人同士が、さらにつながっていくことで、本当に必要な機能や人、ビジネスへとつながっていきます。

それから、スタートアップカフェでは連日のようにセミナーが開かれていて、皆さん自主的にどんどん参加されています。こういうものが創業の刺激になります。それから、スタートアップカフェにいらして登壇する機会が増えることで、プレゼンテーション技術も磨かれます。

ここでは、会社を作るための知識も得ることができます。弁護士や税理士など士業の皆さんが、無料相談会を連日行っています。相談できる、弁護士が常駐している、しかも手続きがワンストップで終了するというのは、創業の垣根を低くするという意味で非常に効果がありますね。

福岡市にいいエコシステムが出来てきているなと、強く思っています。課題解決をするため、あらゆる皆さんがウィン・ウィンの関係で一緒に成長していけるようになればいいですね。

「〇〇×デザイン」の大切さ

高島市長

ー役所で創業支援の施設をつくると、「ハコ」だけの発想になりがちです。スタートアップカフェはそうではないので、素晴らしい取り組みだと思います。

高島:例えば、雇用労働相談センターは東京にも大阪にもあります。しかし、その「センター」だけが独立して部屋の中にあるので、起業家にとってはまずそこをノックするだけでもハードルが高いと感じました。シンプルですが、とても大事なポイントだと思っています。

また、創業される方は、皆さんビジネスを磨くというところには興味はあっても、雇用や会社を作るという点においては全然興味がなかったりします。よい商品やサービスを作っていれば、自然と会社は続くだろうと思っている節があるんです。だから、雇用分野が創業支援と別の場所にあったら、起業家は行かないんです。

スタートアップカフェの場合は、テーブルを挟んですべてできます。つまり、創業したい方は、ビジネスのアイデアを相談に来るついでに雇用の話も聞けて、「あっ、なるほど」というような発見がある。これがとても大きな違いだと思いますね。

ー裾野を広げるという点での、スタートアップカフェみたいなところってなかなかありませんよね。

高島:最近、「×(掛ける)デザイン」って、とても大事だなと思っています。デザインを掛け算して相談者が入りやすい雰囲気をつくり、「知らないことを馬鹿にされるんじゃないか」とか、そう思わせない空気をいかに醸し出せるかということを大切にしています。

福岡市は、これから創業しようという方がとても多いです。いわゆる裾野ですね、創業の裾野。これはとてもすばらしいことだと思っています。裾野が広くないと山は高くなりませんからね。「×デザイン」で裾野を更に広げることも大事です。事実、雇用労働相談センターの相談件数が増えているのは、このデザインのおかげだと思っています。

ー創業はゼロから雇用を生む唯一の方法ではないでしょうか。他の自治体にも広がってほしいと思っています。

高島:行政にとって、雇用を作ることは大切です。それは当然、税収にも関わってきます。かつ、賃金も高くなれば、収めていただける税収も多くなってきます。それが市民の皆さんの生活の質の向上につながっていくわけですね。

ところが、日本の経済自体が硬直してきていると言われる中で、ブラック企業というものが出てきています。どんどん給料は低くなるわ、休みはなくなるわ、人は減らされるわ。これは、その会社が儲かってないからであって、それは社会のニーズからずれているんです。

価値観はどんどん変わっていますし、技術の革新もどんどん進んでいます。創業というのは、今、マーケットが何を欲しがって、どういうものに興味を持っているのかを考え、サービスを出していくことだと思います。それらがどんどん生み出されていくということは、経済の活性化に間違いなくつながります。

そこがまさに雇用を生むゾーンなので、行政としても、創業が盛んにならないと新しい雇用は望めない。ですから、雇用を作り皆が働き出して納税するという、それが、すごく行政にとっても大事だと思っています。
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(取材協力:福岡市市長/高島宗一郎
(取材:創業手帳編集部)

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