リアルテックファンド 永田 暁彦|世の中の役に立たないベンチャーはいらない。 (前編)

創業手帳
※このインタビュー内容は2017年11月に行われた取材時点のものです。

テクノロジーのプロが集結した「リアルテックファンド」

(2017/11/10更新)

リアルテックベンチャー企業に投資するファンドの代表者であり、ミドリムシを主力事業とするベンチャー企業・ユーグレナの取締役でもある、永田暁彦氏。ファンド的視点と、ベンチャー企業的視点の2つを持つようになった経緯と、それぞれの事業について伺いました。

永田 暁彦
リアルテックファンド代表
株式会社ユーグレナ 取締役 財務・経営戦略担当
独立系プライベートエクイティファンド出身。2008年に株式会社ユーグレナの取締役に就任。ユーグレナにおいては、事業戦略立案、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門構築、東証マザーズ・東証一部上場など、技術を支える戦略、ファイナンス、管理業務分野を担当し、当該領域に精通。リアルテックファンドでは、代表としてファンド運営全般を統括する。

投資先は「人と地球の役に立つベンチャー」限定

ー永田さんはリアルテックファンドの代表と、ユーグレナの取締役という2つの顔をお持ちですよね。まずリアルテックファンドについてお聞きしたいのですが、「リアルテック」の定義はどのようなものでしょうか?

永田:私が定義する「リアルテック」は、「地球と人類の課題解決に資する研究開発型革新的テクノロジー」のことです。条件は「研究開発型であること」、「革新的なテクノロジーを持っていること」、そして「地球や人類規模で課題を解決できること」です。つまり、テクノロジーがあっても、人や地球にとって役に立たないものは対象ではありません。

リアルテックファンドの規模は94億円で、現在私たちが出資している企業は30社ほどあります。最終的には4、50社まで増やしたいと思っています。

私たちが他のファンドと違う特徴は、金融機関からお金を集めて増やして戻すことをKPI(※Key Performance Indicator「重要達成度指標」)としていないことです。
どちらかと言うとCVC(※Corporate Venture Capital(コーポレートべンチャーキャピタル)。事業会社が社外のベンチャー企業等に投資すること)という位置付けです。「リアルテック」という条件のもと、集まったベンチャー企業と情報共有しながら相乗効果を得ていく、という流れですね。

徹底的にベンチャー企業側から物事を考える理由

ー「リアルテック」という条件のもとで集まったベンチャー企業との相乗効果やコラボレーション、そういったものの橋渡し役になる、ということですね。

永田:その通りです。ですが、常に私たちはベンチャー企業側に立つので、出資者が「あそこのベンチャーとやりたい」と言っても、ベンチャー企業がやりたくないと言ったら断ります。

なぜなら、私たちの目的はベンチャー企業の価値最大化で、出資者の価値最大化ではないからです。その点は出資者に対して宣言しています。

ー出資者がその条件でも投資してくれるのはすごいですね。出資者が賛同するメリットはどこにあると考えていますか?

永田:リアルテックファンドには、テクノロジーの分野に関して年間300社以上の案件が集まります。私たちほど案件が集まっているところもなかなかありませんので、「テクノロジーの分野に力を入れよう」と決めた出資者たちが、自分たちの方向性に合うベンチャー企業を選ぶための選択肢が豊富にあるところだと思います。

もうひとつは、私のようなテクノロジーベンチャーの経営陣がいるファンドは他に無いというところです。つまり、出資者が今やっている産業と併せてこれから行うテクノロジーの分野を成長させるために、専門家である私たちしっかりサポートできる、ということですね。

出資者とベンチャー企業との相乗効果は、ベンチャー企業の成長がないと成立しません。そのような理由で、常に私たちはベンチャー企業側に立っています。

ー大きなお金が動くCVCは金融出身の人が多い印象がありましたが、リアルテックファンドは金融業界だけ経験がある人というわけでなく、様々な専門家がいることが特徴ということですね。

永田:そうですね。現在リアルテックファンドにはキャピタリストが10人いますが、全員がテクノロジー系企業で働いていたバックグラウンドを持つ専門家です。例えば「宇宙の分野だったらこの人」といった得意分野をそれぞれ持っていて、リアルテックファンドを確立させています。

印象的だったユーグレナ出雲社長との出会い

ー永田さんの今までのキャリアを教えてください。

永田:2007年に慶応大学を卒業して、投資ファンドに入社しました。プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に配属されて、その時の投資先の一つがユーグレナでした。
入社2年目でユーグレナの社外役員を担当するようになって、2010年にユーグレナに完全移籍しました。

その時から担当していることは、簡単に言うとミドリムシを販売することと研究すること以外のすべてです。経理会計や法務、人事、採用、経営戦略、バイオジェット燃料の事業化、海外事業の事業化、投資と様々なことをやっています。

ーファンドから投資先に移籍する、というのは珍しいですね。どのようなきっかけで移籍することになったんですか?

永田当時のユーグレナは投資先の企業であると同時に、私のなかでは「将来ものすごく伸びる企業ではないか」と思っていた企業でした。それだけではなく、「人と地球を健康にする」という理念に惹かれました。当時勤めていたファンドには、ユーグレナに注力すればファンドの資本が増えるし、ユーグレナも成長できる、ということで説得し、完全移籍しました。

ーちなみに、ファウンダーのキャラクターの魅力というのもあるかと思いますが、永田さんから見た出雲充(株式会社ユーグレナ代表取締役社長)さんはどのような方ですか?

永田:最初に会ったのが2005年で、ユーグレナを創業した時でした。
その時から、彼はベンチャー企業の中では特殊な人だなと思っていました。いかにスピーディーに会社として影響力を持って、その力で社会問題を解決していくか、ということを考えているのは、ベンチャー企業でなかなか見たことがない人種でしたから。しかもそれをミドリムシでやっていこう!という普通ではなかなか思いつかないことでやろうとしていたので、当時からとても印象に残りましたね。

ーベンチャーのスピード感と、会社としての力がないと世の中も変えられないし、人も幸せにできない。出雲さんが当時から抱いていた考えが実現できている、ということですね。

永田:そうですね。私たちがやりたいのは「人と地球を健康にする」事業です。私たちの仕事で世界中の人たちに貢献できるような会社になろう、という根本の考え方があります。ですので、「今やっている仕事が地球を健康にできる」という意義を持って行動できる仲間と一緒に働きたいです。

【後編はこちら】「どれだけゴールを共有できるか」が成功のカギ
大勢が行く逆を行け。リアルテックファンド代表 永田暁彦氏が実践する「マーケット拡大の秘訣」(インタビュー後編)

(取材協力:リアルテックファンド代表/永田暁彦)
(編集:創業手帳編集部)

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