キャリアアップ助成金の対象者はさらに20万円もらえる!?「東京都正規雇用安定化支援助成金」

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気になる概要を現役社労士が徹底解説!

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(2018/06/06更新)

創業間もないスタートアップにとっては、何かと資金が必要となります。
国や地方公共団体、民間団体などが様々な補助金や助成金制度を用意していますが、その中でも代表的なものとして、厚生労働省が支給する「キャリアアップ助成金」があります。

実は、東京都の事業所限定でこのキャリアアップ助成金の受給が決定された後に一定の要件を満たしていると、対象労働者1人につき20万円を東京都から受給できる「東京都正規雇用安定化支援助成金」というものがあるのを、皆さんご存知でしたか?

今回は、キャリアアップ助成金の受給が決まったら、ともに受給の検討をしておきたい「東京都雇用安定化支援助成金」について解説していきます。

東京都正規雇用安定化支援助成金とは?

「東京都正規雇用安定化支援助成金」とは、国が実施するキャリアアップ助成金(正社員化コース)と連携して、有期契約労働者から正規労働者に転換した労働者について計画的な育成計画の策定など、安定して働き続けられる労働環境整備を行った事業主に対し支給することを目的とした助成金です。

また、非正規雇用労働者の正規雇用転換等にあたり、新たに退職金制度を整備した事業主に対し、一定金額がさらに加算される仕組みも導入されています。

冒頭でも触れましたが、この助成金は「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」について受給が決定した事業者のみ対象となりますので、まず「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の受給申請を行う必要があります。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは?

「キャリアアップ助成金」とは、有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者などのいわゆる非正規雇用労働者について、企業内での正社員化やキャリアアップ、処遇改善の取り組みを実施した事業主に助成する制度です。

中でもキャリアアップ助成金の「正社員化コース」は、有期契約労働者等を正社員に転換、または派遣社員を直接雇用した場合に受給可能な助成金です。
有期契約労働者を正社員に転換した際には、中小企業だと1人あたり57万円が支給されます(平成30年度の場合)。

受給できる主な要件としては、下記のものがあります。

1.正社員転換制度を就業規則等に規定していること
2.転換前の雇用期間が6か月以上の労働者であること
3.転換した労働者を転換後6か月以上継続して雇用していること
4.転換後6か月間の賃金を転換前6か月の賃金より5%以上増額させていること

事前にキャリアアップ計画書等を労働局に提出することや、転換後6か月分賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に助成金の申請する必要があることに注意が必要ですが、要件は一般的な他の助成金に比べるとさほど厳しくありません。そのため、受給しやすい助成金と言えるでしょう。

東京都正規雇用安定化支援助成金制度の詳しい受給要件は?

では本題の「東京都正規雇用安定化支援助成金」について詳しく解説します。
まずは、受給するための要件をまとめました。

支給要件

対象労働者に対して、支援期間(3ヶ月間)のうちに下記の支援事業を行うことが必要です。
支援期間の詳細は、後ほどご紹介する図にまとめましたので、よろしかったら参考にしてください。

1. 支援期間開始日から1ヶ月以内に、対象労働者本人と面談の上決定した3年後の到達目標・内容や、育成の計画を1年目から3年目までの取組期間、取組内容、具体的な育成方法として記載した「指導育成計画書」を提出すること

2. 支援期間開始日から1ヶ月以内に、対象労働者の業務のサポート等を担うメンター(指導者)を選任。期間内に3回以上対象労働者に指導をする必要があり、この指導の記録を「メンター選任・指導報告書」にまとめ、提出すること

3. 支援期間中に1回以上対象労働者の能力向上・人材育成を図るための外部研修・社内研修等を実施すること

ちなみに、新たに退職金制度を整備して加算をうける事業主は、上記の実施のほか、一定期間に以下のいずれかを行わなければなりません。

・新たに退職金制度を整備し、規程を労働基準監督署へ届け出ること。
・新たに独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部が運営する中小企業退職金共済制度に加入すること。

