弁理士 富澤 正|【第二回】Appleが商標を取れた理由とは?現役弁理士の世界一分かりやすい知的財産

創業手帳
※このインタビュー内容は2015年09月に行われた取材時点のものです。

富澤正弁理士インタビュー

(2015/08/05/更新)

「特許」「商標」などの言葉を聞いて皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。
私達にとって決して身近ではない知的財産について、同じ目線に立って分かりやすく伝える活動をしているのが富澤氏です。今回は、弁理士業の傍らで起業に至った経緯と、商標登録の際の3つのポイントを分かりやすく解説して頂きました。

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【第一回】100円ショップと特許の意外な関係!?富澤正の世界一分かりやすい知的財産

富澤正(とみざわただし)

弁理士。コスモス特許事務所パートナー。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。LECで弁理士受験の講師を務める。オモシロ特許研究会を主宰し、知的財産権の大切さを伝えるため全国で講演を行う。自身、知識件を活かしたアイデア商品を作るベンチャー企業、TimeFactory株式会社を設立、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。著書に「社長、その商品名、危なすぎます!」(日本経済新聞出版社)、「理系のための特許法」(中央経済社)等がある。

無体財産は土地と同じ

ー弁理士をしながら起業されたということですが、特許を取った後のゴールが様々ある中でなぜ起業を選んだのでしょうか?

富澤:確かに文房具メーカーに権利を売る方法もありましたが、実際に自分で商品を作ったほうが可能性や選択肢は広がってくると思ったからです。

やはりこれからは、アイデアなどの無体財産を持っている企業が強いと思います。

ー無体財産とはどんなものなんでしょう?

富澤:特許とか商標とか知的財産のようなものですね。無形財産は土地に例えると分かりやすいです。

土地を買えば、そこに家を作ることもできるし、土地の権利を売ることもできる。それと同じで、権利を取得すれば商品を作ることができるし、商品の権利を売ることもできます。

私が商標登録した「資格合格鉛筆」で言うと、「資格合格」というマークを「文房具」「手帳」「印刷物」等につける権利が発生するのでその範囲において販売を独占できます。

極端な話、他の人が車に「資格(四角)合格(五角)」という名前を付けても私の権利の範囲外なので大丈夫なんですよ。でも文房具の場合に権利の侵害があったら、損害賠償金を請求することができます。

逆に使いたいメーカーがあれば使用料を取ることもできます。

Appleが商標を取れるのは、商品がリンゴじゃないから

ーなるほど。商標を取れる範囲の制限はあるのでしょうか?

富澤:世の中の人たちは、商標を登録すると全てに権利が及ぶと思いがちですがそうではありません。

iphoneを作っているAppleでお話してみましょう。商標、「Apple」ですよ?(笑)Appleってリンゴじゃないですか。

あの商標が登録できているのは、商品が「リンゴ」じゃないからです。

Appleの商品が「リンゴ」ではなく「携帯電話」だから登録できるんです。

ー中古車販売の会社にも「アップル」ってありましたよね?

富澤:その通りです。一つの商標をとればすべてに適用されるのではなく、

業界を変えて違った商品やサービスに名前を充てた場合には同じ名前でも商標の取得が可能になります。

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権利取得はビジネスにおいての「投資」

ー商標登録はブランディングに欠かせなかったり、特許取得は差別化要因になったりビジネスにおいてカギとなってくることが分かりました。

富澤:そうですね。商標登録や特許はビジネスにおいて将来的な投資だと思いますし、お客様にもそうお話しています。

何故かというと、特に特許では、一旦商品を販売したりサービスを開始したりするとその時点で原則的に特許登録ができなくなってしまうからです。

ということは、売れるかどうか分からない販売前の時点で特許出願をしなければならないということです。

ーそれは盲点ですね。

富澤:さらに言うと、出願から認可まで約3年の期間と80万円ほどの費用がかかります。

それなので、特許出願をする際には期間とお金を費やすだけのサービス・物であるかきちんと見極める必要があります。

実は特許って製造業からの出願がメインなんですが、商標はすべての業界が対象です。

それなのに商標登録の意識が低いので、今回「社長、その商品名、危なすぎます!」を著しました。

創業の時には名前やサービスを調べてからリリースすることなど、気を付けるべきことが書いてあります。

ー特許は約80万円とのことですが商標登録の費用はどれくらいなんでしょうか?

富澤:弁理士ごとに値段は変わってくるのですが、業界の平均でいうと商標登録をして特許庁に支払う10年間の保護期間の料金がついて約15万円程度ですね。

商標にこれだけかけるのかと思われるかもしれませんが、一日に換算するとコーヒー一杯分以下の値段です。

これで安心を買えるのでまさに保険と同じです。

社長、「2020円キャンペーン」も危ないですよ!

ーなるほど。会社として商号も登録しますが、商標との違いはなんなのでしょう?

富澤:商号として登録してあれば何とか使えます(笑)何とかと言ったのは理由があります。

旅行のチラシで言うと、あくまで商号として使う場合はチラシの下の隅に○○株式会社と書いてあくまで商号として使うんですよ。

しかし、例えばHISなんかは一番目立つ左上なんかに会社のロゴを載せますよね。そうなると商標なんです。

難しいんですが、要するに目印となっているかどうかの見え方が問題なんです。

会社のブランディングで商売をし始めると、それはサービスになってくるので商標登録しておく必要が出てきます。

ー違いが良くわかりました!本の中にも出てきている例ですが、オリンピックなどの商標に便乗した広告キャンペーンも危ないと。

富澤:そうなんですよ。「祝2020年開催」「2020円キャンペーン」なんかも怪しくなってくるかもしれません。

国として商機があるイベントなんですが、オリンピック委員会側もスポンサー料をもらっているので、便乗してキャンペーンを行うことには厳しいようです。

タイムリーな話題ですが、きちんと権利を意識して商売なりビジネスを行っていかないと足をすくわれてしまいますので、意識していって頂ければ幸いです。

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(編集:創業手帳編集部)

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