自己資金で始めたランサーズがなぜ資本業務提携をしたか

創業手帳

ランサーズ株式会社代表取締役社長 秋好陽介氏インタビュー

ランサーズがクラウドソーシングサービスを開始した2008年当時、国内には類似サービスが1件もなく、成功するという確約もなかった。
創業時のランサーズはどのように資金を集め、事業を展開してきたのでしょうか。
また、サービスが成長してきた今、資金調達についてどのように考えているのでしょうか。

創業からこれまでの資金調達について、ランサーズ株式会社代表取締役社長の秋好陽介氏に話を伺いました。

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秋好 陽介(あきよし・ようすけ)
1981年大阪府生まれ。大学在学中にインターネット関連のベンチャービジネスを起こし、卒業と同時にニフティ株式会社に入社。
複数のインターネットサービスの企画運営を担当する中で個人と法人のマッチングサービスを思い立ち、2008年4月に株式会社リート(現ランサーズ株式会社)を創業。
同年12月、インターネットを通じてフリーランスの働き手と企業をつなぐクラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」の提供を開始し、国内最大規模のサービスに育て上げた。

自己資金でまかなった創業期

ー資金調達について聞かせてください。
創業時の資本金はすべてご自身で用意したそうですね。

秋好:創業時は前職のニフティで働いた給料をほとんど注ぎ込み、4年間ぐらいは100%自己資金でやっていました。

自分自身がエンジニアなので開発などはコストをかけずにできましたし、当時は国が運営する月5万円ほどのインキュベーションオフィスを借りていたので、それほど資金は必要なかったんです。

仮に今、ランサーズのような新たなサービスを日本で最初に始めたら、エクイティ(株式等によって調達された返済義務のない資金)での資金調達ができたかもしれません。

しかし創業当時の2008年はリーマンショックが起きたということもあり、そもそもVC(ベンチャーキャピタル)から調達するという選択肢はほぼありませんでした。

また、僕自身がかなり慎重派タイプなので、人様のお金を預かるからには恩返しをしないといけないと思い、無責任に成長しますとは言えなかった。

自分は可能性があると思っていても、一方で本当に成長するか分からないというタイミングだったので、まずは自己資金で始めました。

ー自己資金で始めたランサーズですが、創業から5年後の2013年5月には、グロービスとGMOを引受先とする3億円の第三者割当増資が話題になりました。
資金調達をしようと思ったきっかけは?

秋好:サービスがある程度成長してきて、これ以降も伸び続けるというイメージが沸いてきたというところが大きいですね。

VCから調達しても恩返しできるイメージがあったというのと、明らかに成長してきているので、この成長スピードを最大化しないとユーザー様やこれから入ってくる社員、仲間たちにも申し訳ないなと。

100%株主にこだわる理由はないと思い、成長の方の優先度を高くしました。

自分だけの想いだけじゃないことを実感

ーヘビーユーザーの方からも意見をもらったそうですね。

秋好:ある時ユーザー様から「このサービスで食べているので、そういう人がいるということを分かって欲しい」という趣旨のメールをいただきました。

そこで、ランサーズはもはや自分の想いだけでやっているのではなく、いろいろな方の生活を支える基盤になっているんだと思ったのも1つのきっかけです。

ちょうどその頃、2011年の震災後ぐらいからだんだん働き方に対する世の中のトレンドが変わってきて、企業の発注スタイルにも新しい向きがあったかなと思います。

今でこそクラウドソーシングはたくさんありますが、2008年に始めた当初はランサーズだけで、誰も見向きもしないという暗黒時代が2年ぐらいありましたから……。

ーやっと時代が追いついてきたという感じですね。

秋好:そうですね。最初は売り上げも月10万円ぐらいだったので、KPI(目標の達成度合いを計る定量的な指標のこと)の管理表を見るのが嫌で嫌で仕方がなかったです。

最初の2年間は、ほぼ売り上げがない状態でしたから。

2年経ってようやく週に300〜400件程度は仕事が来るようになりましたが、1件で受け取る手数料は微々たるものなので、事業としてやりくりするにはなかなか難しい。

当時は1万円の重みをすごく感じていて、この1万円を稼ぐのにどれだけ大変だったかと思うわけです。

ゴミ箱の中のゴミさえも自分のものだと思っていましたからね(笑)。

ーそれでも続けられたのはなぜでしょうか。

秋好:資金がギリギリ底をつかなかったということと、何よりランサーズの可能性を信じていましたから。

資金調達で大事なことは資金だけではない

ー現在はグロービスとGMOだけでなく、KDDI、インテリジェンス、コロプラ、グリー、オプトといったさまざまな企業と資本業務提携を結んでいます。
ランサーズとしての資金調達の考えを聞かせてください。

秋好:応援してくださって、かつバリューアップできる株主を、という考えのもとで提携先を選んでいます。

これまで資金だけを出してくださるというご提案もありましたが、それらはすべてはお断りしてきました。

基本的には、サービスを一緒に育ててくださる方というのがポイントになっていて、事業会社でバリューアップしてくださるところ、

事業の資本提携をしていただける先とやっています。

あとは相性が合うところですね。
ランサーズの事業のことを分かって「時間と場所にとらわれない新しい働き方」に共感してくださる方。

株主は離婚できない結婚のようなものなので、あとで違うと思ってもなかなか離れられないものだと考えています。

資金業務提携のメリット

ー資本業務提携のメリットはどうお考えですか?

秋好:応援団が増えるという意味では大きいですね。

皆さん利害関係者なので、ランサーズの圧倒的な応援団なんですよ。

ランサーズで言うと、社長が一気に7人になったようなものです。

以前は株主が増えることによって面倒なことが出てくるかもしれないという考えも持っていましたが、それよりも仲間が増えるということの方がメリットとしては大きかったですね。

ーこの先も他企業との資本業務提携は考えていますか?

秋好:今後はよほどのことがない限り、資本業務提携は行わないと思います。

ただしIPOも視野に入れていないわけではないので、一般株主は増えるかもしれません。

個人のランサーさんは一番身近にいる利害関係者なので、ランサーさんたちが株主になって応援してくださったりすると嬉しいですね。

我々は2008年からこの事業をやっているので、儲けではなく本当にやりたくてやっているということが昔からのユーザー様には伝わっているようで、そこを応援してくれる方が多いんです。

何も使われていないような最初の2年間を知っているユーザー様は特にそうですね。

今日も古くからのユーザー様が突然子供を連れてオフィスに来て、「このサービスのこの機能をやってみたけどできなかったので直接伝えます」と言いに来られましたよ。

起業家が資金調達するなら用途によって使い分けるべき

ーでは、資金調達に関して振り返ってみて、あの時ああすれば良かったということはありますか?

秋好:あえて挙げるとするなら、もう少し事前にエクイティファイナンスを勉強しておけば良かったということでしょうか。

自分がよく分からないことには手を出さないタイプなので、当時は相当勉強しました。

それをもう少し分散して、前倒して勉強しておけば良かったかなと思います。

弁護士より詳しいんじゃないかというぐらい調べましたからね(笑)。

でも逆にそのぐらいです。

ー起業したばかりの創業者に向けて、資金調達についてアドバイスをお願いします。

秋好:場合によっては、デット(融資)でやった方がいいケースもあるのではないかと思います。

僕らはあまりデットは使っていませんが、何でも株式でやることがいいことではない。

例えばオフィスを借りるのにエクイティでやる会社もありますが、成長するための投資ではないのでそれは融資でやっても良いと思います。

性質によって使い分けるのがベストではないでしょうか。

(取材先:ランサーズ株式会社)
(創業手帳編集部)

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