開業手帳2015年10月8日
アイスクリーム店開業マニュアル|設備から集客までアイスクリーム店の開業手順徹底解説
アイスクリーム店を開業するまでの法的準備と設備の準備を分かりやすく解説
アイスクリーム店は「簡単に開業できる」というイメージがある人も多いでしょう。確かにアイスクリーム店を開業している人は、フランチャイズで他業界から独立している人も少なくありません。
また小資本から開業できるので、未経験の人にも開業しやすい業種の1つです。そのため、「簡単に開業できそう」と考えている人も多いのではないでしょうか?
実はフランチャイズで開業する場合は、お金さえ支払えば開業に必要なものを用意してもらえますが、自分で開業する場合は準備が必要です。
今回は、法律面・設備面・集客面など、アイスクリーム店を開業するための準備について徹底解説していきます。
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この記事の目次
アイスクリーム店開業に必要なこと
アイスクリーム店を開業するためには様々な準備が必要です。
フランチャイズで開業するのであれば、開業に必要な準備は全て本部が指導してくれますが、自分で開業するのであれば最低でも次のような準備をする必要があります。
- 開業するための法的手続
-
- 店舗等の設備面の準備
- 仕入先の準備
- 集客手段の確保
- 人員採用の準備
- 資金調達の準備
小さなアイスクリーム店を開業するだけでも、これらの準備は必要です。まずは、アイスクリーム店を開業するための具体的な手続きを詳しく解説します。
アイスクリーム店開業に必要な事務手続き
アイスクリーム店を開業するためには、以下の法的手続を行わなければなりません。
届出先 | 届出 | 届け出る条件 |
---|---|---|
保健所 | 営業許可申請書 | 飲食店はすべて対象 |
消防署 | 防火対象物使用開始届 | 飲食店は「延べ面積が 150 平方メートル以上のもの又は収容人員が 30 人以上のもの」に該当する場合のみ |
警察署 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 飲食店はすべて対象 |
税務署 | 開業届 法人設立届出書 青色申告承認申請書 給与支払事務所等の開設届出書等 |
業種に関わらず個人事業主は届出が必要 |
労働基準監督署 | 労働保険保険関係成立届 労働保険概算保険料申告書 雇用保険適用事業所設置届 雇用保険被保険者資格取得届 許認可 |
従業員を雇用する場合 |
法的な届け出が非常に多いように感じますが、必ず出さなければならないのは営業許可申請書だけです。
そのほかは、店舗の面積や収容人数、従業員雇用の有無によって異なるので、まずは自分が開業しようとしている店舗では、どのような届け出が必要になるのか確認しておきましょう。
なお、アイスクリーム店は店舗の面積が狭いので、基本的には「防火対象物使用開始届」は必要なく、深夜の酒類提供もないので「深夜酒類提供飲食店営業開始届」も必要ありません。
アイスクリーム店開業に必要な資格
アイスクリーム店開業に必要な資格は、基本的に以下の2つだけです。
-
- 食品衛生責任者(必ず)
- 防火管理者(収容人数30人以上の場合は必ず)
飲食店は「調理師免許を持っていないと開業することができない」というイメージがありますが、実は調理師免許は必須条件ではありません。
飲食店開業に必要な資格は食品衛生責任者という資格です。食品衛生責任者の資格は、以下のいずれかの条件を満たせば誰でも簡単に取得できます。
-
- 食品衛生責任者養成講習会を受講する
- 栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格を保有している
毎月定期的に保健所が開催している「食品衛生責任者養成講習会」を受講すれば誰でも取得することができるので、まずは保健所へ連絡して食品衛生責任者養成講習会に参加しましょう。
また、アイスクリーム店を開業するためには、アイスクリーム店だけに必要な特別な許可があります。それが二種アイスクリーム類製造業です。
これは、店頭でソフトクリームフリーザーを使用してアイスクリーム類を製造し、直接消費者に販売する場合に必要な許可です。
この許可を得るためには、以下の基準を満たす必要があります。
-
-
1.施設には製造室を設けること
2.製造室は他の場所と壁、窓又は戸により区画されていること(※ただし、屋内における客用の場所との区画については、カウンター又は陳列ケースを用いることができる)3.製造室には清掃がしやすく、かつ、じんあい等が落下しない構造の天井を設けること
4.製造室の内壁は、床面から1メートルまでは耐水性材料で、清掃又は洗浄をしやすい構造であること5.製造室の床は耐水性材料で造られ、平滑で、清掃又は洗浄をしやすい構造であること
6.製造室の作業面における照度を、100ルクス以上に保ち得る照明設備を設けること
7.製造室には手指の消毒設備、又は消毒器具及び流水式手洗い設備を設けること8.製造室にはねずみ・昆虫等の侵入を防ぐ設備を設けること(※ただし、製造室の周囲にねずみ・昆虫等の侵入を防ぐ設備があるときは、この限りではない)
9.製造室には食品・添加物・器具、又は容器を保管するための保管庫、ふた付き容器を備えること10.製造室には食品・器具、又は容器を洗浄するための流水式で下洗いと仕上げ洗いを区分して行うことができる設備を設けること
11.製造室には食品に直接接触する器具、又は容器の殺菌、消毒ができる設備を設けること
店舗にこれらの設備が導入されていることが確認された場合のみ、「アイスクリーム類製造業」の許可を得ることができます。
さらに、飲食店で「収容人数30人以上の店舗」では、防火管理者の選任が義務付けられています。防火管理者は、店舗の広さに応じて甲種(300㎡以上)と、乙種(300㎡未満)の2つの種類があります。
いずれも消防署で講習を受ける必要があり、甲種であれば2日間の講習、乙種であれば1日間の講習を受ければ取得可能です。
ただし、アイスクリーム店は面積が狭いことがほとんどですので、よほど広い飲食店でない限りは、防火管理者の選任は基本的に必要ありません。
防火管理者の選任が必要な場合は、最寄りの消防署へ連絡しましょう。
アイスクリーム店に最適な立地・物件・設備とは?
