「これってパワハラ…?」起業家が知っておくべき パワハラ対策

創業手帳

労働者のナマの声を聞き続ける社会保険労務士が解説

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(2018/06/14更新)

厚生労働省が平成28年に発表した報告書によると、「過去3年間にパワハラを受けたことがある」と回答した従業員は32.5%にのぼるそうです。つまり、3人に1人がパワハラを受けたことがあるということです。もちろん、ベンチャー企業においても他人事ではありません。ですが、実際のところ「どこからがパワハラなのか」という判断の基準がわからない方も多いかもしれません。

そこで今回は、「NPO法人 労働者を守る会」の相談員として日々労働者の声を聞いている社会保険労務士の黒田英雄さんに、起業家としてどのように対策すべきかを伺いました。

現代に蔓延するパワハラ

近年、スポーツの世界などで頻繁に取り上げられているパワハラ問題。
ワイドショーやニュース番組を見ながら「なんでこんなことが平気で言えるんだろうか?」と顔をしかめている方も多いのではないでしょうか。

スポーツ界でもそれ以外でも、報道されているものは表面化している事例だけですから、実際にはもっとパワハラは蔓延していると考えられます。
私が参加している「NPO法人 労働者を守る会」に寄せられる労働相談も、ほとんどがパワハラに関するものです。

読者のみなさんは、普段のお仕事でのご自分の言動を振り返ってみて、パワハラはしていないと自信を持って言えるでしょうか?
もちろんこのご時世ですから、ものすごく気を遣っているという方が多いと思います。

しかし、パワハラは「業務の適正な範囲を超えて苦痛を与えること」という定義があるとはいえ、判断の基準が非常にあいまいな部分もあります。
良かれと思って言った一言が、相手にとってはパワハラと受け止められてしまうこともありえるのです。

どこまでいったらパワハラ?

では、具体的にはどこまでいったらパワハラになってしまうのでしょうか?
今回は、社長から社員のケースで考えてみましょう。

叩いたり無視したりというのは論外ですが、判断が難しいのはやはり「言葉のパワハラ」です。

実際に労働相談を受けていると、明らかにパワハラという事例が大半なのですが、中には「言った人の気持ちも分からなくもないな…」という言葉のパワハラ事例が時々あります。
特にベンチャー企業で従業員数がそう多くない場合など、社長と社員の距離が近かったりすると、「熱い想いからつい言ってしまったんだろうなぁ」と想像できたりします。

社員は、みんながみんな社長の思ったとおりに動いてくれるわけではありません。中には思わずモノ申したくなるような社員もいるでしょう。あるいは、「こうアドバイスすれば、コイツはもっと良くなるのに…。」という社員もいるでしょう。

でも、ここで気を付けていただきたいのは、あくまでも「業務の適正な範囲を超えてしまわない」ことです。仕事のことを指摘していたはずが、いつの間にか性格や家庭環境のことを持ち出してしまうとアウトです。

これでは「お前のことを思って言っているんだ!」と最後にフォローしてもダメです。本当に社員のことを思って言うのであれば、仕事の話だけにしてあげないといけません。

怒られる側にもプライドがある

そしてもう一つ、大事なことがあります。それは「注意したい人にだけ個別に注意する」ということです。

たとえ本人の不注意でミスをしたとしても、他の人が見ているところで怒られるのは、やはりイヤなものです。ただでさえミスをしてヘコんでいるところに、さらに恥ずかしさが乗っかってきてしまうからです。

プライドを傷つけられることに抵抗がある人は、意外と多いものです。「人前で恥をかかされた」という思いが、パワハラをされたと感じてしまうのです。
実際に相談に来られた方の中でも、大勢の前で叱責されたことがきっかけで心の病を発症してしまったというケースがたくさんあります。

「業務の範囲を超えず」、「個別に」、「なるべく手短に」。そして、「いつまでも引きずらない」。
もちろん、注意したい内容の度合いにもよるとは思いますが、パワハラと受け止められないためには、心がけておきたいところです。

パワハラは無くならないかもしれないが、減らすことはできる

パワハラというと、攻撃的なものというイメージが強いかもしれません。しかし実際には、業務の量が過大・過少であったり、プライベートを詮索しすぎるといった行為もパワハラに含まれます。

「そんな細かいとこまで気ぃ遣ってらんないよ…」というのが、もしかしたら起業家のみなさんの本音かもしれません。

でも、社員も一人の「人間」です。「人間」という意味では、社長との上下関係はありません。
社員を一個人として尊重するという姿勢を持っていれば、パワハラは起こりにくいのではないかと思います。

もちろん、人間同士なので、合う人もいれば合わない人もいます。そういう意味では、パワハラは完全には無くならないかもしれません。
ですが、それぞれが「個」として認め合うことで、減らすことはできます。

「まずは社長からその姿勢を率先して見せる」ことが、とても重要です。
業務量が適正かどうかを見たり、労働時間の管理をしっかりすることもお忘れなく。

まとめ

今回は、パワハラ対策について解説いたしました。
精神論のように感じるかもしれませんが、仕事において「精神」というのもとても重要な要素です。

例えば、仕事の失敗で悔しい思いをして、それをバネに社員が成長するということはよくありますよね。でも、不快な思いを我慢することとは意味合いが違います。

実際にパワハラで裁判ということになってしまうと、時間もお金も労力も奪われることになります。そうならないための第一歩として、ほんのちょっとした心がけとして参考にしてみていただければ幸いです。

(監修:社労士オフィスこころこ 社会保険労務士 NPO法人 労働者を守る会 黒田英雄
(編集:創業手帳編集部)

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