支給額

上記の要件を満たした場合、対象労働者数に応じ下記に定める金額が支給されます。

対象労働者数 助成額
1人 20万円
2人 40万円
3人以上 60万円

※本助成金は1年度につき1事業所3回が限度です。
※退職金制度を整備した場合、助成額に申請1件当たり10万円を加算されます。(1回を限度)

キャリアアップ助成金に加え、1人につき20万円が支給されることになるので合計で1人あたり77万円が支給されることになり、かなりの金額が受給できることになります。
創業期には大きな助けとなるでしょう。

基本要件

上記に述べた支給要件に加え、事業主や労働者の基本的な要件があります。下記に重要なものを一部抜粋していますので、参考にしてください。

①「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の支給対象となった労働者が、3か月の支援期間終了日において、転換又は直接雇用の状態が1年以上継続し、支援期間の末日において都内の勤務先に在籍し離職していないこと、また、支援期間の末日において有期雇用労働者でないこと

②平成29年4月1日以降に東京都内の労働者勤務場所において転換等がされたこと

③都税の未納がないこと

④申請日の前日から起算して過去5年間に重大な法令違反等がないこと

⑤労働関係法令について次のアからカを満たしていること
ア. 従業員に支払われている賃金が最低賃金額を上回っていること
イ. 固定残業制度を導入している場合、固定残業代等の時間当たり金額が時間外労働の割増賃金に違反していないこと。また固定残業時間を超えて残業を行った場合は、その超過分について割増賃金が追加で支給されていること
ウ. 法定労働時間を超えて労働者を勤務させる場合には36協定を締結し、全労働者に対し協定で定める上限時間を超える時間外労働をさせていないこと
エ. みなし労働時間制において労使協定等で定めた時間が法定労働時間を超える場合、その時間が月80時間以下であること
オ. 申請日を起点として過去6か月の時間外労働の平均が月80時間を超える労働者がいないこと
カ. その他の労働関係法令を遵守していること

⑥性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業や暴力団関係事業主でないこと

特に⑤に関しては、固定残業代を超えた場合に適切に割増賃金を支払っていることや、36協定違反がないこと、過去6か月の時間外労働の平均が月80時間を超える労働者がいないことなどがあり、創業期の企業は特に違反していないか注意が必要です。

支給申請期間

この助成金は、支給申請期間が細かく分けられています。
申請の時期によって支援期間が異なっていたり、実績報告提出期限が異なりますのでこちらも注意が必要です。

平成30年度 支給申請期間

  申請受付期間 支援期間 実績報告提出期限
第2回 6月15日(金)~7月2日(月) 8月1日~10月31日 11月30日(金)
第3回 7月17日(火)~8月1日(水) 9月1日~11月30日 12月28日(金)
第4回 8月15日(水)~9月3日(月) 10月1日~12月31日 1月31日(木)
第5回 9月18日(火)~10月1日(月) 11月1日~1月31日 2月28日(木)
第6回 10月15日(月)~11月1日(木) 12月1日~2月28日 3月29日(金)

まとめ

「正規雇用安定化支援助成金制度」は、正規転換した労働者が継続して働いていけるような育成計画の策定やメンターの選任などを行い、安定して就労できる環境を整えることによって助成金が受給できるものです。

育成計画の策定やメンターの選任は、会社にとって金銭的にも労力的にもコストがあまりかからなくて済むことが多いです。さらに、労働者にとっても制度の導入によってメンターができたり、育成計画に沿ってキャリアを育んでいけたりと双方にとってメリットがあります。

この助成金はキャリアアップ助成金に比べあまり知られていませんが、受給要件も他の助成金に比べ受給がしやすいものになっています。東京都で起業した経営者の方は、是非申請を検討してみてはいかがでしょうか。

自社の成長段階に合わせて、注意するべきこと
「スタートアップでよくあるお悩みとその解決法」現役社労士が教えます

(監修:寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 寺島有紀
(編集:創業手帳編集部)

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