アイスクリーム店を開業するためには、必ず店舗を借りなければなりません。
物件選びのポイントは2つです。
-
- 立地:都市部であれば駅前、地方であれば駐車場付き
- 設備:できれば初期投資を抑えることができる居抜き物件
アイスクリーム店の店舗選びや、必要な設備について詳しく解説していきます。
立地
アイスクリーム店にとって立地は非常に重要だと言えます。
「アイスを食べたい」と思った時にすぐに入れる場所か、店舗の看板を見て「アイスを食べたい」と思ってくれる人通りの多い立地であることが重要です。
都市部であれば駅前の方が集客できますし、地方では国道などの幹線道路沿いの車通りの多い場所で、駐車場が確保されていた方が無難です。
また、人が多く集まる商業施設内のテナントも有力な立地の1つでしょう。業種ごとに適した立地の選び方については、以下の記事で専門的に解説しています。
物件探しの手順
自分が開業したいエリアは決まっても、実際に店舗を探すための手順が分からないという人も多いのではないでしょうか?
物件探しは以下の順番で行うのがよいでしょう。
2.不動産会社へ訪問するかネットで最適な条件の不動産を探す
3.不動産会社へ問い合わせて内見をする
4.申し込みを行う
5.入居審査を受ける
この中で最も重要な点は、「不動産の条件」です。
-
- 都市部の飲食店→駅に近い
- 地方の飲食店→郊外で駐車場が広い
- お酒メインの飲食店→駅に近い
- ファミリー層がターゲットの飲食店→郊外で駐車場が広い
など、自分の飲食店のカラーに最適な条件を検討し、それに見合った物件を探しましょう。
なお、できる限り設備投資にお金をかけないためには、内装をそのまま使うことができる居抜き物件を探すのがおすすめです。
設備(ハード面)
店舗の設備を具体的に検討する前に、まずは営業許可を取るための「店舗の条件」を確認しましょう。営業許可を得るための基準は地域で異なりますが、主に以下のような基準があります。
-
- 扉付きの食器棚を設置すること
- 厨房の床の水はけがよい
- グリストラップがある
- 厨房と客席が扉などで区分けされている
- 厨房内に「2槽シンク」が設置されている
- 厨房内とトイレにそれぞれ「手洗い場」が設置されている
- 厨房内に冷蔵庫などの設備が収まっている
- 冷蔵庫・冷凍庫に温度計が付いている
- 虫やネズミの侵入を防ぐため窓に網戸が設置されている
また、アイスクリーム店の場合は「二種アイスクリーム類製造業」の許可を得るために、製造室を設けるなどの特別な基準があります。
保健所は開業する前に「事前相談」というものを受け付けています。事前相談において開業するための設備の条件を確認し、間違いのないように設備を揃えましょう。
設備を揃えた後に、保健所へ「営業許可申請」を提出すると、保健所の担当者が実際に店舗へ検査に訪れます。検査の結果、設備に問題がなければ晴れて営業許可を得ることができます。
アイスクリーム店開業のために必要になる調理器具は、主に以下のようなものです。
-
- 冷蔵庫
- アイスクリームマシン
- アイスクリームサーバー
- 冷凍庫
- 作業台
- 洗浄設備
- 製氷機
アイスクリーム店は、飲食店の中では調理器具にそれほどお金がかからない業種です。しかし、それでも新品で揃えれば100万円〜200万円以上になってしまいます。
予算を抑えたい場合には、中古調理器具屋などで揃えれば、10分の1程度の価格に抑えられることも珍しくありません。
状態がよく価格が安いものを探すことで、開業資金を大幅に抑えることができます。
設備(ソフト面)
厨房機器や食器以外に、アイスクリーム店開業のために用意するものは以下のとおりです。
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- メニュー表
- ナプキン
- カップ
- コーン
- スプーン
- お釣り・決済サービスの導入
- 感染防止の設備
メニュー表などは、広告代理店等に頼むと10万円以上かかるので、自分で作るか「ココナラ」などでデザイナーに直接依頼するとよいでしょう。
この他、コーンなどを購入する業者も必要であれば事前に契約します。
カップやナプキンなどは、店名を入れたオリジナルを作成できますが、オリジナル商品はコストが高くなるので、最初のうちはネットで安く大量に仕入れられるものを使用してもよいでしょう。
