元バンドマンがWebデザイナーに。顧客ゼロからの起業を支えた「人との出会い」とは

創業手帳
※このインタビュー内容は2018年01月に行われた取材時点のものです。

エースユニオンデザイン 代表取締役 須江 琢磨氏インタビュー

(2018/01/09更新)

「一期一会」という言葉があるように、人との出会いは大切にすべきです。今までの人生で、人との出会いに影響を受けた方は多いのでないでしょうか?
今回ご紹介する、株式会社エースユニオンデザイン代表取締役の須江琢磨氏もそのひとり。
バンドマンからWebデザイナーとして生きることを決めた須江氏。「人脈ゼロ」という状態から始まった起業家人生には、人との出会いが大きく関わっていました。
そんな須江氏に、お会いした方々との実体験を含めた起業の経緯、今後のビジョンについてお話を伺いました。

株式会社エースユニオンデザイン
代表取締役 須江 琢磨(すえ たくま)

岡山県津山市出身。元バンドマンとして年間100本以上のライブ活動を行なってきた。その後Webデザイン会社に転職。実績を積んだ後、2009年に独立。現在、WordPressを用いたWebサイトの企画・戦略・制作・デザイン・管理とさまざまな顧客の要望に応えている。

バンドとWebに共通する「モノづくり」に魅力を感じた

ーまずは、エースユニオンデザインの事業内容を教えてください。

須江:中小企業、個人事業主の方のウェブサイト制作や保守管理を行っています。ほとんどの案件で「WordPress」というオープンソースを使用した、更新のできるウェブサイトを制作しています。内容としましては、一人ひとりのお客様の要望にお応えできるように、低価格の制作プランから、ご要望に柔軟に対応するオーダーメイドプランを用意しています。

ウェブサイトの制作が思うように進まない、という話をよく耳にします。多くはミスコミュニケーションが原因だと感じることがあり、弊社では入念なヒアリングを基に、業界のトレンドを取り入れながら目的を達成できるWebサイトの構築を提案しています。また、納品後もお客様がWebサイトを十分に活用できるようにアフターサポートにも力を入れています。

ー起業したきっかけはどのようなものでしたか?

須江:二十代は音楽ライブを中心に活動していました。当時はバンドのWebサイトを独学でつくっていたのですが、そのときからサイトというモノづくりに魅力を感じていました。「妥協のないクリエイティブ」の面でウェブ制作と音楽は通じるものがあったのかもしれません。

結局、音楽の夢は途絶えてしまったのですが、それならばWebサイトの制作で頑張ってみようと。なぜかはわかりませんが、自分で事業を起こす、ということははじめから決まっていました。

顧客ゼロから始まった起業家人生

ーでは、創業までの経緯を教えてください。

須江バンドを解散した後、いきなり起業も考えましたが、幅広い知識を身につけるためにWebデザインの会社に就職しました。この会社に入って、才能ある同僚や上司、先輩に恵まれて、とても良い勉強をさせていただきました。この就職が無かったらと思うとゾッとします。

その後、ひとり立ちできる経験とスキルを習得しただろうと思い退社しました。でもホントはまだまだ経験も知識も足りていなかったのですが。。顧客もゼロでしたから自称Webデザイナーです。自宅兼事務所という感じで。

営業から企画、デザイン、プログラミングまですべて一人で行いました。営業と言ってもデザイン部出身の僕にとって営業ノウハウは無かったので、「ホームページ作れるよ」と会う人会う人に言う程度でした。営業ではないですね(笑)。それでも運だけはよかったのでしょうね。知人などから色々な事業主の皆様を紹介いただき少しずつお仕事をいただけるようになりました。

2年目に創業メンバーと出会うことができ、一緒に組むことにしました。やる気だけで仲間とジョインしたので、この時期は人件費が売上よりも大きく上回っていました。手持ちキャッシュが50万円しかない時に、30万円の赤字が出る月があったりしました。そのころは、入出金予測のExcelファイルを作って「このままいくと〇ヶ月で廃業」というシミュレーションをしていました。月末が本当に辛い日々でした。

