代表取締役 大久保幸世インタビュー
(2014/4/22更新)
今回は創業手帳株式会社 代表取締役の大久保に、創業手帳に対する想い、今後のビジョンについて話を聞きました。
創業手帳株式会社 代表取締役社長
明治大学経営学部卒業後、外資系保険会社、株式会社ライブドア、株式会社メイクショップ(GMOグループ)で経験と実績を積み重ね、創業手帳などで注目されている創業手帳株式会社(旧ビズシード株式会社)を創業。「日本の起業の成功率を上げる」を企業ミッションとしている。
もったいない潰れ方を無くし日本経済を少しでも回復させる
大久保:日本で会社を作ると一ヶ月くらいで必ず創業手帳というものが送料も含め無料で届く、というサービスをしています。日本は月間で約1万社ができて約1万1千社が倒産しています。
創業時に何をすべきか、例えば起業するときに営業のプロ、財務のプロなどが創立メンバーにいたとしても、全体をプロレベルにカバー出来ている状況ではないというケースが多いです。会社というのは弱点があると存続が難しくなってきますよね、そこをカバーしていくのが創業手帳です。
実は、日本には行政のものから民間のものまで多種多様な創業支援がありますが、十分に知られていないものも多く機会損失が発生しています。そこで、それらを分かりやすくまとめて、毎月最新情報に改定し、無料でお届けしているのです。起業の世界というのは変化の激しい世界なので、それに対応する為に常に最新の状態である必要があるんです。
そしてもう一つ、会社の母子手帳と謳っております創業手帳ですが、全国約700のシェアオフィスにも毎月最新版をお送りし、オフィスの共有スペースなどに設置してもらっています。
全国には約1,000のシェアオフィスがあるので、日本国内のシェアオフィスに行くと高い確率で創業手帳が置いてあります。
その他にも、官公庁や市役所の創業支援課、銀行、地銀、税理士様、そしてWebからも希望者の方には創業手帳を無料でお送りし、使って頂いています。
起業に興味がある方、起業された方は是非、創業手帳Webからお取り寄せをしていただければ、と思います。
創業手帳は冊子の他にも、Web、Facebookページがあります。Facebookに関しては、約一年でファンを28,000人獲得していて、これは大手有名経済誌を上回っています。それからセミナーを日本中で月に4回、創業を支援される機関と提携して、無料で実施しています。
大久保:日本というのは先程申し上げた通り月間で約1万社会社が新しくできているのですが、その中で、創業後1年間で約3割の会社がなくなるという統計があります。
世間には創業数を上げようという所は幾つかあります。しかし我々は、その創業された会社の成功率、存続率を上げよう、ということに重きを置いています。なぜかというと、世間的にも起業の数が増えることは非常に大切な事なんですが、創業の成功率が上がるということも、大切な事だと思っているからです。
創業の成功率が上がる事によって創業にトライする方が増え、世の中で創業に対する認知も増える。廃業している会社の中の約2割の、本来素晴らしいサービスを提供しているのに、ちょっとしたノウハウを知らかなったが故に失敗してしまうような、もったいない会社をセーブすることができれば、創業数が廃業数に追いつくか、逆転する。会社が増える事によって雇用も増える、そうすると日本経済が今よりも少しは回復するんじゃないか。そういう社会を実現したいんです。
前職の延長線上にあった創業手帳
大久保:私は、起業する前に前職のGMOメイクショップという会社で、約二万社の中小企業にEコマースのシステムを提供する仕事をしていました。その中で始めたばかりの会社というものは、潰れる可能性が高いという感覚があったんですね。
そこで、潰れる会社を減らし会社の存続率を上げる為の取組みを、前の会社でしていました。そして、これを応用して日本の全ての起業家に対し、創業の成功率を上げる為に提供できないかと考え、2014年4月に起業しました。
今は約1年半経った所ですが、東京、大阪、福岡、セブに4つの拠点があり、今後は日本中に広げていきたいと思っています。また、従業員数は海外支社、インターン含め総勢57名になります。
それから国内、国外合わせて10以上のサービスを展開しています。一つは創業手帳、それから女性の起業家を支援する創業手帳woman、起業家向けのポータルサイトを複数運営、これからは飲食店開業手帳なんかを展開して行く予定です。
国外に向けてはアメリカ人がアメリカで起業するためのガイドブック「Founder’s Guide」を作っています。Founder’s GuideはFacebook版が半年で7万人以上のファンがつくなど順調なのですが、世界で一番広告市場が大きいのはアメリカで、メディアとしてアメリカで成功している日本の会社はあまりないんですね。
GoogleにしてもFacebookにしても中国が伸びてきているとは言え、アメリカ市場が一番大きい。アメリカで勝ち残れると次はその他英語圏の国にも応用出来る。というのが非常に大きいんですね。そしてある程度言語が似ているヨーロッパにも入るとインターネット、メディアの世界においてはプラットフォームになっちゃうんですね。
