開業手帳2015年9月18日
スナック・パブ開業マニュアル|設備から集客までスナック・パブの開業手順徹底解説
スナック・パブを開業するまでの法的準備と設備の準備を分かりやすく解説
お客様に酒類を提供するスナック・パブでは、特別な料理の準備などが必要ないので、比較的簡単に開業できると考えている方もいるでしょう。
しかし、スナック・パブを開業するためには一般の飲食店を開業するよりも、法的許可が面倒になるので、必ずしも開業が簡単ではありません。
今回は、スナック・パブを開業するための法的な準備から集客・資金繰りまで、開業に必要な準備について徹底解説していきます。
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この記事の目次
スナック・パブ開業に必要なこと
スナック・パブを開業するために必要なものは、「お酒」「高級な設備」「働いてくれる女性」だけと考えている方も多いでしょう。
確かに、これらについてもスナック・パブの開業で重要ですが、開業には次のような準備も必要です。
- 開業するための法的手続
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- 開業するための法的手続
- 店舗等の設備面の準備
- 仕入先の準備
- 集客手段の確保
- 人員採用の準備
- 資金調達の準備
店舗をオープンするまでには、これらの準備を全て完了させなければなりません。スナック・パブを開業するために必要な手続きを詳しく解説していきます。
スナック・パブ開業に必要な事務手続き
スナック・パブを開業するためには、以下の法的手続が必要です。
届出先 | 届出 | 届け出る条件 |
---|---|---|
保健所 | 営業許可申請書 | 飲食店はすべて対象 |
消防署 | 防火対象物使用開始届 | 飲食店は「延べ面積が 150 平方メートル以上のもの又は収容人員が 30 人以上のもの」に該当する場合のみ |
警察署 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 夜0時を過ぎて営業するバー、酒場その他客に酒類を提供して営む店舗 |
警察署 | 風俗営業許可 | 飲食店で「接待」をする場合 |
税務署 | 開業届 法人設立届出書 青色申告承認申請書 給与支払事務所等の開設届出書等 |
業種に関わらず個人事業主は届出が必要 |
労働基準監督署 | 労働保険保険関係成立届 労働保険概算保険料申告書 雇用保険適用事業所設置届 雇用保険被保険者資格取得届 許認可 |
従業員を雇用する場合 |
法的な届け出が多いように感じますが、スナック・パブが必ず出さなければならないのは営業許可申請書・深夜酒類提供飲食店営業開始届だけです。
その他は、店舗の面積や収容人数、従業員雇用の有無によって異なります。また、税務署や労働基準監督署に提出する書類は、開業後でも問題ありません。
まずは自分が開業しようとしている店舗では、どのような届け出が必要になるのかを確認しておきましょう。
スナック・パブ開業に必要な資格
スナック・パブ開業に必要な資格は、基本的に以下の3つだけです。
-
- 食品衛生責任者(必ず)
- 防火管理者(収容人数30人以上の場合は必ず)
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届
飲食店は「調理師免許を持っていないと開業することができない」というイメージがありますが、実は調理師免許は必須条件ではありません。
飲食店開業に必要な資格は食品衛生責任者という資格です。食品衛生責任者の資格は、以下のいずれかの条件を満たせば誰でも簡単に取得できます。
-
- 食品衛生責任者養成講習会を受講する
- 栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格を保有している
毎月定期的に保健所が開催している「食品衛生責任者養成講習会」を受講すれば、誰でも取得できるので、まずは保健所へ連絡して食品衛生責任者養成講習会に参加しましょう。
また、飲食店で「収容人数30人以上の店舗」では、防火管理者の選任が義務付けられています。
店舗の規模によるものの、テーブル席がいくつもある規模の大きなスナック・パブを開業する場合には、防火管理者の選任が必要です。カウンターだけの店舗であれば、必要ありません。
防火管理者は、店舗の広さに応じて甲種(300㎡以上)と、乙種(300㎡未満)の2つの種類があります。
いずれも消防署で講習を受ける必要があり、甲種であれば2日間の講習、乙種であれば1日間の講習を受ければ取得可能です。まずは最寄りの消防署へ連絡しましょう。
なお、調理師免許は飲食店開業のための必須資格ではありません。しかし、国家資格である調理師免許を取得した人がスナック・パブにいる方が、店舗の信用度は高くなる傾向があります。
調理師免許の取得方法は、以下のいずれかの条件を満たすことです。
-
- 2年以上の実務経験を積み、調理師試験に合格する
- 調理師学校または養成施設を卒業する
飲食店を開業してから2年以上経過すれば、調理師試験を受験する資格を得ることができます。
店主に調理師免許があった方が、店舗の信用度が向上することは間違いありません。
開業前には条件を満たしていない人も、将来的には資格取得を視野に入れましょう。
さらに、深夜0時を過ぎて営業するスナック・パブでは、深夜酒類提供飲食店営業開始届の提出が必要です。
深夜酒類提供飲食店営業開始届は、次の書類を所轄の警察署へ届け出ます。
-
- 深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
- 営業の方法
- 飲食店営業許可証
- 店舗図面
- 住民票
- 登記事項証明書と定款
- メニューの写し
- 物件の賃貸借契約書のコピー
- 都市計画図等
これらの書類は、警察署の生活安全課へ持参して提出しましょう。なお、飲食店で接待は禁止です。
コンパニオンなどに接待をさせる場合には「酒類提供飲食店営業許可」ではなく、「風俗営業許可」が必要になるので注意しましょう。
スナック・パブに最適な立地・物件・設備とは?
