キャッシュフローを改善する9つのテクニック

資金調達手帳

“キャッシュ・イズ・キング”経営のススメとキャッシュフローを生み出す基本的なテクニック

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(※2014/7/14 加筆更新しました)

創業期は特にキャッシュフローを重視しよう!

起業したら「キャッシュ・イズ・キング(Cash Is King)」、現金が一番大事だ。

仕入れや給与の支払いなど、まずはキャッシュがないとスタートアップベンチャーの経営は立ち行かない。帳簿上の売上だけでなく、実際に手元にあり自由に使えるキャッシュ(現金)をいかに多く確保するかが安定した経営の第一歩と言える。

例えば、帳簿の上では黒字でも、キャッシュがなくなることで「黒字倒産」が起こる。

掛取引の場合には、実際の入金前の売上確定の時点で売上計上することが多い。売上が伸びて売掛金や買掛金が大きくなりすぎると、運転資金が膨らみ、手元資金が少なくなる。そんな時に、売掛金を回収する前に買掛金の支払いが必要になると、手元にキャッシュが足りずに支払いができなくなり、会計上は黒字でありながら会社は倒産してしまう。これが黒字倒産だ。

一方で、赤字でありながら、企業が長期的に存続するケースもある。手元にキャッシュされあれば企業は潰れない。会社は借金が返せなくなって潰れるのである。収益が上がっていないのは好ましい状況ではないが、会社が潰れるよりは良く、こうした状態が続いている会社も少なくはない。

資金繰りが安定しない起業直後の創業期は、キャッシュフローを重視した経営を行うべきであろう。多くのサラリーマンは、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)を意識することはあっても、キャッシュフローを意識することは少ないのではないだろうか?

起業したら経営者の視点からキャッシュフローを特に意識したい。

キャッシュフローを見る基礎力をつけるには、会計ソフトが役立ってくれます。冊子版の創業手帳(無料)では、会計ソフトの導入の方法について詳しく解説しています。起業時には、まだ起業したてなので自分で記帳するという選択をされる方も多いと思います。しかし、会計ソフトを早期に導入することで、余分なコストの削減や、節税対策にもなります。おすすめの会計ソフトをお得に導入できるキャンペーン・コードも発行しています。

  • PL:損益計算書:売上や損益がわかるが、実際のキャッシュ(現金)の動きとは異なる
  • BS:貸借対照表:資産、負債、純資産の状況がわかる
  • CF:キャッシュフロー計算書:実際の現金の状況がわかる(創業後は特に重要!)

 

キャッシュフローを生むための9つの基本的なテクニック

ここではキャッシュを確保するための基本的なテクニックを紹介する。

1.資金調達で余裕資金を確保する

資金調達により余裕資金を確保する。いざという時のため多めに資金を確保しておくくらいがちょうど良いだろう。
 

2.回収はなるべく前払い・複数月の一括前払いの契約を結ぶ

回収はなるべく早くなるように、料金の前払い、特に長期にわたる契約は一括前払いの契約を結ぶ。

起業直後の創業期のスタートアップベンチャーの信用力は一般的に高くないだろう。よって、代金回収に関して有利な条件を結ぶのは難しいことも多いだろうが、ある程度の値引きなどのインセンティブをつけてでも、前払い・一括払いの契約を結ぶと有利な場合もある。少なくとも、納品後の一括支払いは絶対に避け、分割支払い・着手金の交渉をしたいところだ。

キャッシュフローの改善の効果とは別に、長期の一括前払いの契約は、契約状況が継続しやすく、取引関係が安定するという利点もある。
 

3.債権回収は厳しく管理する

売掛金は、回収遅れや回収漏れがないように厳しく管理したい。そのためにも、請求と入金を明細レベルで突き合わせなど、厳しくチェックしていく必要がある。

また、期限を超えたらすぐに督促するようにしたい。支払期限を超えた債権は、時間が経てば立つほど回収が難しくなる。
 

4.支払いはなるべく後払いの契約を結ぶ

回収とは逆に、あなたが支払側の場合は、極力支払いを遅らせて後払いにできるようにしたい。会社を立ち上げたばかりのスタートアップベンチャーは信用力が低いため、取引先が後払いに応じてくれないケースも多いが、地道な交渉で支払サイト(取引代金の締め日から支払日までの猶予期間)をなるべく長くする努力をすべきだ

直近で有利な支払サイトの条件が引き出せなくても、将来的に支払サイトを有利にしてもらえるために満たすべき条件を取引先に確認しておく。例えば、「売上額が一定以上」「資本金が一定額以上」「一定年数連続で利益が出ている」等である。いずれも条件を満たした時点で、支払サイトの見直しを交渉する際に有利になる。

支払サイトを短くする努力は必須だが、一旦支払サイトを決めたら、当然のことながら支払の遅延は厳禁だ。信用を失い、事業の継続さえ危うくなる可能性がある。あくまで事前に取り決めた支払サイトに余裕を持つということである。
 

5.給与支払日の設定を工夫する

従業員の理解が得られるようであれば、給与支給日を遅めに設定すると余裕資金は生まれる。コスト全体に占める人件費の割合が高い業種では特に考慮すべきだ。当月末払いを選択するか翌月末払いを選択するかで、1ヶ月分の人件費のキャッシュが違ってくる。