バンドをしていた時期にかなりの貧乏生活をしてきて、「お金がない」ことへの耐性はあったのですが、「お金が足りない」という恐怖をはじめて実感しました。

そんな中、もう来月にはいよいよキャッシュアウトするかもしれない、という時がきました。
当時、自分の力でできる選択肢がなく、恥も外聞もかなぐり捨てて、お仕事を頂いていた会社の方に、「来週から間借りさせてください」とお願いをして、いきなり自分たちのデスクやらを持ち込みました。その会社の社長さんもすごい器の人で、快く受け入れていただき、そこからとても良い関係を続けていただけました。

今思うと、とても礼儀にかけた行動でしたが、良い決断だったと思っています。その後、その会社さんと良い形でお仕事を行わせていただいて息を吹き返し、間借り生活から卒業するのと同時に法人化しました。

社名にある「エース」ですが、実は逆にすると「スエ」。名前の須江から取りました。須江と仲間たち。そんな意味合いですね。もう一つが会社のビジョンに通じるのですが、「個々がエースの集合体」になれるように。社名にはそんな思いが詰まっています。

ー法人化するにあたり、大変だったことはありますか?

須江法人登記に関しては分からないことだらけでしたね。知り合いに司法書士の方がいらっしゃいましたので、すべてお願いいたしました。手続きに必要な書類を言われたとおりに集めて。結構時間もかかりましたね。

会社法の改正で資本金がなくとも会社設立は出来るとはいえ、定款認証手数料やら、登録免許税やら、印鑑の作成費など、想定していなかった部分でかなりのお金がかかったという記憶があります。

ーそれでも、法人にしてよかったと思いますか?

須江やはりフリーランスと法人では相手の見る目が全然違います。法人化してやっとお客様と対等にやり取りができるようになった気がしますね。それに加えて、法人化してからは新たな事業主同士のネットワークが広がったように思います。

また、小さいながらも会社の代表ですから、お客様に対して、社員に対して、社員の家族に対して、間違ったことができないという責任感も増しましたね。

「目の前の人を幸せに」「人の出会いは大切に」

ー今後の展開を少し教えていただくことはできますか?

須江:実家が田舎町の米屋ということもあり、中小規模の事業主の方の力になりたいと思っています。町々にある商店や企業、自営業者にウェブの力を活用してもらいたい、という想いがあります。

あとは、ただただ実直に。お客様もスタッフも、自分の目の前の人に幸せを与えられる人間になりたいと思っています。その数がどんどん増えていけば良いなと。例えばそれがお客様だった場合、Webサイトをつくったことで売り上げが上がったとか、ブランドイメージが向上したとか、プラスに作用してもらえたら嬉しいですね。その一方で、我々スタッフ側が疲弊しないように働く環境も重要だと考えているので、良い職場になるよう少しずつ改善しています。

ちなみに、現在力を入れているのが「SMARGE woman(スマージ ウーマン)」という名前の働く女性にフォーカスしたWeb制作サービスです。もっと女性の活躍する場を増やしたいという想いで企画しました。

私自身が結婚・妻の妊娠・出産を経験し、女性がビジネスシーンで活躍し続けるにはたくさんの困難があることを痛感しました。そこには妊娠・出産という身体的な理由や、待機児童の問題、夫婦の家事・育児分担の割合などなど、課題は山積だと。それならば家事・育児をしながらでも活躍できるようサポートできることはないかと。

Webサイトは常に稼働できる優秀な営業ツールです。そのWebサイトの制作にかかるコストと労力の負担を軽減することでサポートにつながると考えました。さらに高いスキルを持ちながら家事・育児のために会社組織を退いた全国のデザイナーの方達とパートナーシップを結ぶことで、技術を持った女性の活躍できる場所の提供にもつながり、良い循環になるのではと考えています。

ー最後に起業を考えている方にメッセージをお願いします。

須江あまり大きなことは言えないのですが、「人の出会いは大切に」ということですかね。私の創業時を振り返ってみると、本当に色々な方に助けられてきました。今でもその方々への感謝の気持ちは忘れてはいません。
起業される方は、それぞれ強い想いやビジョンを持っていると思います。そのビジョンに不正解は無いと思います。きっとこれからも多くの分岐点を経験し、たくさんの出会いが生まれると思いますので、その出会いの一つひとつを大事にして、時には力をお借りしながら進んでいけばいいのではないでしょうか。

(取材協力:株式会社エースユニオンデザイン
(取材協力:三幸エステート株式会社
(編集:創業手帳編集部)



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