令和5年分「給与所得の源泉徴収票」エクセル・e-Taxでの書き方・作成方法【年末調整】

創業手帳

源泉徴収票を自分で作る時の注意点とは?

「源泉徴収票」というと、サラリーマンが年に1度もらうあの紙のことでしょう、とイメージされる方も多いですよね。しかし、源泉徴収票を使う場面はあまり多くはないため、もらってもなんとなく見ていただけの方もいるのではないでしょうか。

今回は、源泉徴収票を作成する側になった経営者のために、基礎知識と作成方法について解説していきます。

創業手帳冊子版では、源泉所得税の納付時期などを掲載した「税金イベント一覧」をご用意しています。その他、資金調達や会計関連の記事など創業前後に役立つコンテンツが盛りだくさんですので、ぜひご利用ください。無料でのご提供となります。

確定申告初心者の方必見!「確定申告ガイド(無料)」を配布中。確定申告の最新情報、インボイス制度で消費税納付が必要になった方、電子申告のメリットなど、詳しく解説しています。もちろん基本的な部分、申告書類の作成方法なども分かりやすく記載。こちらのガイドを使って、確定申告に挑みましょう。


※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

源泉徴収票の基礎知識

従業員などに支払う毎月の給与や、給与から天引きした社会保険料、各種控除などを計算する「年末調整」

「源泉徴収票」とは、この年末調整の結果をまとめた、所得税額を証明する書類です。書類には、1年間のうちに支払われた給与の総額、源泉徴収した所得税の額をそれぞれ記載します。

源泉徴収義務者には源泉徴収票を発行する義務があり、もし源泉徴収票を発行しなければ、従業員が年末調整などの手続きができなくなってしまいます。
場合によっては税務署からの指導が入ることもありますので、源泉徴収票は必ず発行しましょう。

国税庁が提供する「給与所得の源泉徴収票」にしたがって作成すれば、自力でも源泉徴収票を作ることが可能です。

年末調整のやり方について、詳しくはこちらの記事を>>
年末調整のやり方が丸わかり!書き方、計算方法、注意点などを解説

源泉徴収票は誰が対象になる?

源泉徴収票は給与を支払ったすべての人間に発行します。これには役員も該当します。
また、源泉徴収はフリーランスなどの報酬でも行いますが、源泉徴収票は発行せず、かわりに「支払調書」というものを発行します。
支払調書は交付の義務がないため、求められたときに発行するものです。

税務署への提出が必要な場合がある

特定のケースにおいては、源泉徴収票を税務署に提出する必要があります。書面だけでなく、e-Taxや光ディスク(CD、DVDなど)で提出することも可能です。

提出期限は、支払いの確定した日の属する年の翌年1月31日となります。事業所の所在地を管轄する税務署に提出してください。

税務署に源泉徴収票を提出する特定のケースについて、「年末調整をしたもの」と「年末調整をしなかったもの」に分けて紹介します。

年末調整したものの場合

  • 法人の役員(現に役員をしていなくても、その年中に役員であった者を含みます。)については、その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの。
  • 弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの。
  • 上記以外の者で、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの。

年末調整しなかったものの場合

  • 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、その年中に退職した者や、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた者については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの(ただし、法人の役員については、50万円を超えるもの)。
  • 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、その年中の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかったもの。
  • 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった者で、給与所得の源泉徴収税額表の月額表又は日額表の乙欄又は丙欄の適用者については、その年中の給与等の支払金額が50万円を超えるもの。