アイスクリーム店のユニフォームはエプロンを揃える程度で、その他の服装はカジュアルでおしゃれな私服でも全く問題ありません。店舗の方針によってユニフォームを着るか、私服で営業するかを自由に決めましょう。
なお、お釣り用の小銭やキャッシュレス決済サービスの導入なども忘れないように準備してください。
アイスクリーム店開業前に見つけるべき仕入先
フランチャイズであれば仕入れ業者などは全て本部が用意してくれますが、自分でアイスクリーム店を開業する際には、仕入先を探すことが非常に重要です。
コンビニアイス・フランチャイズと差をつけるために仕入先にこだわりましょう。アイスクリーム店に必要な仕入先として、以下のような業者が挙げられます。
-
- フルーツ店・八百屋・農家
- 乳製品
- 酒屋・ソフトドリンク
- 資材屋等
アイスクリーム店の場合、「どんなアイスクリームを販売するのか」によって仕入先は大きく異なります。
一般的なフルーツと乳製品だけのアイスクリームであれば、仕入先にもそれほど苦労しませんが、ピスタチオやナッツなどのこだわったアイスを作るのであれば、取り扱っている業者を探さなければなりません。
また、「農家直送」などにこだわりたい場合には、素材に使用する果物や野菜を作っている農家と直接契約するなどの方法も検討しましょう。
アイスクリーム店は、コンビニやチェーン店との差別化を図るためのメニューが大切です。
「どんなアイスを作るのか」→「必要な素材は何か」→「どこから仕入れるのか」という順番で仕入先を探しましょう。
アイスクリーム店の集客方法
アイスクリーム店を地域に知ってもらうためには、最初はある程度の費用をかけて広告を出しましょう。有効な広告は地域によっても異なりますが、基本的には以下5つの方法があります。
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- チラシ
- 割引券の配布は効果あり
- 地域のコミュニティペーパー
- Twitter、Instagramアカウント作成
- 食べログやぐるなびなどのサイト活用
最初はある程度お金をかけて、多くの人に店舗を知ってもらうことを心がけましょう。広告によってある程度店舗の知名度が広がったら、少しずつ広告費を落としていくのがおすすめです。
飲食店は、初見客は広告を見て興味本位で来店し、2回目の顧客は味や口コミで来店するので、お金をかけるのは最初だけで十分です。
また、駅前のアイスクリーム店なら、店舗の近くで「割引券付きの広告」などを配布するのも効果的でしょう。
アイスクリーム店の採用方法
オープニングスタッフを採用するかどうかは、店の規模に応じて決めましょう。
人件費は店舗経営における最も大きな固定費になるので、1人または家族で店舗が回るのなら、オープニングスタッフをあえて雇用する必要はありません。
特にアイスクリーム店は店舗が狭いので、1人で回している店がほとんどですので、あえて人を雇う必要性はないでしょう。
採用する場合には知り合いへの声かけがベストです。求人サイトは掲載料金がかかるので、まずは無料で採用できる方法を考えましょう。
また、忙しい時だけ雇うことができる「タイミー」などのアプリを活用することで、固定費を圧縮しつつ、繁忙日だけ人を雇うことができます。
アイスクリーム店の資金繰り
アイスクリーム店を開業する人の多くが銀行や日本政策金融公庫の開業資金融資を利用しています。飲食店の資金調達について、詳しくは以下のページに記載していますが、基本的に開業資金をフルローンで借りるのは難しいので、必要総額の3割程度の自己資金が貯まってから開業準備をしましょう。
また、飲食店は売上が即現金になる「現金商売」です。そのため、毎日の売上をしっかりと管理し、手元に現金があるからと言って浪費しないことが最も重要になります。
アイスクリーム店は売上が毎日コツコツ入り、月末に支払いがまとめて来るということをよくよく念頭に入れて、日々の資金繰り管理に努めましょう。
なお、最近ではキャッシュレス決済を導入している飲食店も増えています。
キャッシュレス決済では売上金の入金があるのは数日後から数週間後になり、仕入れ資金等が不足する可能性もあるため、一定の運転資金は常に手元に確保しておきましょう。