1着20万円のスーツが営業マンから絶大な人気を得ている理由とは。muse代表取締役 勝友美さんインタビュー(前編)

創業手帳

私の仕事は「人を自信に包みヴィクトリー(成功)をイメージしてもらうこと」

(2017/11/06更新)

東京の六本木にあるオーダーメイドスーツ専門店「Re.muse」(レ・ミューズ)。
「100年先にも名を残すブランド創り」をミッションに掲げているこのお店が作るスーツは、顧客の間で「ヴィクトリースーツ」と呼ばれ、営業マンたちに絶大な人気を誇っています。
その理由は、スーツそのもののクオリティだけではありません。顧客との関係性を築くために行なっている、代表取締役 勝友美さんの接客スタイルにも、大きく関わっていました。
自身の著書『営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく!』でも接客や自身のキャリアについて執筆している勝さん。今回は接客で心がけていることや、起業時のエピソードについてお話を伺いました。

勝友美(かつ ともみ)
株式会社muse代表取締役
アパレルメーカーに入社し、入社2カ月で副店長となりトップセールスとなる。
その後ヘッドハンティングを受け、スタイリストとして中国でのポータルサイト新規事業の立ち上げ主要メンバーとなる。
2年後に足りない知識を補うために縫製業界へ転職。最高峰の採寸技術を習得したのち、2013年muse style labを大阪・淀屋橋にて設立(現在のRe.muse/レ・ミューズ)に続き、2016年に2号店を東京・六本木へOPEN。
日本初の女性テーラー。女性起業家として業界の枠を越えて、経済界始めメディアに取り上げられている。
著書:『営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく!』(SBクリエイティブ刊)

人との接し方はテクニックではなく「直球勝負」

ー早速ですが、著書(『営業は「バカ正直」になればすべてうまくいく!』)を拝見させていただきました。改めてお伺いしますが、著書で読者に伝えたかったことは何でしょうか?

実は、私自身はこの本を「営業のノウハウ本」として執筆したわけじゃないんです。「お客様を落とすにはこういうロジックがある」といったことを読者は求めているかもしれませんが、そういうことは私はやってきていませんし、伝えたかったわけじゃないんです。

営業をやっている方って、会社から課せられたノルマとかに追われて、「こういう風に言わないと人の心は動かないんじゃないか?」といったテクニックについてひたすら考えなくちゃいけなくなっている人がほとんどだと思うんですね。

ですが人との接し方って、小手先のテクニックではなく「直球勝負」が一番相手の心に響きます。そういう考えで突き進んでいった結果、たくさんに人と出会って、たくさんの人の手にスーツが渡って、今の自分があります。

「ありのままで本気で思っていることを相手に伝えることが、一番相手の心に届く」ということを知っていただきたくて、この本を執筆しました。

ー確かに、営業に関する本ってノウハウに焦点が当てられているものが多いですよね。

:ノウハウも大事ですが、ノウハウに頼ってしまうと「うわべだけのもの」になってしまいます。もっと人の奥底にある人間性を高めていかないと、いつかは自分がやっていることと本来の自分とのギャップが生まれてきて、自分自身が苦しみます。やりたいこともやりたいようにやらなければ、やりたいことじゃなくなっちゃうんです。

もちろん、「好きなことを好き勝手にガンガン言う」というわけじゃありません。大事なのは「自分に嘘をつかない」ということです。

人はそれぞれの価値観や考え方を持って生きています。
だから、人の反応を気にして自分の態度を変えるとか、自分が相手に本気で伝えたいことを曲げてしまう、といったことはしないで良いんじゃないかと思います。

「相手がなりたい自分になるためのサポート」が私の仕事

ーちなみに、勝さんはそのような考え方をずっと持っていたんでしょうか?

:思い返すと、もともと私は正直者だったんだと思います。
そんな私が、この仕事をやっていく中で「自分が思っていること、やりたいことを通じて、相手がどうなってもらうことが幸せなのか?」ということを知ることができたんです。

それまでは「ファッションが好き」という気持ちで動いていましたが、実は目の前の人の役に立つこと、自分がした仕事で相手が成功に近づいていくことに対して、幸せとやりがいを感じている、ということに気付けました。

つまり、私の仕事は「モノを売る」ことではなくて、「相手がなりたい自分になるためのサポートをする」ことなんです。そのためには、無理矢理スーツを買わせようといった策略はいらなくて、「あなたのために何ができるだろう?」、「私はこうした方が絶対良いと思うの!」という、相手への愛情から出てくるお節介のようなスタイルになったんだと思います。

私だけじゃなく、皆さんも子供の頃は正直な気持ちを持っていたはずです。それが大人になるにしたがって、立場とか周りの人の声を気にするあまり、自分の中にある大事にしているものが見えなくなってきているから、本音が言えなくなってしまうんですね。

なので、営業に関して悩まれている方は、「自分が大事にしているもの」をまず見つけてあげるといいと思います。それが見つかったら、何に対して「素直に」「正直に」なればいいのかが分かってきます。

何よりも大事なのは「自分の心」

ー起業する際に、一番大変だったことはなんですか?また、それはどうやって乗り越えていきましたか?

:お金は無いし、知名度も無いし、お客様もいない。他社が安い価格帯で勝負しているのに、私たちは10~20万円のオーダーメイドのスーツを販売しています。そうなると、起業してからは大変なことしかなかったですね。
ですが、一番大変だったのは、自分の心が折れそうになったときでした。

オープンして1ヶ月くらい経ったとき、これまで大変だった毎日に追い討ちをかけるような出来事がありました。「もう立ち上がれない」とまで思うくらい追い詰められたことを憶えています。

ですが、その時に「自分が何か優れたものを持っていたわけじゃなくて、一個ずつ必死にもがいて掴み取ってきたからこそ今がある。元々は何も持っていなかったんだ」ということに気づいたんです。
それから、「何も持ってないんだったら失うものも無い」というふうに考え方を切り替えることができました。

もしかしたら、この出来事が起こるまでは、心のどこかで「自分は優れている」って思っていたかもしれません。ファッション業界に入って、トップセールスを記録して、たくさんの顧客を抱えて、お店を回していけるようになって、その集大成として起業したわけですから。ですが、それが1ヶ月で存続の危機を迎えたわけですから、ショッキングでもあり、印象的な出来事でしたね。

逆に言えば、お客様が少ない・お金が少ないといった外的要因ではなく、自分の心をしっかり持つことができたら、大変なことも乗り越えられると思います。
心が折れてしまったら、今の状況を改善するためのアイディアも出てきませんから。

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(取材協力:株式会社muse/勝友美)
(編集:創業手帳編集部)

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