【第一回】100円ショップと特許の意外な関係!?富澤正の世界一分かりやすい知的財産

創業手帳
※このインタビュー内容は2015年08月に行われた取材時点のものです。

富澤正弁理士インタビュー

(2015/08/05/更新)

「特許」「商標」などの言葉を聞いて皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。
私達にとって決して身近ではない知的財産について、同じ目線に立って分かりやすく伝える活動をしているのが富澤氏です。今回は、弁理士業の傍らで起業に至った経緯と、商標登録の際の3つのポイントを分かりやすく解説して頂きました。

富澤正(とみざわただし)

弁理士。コスモス特許事務所パートナー。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。LECで弁理士受験の講師を務める。オモシロ特許研究会を主宰し、知的財産権の大切さを伝えるため全国で講演を行う。自身、知識件を活かしたアイデア商品を作るベンチャー企業、TimeFactory株式会社を設立、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。著書に「社長、その商品名、危なすぎます!」(日本経済新聞出版社)、「理系のための特許法」(中央経済社)等がある。

100円ショップは特許切れ商品の宝庫

ー弁理士として普段はどんなお仕事をしているのでしょうか?

富澤:主に特許や商標の申請を行っています。他には、特許や知的財産を身近に感じてもらえるような活動もしています。

特許や知的財産は、普段生活している上で馴染みのないものですが、企業にとっては凄く重要になってくるんですよね。

それを伝えるための講演や本の執筆を行っています。

ー”オモシロ特許研究会”というものも主催されているんですね。

富澤:これも特許を身近に感じてもらうための団体です。

特許についての面白い例としては、iphoneのコネクターが正規価格だと1999円なのに何故100円ショップで売られているのかという事例があります。

これはアップル社の特許権を回避していると考えられるからです。

その他には、100円ショップにはたくさんのアイデア商品が売っています。これはジェネリックの考え方で、特許切れ商品だから安価に販売できるんですね。

実は、100円ショップは特許切れ商品の宝庫なんです。

他には、あるお寿司屋さんで「回転ずし」の考えの基本である回転レーンについて実用新案を申請していた会社があります。

現在は権利が切れてしまっているため、各社回転レーンを使って回転ずしの商売を行うことができているような事例があります。

また、「回転」については商標登録がとってありました。そのため、回転レーンは使えるようになったにもかかわらず、多くの回転ずしのメーカーは「回転」という言葉を使うことができなかったようです。

ー面白いですね。特許や知的財産の期限ってあるんですか?

富澤:特許は出願から20年、商標は更新し続けると永遠に持つことができます。

特許や知的財産は一定期間権利を守ることはできるのですが、権利の範囲があります。

先程の例でいうと「回転」を避けるために、「くるくる」寿司という名前にしたり、回転のレーンではなく水上で寿司を流したりする企業もあり、特許や商標の権利をかいくぐり権利に引っかからないため企業は日夜努力しているのです。

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立場が弱いベンチャーこそ権利の取得を

ーご自身でも「資格合格鉛筆」などの商標登録をなさっているんですよね。

富澤:最初は「五角=合格」というアイデアを思いついたんですが、調べてみると既に商品として販売されていたので、

「資格=四角」「合格=五角」の意味で、鉛筆の形が四角形と五角形をした鉛筆を商標登録しました。

この様に思いついた瞬間に、商標調査・登録をしてアイデアを具現化することは凄く大切だと思いますね。

ーアイデアを具現化するために起業に至ったということでしょうか。

富澤:そうですね。最終的にはそうなりましたけど、初めは文房具メーカー20社に企画書を送ったんです。

その時に企画段階でアイデアを盗まれないためにも商標登録をしました。

ところが20社どこからも返答がなく(笑)自分で会社を創ることにしました。

知的財産の良いところは、メーカーと比べて圧倒的に弱い立場の個人やベンチャーでも平等に権利を主張できるということと、何より相手が仕組みをよく知らないということです。

弁理士自身がアイデアを具現化することに意義がある

ー確かに疎い企業が多いかも知れないですね。

富澤:その通りで、知的財産にどれだけの価値や権利があるのかを知らない方が多いです。

特に、どの部分に権利を生み出せるのかを知っておくことが重要です。

例えば「資格(四角)合格(五角)鉛筆」のどこに権利が生まれると思いますか?

ーうーん。形の組み合わせですか?

富澤:いえ、四角形と五角形の鉛筆をセット販売することはできるんですよ。

でも、その2本を「資格合格鉛筆」という名前を付けて販売できるのが僕だけなんです。

いくらセット販売で鉛筆を販売しても、この名前でないと売れる訳がないので、権利は守られていることになります。

ー確かにそうですね。売れ行きはどうでしょう?

富澤:楽天の合格祈願グッズで検索するとトップページに出てきます(笑)

ただの鉛筆2本が777円で売れるのは、アイデアの力であり知的財産の力だと思っています。

この例のように、弁理士自体が知的財産を武器にしてアイデアを具現化して、成功例を生み出すのはとても意義があると思っています。

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商標登録の基準は「見せ方・呼び方・考え方」

ーふと気になったのですが、この四角形と五角形のデザインにも権利があるんですか?

富澤:先ほどもお話したように、四角形と五角形の鉛筆は誰でも作ることができます。

しかし、四角と五角の鉛筆を「資格合格」として販売することはできません。商標が似ているかどうかの基準は3つあります。

1つは見え方で、「資格合格」のマークの商標と見た目が似ているかどうかですね。

2つ目は呼び方で、資格合格という呼ばれ方です。

3つ目が考え方で、四角形だったらスクエアでも同じ考え方なので守られることになります。

スクエアペンタゴンだったら売れないと思いますが(笑)

ーなんだか分かりませんね(笑)他に権利を守る上で押さえておきたいポイントはありますか?

富澤:Facebookのマークザッカーバーグの話で説明すると、彼が大学生の時にアイデアを提供したという先輩と訴訟になった話があります。

大学の先輩がマークにFacebookを創らせたという話ですが、その場合いくらアイデアを提供したとはいえ、権利を取っていなければ著作権は創作者に帰属する可能性が極めて高くなります。

アイデアを形にする場合は、書面での契約をしておいた方がいいかと思います。

(編集:創業手帳編集部)

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