旅行者と地元民を直接つなぐ「RootTrip」 ガイドブックに無いディープな旅を

創業手帳
※このインタビュー内容は2019年02月に行われた取材時点のものです。

株式会社lord CEO 村本訓一 インタビュー

(2019/02/05更新)

2020年に開催される東京オリンピックを控え、観光事業がますます注目を浴びています。
「RootTrip」も観光に関わるサービスの一つですが、従来のサービスと比べてちょっと変わったポイントがあります。
それは、「旅行者」と「現地に住むガイド」を直接つなげ、ガイドブックに載っていない場所、Google検索で外国語検索しても出てこないような場所にスポットを当てた「ディープな旅の体験」を提案する、というもの。

今回は、「RootTrip」を運営する株式会社lordの村本訓一社長に、起業のストーリーや事業で大切にしていること、今後の展望を伺いました。

村本 訓一(むらもと くにかず)
株式会社lord 代表取締役社長
2005年明治大学在学中、WEBサイト制作会社の立ち上げからインターンで2年ほど主にECサイトを中心にデザイナーを務める。その後新卒で同会社に入社。合計で3年ほどWEBデザイナーを経験。その後システム会社に転向し、WEBプログラム開発案件のプロジェクトマネージャーとして大型案件をメインに担当。2010年に独立し、株式会社lordを設立。その後も動画配信サイトなどでPMを務める。2016年より自社開発・運営に力を入れ「SYUUGO」「RootTrip」といったサービスを始動。WEB開発の現場を強みとしている。

「知らない何かを知ってもらいたい」から始まったサービス

RootTripのホームページより引用

—はじめに、御社のサービスの概要を教えてください。

村本「旅行者」と旅先に住む「地元の方」をマッチングする「RootTrip」というサービスを運営しています。

ガイドとなる地元の方が、案内できる地域などのプロフィール情報を当サービスに登録し、旅行者に公開します。
旅行者がその中から気になるガイドを見つけたら、チャット機能で条件をまとめて正式に依頼する、という流れになります。

従来のサービスだと、ガイドを利用した旅の時間を半日〜1日で設定しているところが多く、時間に比例して費用も上がります。
ですが、「RootTrip」でのガイドの時間は2〜3時間程度を目安としています。時間も料金も手軽なので、最近増えている1人〜数人の個人旅行者の方や、ちょっとした時間を有効に使いたい地元の方などにオススメです。

今はまだ「渋谷」などのメジャーな地域を登録している方が多いのですが、定番の観光地だけでなく、マニアックなエリアを紹介できればと思っています。例えば、「自分が住んでいる地域の最寄り駅付近」など、ガイドブックに載っていない場所、Google検索で外国語検索しても出てこないような場所をどんどん登録して欲しいですね。

—このビジネスを始めたきっかけはどのようなものでしたか?

村本:実は、会社を立ち上げたときに「これを作りたい」という具体的なものはありませんでした。ですが、「知らない何かを知ってもらいたい」というビジョンがずっとありまして、それをもとにサービスをやりたいと考えていました。
その結果、出来上がったサービスが「知らない場所や人を知ってもらえる」サービスである「RootTrip」だった、ということですね。

他に行なっているサービスとしては、2016年3月にリリースした「SYUUGO(シューゴー)」があります。幹事が参加者にURLを送って参加できる日程・時間を入力してもらうと、参加者の出欠と集合しやすい中間地点の確認ができるというサービスで、こちらも少しずつダウンロード数を増やしています。
このサービスはいわば「集まりやすい中間地点を知ってもらう」もので、先ほどお話した会社のビジョンに基づいたものになっています。

—「知らない何かを知ってもらう」ってなんだかワクワクしますね。このビジョンに行き着いたきっかけは何だったのでしょうか?

村本:私はちょうどインターネットが成長期にあった世代で、中学生の頃はネットを通じて外の情報を知るのが面白くて仕方ありませんでした。
ですが同時に、「外に行って体験しなければわからないこともある」と思いました。

ネットやスマホで知ったことよりも、実際に足を運んで経験したことのほうが絶対鮮烈に記憶が残りますよね。
実際にどこかへ行ってみると、思わぬ出会いがあることもあります。私は偶然につながる縁を大事にしているので、体験のライブ感と偶然でつながる縁を、ネットを通じて提供できればと思っています。

—起業する際に、一番大変だったことは何でしたか?

