【第3回】サイボウズ 青野 慶久社長独占インタビュー!なぜ「出戻り」ができる会社にできたのか?

創業手帳
※このインタビュー内容は2015年09月に行われた取材時点のものです。

離職率を28%から4.7%まで引き下げたサイボウズのワークスタイルとは

(2015/09/10更新)

3人の若者によって1997年に創業されたサイボウズ株式会社は、創業以来「世界で一番使われるグループウェアメーカー」を目指し、あらゆるチームのチームワーク向上に貢献するグループウェアを開発・提供してきました。国内のグループウェア市場でシェアNo.1を誇る同社は、どのような過程を経て成長を遂げてきたのでしょうか。
創業メンバーの1人である代表取締役社長の青野慶久氏に近年注目を集めているサイボウズの社内制度などについて話を伺いました。

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青野 慶久(あおの・よしひさ)

サイボウズ株式会社代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)に入社。BA・セキュリティシステム事業部営業企画部での勤務経験を経て、1997年に愛媛県松山市にサイボウズ株式会社を設立、取締役副社長に就任。2005年4月より現任。社内制度においてもグループウェア活用によるワークスタイル変革を推進し、多様な働き方を実現している。自身も3児の父として3度の育児休暇を取得。

社長ではなく社員が制度をつくっていく会社

ーサイボウズでは、一時期離職率が28%になったこともあったと聞きました。結局4%にまで下げることができたそうですが、当時はどのような状況だったのでしょうか?

青野:事業を拡大していくにつれ、そもそも何がやりたかったのか分からなくなってきてしまったんです。

最初に思い描いていた「Webのソフトウェアで食えるようにする」ということはある程度やってしまった感がありました。そのため、この先どうするかというところを再構築する必要があったんです。

そこからM&Aをやったりして自分探しの旅をしながら、やっぱりやりたいことはグループウェアだと実感しました。グループウェアの力でチームをもっと楽しくしたい、世の中にあるたくさんのチームが良くなるためのことをやりたい、と逆にギュッと絞ったんです。

それを軸に、もう一度会社の制度や風土を作り変えていきました。そうすると、それに共感する人は集まるし、共感しない人は去っていきます。最初は去っていく人の方が多かったですが、そのうち残る人の方が多くなり、今のように辞める人が少ない会社になりました。

それどころか、今では辞めても戻って来たりしていますね(笑)

ーサイボウズを辞めてから6年間は自由に戻ってこられるという「育自分休暇制度」ですね。サイボウズの社内制度は製品と同じぐらい注目されていますが、どのような考えのもとで制度が増えていったのでしょうか?

青野:決して狙ってやっているのではなく、基本方針は「説明責任・質問責任」という考え方なんです。

社員に求められているのは「質問責任」を果たすことです。制度にかぎらず、何でも疑問に思ったら人事や上長、社長に質問すること。それに対して人事や上長、社長は必ず説明責任を果たすこと。お互いが義務を果たすことで信頼関係が生まれ、よりよい制度が生まれるという考え方です。

実は僕が考えた制度はほとんどありません。例えば、子供がいるママさんから育休を延ばして欲しいとか、自宅で働かせて欲しいとか、副業させて欲しいとか、みんなに言われるがまま良い方法を探していたら、自然と制度が増えていきました。

逆に社員の意見が入っていない制度はないですね。意見が上がってくると社内でワークグループが開かれて、議論の過程は全社の掲示板で見ることができます。

そうすると誰もがその議論に参加できますし、制度ができた時点で使いたい人は言いたいことを言っているので、理解ができている分、成功確率は高いです。僕が思い付いた案はよく却下されますよ(笑)

ー例えばどんなものがあるんですか?

青野:ママさんたちが子供を保育園に入れるのが大変だと言うので「サイボウズの中に保育園を作ったらどうか」と提案したら、「逆に満員電車でここまで連れてくるのが大変です」と。褒められるつもり満々だったのに「青野さんは実情が分かっていません」と言われましたよ(笑)

良い会社は社内の情報がオープンになっている

ー今は青野さんご自身が育休中ですよね?

青野:制度は作るだけではダメで、こうすればうまく使えるということをいろいろな人が率先して使っていく必要があるんです。私自身は本当は仕事が大好きでまぶたが落ちるまで働きたいタイプですが、そこを頑張って毎日16時退社にして子供の保育園のお迎えをしています。

私が16時に帰るのを見たら、社員は制度を使いやすくなります。たいてい長時間残業なんかは、上司が帰らないから部下が何となくやってしまうんです。

ーサイボウズでは、今後も新たな制度作りに取り組んでいく予定ですか?

青野:まだできていないのは障害者雇用です。障害者雇用だけは絶対にやらなくてはいけないと思っています。

今は採用してその人の一生をどこまで背負っていけるかというところを考えすぎてしまって、なかなか採用しきれないんです。すでに何人かはいらっしゃいますが、今はまだ狭き門になっています。

ー最後に、起業家にどのようにグループウェアを使ってもらいたいか、ひと言お願いします。

青野:グループウェアをうまく使う会社はいい会社なんですよ。

グループウェアで情報を共有するということは、情報を隠さないということですよね。社長しか知らない情報を他の人とも共有しよう、営業しか知らない情報を開発の人とも共有しようということなのです。そういったオープンな文化があるとグループウェアがとても有効に使えると思います。

ところが個人主義で自分の情報をあまり見せたくないという社風だと、残念ながらツールがあってもうまく使えません。ですから、グループウェアと合わせてインターネット時代らしいオープンな社風を作って欲しいなと思います。

社長一極権限集中のように社長しか知らないことがあるのではなく、情報をシェアすることによって21世紀らしい会社にしましょう。それをぜひ合わせてやっていただきたいですね。

(取材協力:サイボウズ株式会社
(編集:創業手帳編集部)

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