リモートワークには、マニュアルと成果主義が必要だ!【中山氏連載その2】

創業手帳
※このインタビュー内容は2020年10月に行われた取材時点のものです。

内閣官房「業務の抜本見直し推進チーム」アドバイザー、中山亮氏に聞く。マニュアルの効果と可能性

(2020/10/27更新)

新型コロナを機に、多くの企業が在宅勤務を取り入れました。「働き方改革」の波もあり、今後より一層リモートワークが推進されていくでしょう。

2.1代表の中山氏は、リモートワークに欠かせないのは「マニュアル」と「成果主義」だと言います。

まだまだ日本では悪いイメージを持たれている言葉「マニュアル」ですが、さまざまな文化が現代に伝わる過程にマニュアルの存在があり、企業にとってもマニュアルは必要不可欠なものというのが前回のテーマでした。

第2回である今回は、リモートワークに焦点を当て、ニューノーマル時代での働き方、そしてリモートワークにおけるマニュアルの必要性について考えていきます。

中山亮

中山 亮(なかやまりょう)
内閣官房「業務の抜本見直し推進チーム」アドバイザー
株式会社2.1 代表取締役社長
長崎大学大学院を修了後、株式会社アルファシステムズにSEとして入社。その後株式会社リクルートを経て、プルデンシャル生命保険株式会社へ。リクルートでは住宅情報誌の営業MVP、プルデンシャルでは業界上位1%の保険営業マンに送られるMDRTの称号を獲得し、横浜エリアにて営業所長を務めた。多くの企業に戦略的なマニュアルが導入・活用されていないことで、生産性の低下や人材が活躍できていないことに着目し、2014年、株式会社2.1を創業。
これまでマニュアル導入支援事業を通じて300社以上の組織活性化を実現した実績から、2019年より政府機関である内閣官房にて日本行政全体のマニュアル化を支援。2020年より、福祉介護業界の属人化脱却を掲げる一般社団法人CI connectや、働きにくい環境の排除を推進する一般社団法人働きやすさ推進協会で理事を務める。
また、マニュアルの真価と重要性を解説した著書『社長、僕らをロボットにする気ですか?』で好評を得ている。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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コロナでガラリと変わった働き方。今後もリモートワークを望む人の割合は?

引用:株式会社2.1「リモートワークに関する調査」より

大久保:新型コロナによる緊急事態宣言が出て、多くの企業がリモートワークを半強制的に取り入れざるを得なかったわけですけれど、中山さんの会社ではどうでしたか。

中山:うちは創業以来リモートワークが当たり前の環境でやってきたので、今回コロナでリモートワークが望ましいという話になったときにも、何の不安も支障もなかったですね。まったく問題なく、スムーズに移行できました。

弊社のナンバー2も時短社員でありリモートで仕事をしていますし、宮崎にいるスタッフが東京にいるクライアントに話を聞いて、マニュアルを作成するという取り組みを7年前から実行してきました。

大久保:それはすごいですね。コロナが始まる前から、既にリモートワークの体制が整っていたのですね。

中山:そうなんです。4月から6月にかけて、いろんな方に「リモートワークせざるを得なくてやりづらい」という話を聞きましたけど、私は真逆でしたね。

今回400人以上の方にアンケートを取って、リモートワークに関する調査をまとめてみましたが、約7割の方が「今後リモートワークで働きたい」と言っています。

大久保:リモートワークが可能になると、いろいろなことが大きく変わってきますよね。創業手帳でも、現在ほとんどの社員がリモートで働いています。それならということで、地方に住んでいる方も採用の対象にしたんですよ。

出社しなくてもいいのなら、不動産や土地代が安くて自然が豊かな郊外に住もうという選択肢も出てきますよね。

オフィスもまたしかりで、富士通はオフィスを3割削減する計画を発表していますし、人材派遣大手のパソナグループは淡路島に本社機能を移転する計画を発表し、大きな話題になっています。

中山:いい流れですよね。我が社も2018年に宮崎にオフィスをオープンしています。都市部だけではなく、地方でも働けるということをこれからも証明していきたいですね。

リモートワークで求められているのは通常業務に関するマニュアル

引用:株式会社2.1「リモートワークに関する調査」より

中山:先ほども触れたアンケートで、リモートワークを実践できていない理由として、皆さんが挙げられたのは以下の結果でした。

1位:自宅など社外で作業できるパソコンや携帯が支給されていないから
2位:会社のマニュアルが整備されていないため
3位:経営者がリモートワークに反対しているから

デバイスなどの物理的な要因の次に、会社にマニュアルがないということが問題と考えられている方が多かったですね。3位の理由では経営者のリモートワークに対する姿勢が問われています。