村本:資本金と当面のキャッシュ、それからキャッシュのもととなるクライアントがいる保証がないのが課題でした。

—それはどうやって乗り越えていきましたか?

村本:資本金については自分の貯金をすべて使ったほか、親に株式を持ってもらいました。こうすることで資本金をいくらか増すことができます。

クライアントについては、前職・前々職の会社に許可をいただいた人脈があったので助かりました。前職や前々職の方々とは、今でも良い関係性を続けています。

—そういった方々との関係性は、本当に大切なのですね。起業した際には、人材はどのように集めたのですか?

村本:それも前職・前々職での繋がりで集まってくださいました。特に、前々職でご一緒させていただいた方には、現在役員になっていただいています。

今お手伝いいただいている方々は、全員10年くらいのお付き合いですね。会社にいるのは私を入れて役員が3名、開発のお手伝いをしてくださっている方が1名です。

信頼構築のため自らユーザーに向き合う

—「RootTrip」を運営していて、嬉しかったことは何ですか?

村本何と言っても、利用者の満足が一番ですね。
プラットフォーム型の事業なので、我々運営側やサービスに対しての感謝の言葉をいただくことはあまりありません。ですが、利用された旅行者の方が「楽しかった!」とコメントしてくださったり、ガイドさんに対して感謝の言葉やレビューを書いてくださったりするのを見ると、とても嬉しいですね。

—顧客との信頼関係を築く上で、実践していることはありますか?

村本「RootTrip」のユーザーさんと直接向き合うようにしています。

例えば、山梨や水戸、四国や北海道など様々な場所に住んでいるガイド登録者の方に、月に2回ほどお会いしています。実際に会うことでガイドの方々もどんな人間が運営をしているかがわかるので、安心感を持っていただけるのではないかと思っています。

また、カスタマーサポートのお問い合わせ内容もかなり重視しており、私自ら対応しています。お客様の声に直接向き合うことで、お客様が使いやすいサービス作りにつなげています。

—事業を行っていく上で、大切にしている信念はありますか?

村本「正直にやっていくこと」を大事にしています。
壮大な夢ばかりを語ったり数字を盛ったりするのではなく、今の自分やナチュラルな現状を見せるようにしています。

会社の持つ「知らない何かを知ってもらう」というビジョンからずれないようにしていくことが大切だと思います。

やると決めたら、周りの反対は気にするな

—今後の目標はありますか?

村本:「RootTrip」を使う人を増やしていきたいです。
ただし、登録だけのユーザーが増えるのではなく、実際使ってもらって満足度の高いサービスを目指したいと思っています。

GPSを使った機能をつけたり、予定時刻を過ぎてもガイドが終了していなければ事務局にアラートがされるようにしたりといった、安心して使っていただける工夫も検討しています。より信頼のあるサービスにしていければ、うれしいですね。

ただ、課題もあります。まず、「RootTrip」のサービスは概念が新しいので、そこの不安を取り除かなければいけないなということ。それから、「ガイドさんの紹介したい場所と旅行者の方の好みが一致しなかった」といったケースを防ぐことです。これらについても、対応を検討していきます。

—最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします。

村本:起業前の方は、家族など周囲の人に止められることも多いと思います。でも、自分がやりたいと決めたことであるなら、周りに何を言われてもぜひやっていただきたいですね。私の経験上、数年続ければ周りも何も言わなくなります(笑)。

すでに起業された方は、イエスマンではなく自分にとって都合の悪いこともきちんと言ってくれる人とお仕事をしていただきたいと思います。
意見を言ってくれる人は決して自社の方じゃなくても大丈夫です。何なら地元の先輩でもかまわないので、「それは違うんじゃない?」と意見してくれる人を大事にしてください。

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(取材協力:株式会社lord 代表取締役 村本 訓一)
(編集:創業手帳編集部)

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