起業に失敗するケースとその解決策を3つの事例から学ぶ

創業手帳

税理士が考える起業で失敗しないための方法

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(2018/06/07更新)

近年は国からの助成金や補助金が拡大し、インターネットでも起業に関するWebサイトも多く存在しています。起業すること自体とても身近なものとなってきました。

しかし、中小企業白書2011によると、起業した後10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が撤退しおり、企業内で行う新規事業と比べると失敗や破綻のリスクは高いことも事実です。

事業を継続的に行うために最も必要となるのが、起業する際の事業計画に伴う準備です。スタートラインとも言えますが、「この段階でどんな準備をすればいいかわからない・・・」と思っている方も少なくないかもしれません。そこで今回は、税理士の榎本美乃里さんに実際に相談を受けた起業の失敗事例を挙げていただき、準備するために必要なことを解説していただきました。

実際にあった起業の失敗事例

ケース1.資金がもたなくなった(飲食店経営の場合)

初めての決算を終え、2年目に入ったころに当事務所に来られた飲食店経営のAさん。高級路線でのカフェを実現するため内装を豪華にし、立地のいい場所に店舗を構えたのですが、当然賃料も高く、予定していた経費の見積もりをはるかに超えた状態でした。

また、当初見込んでいた売上げにもはるかに及ばず、従業員への給料の支払いも厳しくなり、資金が底をつきそうな状態になってはじめて当事務所に来られた方でした。

話を伺うと、開業する際には行政書士さんに、経理の面については無料相談で税理士さんに、労務についてはネットで調べたうえで社会保険事務所に相談されていました。つまり、トータルで相談できる相手がいないという状態でした。

また、キャッシュをどう回していけばいいかを全く考えていなかったため、莫大な経費がかかるのに、実際のところはそれを補填できるような売上げが立っていませんでした。開業当初は、「これだけ内装にもコストをかけたのだから、きっとお客さんが来てくれる」と甘い見込みを立てていたのです。

資金が底を尽きそうな現状を打破すべく、新規で融資を受けていただくために事業計画書を一緒に作成していきました。その中で、起業当初のAさんの思い描いていた事業計画がいかに甘かったかを実感して頂けました。

よく「事業計画書は予想だから適当でいいのでは?」と考えている方がいらっしゃいますが、それではダメです。しっかりとした根拠・予測を立てて事業計画を作成することで、気を付ければ失敗を避けられるほか、経営者として自らの事業を見つめ直すきっかけにもなるのです。

ケース2.当初見込んでいた顧客がつかなかった(経営コンサルタントの場合)

銀行で30年余り勤務した後、経営コンサルタントの事務所を開業されたBさん。銀行で大口の案件を数多く取扱い、人脈も豊富で、「退職したら宜しく頼む」とたくさんの方に言われていたので、独立後は必ず顧客になってくれると考えていたそうです。

ところが、実際に開業したら顧客はゼロ。「どうしたらいいのか」と途方に暮れて、当事務所に来られました。退職金があり資金面では問題はなかったので、まずは新たな見込み客を探す営業に力をいれる経営方針に立て直すことから始めました。

実はこのケース、Bさんに限ったものではありません。前職のつながりの方々に過度な期待をしすぎて新規開拓を行わず、起業直後に焦ってしまうケースは多々あります。
Bさんの場合は大丈夫でしたが、起業直後の焦っている経営者を狙い、集客やブランディングを高額で請け負う悪質業者に騙されるようなケースもあります。十分に注意しましょう。

ケース3.2人で起業してケンカ別れした場合(輸入雑貨販売の場合)

友人同士で起業されたCさん。もともと友人が発起人だったこともあり、経営面では友人が、仕入先の開拓や販路拡大のための営業など実質面についてはCさんが担当していました。

2年ほどで軌道に乗り順調に売り上げを伸ばしてきたところ、友人がもう一店舗増やすことを提案してきました。しかし、Cさんの負担が多く、店舗を増やすことを断ったところ、だんだんギクシャクしていったそうです。

結果、株式の過半数以上を有していた友人が引き続き会社を持ち、Cさんは会社から去ることを余儀なくされました。その後、再び輸入雑貨販売の会社をたちあげるため、Cさんは当事務所に来られました。

その時のCさんはすっかり憔悴しきった様子で大変心配しましたが、次にやる事業は同じ輸入雑貨販売の会社で、しっかりとしたノウハウは既にお持ちであったため、事業はすぐに軌道に乗りました。

Cさんは「最初から勇気をもって一人で起業すれば良かった」と口にしていました。「一人では勇気が出なくても二人なら起業できる!」と共同経営の会社を設立される方がいらっしゃいますが、経営方針の違いや、家族の問題など、様々なことで対立する可能性が高く、難しいところもあるのが現状です。

それでも理念を共にして共同経営で起業される場合は、一人で起業される場合よりもはるかに準備が必要だという点をご理解頂いたうえで、必ず専門家のアドバイスを参考にして頂きたいです。

起業するときは、しっかりとした準備を!

起業することは、企業内で行う新規事業と比べると失敗や破綻のリスクは高いのが現状です。また、経営者の方は全ての責任を負い、企業秘密もあることから、誰にも相談できずに孤立しがちです。1年ぐらいであれば、何とか一人でも持ちこたえることができるかもしれませんが、事業を何年も継続させていくには支えとなる専門家が必要です。

もちろん、税理士でカバーしきれないことは他士業の方々の力を借りますが、税理士を窓口に使って頂くことが問題解決の一番の近道になることはよくあります。
これから起業される皆様におかれましては、経営者の一番身近なパートナーとなり得る税理士をぜひとも頼って頂き、起業された事業が継続できるようしっかりとした準備をしてスタートラインに立てるようにしましょう。

(監修:榎本美乃里税理士事務所 代表 榎本美乃里(えのもとみのり)
(編集:創業手帳編集部)

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