日本のベンチャー企業というのは、国内市場というのが頭にあるケースが多いんですが、我々としては世界市場というのが頭にあります。そう考えたときに中心になるのは英語圏であり市場の大きいアメリカであると思っています。前職の延長線上で起業した、やるべくしてやったという感じですね。
「多角化」ではなく「多角度化」
大久保:我々は10以上の事業を展開しているという事で、一見色んな事をしている様に見えるかもしれませんが実は多角化という事は行っておらず、多角度化という事をしています。多角度化とは我々が使っている言葉で、起業家という1つのマーケット、市場に対して色んな角度からアプローチをしていくことを意味しています。
例を挙げると我々は、冊子、セミナー、Web、シェアオフィスのポータルサイト、士業のポータルサイトを起業家に対し連携を取りながら運営しています。そうするとそこでは相互の相乗効果、いわゆるシナジー効果が生まれてくるので非常に効果的な物になるんです。
大久保:全くないです。
まず私自身に経営という分野での事業の経験があったのでそれを活かし、創業手帳をすぐに軌道に乗せました。そして最初から世界展開しようと決めて、ボーングローバル企業という形態をとっています。実際に半年で海外市場にも手をつけ世界展開を始めました。
これは日本で固まってしまって、日本の本社と海外の子会社という形になってしまうと、戦っていけなくなるという懸念があるんですね。どういうことなのかというと海外市場というのはやっぱり難しい。日本には日本の市場というのがあって、これはアメリカ人からしたら難しいし、アメリカはアメリカで世界市場なので競争が激しいんですね。
なので日本の特殊なやり方の下にある、というやり方だと通用しないと思ったので、創業手帳とFounders guideにほぼ同じくらいの力を持たせようとほぼ同時進行で進めています。日本とアメリカで双子の兄弟といった形ですね。
効率化を目的とした休暇、冬季は10連休
大久保:創業直後に関して言うと、色んな知り合いや、色んなつながりを使って集めました。
メンバーからしたら、まだ信用も知名度もないベンチャー企業ですので、会社のビジョンや、実現したい事に賛同してもらえるメンバーを募りました。
大久保:ベンチャー企業に良く見られる事で、例えば仕事が遅れている時に徹夜をして解決しようとするなど、単純な頑張りによってカバーしようとして、根本的な解決がされない為に、結局、悪循環が生じてしまうというケースがあります。
しかし我々は、土日はきちんと休む、残業もあまりない、冬季に10連休など長期休暇も作る、その他にも社内カフェがある、などの体勢がとれていますので、環境的にはとても良いと思います。
しかし、その休みを作ること自体を目的とはしていなくて、仕事の効率や生産性を上げようとすれば、業務の仕組み化や、計画的に分業する必要性がでてきます。そしてそれを実行する事によって色んな事が効率化されて改善されていくんです、そうすると休みもきちんととれる様になるんですね。
そしてもう一つ言えば長く仕事を休むという事は、その間誰かに仕事を任せないといけないという事が起きてきます。その過程において仕事をマニュアル化する必要性が出てきます。これは、仕事のやり方を見直して無駄を省く事や、問題を事前に防ぐという事にも繋がって来るんです、そういう事も見通した上で今の環境を作ってきました。
すべきかすべきではないかで考える
大久保:我々はブルーオーシャン戦略を持った企業ではあると思うんですが、それは結果であって市場がブルーオーシャンであるという事はあまり意識していないです。
どういうことかというと、おいしい市場を見つけて事業を始めて、そのおいしい市場に人が入ってきてレッドオーシャンになった時にその事業をやめますか?という話で、例えばこの市場は競合が多いから不利とか少ないから有利だという考え方で事業を決めるべきではなくて、するべきかするべきではないかで考えています。
人が難しくて手を出さなかった結果、ブルーオーシャンであるということもあると思うんですね。つまり、ブルーオーシャンということ自体を目的にはしていなくて、するべきだと思ったことを事業化したという感じですね。
大久保:自分の経験の延長線上と、ニーズの延長線上にあったものなので、できるだろうと始めたものです。それ以上に大きいのは、これは世の中になくてはならないと思ったことです。
創業の現状は非常にもったいないという現状にあるので。経営者も人間なので、成功したなどの良いことは言うんですが、困ったことなどの悪いことは言わないことがあるんです。つまり廃業する会社は同じようなことで悩んでいたりするんです。
それを情報として集め、ベースとなるような物を作るべきではないか?各々がバラバラに同じようなことを悩んでいるのはもったいないのではないか?そしてそれを提供することで全部解決できなかったとしてもある程度軽減できるだけでも意味あることなのではないか?そして創業手帳はその役目を果たせるの物なのではないか。というのが私の考えです。
そして、創業手帳自体を、社会にとって、より意味のあるものにしていきたい、その過程において良い会社が作れるとか色んな人が幸せになるとどういう社会になるか、という未来を私は想い描き、日々挑戦しています。
(取材協力:創業手帳株式会社/大久保幸世)
(編集:創業手帳編集部 石橋)