消える魔球?赤字と黒字を通算できる連結納税制度

資金調達手帳

小規模会社でも使える連結納税制度で賢く節税しよう

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(2015/06/15更新)

皆さんは「連結納税」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

連結納税はグループ会社の所得をまとめて法人税申告および納税を行う制度です。連結納税制度は企業の規模にかかわらず適用要件さえ満たせば利用できるものです。

今回はこの連結納税制度の概要や導入する際に気をつけなければならない点などをご紹介します。

連結納税とは?どんな制度?

最低資本金制度の廃止、電子定款認証の普及等により、会社設立がずいぶん容易になりました。新規事業は新設会社で行うなど、小規模な会社でも企業グループを形成していることはめずらしくありません。連結納税はこのようなグループ企業の所得を合算して親会社がまとめて法人税申告および納税を実施する制度です。

グループの中に黒字会社と赤字会社がある場合、グループ全体では儲かっている訳でもないのに黒字会社では税金を納付しなければならないのは、何となく納得がいかないと考えたことはないでしょうか。このような場合、連結納税制度を利用すると、黒字会社と赤字会社の所得と欠損を通算し、グループ全体の納税額を大幅に軽減できる可能性があります。

もし、節税効果が得られるのであれば使わない手はありません。早速、どのような会社が連結納税制度を利用できるのかを見ていくことにしましょう。

連結納税はどのような会社が利用できるの?

①連結納税の対象

連結納税制度を利用できるのは、内国法人である親法人と、その親法人に発行済株式等の100%を直接あるいは間接に保有されているすべての内国法人となります。つまり、100%の親子会社関係であれば、規模にかかわらず利用することができます。

ここで注意すべき点は100%子会社であればすべて連結納税の対象に含める必要があり、一部の会社だけを意図的に除外することはできないという点です。また、外国法人は連結納税の対象とはなりません。

②利用するための手続

連結納税を開始するためには、連結納税を開始しようとする事業年度開始の日の3か月前までに親法人およびすべての100%子法人の連名で連結納税の承認申請書を国税庁長官宛てに提出する必要があります。

このため、連結納税制度を採用するに際しては、事前準備も含め、余裕を持った対応が必要といえます。

連結納税ではこんなことが可能

連結納税の直接的なメリットは、なんといっても①黒字と赤字を通算できること、また、②繰越欠損金をグループ全体で利用できるということです。以下では事例を交えながらそれぞれのメリットについて見ていきたいと思います。

①黒字と赤字を通算

親会社Aと子会社Bの2社だけのグループを考えてみましょう。たとえば、親会社Aの利益が150、子会社Bの利益がマイナス200、法人税率を20%と仮定すると、通常の法人税申告では下記のような納税額になります。

<通常の申告の場合>
会社 所得(欠損) 法人税
親会社A +150(黒字) 30(150×20%)
子会社B △200(赤字) 0
グループ計 △ 50(赤字) 30(30+0)

赤字の子会社Bで法人税が戻ってくる訳ではないので、黒字の親会社Aで法人税30の支払いが生じるだけです。したがって、グループ全体の納税額も30となります。

これに対して、連結納税を導入している場合、まず親会社Aの黒字と子会社Bの赤字が通算され、連結所得に対して法人税率が適用されることになります。つまり、連結所得がマイナスの場合には連結法人税がゼロということになります。

<連結納税の場合>
会社 所得(欠損) 法人税
親会社A +150(黒字)
子会社B △200(赤字)
グループ計 △ 50(赤字) 0

親会社Aの黒字と子会社Bの赤字が通算された結果、連結所得はマイナス50となっています。連結納税ではグループ全体の法人税申告をまとめて行うことになりますので、この場合、グループ全体の納税額はゼロとなります。

通常の申告の場合にはグループ全体の納税額が30であったのに対して、連結納税の場合には納税額がゼロとなっています。したがって、この事例の場合には連結納税を採用することにより、30の節税効果があったことになります。

②欠損金をグループ全体で利用

連結納税制度では生じた欠損金を繰り越してグループ全体で利用することができます。上記①で生じた連結所得のマイナス50は「連結欠損金」と呼ばれ、次年度以降で連結所得から控除することができます。

また、連結納税開始以降に生じた欠損金だけでなく、連結納税を導入する前から存在する親会社の欠損金もグループ全体の所得から控除できます。

なお、通常の単体納税と同様、資本金1億円超の大法人では所得から控除できる欠損金に制限があり、平成27年4月1日以降開始する事業年度では所得金額の65%、平成29年4月1日以降は50%までしか控除できませんが、中小法人の場合にはこのような制限がなく、全額控除できます。

連結納税を導入する際に気をつけること

①子会社の繰越欠損金の切り捨て

子会社の欠損金のうち連結納税開始前や加入前の部分は原則として切り捨てられ、グループ全体の所得から控除することはできません。

したがって、子会社ですでに十分な繰越欠損金があり、今後、この欠損金を活用して税務メリットが得られる状態であれば、単体納税の方が有利になる可能性もあります。

上述したものも含め、欠損金の利用範囲をまとめると下記のようになります。

グループ全体の所得から控除できるもの 連結納税開始後に発生した連結欠損金
連結納税開始前から親法人が有する欠損金
利用制限があるもの 一定の要件を満たした子法人の欠損金(特定連結欠損金)
※他の法人の所得と通算することはできず、発生した子法人の所得相当分(個別帰属額)を限度として利用することが可能です。
利用できないもの 子会社の欠損金のうち連結納税開始前や加入前の部分

②資産の時価評価

連結納税の開始あるいは加入時には、子法人が有する一定の資産について直前事業年度において時価評価が必要となります。たとえば、子法人に土地の含み益がある場合には、売却していなくても、その含み益が益金となり、子法人の単体納税での最終事業年度において課税される可能性があります。

③法人税と地方税の申告について

連結法人税の申告は親法人でまとめて行いますので、子法人での申告はありません。ただし、子法人においても一定の届出書および添付書類を所轄税務署に提出する必要があります。

これに対して、地方税については連結納税の対象とはなりませんので、各法人で行う必要があります。なお、地方税の課税標準として連結納税の計算結果を使用する箇所があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。連結納税は100%親子会社関係があれば利用することができ、節税メリットも大きい制度です。

しかし、今回ご紹介した事項以外にも税務上および事務処理上のメリット・デメリットがあり、実際にどの程度の影響があるのか見極めるのが難しい領域でもあります。

したがって、自社で連結納税を利用するメリットがありそうだと思ったときには、連結納税の知見を有する専門家に相談したり、有利不利判定や影響度調査を依頼してみるのも有用と考えられます。

まずは、このような制度があるということを認識し、適用できそうなグループ会社がある場合には検討だけでもしてみる価値があるといえるでしょう。

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(監修:信濃橋税理士法人 北川ワタル 公認会計士・税理士)
(編集:創業手帳編集部)

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