ただし、採用に影響を及ぼす可能性もあり、社員の生活状況とのバランスを考慮すべきだろう。給与支払支給日は月末締めの翌月25日~27日支給が常識的な範囲の遅い給与日になる。

また、ボーナス制度をうまく活用することで、キャッシュフローが改善する。年間の支払総額が同じであれば、月額固定給与を高めにする場合と、ボーナス制度を導入する場合では、ボーナス制度の方がキャッシュフローが改善する。ボーナスは経営側からすると給与の前借りと同じ側面がある。

業績に連動したボーナス制度の設計にしたほうがキャッシュフローの観点からは経営リスクはヘッジできて良い。ただし、従業員のモチベーションアップに繋がるような魅力的なボーナス制度を設計することが大前提である。
 

6.クレジットカードを活用する

クレジットカードを利用すると支払日は翌月ないし翌々月になり、取引成立時の現金払いと比べると、1ヶ月以上キャッシュアウトを後倒しにできる。

クレジットカード決済をおこなうために、法人カードを準備することがベストだが、設立直後の法人の場合、様々な制約で法人カードが作れない場合がある。その場合は、経営者個人のクレジットカードで建て替えも検討すべきだ。

法人カードは、キャッシュフローをよくするためにも有効ですが、経理の処理・管理が一本化できることによる時間コストの削減も見込めます。冊子版の創業手帳では、創業したてでも作ることのできる法人カードを紹介しています。
 

関連記事:法人クレジットカードのメリットや特典を理解して会社の経費を削減しよう
法人カード比較!おすすめの法人クレジットカード4選!

7.無駄な経費は削減する努力を続ける

当たり前のことだができていないのが経費削減だ。企業規模の大小にかかわらず、日々の業務の中でのコスト削減努力は企業の基本である。無駄なキャッシュは極力払わないように、調達時には相見積もり価格比較サイト等で相場の調査を行う。
 

8.在庫量を圧縮する

商品を仕入れたり製造したりして在庫を持つビジネスの場合、在庫量を減らすことによって、キャッシュフローは改善する。在庫は現金が商品に変換されたものであり、在庫が売れずに残っている状態は、現金が使えない状態で眠っているのと同じだ。

在庫量をチェックする指標に一つに在庫回転率がある。在庫回転率とは、在庫が一定期間に何回入れ替わったか(回転したか)を表す指標で、数字が大きいほど在庫が早く入れ替わっている、すなわち商品が効率よく売れて在庫量が少ないことを示す。

在庫回転率[回] = 一定期間の売上原価合計[円] ÷ 一定期間の平均の在庫額合計[円]

             
在庫回転率は、業種や企業規模によって異なるが、2007年の経済産業省の調査によると、小売企業における回転率(年間の回転率)は、小売業全体では11.4回、中小企業は9.5回、大企業は13.5回である。また、製造企業における回転率(年間の回転率)は、製造業全体で11.1回、中小企業が12.6回、大企業が10.5回である。

事業が成長しているステージでは、一方的に在庫を圧縮すれば良いわけではない。在庫量を圧縮しすぎると「売り逃し」のリスクもある。

ここは成長スピードとの兼ね合いもあるが、資金に余裕が無いスタートアップベンチャーや中小企業は、安定性を重視して、多少の売り逃しには目を瞑るのがベターだと考える。「売り逃し」より「売れ残り」に注意して、仕入や製造を実施したいところだ。

在庫回転率等の指標をチェックしながら、事業の成長スピードと合わせ、少しずつ在庫を増やしたり、逆に過剰になったときは在庫は減らすように調整しつつ、キャッシュに余裕が持てる適正な在庫を積むように心がけるべきだ。

ここで注意したいのは、在庫回転率は継続的に推移を追っていくようにすることだ。

前述のように、在庫は現金が商品に変換されたものである。よって、在庫量のリアルタイムの変化は、リアルタイムにキャッシュフローに影響を与えていることになる。

したがって、できれば商品ごとの在庫回転率をチェックし、もし在庫回転率が悪化しているようであれば、原因を調べて早急に対応するようにしていきたい。
 

9.消費税の納税義務を免除してもらう

消費税の納税義務を免除してもらうことによって、キャッシュフローは改善する。

「2年前の売上が1,000万円以下である場合」は消費税が免除されることとなっている。新設法人の創業1年目・2年目については、2年前の売上が存在しないため、必然的に「2年間は消費税が免除される」が適用される。

ただしこれには条件がついており、まず、創業1・2年目で事業年度開始日の資本金が1,000万円未満でなかればならない。創業1年目の途中で増資を行い1,000万円以上になった場合には、2年目は免除されないこととなるので注意が必要だ。

もう一つの条件は、「①前年の上半期の売上が1,000万円以下」あるいは「②給与等が1,000万円以下」である。もし売上が伸びて①の条件を満たさなくなった場合でも、給与設定を慎重に調整することで消費税の免除を適用させることが可能になる。

税金関係は専門的な知識が必要となります。起業家にとっては専門外の業務になる場合が多いでしょう。勉強するにも起業後には時間が足りないという状況もあるはずです。その場合は、税理士に依頼することも考えましょう。税理士は複雑な法人の税金関係や、経理についてのアドバイスはもとより、経営全体の方針についても有用なアドバイスをしてくれます。冊子版の創業手帳では、税理士との二人三脚で経営を拡大させた起業家のインタビューを掲載しています。税理士の紹介相談窓口も紹介しています。

(創業手帳編集部)

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