これさえわかれば大丈夫!限界利益と経営レバレッジ係数とは?

資金調達手帳

木村さきの【新米社長のための会計講座】

(2016/06/30更新)

とある大手企業の経理部に勤める木村さきが、起業したての父親に、“知らなきゃヤバい”会計のイロハを教える本シリーズ。今回は、限界利益と経営レバレッ係数についてレクチャーします。

【登場人物】

木村さき(26)
上場企業の経理部に勤務するかたわら、公認会計士を目指して専門学校に通うOL。大学で現代会計のゼミに所属したことをきっかけに、会計の世界にのめり込む。

パパ(55)
出向してきた上司と反りが合わず、長年勤めた県庁を勢いで退職してしまい、妻の父親が経営する会社のサポートを受けて起業。アイデアには富んでいるが、考えるより先に行動するタイプで、なかなか会社経営を軌道に乗せられずにいる。

さき

ただいまー

パパ

おかえり……って、なんだ、さきか。

さき

なんだはないでしょ。そろそろ仕事で悩んでる頃だと思って来てあげたのに。ところで、例の件、もう一度ママに頼んでくれた?

パパ

この家で犬を飼いたいって話? でも、ママが動物苦手なのはさきもよく知ってるだろ。

さき

パパはどうなのよ?

パパ

猫の手も借りたいぐらいだね。

さき

猫じゃなくて犬だってば。というか、会社の話? いいわ、先にパパの話を聞いてあげる。

パパ

とある事情で、来年は、営業利益を今年の2倍にしないといけないんだよ。ということは、売上も2倍にしないとってことだろ。そりゃ、猫の手も借りたくなるよ。

さき

何か勘違いしてるみたいね。

パパ

猫が本当に売上を上げてくれるわけじゃないことぐらい、パパも知ってるよ。

さき

そこじゃなくて。

パパ

営業利益を2倍にするためには、売上高が今の2倍必要という点がおかしいのか?

さき

そうなのよ、パパ。じゃあ今日は、売上の伸び率と利益の伸び率の関係について教えてあげる。
その前に、『限界利益』って言葉聞いたことある?

パパ

今の利益を上げるので、とっくに限界だよ。

さき

そういうことじゃなくて……。以前、費用には変動費と固定費があるって言ったでしょ?

パパ

損益分岐点の話の時だな。

さき

売上高から変動費だけを引いた利益のことを『限界利益』と言うのよ。

パパ

つまり、こうだな。

さき

そう。そして、その『限界利益』を営業利益で割った数字のことを『経営レバレッジ係数』と言うの。

パパ

ということは、その『経営レバレッジ係数』とやらは、

と表わされるんだな。

さき

その通りね。

パパ

この『経営レバレッジ係数』は何を意味してるんだ?

さき

『経営レバレッジ係数』は、売上が変化したときに利益がどれだけ変化するかを表してるのよ。
例えば、売上高5000万円、変動費3000万円、固定費1500万円という会社があったとするでしょ。この会社の営業利益は?

パパ

売上高5000-変動費3000-固定費1500で、500万円だな。

さき

じゃあ、限界利益は?

パパ

売上高5000-変動費3000で、2000万円だな。

さき

ということは、経営レバレッジ係数は?

パパ

限界利益2000÷営業利益500だから、4だな。

さき

その通り。つまり、この会社は、売上が1変化したときに利益は4変化するってことなの。仮に、売上が20%増えて6000万円になったとするでしょ。すると変動費も20%増えるから3600万円になるけど、固定費は1500万円のままね。このとき営業利益は……

パパ

売上高6000-変動費3600-固定費1500=営業利益900万円
ホントだ! 売上は20%しか増えてないのに、営業利益は4倍の80%も増えてる!

さき

言ってみれば、テコの原理ね。固定費がテコの働きをして、売上よりも利益の変化率を大きくするの。

パパ

費用の中身は会社によって様々だから、『経営レバレッジ係数』も会社ごとに違うんだよな。

さき

もちろんよ。固定費の割合が大きいほど、テコが強く働くから、『経営レバレッジ係数』は大きくなるわね。

パパ

じゃあ、固定費をどんどん増やした方がいいってわけだ。

さき

そうとも言えないわよ。『経営レバレッジ係数』が大きくなると、売上が減ったときの利益の減り具合も大きくなるってことなんだから。

パパ

『経営レバレッジ係数』が大きいほど、ハイリスクハイリターンというわけか。

さき

そうね。だから、一般的には、景気が良くて、売上が伸びている状況では、変動費の固定費化を図って、反対に、景気が悪くなってきたら、固定費を変動費化するのがセオリーと言われてるわね。

パパ

景気が良いときには積極的に設備投資をするのがよくて、逆に景気が悪いときにはなるべく外注を使うのがよいといった話には、こういう見方もあったんだな。

さき

ほら、パパも自分の会社の『経営レバレッジ係数』を出してみて、売上をどれだけ増やせば営業利益が2倍になるのかシミュレーションすればいいじゃない。

パパ

そうだな。今日もさきが来てくれて助かったよ。

さき

じゃあ、例の件、ママに頼んでおいてね。

パパ

ダメだ、さき。ママは、一度言い始めると、テコでも動かないんだから。

第一回:これさえわかれば大丈夫!損益分岐点売上高の計算式
第二回:これさえわかれば大丈夫!営業利益と経常利益の違いとは?

(監修:監査法人A&Aパートナーズ)
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】