「日本の若者は世界にチャレンジして欲しい。そのための架け橋になる!」Fenox VC CEOアニス・ウッザマン氏インタビュー(前編)

創業手帳
※このインタビュー内容は2017年11月に行われた取材時点のものです。

起業家の活躍を世界に広げる「スタートアップワールドカップ」

(2017/11/15更新)

日本のみならず、世界各国でも投資活動をしているFenox Venture Capital(以下フェノックス)。
昨年からは、全世界のスタートアップを対象に、スタートアップ企業世界一を決める「スタートアップワールドカップ」を開催させるなど、世界中の起業家や投資家にその活動を注目されているベンチャーキャピタル(以下VC)です。
今回はフェノックスのCEOであるアニス・ウッザマン氏に、投資家から見た「投資したい企業のポイント」や、スタートアップワールドカップに込めた想いを伺いました。

アニス・ウッザマン
Fenox Venture Capital, General Partner & CEO
東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士を取得。IBMなどを経て、シリコンバレーにてFenox Venture Capitalを設立。現在は、投資家であるとともに、東南アジア最大のテックメディアTech in Asiaをはじめ、多くの企業の社外取締役を務める。著書に「スタートアップ・バイブル  シリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた」(講談社)、「世界の投資家は、日本企業の何を見ているのか?」(KADOKAWA)などがある。

投資のポイントは「物事をグローバルに見ているかどうか」

ーフェノックスはワールドワイドに活動されていますが、全体ではどのくらいの規模で投資されていますか?

アニス:まず、現在のフェノックスは全体で約1500億円以上の資金を運用していて、アメリカを中心にアジアなど世界115社に投資しています。アジアの投資は日本・インドネシアを中心に、全体の4割を占めています。

投資分野に関しては、アメリカでは※IoTやAIといった技術系、東南アジアではeコマース系、日本はヘルスチェックや※アドテクノロジーの投資も多いです。とくにモバイルのアドテクノロジーが多いですね。

※IoT:センサーやデバイスといった「モノ」がインターネットを通じてクラウドやサーバーに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。

※アドテクノロジー:インターネット広告に関連するシステム。

ー投資先を選ぶにあたって、重要視しているポイントはどこですか?

アニス日本の場合は、「事業をグローバルに広げていく見込みがあるかどうか」が大きなポイントです。

なぜアメリカの多くのベンチャー企業がフェノックスの投資を受けているかというと、アジアとの繋がりが欲しいからなんです。フェノックスとパートナーシップを組めば将来的にアジアに展開できる。ですから私たちはアジアの大手企業、特に日本の大手企業とアメリカのベンチャー企業をつなげたいのです。

成功するには、ある程度海外に目を向けなければならない場面が出て来ます。まだまだ国内だけを視野に入れて動いているベンチャー企業が多いので、その意識は変えていかなければいけないと思いますね。

投資家たちが注目する国や企業とは?

ー投資先はどんどん増えていますが、あえて新しい投資先を開拓しているのでしょうか?

アニス:ここがユニークなところで、フェノックスが「架け橋(ブリッジ)」である秘密だと思うんです。

一般的なVCは金融機関から出資を受けていることが多いんですが、フェノックスは100%事業会社から出資を受けています。なぜかというと、事業会社はいい案件に結びついた先のベンチャー企業と業務提携をしたいからなんです。アジアやアメリカ、ヨーロッパなど世界各国の事業会社が協力してくれているので、ベンチャー企業としても、フェノックスからお金を受け入れたらすぐにいろんな大手事業会社と繋がることができるというメリットがあります。

つまり、こちらから積極的に投資先を開拓しているわけではなく、業務提携をしたいベンチャー企業が世界各国から来てくれているということですね。フェノックスが受け入れられている理由は、その点にあると思います。

ーちなみに、今注目している国はどこかありますか?

アニス:最近では、フィリピンの動きに注目しています。経済が急速に成長していますので、今後の起業家たちの動きにも期待しています。

実は今年、フィリピン政府から「スタートアップワールドカップをフィリピンでもやってほしい」とお声をいただいて、スタートアップワールドカップの予選をフィリピンのマニラで開催しました。

イノベーションの光を届けるための「スタートアップワールドカップ」

ー「スタートアップワールドカップ」は前回(第一回)の開催では日本のユニファ株式会社が優勝して話題になりました。立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?

