はじめて社員を雇用する -「雇用形態」編-

創業手帳

非正規雇用から正社員へ 雇用形態は柔軟に

A businessman looking up at the sky
起業したころは社長が独りでビジネスをおこなっていても、事業の成長にあわせていずれは社員を雇用することが必要になるはずだ。はじめて社員を雇用することなったとき、どういうところに気を付ければ良いのだろうか?

脱サラして独立・開業したのであれば、あなたが会社員だったときを思い出して欲しい。雇用というと、まずは雇用契約書があったと思い当たるはずだ。雇われる側の会社員だったときは何気なく印鑑を押していた雇用契約書だが、経営者になると逆の立場で雇用契約書を社員に呈示しなければいけないものだと気付く。

これから2回の連載で、はじめて社員を雇用することになった(あるいはいずれ雇用することになるであろう)ベンチャー社長のために、雇用契約の中でも重要な柱となる「雇用形態」と「労働条件」について基本的なポイントを紹介する。まず第一回目は、「雇用形態」について紹介しよう。

無期労働契約の雇用形態(正社員)

従業員を雇用する際の雇用形態は、無期労働契約(無期契約)有期労働契約(有期契約)の2つがある。

無期契約とは期間の定めがない契約で、一般的にいわゆる正規雇用といわれる正社員(無期契約の契約社員も有り得る)のことだ。無期契約は期間の定めがない雇用契約のため、正社員は基本的には定年までの雇用が前提となる。

例外を除き、会社側は社員からの申し出がない限り雇用契約を終了することができない。そのため、今の日本の現状は、会社が社員を解雇した場合、相当の理由が認められなければ会社側が敗訴しているのが実情だ。

正社員を雇用すると社員を長期的な戦力として考えることはできる。その一方で、採用した人材が期待通り仕事ができなかったからといって、むやみに正社員を解雇すると思わぬトラブルに発展してしまう。

有期労働契約の雇用形態(非正規雇用の社員)

一方、有期契約とは、期間の定めがある契約だ。一般的に非正規雇用といわれる契約社員・アルバイト・パートなどのことを指す。

有期契約は期間の定めがある雇用契約のため、会社側が契約期間終了時に非正規雇用の従業員の契約更新をおこなうか、契約終了の選択をすることができる。

現在の法律では契約期間の上限は3年、一部専門的な知識、技術又は経験があるスタッフは5年となる。

非正規雇用の社員から正社員への登用

有期労働契約の非正規雇用の場合、雇用契約締結時に契約更新の基準を明示することが必要になる。

また、平成25年4月1日より、労働契約法が改正され、有期契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、無期契約の締結が必要になった。すなわち、企業は非正規雇用である契約社員・アルバイト・パートを5年以上雇用し続ければ、無期契約として雇用しなければならなくなった。

このような労働契約法の改正を背景に、企業によっては、当初は有期契約で非正規雇用として雇用(3ヶ月から1年の期間)し、期待通りの働きぶりが確認できたところで、無期契約の社員あるいは正社員として登用するようなケースも多く見受けられる。

無期労働契約(正社員)で雇用するメリット・デメリット

正社員で雇用するメリット

社員を雇用する経営者の立場からみたメリットとしては、採用活動の際、正社員には応募が集まりやすいという点が挙げられる。

また、実際に採用した社員も(定年まではいかなくても)長期間の雇用を前提と考える場合が多いため、長期の戦力として期待することができる。

正社員で雇用するデメリット

逆にデメリットとしては、従業員が期待通りの業務ができなかったときでも経営者の一存で雇用契約を終了することが難しいという点が挙げられる。

また、一般的に毎年の昇給や賞与の支給を制度として提供する必要があり、大企業はともかく、ベンチャー企業や中小企業にとっては負担となりかねない。

有期労働契約(非正規雇用の社員)で雇用するメリット・デメリット

非正規雇用のメリット

経営者の立場から見たメリットとしては、会社の経営状況や従業員の勤務状況を考慮して雇用調整がおこないやすい点が挙げられる。

また、契約内容によっては、社会保険などに加入しなくて良いため、人件費を低く抑えることができるというメリットがある。

非正規雇用のデメリット

有期労働契約で非正規雇用をおこなうデメリットとしては、期間の定めがある雇用形態のため、雇用した従業員は一般的に事務作業などルーチンワークを中心に作業が限定されてしまうケースが多い。

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「雇用形態」のメリット・デメリットまとめ

はじめて社員を雇用することになった場合、まず考えるべきはその雇用形態である。

正社員を募集する場合は、優秀な人材が集まりやすくなる。しかし、もし採用した人材が自社に合わないと思っても、正社員は簡単に解雇をすることができない。最近ではこのようなリスクを避けるため、当初は非正規雇用で人材を採用し、その後の勤務状況や実力を図ってから正社員として採用するような柔軟な方法をとる企業が増えてきている。

雇用形態によるメリットとデメリットを理解した上で、柔軟な雇用形態をとることで上手く人材を活用し、優れた人材によって会社を成長させることができるような経営を目指したいところだ。

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(監修:リライ人事労務パートナーズ 特定社会保険労務士 秋保 健
(編集:創業手帳編集部)

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