源泉徴収票を自分で作る場合の手段は主に4つ


源泉徴収票は、「エクセル」「e-Tax」「クラウド給与計算ソフト」「アウトソーシング」の4つの作成方法があります。

エクセル

「源泉徴収票 エクセル」などで検索すると税理士事務所などが公開しているエクセルのテンプレートがいくつか出てくるはずです。
会社情報や、給与、従業員情報などを入力することで源泉徴収票が作れる便利なテンプレートです。
しかし、計算結果が合っているという保証はないため、自己責任で使いましょう。

e-Tax

e-Taxは、国税庁が提供している国税電子申告・納税システムです。
源泉徴収票等作成ソフトのインストールには利用者識別番号と電子証明が必要になります。利用者識別番号は、e-Taxを利用するための開始届出書を税務署に提出することで取得できます。
e-Taxを使えば、様式にそって必要事項を入力するだけで源泉徴収票を作成することが可能です。
また、支払者の氏名や住所などが自動で表示されるので入力の手間を省くことができます。提出に関しても、そのままインターネットを通じて税務署に提出することができるのでわざわざ窓口まで行ったり、郵送する手間がかかりません。

e-Taxはセットアップするまでにやや手間がかかりますが、実際の税務関係の作業の際にはとても便利なシステムなので、早めの導入を検討してみてください。

e-Taxの使い方について、詳しくはこちらの記事を>>
e-Taxの使い方とは?確定申告や納税もオンラインで手続きがスムーズに!

クラウド給与計算ソフト

クラウド給与計算ソフトは有償のものがほとんどですが、給与計算にかかわる事務作業が大幅に楽になります。

まず、日々の勤怠データや従業員情報から給与を自動で計算してくれます。
源泉徴収票を作成する際にも、従業員情報を活用して簡単に作成することができます。

また、クラウド上でデータを管理するため、パソコンの故障などでデータを失う危険性がありません。
もし作業上わからないことがあっても、各社チャットやメールでのサポートも充実しているため、安心して使うことができます。

【おすすめサービス】

ソフト導入の際は、社労士などと相談して行うのが良いでしょう。

アウトソーシング

源泉徴収票の主な発行時期は年末調整とかぶっており、業務は繁忙を極めます。思い切って外部に委託する「アウトソーシング」の手法を使うのも、源泉徴収票を円滑に発行するのに役立つでしょう。

委託先は税金の専門家である税理士のほか、源泉徴収票の発行をサポートする事務代行サービスなどが挙げられます。源泉徴収票の発行に長けているアウトソーシングを活用することで、業務の手間を最小限に抑えることが可能です。記載漏れや誤りといったリスクを回避する手段としても有効といえます。

依頼にはコストがかかるため、自社に見合ったサービスを比較・検討してください。

源泉徴収票の書き方・作成手順


源泉徴収票を書くためには1月から12月までに支払う給与の合計額が必要なので、12月の給与が確定してから翌年の1月31日までに作成することになります。

作成までの猶予が1ヶ月ほどしかなく、従業員によってはイレギュラーな対応が求められることから、源泉徴収票をどう記載したらよいのかわからない、という場合があるかもしれません。
事前に源泉徴収票を作成するために必要な書類と、その手順を確認しておきましょう。

源泉徴収票の作成に使う書類を準備する

まず、源泉徴収票を作成するために「源泉徴収簿」と「マイナンバー」を用意しましょう。

源泉徴収簿は、毎月の給与の支払額や源泉徴収額、扶養親族の情報を記録しておくものです。
作成の義務はないため様式は一定ではありませんが、国税庁が公表している様式が使われることが多くなっています。

また、税務署に提出する源泉徴収票には、平成28年分からマイナンバーの記入が必須となりました。
マイナンバーの確認のために従業員からコピーを取ってもらうことがあるかもしれませんが、マイナンバーは重要な個人情報であるため、保管や廃棄には十分な注意を払う必要があります。

源泉徴収票の書き方

源泉徴収票には、氏名、住所、支払金額、源泉徴収税額、控除対象配偶者の有無等など28の記入項目があります。

マイナンバーについては、税務署に提出する分にのみ記載し、従業員に交付する源泉徴収票にはマイナンバーは記載しません。従業員本人のものだけではなく、扶養親族の欄も同様です。

