法人保険で節税ってできるの?そもそもの効果と、経営者ならではのお得な使い方を解説します【シミュレーションツール掲載】
経営者なら知っておきたい、法人保険の仕組みとメリット
「法人保険で節税できる」といった話を聞いたことがある人も多いでしょう。本来、法人保険はリスク対策として活用されるはずですが、なぜ節税と結びつけられているのでしょうか。
今回は、法人保険と節税について知りたいという人に向けて、実際に法人保険は節税が可能なのか、法人保険の本来のメリットや、あまり知られていないお得な点を解説します。
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法人保険で節税はできるのか?
結論からいうと、法人保険に加入しても節税はできません。確かに、保険料を損金算入することで保険料の支払い期間中は法人税の額が減ります。
しかし一方で、万一の際に保険金や保険を解約して返戻金を受け取れば、その保険金や返戻金は企業の利益として課税されます。つまり、これは単なる課税の繰り延べにすぎず、実質的な節税効果はないのです。
保険料支払い期間中の課税の繰り延べばかりがクローズアップされて、法人保険に節税のイメージがついてしまっているのかもしれません。
さらに、2019年6月に定期保険と第三分野保険の税制上の取り扱いが変更され、その効果はますます得られなくなりました。具体的に、改正後はどのような取り扱いになったのでしょうか。まずは、以下をご確認ください。
新ルールでは保険契約ごとの最高解約返戻率(※1)に応じて保険料の損金算入割合や資産計上期間等が決まるようになりました。
※1最高解約返戻率・・・契約期間中の最も高い解約返戻率(解約時の返戻金額÷それまでに支払い済みの保険料累計額)
改正後の新ルールとは
大まかに説明すると、最高解約返戻率が高く、資産性の高い保険ほど、契約日から一定期間損金として計上できる割合が小さくなるということです。保険期間を通じて全額が損金になるのは原則、区分Aの「最高解約返戻率が50%以下」の保険契約に限定されています。
では、最高解約返戻率が50%超の場合には、どのような経理処理になるのでしょうか。
以下で詳しく解説していきます。
区分Bの「最高解約返戻率が50%超~70%以下」の場合、保険期間の当初4割までの期間中は保険料の損金算入割合は60%、その後は契約満了まで全額損金となります。
資産計上額の取崩期間は、保険期間の4分の3の期間を経過した後から契約満了までとなっています。
区分Cの「最高解約返戻率が70%超~85%以下」の場合、保険期間の当初4割までは保険料の損金算入割合は40%です。全額損金となる期間や資産計上額の取崩期間は、区分Bと同様です。
「最高解約返戻率が85%超」は契約日から何年経過しているかで保険料の損金算入割合が変わります。契約日から10年目までは「100%-(最高解約返戻率×0.9)」、10年を経過した後は「100%-(最高解約返戻率×0.7)」となります。
資産計上期間については、以下1から3のいずれかの期間です。
- 契約日から最高解約返戻率となる期間まで
- 1の期間が経過して「解約返戻金の増加分÷年換算保険料相当額」が7割を超える期間があるケースでは、契約日からその期間が終わるまで
- 1または2の期間が5年未満のケースでは、5年間(保険期間が10年未満の場合は、保険期間の1/2の期間)
全額損金算入となる期間は、資産計上期間経過後から契約満了までです。
資産計上額の取崩期間については、解約返戻金が最も高額になる期間(その期間が複数ある場合は、最も遅い期間。資産計上期間が3の場合は3の期間)が経過してから契約満了までとなります。
以上が税制の概要です。
法人保険で節税はできない。では本来の加入目的とは?
そもそも法人保険とは、どのような目的で加入するべきなのでしょうか。企業は、さまざまなリスクを抱えています。
たとえば、経営者の病気やケガ、死亡といった人的なリスクや、業績不振や役員クラスの多額の退職金の支払いなどの資金リスク。法人向け生命保険を上手に活用すれば、これらのリスクに広く備えることができます。
法人向け生命保険は、法人が契約者となり、主に経営者が突然亡くなったり重度の障害などで働けなくなったりした場合に備えます。
経営者の万一の際には、法人が保険金を受け取り、売上の減少等の損失をカバーして事業存続の資金としたり、死亡退職金や弔慰金として遺族の生活保障に役立てることもできます。
死亡退職金として遺族に支払うためには、退職金規定の作成が必要です(※2)。
※2退職金規定・・・退職金の支給額の決定方法や支払い方法などの退職金全般に関する規定。労働基準法では退職金に関する規定がないため、自社で独自に退職金規定を設ける必要がある。
経営者の万一以外でも、たとえば、業績不振による資金繰りが難しくなった場合や、莫大な金額の設備投資が必要になった場合などの急な資金ニーズには、保険を解約して解約返戻金を事業資金として活用することもできます。
このように、法人保険への加入は、将来的に起こり得る会社の危機に広く備えることができます。
法人保険に加入すれば、経営者自身にもメリットが!
これまで個人で加入していた生命保険を法人保険に替えると、経営者自身にもメリットがあります。それは、手取り額のアップが見込めることです。
個人で保険に加入する場合、自身の収入から保険料を支払います。一方、保険料を会社支払いとすれば、税金・社会保険料が減るので、経営者の手元に残せるお金を増やすことができます。
また、確定申告においても法人保険のほうがメリットを得られるケースが多いです。個人保険の保険料控除は4万円までと制限が設けられているのに対し、法人保険では会社経費で払え、金額に上限はありません。
では、現在契約中の個人保険から法人保険に切り替えた場合、手取り額はどの程度アップするのでしょうか。どのような個人保険に加入していて、どのような法人保険を選ぶのかで手取り額は変動します。
とはいえ、忙しい経営者にとって手取り額の計算をすることは、非常に手間がかかります。そんな人におすすめなのが、手取り額シミュレーションツールです。
手取り額シミュレーションツールを試してみよう!
このツールでは、現在個人で加入している生命保険の月額保険料や年収、年齢、配偶者の有無を入力するだけで、法人保険に替えた場合年間でいくら手取りが増えるかを自動計算してくれます。
また、具体的にどのような生命保険であれば乗り換えが可能なのか、乗り換える際に手間はかかるのかといった相談をしたいという人もいらっしゃるでしょう。その場合、無料での相談も可能です。
法人保険は本来、企業におけるさまざまなリスクに備えるための投資。経営者の万一の際に、事業も家族も金銭面で支えることができる心強い存在です。経営が不安定な創業期だからこそ、法人向け生命保険への加入を検討してみましょう。
さらに、法人保険は、個人保険に比べて手取り額の面でお得になるケースがあるため、経営者本人にとってもメリットが多い保険と言えます。法人保険にもさまざまな種類があるため、きちんと専門家に相談した上で、自社にあった法人保険を選定しましょう。
また、創業手帳では、詳しい資料を無料でご用意しています。あわせて参考になさってください。
税務処理については、資料作成時に施行中の税制を参照しております。よって、将来的に税制の変更などにより、実際のお取扱いと記載されている内容が異なる場合がありますのでご注意ください。
具体的な税務処理を行う場合は、税理士などの専門家、または所轄税務署にご相談ください。
(編集:創業手帳編集部)