大久保:何となく不安だからという理由で、変化を好まない人たちは多いですよね。やってみたら意外とうまくいくかもしれないのに、と思います。

やはりリモートワークにもマニュアルは必要なのですね。

中山:自宅で作業をするためには、PCなどのデバイスは必要不可欠ですよね。でもそれだけでは業務になりません。オフィスで顔を合わせて細かいことを質問することができないので、オペレーションや事務管理などの通常業務のマニュアルが求められています。

前もって用意をしていたわけではなく、新型コロナという要因でみなさん急にリモートワークを始められたわけですから、リモートワークを前提としたマニュアルがないことは仕方がないと思うかもしれません。

しかし、今回このリモートワークという働き方が、みなさんの働く環境において「業務が可視化されていない」ということのマイナス面を可視化してくれたという見方もできます。

もちろん、アンケートの回答に、「マニュアルを作るスキルを持った人がいない」、「人員不足で作成する時間がない」などの声があったように、マニュアルを整備したいと思っていても、スキルやリソースが不足しているという問題もあると思います。

ただ、これを機に経営者の方にはぜひ、リモートでも現場の業務が円滑に進められるように、マニュアル作成の優先度を上げていただきたいですね。得られるものは大きいと思いますよ。

大久保:そうですね。ちなみに、マニュアルを制作する際はどんなものを使うのがいいでしょうか? 最近はグーグルドキュメントやteachmebizなど、いろいろあって迷ってしまいます。

中山:マニュアルのフォーマットを作ろうとすると、皆さんパワーポイントやエクセルを使いがちですが、マニュアルにとって重要なページ管理だったりフレーム作りにおいて、一番使い勝手がいいのは実はワードなのです。

パワーポイントやエクセルでできる事はほとんどワードでもできるので、機能さえ使えこなせば万能なツールです。

「成果主義」がリモートワークにおける人事評価のカギ

大久保:リモートワークにおけるマニュアルの必要性はよくわかりました。マニュアルやデバイスの他に、経営者として気をつけたほうがいいことは何かありますか?

中山:リモートワークでよくあるのが、経営者やマネジメント側が「社員がサボっているのではないか」という疑念を抱くことです。

確かに働いている姿を直接見ることはできませんが、極端なことを言えば、別にサボっていてもいいじゃないですか。期限内に、設定した成果を出してくれれば問題はないですよね。

つまり、経営者やマネジメントに必要なのは、社員の評価につながる結果設定ができているかどうかです。その結果を設定するために必要なのがマニュアルです。

業務が可視化され、しっかりステップに分けられていれば、「このステップをいつまでにやる」という設定ができるからです。

大久保:なるほど。働く側としても、ずっと監視されているよりも、結果を出せばいいと分かっているならば、目標に向かって自分のペースで業務を進められて気分もいいですよね。

中山:はい。今この瞬間にサボっているかどうかを気にするよりも、長い目で見て成果主義でいくことをおすすめします。

大久保:コロナがいつ収まるかは誰にも分からないですし、今後リモートワークは新しい働き方として一部で定着していくでしょうね。現場にとっても、経営者にとっても新しい挑戦ですが、マニュアルなどを味方にニューノーマルな働き方にうまくシフトチェンジしていきたいものです。次回は教育におけるマニュアルの意義についてお聞きします。

(次回に続きます)

(取材協力:株式会社2.1代表取締役 中山 亮)
(編集:創業手帳編集部)

ワンポイントコラム 【マニュアルの分類】

先ほどオペレーションマニュアルという言葉が出てきたところで、マニュアルの種類を考えてみましょう。マニュアルは大きく4つに分類することができます。

まず挙げられるのが、企業理念の浸透を図る「規範(マインド)マニュアル」です。企業が何のために存在するのかといった経営理念や、進むべき方向を示すマインドの統一のためのマニュアルです。「社員の心得」や「倫理綱領」といった文書もこれに当てはまります。また、有事の際にどう行動するかの「危機管理マニュアル」も大きく分けるとこの分類に入るでしょう。

実践的な内容として、次に挙げられるのが「業務(オペレーション)マニュアル」です。業務達成に向けての仕事の標準的な処理要綱(何を、どのようにすればよいか)とそのプロセスを説明するものです。給与計算業務などの業務別マニュアルや、担当者自身が担当業務を記述した担当者別マニュアルがこれにあたります。

3番目に挙げられるのが「使用説明(ユーザーズ)マニュアル」です。パソコン内のアプリケーションソフトなどの社内情報システムの使い方や操作手順を解説した文書がこれに当てはまります。

操作マニュアルは全機能を網羅しようとすると膨大なものになりがちなので、必要な場所をすぐに読めるように、目次や索引を工夫することがポイントです。

最後に「教育訓練(テキスト)マニュアル」が挙げられます。社内研修や自己啓発用の関連資料がこれにあたるでしょう。

4つのマニュアルの種類と特徴を知り、自分の企業のマニュアルは十分であるかどうかを考えてみてはいかがでしょうか。

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