また、控除対象扶養親族の欄と16歳未満の扶養親族の欄は4人分しかないので、5人を超えた分は摘要欄に書きましょう。

摘要欄に書いた場合、マイナンバーは備考欄に記載します。
一番下にある支払者の欄の「個人番号又は法人番号」ですが、こちらも税務署に提出する分にのみ記載します。

詳しい書き方については、国税庁のHPに説明がありますので、そちらをご確認ください。

年末調整での所得税計算方法

源泉徴収票の作成と関連する事務処理に「年末調整」があります。

年末調整は、従業員の給与から天引きした所得税を改めて計算し、過不足を清算する手続きです。年末調整の実施後、源泉徴収票を発行します。

年末調整でポイントとなるのが、所得税の計算方法です。正しい内容の源泉徴収票を発行するためにも重要であるため、簡単に要点を押さえておきましょう。

年収から各種控除額を差し引く

年収から各種控除の金額を差し引いて、課税される給与所得額を出します。

最初に給与所得控除額を計算し、年収から差し引いたあと、ほかの控除額も反映させる手順です。

給与所得控除額は、年収に応じて計算式が異なります。国税庁のホームページにある計算式をもとに、年収500万円のケースの例を以下に記しました。

給与所得控除額
5,000,000 × 20% + 440,000 = 1,440,000

給与所得額(年収 – 給与所得控除額)
5,000,000 – 1,440,000 = 3,560,000

年収500万円の場合、356万円が給与所得額となります。
ここからさらに基礎控除、扶養控除、社会保険料控除といった、従業員ごとに適用される控除額を反映させましょう。

所得額に応じた税率を用いて計算する

収入にすべての控除を反映したら、算出した課税所得額に応じた税率をかけます。税率に関しても、国税庁が出している「所得税の速算表」をもとに計算するのが効率的です。

195万円以下なら5%、195万円超から330万円以下なら10%というように、課税所得金額によって税率が変動するため、表に照らし合わせて計算してください。

所得税の計算方法について、詳しくはこちらの記事を>>
所得税の計算方法のルールと注意点を解説

源泉徴収票を作る時の注意点

基本的な手順以外にも、源泉徴収票の作成において気をつけたい点があります。記載ミスや再発行といったトラブルを招かないためにも、次の注意点を意識しておきましょう。

金額に相違がないか確認する

一番注意することは、金額が正確かどうかです。
とくに「支払金額」と「源泉徴収額」は年末調整の基礎となる金額なのでよく確認しましょう。

摘要欄に記入漏れがないようにする

「摘要欄」は書くことが多いため記入漏れが発生しやすい箇所です。
「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」をよく確認して記載するようにしてください。

途中入社の従業員への対応を行う

途中入社の従業員についても注意が必要です。
その年度のすべての給与収入を合算したうえで行うので、途中入社の従業員については、前職の給与を把握する必要があります。
その従業員が前職の退職時に源泉徴収票を発行してもらっていないのならば、前職の会社に発行を依頼してもらいましょう。

もしなんらかの理由で発行されない場合、自社分の給与だけで源泉徴収票を作成して、摘要欄に「年調未済」と記入して交付します。

会社印を忘れずに押印する

印刷された源泉徴収票ならば、法的には押印は必要ありません。
それは税務署に提出する用のものも、従業員に交付する用のものも同じです。
ですが、従業員がマンションの契約や住宅ローンを組む際に源泉徴収票を提出する場合は、会社印の押印が必要となることが多くなります。
また、手書きやコピーで作成した場合は偽造防止のために会社印を押印するほうがよいでしょう。

受給者の住所は翌年1月1日時点のものを書く

受給者(従業員)の住所は、翌年の1月1日時点のものを記載することになっています。
令和4年分の源泉徴収票であれば、令和5年1月1日の住所ということです。
この時期に引っ越しをする社員がいれば注意しておきましょう。

マイナンバーを必ず記載する

税務署に提出する源泉徴収票にはマイナンバーが必須となっています。
もし従業員などからマイナンバーの提供が受けられなかった場合は、法律で定められた義務であることを伝えて提供を求めます。
それでもマイナンバーが提供されなかった場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどして、単なる義務違反ではないことを明確にしておきましょう。
またこの場合は摘要欄に理由を書く必要はありません。
マイナンバーの記載なしで提出したあと、マイナンバーの提供があった場合、マイナンバーを記載して源泉徴収票を再提出します。

源泉徴収票を作成・発行するのはいつ?