スナック・パブを開業するためには、必ず店舗を借りなければなりません。
物件選びのポイントは2つです。
-
- 立地:駅前、歓楽街など
- 設備:できれば初期投資を抑えられる居抜き物件(設備の高級さも重要)
スナック・パブの店舗選びや、必要な設備について詳しく解説していきます。
立地
スナック・パブにとって最適な立地は、「お酒を飲める場所」であることです。
都市部であれば駅前の方が集客できますし、地方では裏町と呼ばれるような飲み屋街などがよいでしょう。
そして何よりも、深夜酒類営業ができる用途地域は決まっています。
商業系地域であれば、基本的に問題なく深夜酒類提供飲食店を開業できるので、必ず不動産屋さんに用途地域を確認するようにしてください。
業種ごとに適した立地の選び方については、以下の記事で専門的に解説しています。
物件探しの手順
自分が開業したいエリアは決まっても、実際に店舗を探すための手順が分からないという人も多いのではないでしょうか?
物件探しは以下の順番で行うのがよいでしょう。
2.不動産会社へ訪問するかネットで最適な条件の不動産を探す
3.不動産会社へ問い合わせて内見をする
4.申し込みを行う
5.入居審査を受ける
この中で最も重要な点は、「不動産の条件」です。
-
- 都市部の飲食店→駅に近い
- 地方の飲食店→郊外で駐車場が広い
- お酒メインの飲食店→駅に近い
- ファミリー層がターゲットの飲食店→郊外で駐車場が広い
など、自分の飲食店のカラーに最適な条件を検討し、それに見合った物件を探します。
高級志向のスナック・パブの場合には、ある程度の高級感が必要ですので、少し高値でも高級感がある物件がよいでしょう。
なお、できる限り設備投資にお金をかけないためには、内装をそのまま使うことができる「居抜き物件」がおすすめです。
スナック・パブは開店と閉店のサイクルの激しい業種ですので、比較的居抜き物件が豊富にあります。
数多くの物件を内覧し、イメージにできる限り近い物件を探しましょう。
設備(ハード面)
店舗の設備を具体的に検討する前に、まずは営業許可を取るための「店舗の条件」を確認しましょう。営業許可を得るための基準は地域で異なりますが、主に以下のような基準があります。
-
- 扉付きの食器棚を設置すること
- 厨房の床の水はけがよい
- グリストラップがある
- 厨房と客席が扉などで区分けされている
- 厨房内に「2槽シンク」が設置されている
- 厨房内とトイレにそれぞれ「手洗い場」が設置されている
- 厨房内に冷蔵庫などの設備が収まっている
- 冷蔵庫・冷凍庫に温度計が付いている
- 虫やネズミの侵入を防ぐため窓に網戸が設置されている
保健所は開業する前に「事前相談」を受け付けています。事前相談において開業するための設備の条件を確認し、間違いのないように設備を揃えましょう。
設備を揃えた後に、保健所へ「営業許可申請」を提出すると、保健所の担当者が実際に店舗へ検査に訪れます。検査の結果、設備に問題がなければ晴れて営業許可を得ることができます。
このほかに、深夜酒類提供飲食店営業許可を取得するためには、次のポイントも重要です。
-
- 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けていない
- 客室が複数のときの客室の床面積は9.5平方メートル以上
- 遊技などに使われる部分の床面積が占める割合が10%以下
上記3つの基準を満たしていないと、深夜酒類提供飲食店営業許可を取得することが難しくなりますし、場合によって風俗営業許可を取らなければなりません。
上記の設備も含め、スナック・パブ開業に必要となる調理器具は、主に以下のようなものです。
-
- ガスコンロ
- 冷蔵庫
- 冷凍庫
- ワインセラー
- 製氷機
- 洗浄設備
スナック・パブは料理にこだわって提供する店ではないので、設備はそれほど必要ありません。
ワインやシャンパンにこだわる場合は、大きめのワインセラーなどの設備があればよいでしょう。
スナック・パブの厨房機器は中古でも状態の良いものが数多くあるので、開業費用をできる限り抑えたい方は、中古の厨房機器を探してみましょう。
設備(ソフト面)
厨房機器や食器以外に、スナック・パブ開業のために用意するものは以下のとおりです。
-
- メニュー表
- 割り箸等
- ワイングラス
- シャンパングラス
- 食器
- おしぼり
- お釣り・決済サービスの導入
- 感染防止の設備
