起業すれば政府が年収650万円で面倒をみてくれるぞ!と言って甘えるのも冷かすのもダメ

資金調達手帳

【公募8月18日まで】NEDOの「起業家候補(スタートアップイノベーター)募集」の募集要項をマジメに読んでみた

NEDO-topfig

起業家候補(スタートアップイノベーター)募集|NEDO

(2014/8/8 加筆して更新しました)
政府が最大で2年間、起業家の生活費の面倒をみるという起業支援策を打ち出し、話題になっている。

「起業後押し、650万の生活費2年支給へ…政府」

政府は、サラリーマンなどをやめて起業する人に年間650万円の生活費を最長2年間支給する制度を今年度中に始める。

(中略)

特に将来の市場拡大が見込まれるロボットなど製造業関連での起業を期待している。

7/29 読売新聞より引用

この施策には賛否両論があるようだ。

「とりあえず貰えるものは貰っておけ!」という冷やかし半分の声のほか、「こういう支援で起業促進はできない。必要なのは規制緩和や起業インフラや制度の充実だ!」といった従来からの起業家支援制度反対派の声も聞こえてくる。

一方で、これらの声からは、今回の支援制度の特長が無視されているように感じる。

そこで、今回は「起業すれば政府が年収650万円で面倒をみてくれる起業家支援制度」として話題になっている、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「起業家候補(スタートアップイノベーター(SUI))募集(研究開発型ベンチャーの支援事業の実施に係る公募)」の募集要項をマジメに読んで、概要をまとめてみた。


応募対象者の要件

研究開発型のテクノロジーベンチャーが対象

具体的な技術シーズ、つまりビジネスになりそうなスゴイ技術を既に持っているのだが、資金がなくて事業化できない!という起業家が対象である。

募集要項では「例えばスマホのアプリ開発は対象外」と例に挙げられてディスられているが、技術的要素が薄いものや、既にある技術を利用したビジネスは対象外ということだ。

より研究開発寄りの新しい技術を元にビジネスを立ち上げ、世界にイノベーションを起こそうと考えている起業家が対象なのである。

したがって、技術も無いのに「タダほど安いものはない!」という考えの起業家は、冷やかしで申し込むのは止めておこう。

創業前の起業家が対象

事業活動開始・資金調達を「目指す」起業家が対象である。よって、既に事業を開始していたり、事業開始前でも出資を受けている場合は対象外だ。


支援内容のまとめ

専門家の支援を受けられる

起業プロセスや事業化の専門家(事業カタライザー)の支援が受けられる。

事業カタライザーは、必要と認めれば、外部の技術の専門家のほか、弁護士や弁理士といった専門家を紹介してくれる。専門家だけでなく、チームに特定のスキルをもった人材が追加で必要だと認めれば、外部人材とのマッチングも仲介してくれる。

また、投資先や技術的な提携先のマッチングも支援してくれる。

コワーキングスペースを利用できる

執務や打ち合わせのために、川崎(神奈川県)にあるコワーキングスペースを利用できるようになるようだ。

便利だが、テクノロジーベンチャーであれば必要になる可能性が高い研究スペースについては言及されておらず、自前で用意する必要がありそうである。

年間1,500万円の活動費と年収650万円

NEDO傘下の法人に雇用され、そこで「事業化可能性調査」を行うための活動費とその間の給与(労務費)という名目で、650万円/年が支給されることになっている。認められれば、給与はチームで最大3名分まで支給される。

支援の打ち切りは当然アリ

ニュースでは「もらえる」部分が協調され、賛成派も反対派も触れていないことが多いのだが、当然これらの資金的支援が打ち切りになる条件がある。

支援期間は最大2年間だ。支援を受ける起業家は2年以内に、「シード資金獲得活動」「事業化可能性調査」を行う。シード資金獲得活動と事業化可能性調査の流れは複雑なので、あらかじめ下記のリンク先のNEDOの資料をよく読んで確認しておこう。

このプロセスで、支援を受けた事業者は、NEDOの求めに応じて、活動内容をプレゼン報告する必要があり、NEDOと外部審査委員が支援継続が不適切だと判断すると支援は打ち切られる。

また、事業の成功・不成功に関わらず、他の出資先から1億円以上の出資を受けた場合も、その時点で支援は終了となる。


あなたの事業に本当に必要な支援制度を探そう

これまで述べてきたように、今回の支援策は、単純な起業家支援の施策というよりむしろ、新産業育成の施策との意味合いのある制度である。

当然、あらゆる起業家全般を対象にしたものでは無い。報道が事実を歪めているところも大きいが、「貰えるなら貰っておく」にしても「一般的な創業助成制度の批判」にしても、若干的外れな意見だと言えるだろう。

応募締切は8月18日だ。応募には、事業概要をまとめた提案書や経歴書の作成が必要で、事前に説明会への参加も推奨されているので、応募するまで時間的な猶予は少ない。

本当に「革新的な技術を生かして世の中にイノベーションを起こしたい」と考える起業家のみ、急いで準備に取り掛かろう。

> 【外部リンク】応募について(7ページ目)|起業家候補募集|NEDO

総ての起業家に有効な唯一の支援制度を行政が準備することは難しい。一方で、様々な条件に特化した創業支援制度は探せば結構見つかるものだ。

「誰もが革新的な技術を生かしてイノベーションを起こせるベンチャーを起業すべきだ」と言うつもりはない。そもそもそのようなことは不可能だ。

よって、短絡的に報道を鵜呑みにして話題の支援制度に飛びついたり、あるいは逆に批判するだけではダメだ。常に情報のアンテナを張り、創業支援の専門家のアドバイスを参考にしながら、あなたのビジネスに本当に必要かつ最適な支援制度を探していくことが大切だと言えるだろう。

>(外部リンク)【公募は8月18日まで】起業家候補(スタートアップイノベーター)募集(研究開発型ベンチャー支援事業の実施に係る公募について)|NEDO

(A. Bizgami)

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