源泉徴収票の作成や発行は、毎年決まった時期にのみ行うわけではありません。状況に応じて発行するタイミングが変わります。

源泉徴収票の作成と発行を行うべき状況について、シーン別にみていきましょう。

年末調整のあと

源泉徴収票の発行タイミングとしてもっとも多いのが、年末調整のあとです。通常は12月の給与が確定したあとに年末調整を行い、その流れで源泉徴収票も作成します。

法律に基づけば、1月末までには年末調整をすべて完了させるとともに、源泉徴収票の発行も済ませなくてはなりません。源泉徴収票の作成・発行だけでなく、年末調整にも手間がかかるので、余裕をもって準備しておくことが重要です。

会計ソフトやe-Taxを利用するなど、処理を簡略化する工夫を取り入れてください。

退職者が出たとき

年の途中で退職する社員に対しても、源泉徴収票の発行を行います。退職日から1ヶ月以内には発行できるよう準備しなくてはなりません。

退職者への源泉徴収票は、退職者が次の雇用先で提出するためのものです。新たな雇用先で年末調整を受ける場合に、前職の源泉徴収票も照合して所得税を算出します。源泉徴収票を発行していないと、転職先での年末調整が滞る恐れがあるので、忘れずに発行しましょう。

なお、退職者への源泉徴収票は、所得税の源泉徴収を実施していない場合でも発行します。

社員から要望があったとき

源泉徴収票を紛失したなどの理由で、社員から発行を求められるケースがあります。過去に発行している場合でも、できる限り要望に応えることが大切です。源泉徴収票の発行義務は企業にあるため、正当な理由なく拒否すると、税務署から指導が入ることも考えられるでしょう。

源泉徴収票は年末調整のおりに発行することがほとんどですが、社員が活用するシーンは年末に限りません。ローン審査の提出書類としてや、転職の際に必要となることもあります。

社員に源泉徴収票の発行を求められたら速やかに対応できるよう、必要なデータの保管・整理を心がけておきましょう。

まとめ・源泉徴収票の作成方法を知って年末調整などに備えよう

源泉徴収票は、受給者(従業員)などに給与を支払う企業ならばどの企業でも作成するものです。
厳密な書類でなくてはならないため、計算や記載事項などが複雑になっています。

初めて作成するときはわからないことも多くあると思いますが、注意点などを押さえ、期日を守って必ず提出するようにしましょう。

創業手帳冊子版では、源泉所得税の納付時期などを掲載した「税金イベント一覧」をはじめ、起業家インタビューや経理関連の記事など起業家におすすめのコンテンツが盛りだくさんですので、ぜひご利用ください。無料でのご提供となります。

確定申告でお悩みの方必見!「確定申告ガイド(無料)」を配布中です。最新の確定申告情報、インボイス制度による消費税納付の詳細、電子申告の利点などを丁寧に説明しています。基本的な確定申告の知識や申告書の作成手順も記述。このガイドブックを活用して、確定申告をスムーズに進めましょう。


確定申告が必要な場合とそうでない場合の違いとは
確定申告って必要?しないとどうなる?した方が得する場合って?
従業員を雇う・報酬を支払う際の「源泉徴収」入門
起業家なら知らないとまずい「源泉徴収」|税務の基礎知識を学ぼう

(執筆:創業手帳編集部)

創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】