スナック・パブでは、ある程度は高級な食器を使う必要があります。また、ナプキンだけというわけにはいかないので、おしぼり業者とも契約が必要です。
メニュー表などは、広告代理店等などに頼むと10万円以上かかってしまうため、自分で作るか「ココナラ」などでデザイナーに直接依頼することで、本格的なメニュー表を格安料金で作成できます。
この他、清掃業者なども必要であれば事前に契約しておくとよいでしょう。
ナプキンなどは店名を入れたオリジナルを作成できます。ただし、オリジナル商品はコストが高くなるので、最初のうちはネットで安く大量に仕入れられるものを使用してもよいでしょう。
また、お釣り用の小銭やキャッシュレス決済サービスの導入なども忘れないように準備してください。この他、カウンターに飛沫防止パネルなども設置しましょう。
特にスナック・パブなどは、コロナ感染症対策に他の飲食店よりも力を入れる必要があります。
体温計、消毒、飛沫防止パネル、フェイスシールドなど、考えられる感染対策グッズは徹底して用意しておきましょう。
スナック・パブ開業前に見つけるべき仕入先
スナック・パブを開業する前に、営業に必要な仕入先も確保しておきましょう。スナック・パブに必要な仕入先として、以下のような業者が挙げられます。
-
- 酒屋
- 果物屋
- 資材屋(割り箸等)
スナック・パブは、とにかく「酒」が重要です。
どこ産のワインやシャンパンを仕入れるのかをしっかりと決めてから、こだわりの酒を仕入れられる酒屋と契約しましょう。
ワインやシャンパンなどの酒にこだわるのであれば、こだわりの酒を仕入れるルートを1つひとつ探す必要があります。
なお、ビールは仕入れたいメーカーによって契約する酒屋が異なるので、「どのメーカーのビールを置くのか」を明確にしたうえで、仕入れ先を決めましょう。
高級店は、全てにおいてこだわりと特別感が重要になります。高級カクテルを提供するのであれば、果物からこだわって、八百屋で特別な果物を仕入れることも検討しましょう。
スナック・パブの集客方法
開業したら地域に対して店を知ってもらう必要があります。そのため、最初だけは次のような方法で、スナック・パブの広告を出すことも検討しましょう。
-
- フリーペーパー
- チラシ
- 割引券の配布
- Twitter、InstagramなどのSNS
スナック・パブは近隣住民を顧客にするのが一般的です。そのため、食べログやぐるなびなどに広告を出す必要はありません。
基本的には、Twitter、InstagramなどのSNSからの口コミを狙うか、店舗周辺で割引券を配るなど、あまりお金をかけない方法の広告が効果的です。
スナック・パブの採用方法
オープニングスタッフを採用するかどうかは、店の規模に応じて決めましょう。
人件費は店舗経営における最も大きな固定費になるので、カウンターだけの店舗で1人または家族で店舗が回るのなら、オープニングスタッフをあえて雇用する必要はありません。
特にスナック・パブは事前の仕込みがほとんどなく、オープン後はお酒を提供するだけになります。
カウンター席だけの小さな店舗であれば、1人でも回すことができるでしょう。まずは「どうすれば人を雇わずに店を回すことができるか」を考えましょう。
一方で、席数の多いスナック・パブでは、多くの従業員が必要になります。この場合には、求人サイトなどを利用しましょう。
風俗営業許可をとってコンパニオンを雇う場合には、キャバクラ求人サイトなどへの掲載で女性を広く求人するほうが効果的です。
スナック・パブは規模や店舗のコンセプトによって、雇うべき人数や専門性が異なるので、店舗に応じて最適な採用方法を選択しましょう。
スナック・パブの資金繰り
スナック・パブを開業する人の多くが銀行や日本政策金融公庫の開業資金融資を利用しています。飲食店の資金調達について、詳しくは以下のページに記載していますが、基本的に開業資金をフルローンで借りるのは難しいので、必要総額の3割程度の自己資金が貯まってから開業準備をしましょう。
また、飲食店は売上が即現金になる「現金商売」です。そのため、毎日の売上をしっかりと管理し、手元に現金があるからといって浪費しないことが最も重要になります。
スナック・パブは売上が毎日コツコツ入り、月末に支払いがまとめて来るということをよくよく念頭に入れて、日々の資金繰り管理に努めましょう。
なお、最近ではキャッシュレス決済を導入している飲食店も増えています。
キャッシュレス決済では売上金の入金があるのは数日後から数週間後になり、仕入れ資金等が不足する可能性もあるため、一定の運転資金は常に手元に確保しておきましょう。