アニス「活躍の場を世界中に広げたい」と考えている起業家の皆さんを後押ししたい、という想いです。

世界中のVCには資金が集まっており、みな支援先を探していますが、チャンスがあるのは先進国だけにとどまっています。例えばアフリカなどではまだ環境が十分に整っているとはいえない状況なんです。

そこで私は、「起業家にとって飛躍する機会を世界中に届けたい、イノベーションに興味がある世界中の人たちをつなぎたい」と思い、世界14カ所にスタッフを配置している利点を活かして、スタートアップワールドカップを開催することにしました。私たちが始めなければ、誰もスタートしないと思ったんです。

ースタートアップワールドカップの予選は、全世界で開催されているんですか?

アニス:今はアフリカでもやっていますし、ブラジルやコロンビアといった南米、フィンランドやデンマークなどの北欧、アジアではフィリピン、インドネシア、日本、韓国、台湾、中国といった世界30カ国32地域で開催しています。

ー全世界で開催することに意義がある、ということですね。

アニス:その通りです。私たちは、このイノベーションのメッセージを世界のあらゆるところに届けるという信念のもと、世界で戦える企業のために優勝投資賞金約1億円を用意しただけなんですよ。すごくシンプルなことです。

ーフェノックスにとっては「スタートアップワールドカップ」はビジネスというより他の目的があるんですね。

アニス:そうですね。ほかの多くのイベントはある程度ビジネスの要素があると思いますが、スタートアップワールドカップは違います。

32の地域で開催しようとするとかなりの資金が必要ですが、実は今、それぞれの国が開催のための資金を用意して、予選を行なってくれています。これだけの規模で開催できているのは、コンセプトに協力してくれている方々がいるからなんです。私たちのメッセージが皆さんの心に響いてくれたんだと思います。

ー各自開催ということは、どのように情報や進行などを共有しているんですか?

アニス:例えば今年初開催のフィリピンでは、担当者とたったの数時間しか話していません。彼らにスタートアップワールドカップのコンセプトを説明し、他の地域予選のイベントの写真などを共有したところ、フィリピン政府がスポンサーについてくれました。他の国や地域でも、同じように動いてくれています。

なので、細かな進捗の指示を送っているわけでなく、お互いのコンセプトを理解し、やらなければいけないことを明確にすることで、順調に準備することができたということですね。

ちなみに、幸いなことに今回は64カ国から申し込みをいただきました。64カ国もあると、さすがに対応するのが難しかったので、今回は30カ国32地域だけを選んでスタートアップワールドカップを開催しています。来年以降は予選開催地域を徐々に増やせればと考えています。

ー30カ国で開催すると、とても大きな国際的なネットワークができそうですね。

アニス:そうですね。まず日本など各国での予選にて地域代表に選ばれ、その後にアメリカに行くと、幾つかの価値が得られます。

アメリカで行う決勝では、世界の名だたる投資家の方々の前でプレゼンができます。前回を振り返ってみると、ここでの経験が起業家たちにとって大きなものになると思います。
優勝した企業にはフェノックスから約1億円の投資賞金が贈られますが、それだけでなくスタートアップワールドカップ決勝戦に出場したすべてのベンチャー企業が資金調達に成功し、その資金調達合計額は何十億円にものぼります。ちなみに、優勝したユニファ株式会社も世界50社以上から提携の話があり、時価総額が跳ね上がったそうです。

会場には投資家や大手企業の方が2500人ぐらいいます。メディアもCNNやニューヨーク・タイムズなど200社ほどがくるので、スタートアップワールドカップに出場すること自体が注目を集めるんです。スタートアップとしては、世界で活躍していくための大きな一歩となると思います。

【後編はこちら】悩める起業家に足りないモノとは
有名投資家Fenox VC CEOアニス・ウッザマン氏から日本の起業家へ 「海外と渡り合う方法」(インタビュー後編)

(取材協力:Fenox Venture Capital/アニス・ウッザマン)
(編集:創業手帳編集部)

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