アパグループ 元谷 外志雄|企業三段階成長論

創業手帳
※このインタビュー内容は2014年10月に行われた取材時点のものです。

【特別インタビュー】アパグループ 元谷外志雄代表に長期成長戦略を聞く

現在圧倒的な利用者の多さを誇るアパグループの「新都市型ホテル」。人気の秘密は、高級感、高い利便性、そして、使い勝手の良さが共存した設備とサービスの内容にある。ホテルの分布は都心部をはじめとして全国各地に広がり、日本のホテル業界では類を見ない成功をおさめている。そこには、元谷氏の実業家としてのゆるぎない信念と、綿密な計画にもとづく独自の戦略が存在し、創業から現在までの43年間、赤字0、リストラ0という企業としての強い財務体質は各業界からも注目が集まっている。経営手腕をふるうアパグループ代表・元谷外志雄氏からお話を伺った。

アパグループ 元谷外志雄代表

元谷 外志雄(もとや としお) アパグループ代表
石川県小松市に生まれる。県立小松高校を卒業し慶応大学経済学部通信課程に入学すると共に、小松信用金庫(現・北陸信用金庫)に入社。9年後に退社し、注文住宅会社「信金開発株式会社」(のちアパ株式会社)を創業。現在、マンション・ホテル・リゾート・レストラン事業など16の企業から成るアパグループの代表。自ら編集長を務める月刊誌『アップルタウン』(毎月6万5千部発行)に、藤誠志のペンネームを用いて社会時評エッセイを執筆している。これからの日本を担い、指導的立場に立つべき人材に対して、より良き国家社会づくりに貢献できる人材育成の場を提供するため、2011年6月「勝兵塾」を開設。


企業三段階成長論

事業を拡大していく中で、バブル崩壊やリーマンショックなど、大きな経済変動を乗り越え、むしろそれらすべてをチャンスに変えて成功してきた。その秘訣は「先見力」だと、元谷氏は語る。今のアパグループの高収益モデルも、創業時から全体像を思い描いていたというから驚きだ。そして、そのための長期成長戦略が「企業三段階成長論」である。

第一段階:信用累積型経営

元谷:はじめの10年間は、なによりも信用を築くことが重要です。需要を創造し雇用を創出、適正利益をあげて納税義務を果たす。このことを同時に行なうのが事業です。いわゆる「土地ころがし」のように、買った土地が値上りして売って儲かっても、雇用も需要も、そして信用も生まれません。私は土地を買ったら、建物を建てて売ったり貸したりします。これがすなわち”実業”なのです。

事業家であった父の影響もあって、私は高校卒業後、慶大経済通信課程に入学するとともに信用金庫に入り、事業家になるべく金融の勉強をしました。そして、当時急速に成長していた”住宅産業”に着目しました。会社が成長し発展していくためにはその礎をしっかりと築かなければならない。そう考え、信用金庫で全国初の長期住宅ローン制度を作りました。「頭金10万円で家が建つ」という宣伝文句で、家を持ちたい人がローンを利用して気軽に買える。そういう基礎を作ってから、独立に踏み出したのです。

起業当初は、注文住宅から始めました。「契約→施工協力会社が工事(手形で支払)→完成→お金の回収→手形の決済」という収支モデルにすれば、資金がなくても事業を始められるからです。次はそこで得た信用を基に資金調達し、建売住宅事業へと進出しました。そして「注文住宅→建売住宅→マンション→ホテル」へと進化を続け、今の総合都市開発事業へと発展して来たのです。

第二段階:資産拡大

motoya-interview-fig02元谷:信用を得たら、次の10年はその信用を背景にお金を借りて事業を拡大し、資産を増やす段階です。

私は当時、金沢で一番地価が高いといわれる片町繁華街に、全国初となる「100%リースの飲食テナントビル」を造りました。面積当たりの家賃は高いが、細かく仕切れば家賃も少なく、内装も施しておりますので、お店を開きたい経営者にとって、借りたらすぐに経営できるという点で大当たりし、片町ナンバーワンビルとして盛況を極めました。

その後も、賃貸マンションなどを積極的に増やしていきました。通常だと、資産の拡大に伴い借り入れはどんどん増えていきますが、「借り入れを増やさずに資産を増やす自己増殖」を目指していったのです。そのためには、やはり先見力が重要です。そして、決断する勇気と柔軟さが必要です。

第三段階:自己増殖

元谷:現在弊社は、自己増殖期に入っています。 2010年から始めた「アパの頂上戦略※」はその一環です。(※5年間で東京都心部においてホテル所有数No.1・マンション供給数No.1という目標を掲げ、それに向かって事業を進めているアクションプラン)

この4年半で東京の一等地に56件の物件を買い、ホテルとマンションを造っています。これだけ買ったら借金が相当増えるだろう、と思われるでしょうが、実は借金はあまり増えていません。これが自己増殖です。減価償却で節税し、償却費と税引き後の利益を集めて次のホテルを作るので、借金があまり増えず、収益力の高いホテルを着実に作っていけるのです。

アパグループ 元谷外志雄代表 写真1

上場を目指さない独自の経営方針

元谷:私は資金集めの為に上場するという考えに、あまり賛同できません。アパグループは、上場を目指さない経営を創業当時から考えていたというのが、成功の大きな要因の一つだと思っています。

資産を所有して経営をしているので、強い財務体質で、資金調達においても有利に働きます。資産は年々償却が進み、簿価が下がります。すると簿価利回りが徐々に上がり、今は40%~50%の物件が多くあります。つまり、簿価の半分が純利益になるということなのです。ただ、それには高収益モデルがないと実現できない。そのために、世界に前例のないホテルを造ろうと考えました。

世界初!新都市型ホテル

元谷:日本旅館のおもてなしと、シティホテルのデザイン性や最新設備を兼ね揃えた独自の新しいホテル、それが新都市型ホテルです。何よりもこだわっているのは立地です。ビジネスパーソンにとって時間はとても大切です。都心部のアパホテルは地下鉄の駅から徒歩2分~3分以内の好立地にあり、利便性が抜群に良いのが特長です。

便利なだけではなく、快適さや機能性も追求しています。世界のトップブランドと共同開発したオリジナルベッドや40インチの大型テレビ、ゆったり感のある卵型ユニットバスなど、シティホテルに引けを取らない最新設備を備えています。

しかし、ビジネスパーソンに使ってもらう為には低価格でなくてはいけませんから、無駄はとことん省いて効率化しています。ランニングコストをカットすることで低価格なサービスを提供できると同時に、高収益なホテル経営が可能になるのです。

虚業ではなく実業を

―最後に創業されたばかりの方へのメッセージをお願いいたします。

元谷:単に儲ける事だけを考えるのではなく、実業で「需要」と「雇用」を生んで頂きたい。その為には、未来予測を的確にして、企業をしっかりと成長させてほしい。

第一段階は信用累積型経営です。「短期間で一儲けし、会社を売却し利益を得る」といったマネーゲームのような事業は、社会に何も生み出しません。雇用を創り出し、需要に結び付け、連鎖をさせて、日本の経済を支える。そのために、自分の会社の利益だけを追求するのではなく、この国を良くしていくという信念を持って、良い会社を創って欲しいと願っています。



元谷 外志雄(もとや としお) アパグループ代表
マンション・ホテル・リゾート・レストラン事業など16の企業から成るアパグループの代表。自ら編集長を務める月刊誌『アップルタウン』(毎月6万5千部発行)に、藤誠志のペンネームを用いて社会時評エッセイを執筆している。

(創業手帳編集部)

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