スタートアップがいくら忙しくても契約書を準備すべき3つの理由

創業手帳

弁護士がアドバイスするスタートアップの契約書との付き合い方

ほとんどのスタートアップ企業の本音を代弁してハッキリ言います…契約書をキッチリ準備するのは正直面倒です!
特に創業期の会社には法務に専門のヒトも金も投下する余裕なんてありません。

「取引を始める際にはキッチリと契約書を作りましょう」と口では言いつつも、心の奥底では「なぜ手間をかけて契約書を作らなければいけないのか?」と、いまいちピンときていない経営者の方が多いのではないでしょうか?

ここでは、スタートアップはいくら忙しくても契約書を準備すべきだと説くビジネス法務に詳しい田中尚幸弁護士にお話を伺いました。

田中 尚幸(たなか なおゆき)
弁護士。露木・赤澤法律事務所、東京弁護士会所属。一橋大学法科大学院卒。

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なぜ契約書を作るのか?

― そもそもなぜ契約書を作るのか?を教えてください。

田中:契約書を作る理由は大きく3つあります。

  1. 裁判になった際の証拠
  2. 紛争の予防・深刻化の防止
  3. 事務作業・管理コストの削減

― 一つめの裁判になった時に証拠になるというのは、たとえそれがわかっていても、自分の会社が実際に裁判に巻き込まれると考えている経営者は多くはないですよね?

田中:長く会社を経営している方は身にしみていらっしゃるかもしれませんが、一般に思われているよりも会社と裁判というのは身近なものです。例えば、退職した従業員が残業代を請求してきた、といった話は聞いたことがあるのはないでしょうか。裁判のコスト・手間等を天秤にかけて、泣き寝入りしているというケースも相当数あります。

― 確かに、元従業員の年収分数百万円を支払ったという話を聞いたことがあります。

田中:契約書を作るメリットは他にもあります。1つは、紛争の予防です。取引先等ともめた場合に、紛争の発生そのものを予防したり、紛争の深刻化を防いだりすることが出来ます。

例えば、契約書ではなく利用規約の例になりますが、少し前にニュースになったレンタルサーバのデータが消失したという件について、利用規約の内容がしっかりしていなければ、会社は途方もない金額の損害賠償請求がなされる可能性がありました。この会社の利用規約では、様々な工夫がなされていましたが、特に「本サービスの利用に関し当社が損害賠償義務を負う場合、契約者が当社に本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負うものとします」という賠償額の限定条項が入っていたため、巨額の損害賠償を求められるという紛争を予防することが出来ました。

― それでも、起きるかどうかもわからないもめ事の予防のために契約書を作れといわれても、やはり手間を考えて、後回しにしてしたり、ネットからの使い回しで済ませてしまう会社が多いのではないでしょうか?

田中:その点についていえば、契約書を作っておくことがかえって事務作業等を減らせるというメリットがある場合もあります。

同じ種類の取引を複数の会社と行う場合には、取引相手ごとに、毎回取引内容を決めるためのやりとりをするよりも、自社で用意しておいたひな型を取引相手に渡して、これでお願いします、といった方が話を進めやすいでしょう。取引相手としても、他の会社が同じようにやっているのであれば、ということで契約内容に納得しやすいこともあります。これを利用して、例えば、支払サイトを調整したり、入金の日付をまとめたりといったことが出来、また、会社内の各種の管理も簡易化することも可能です。

自社のひな型等を作るために若干の手間はかかりますが、長い目でみれば、早いうちから手をつけておいてよかったということにもなるでしょう。市販の書式集等を参考に、自社用に加工して契約書を作ってみる、といったあたりから手をつけるのがいいのではないでしょうか。

会社の将来を見据えて契約書は準備しておく

田中:自社で契約書を作らずに事業を進めていても、いずれ、例えば上場会社と取引する際等には、契約書への押印を求められることになります。この段階で、契約書対応を始めるという会社もあるかと思いますが、取引相手から、まずは早く契約書に押印してくれと言われることもあるので、それから準備するというのでは、交渉の経験も乏しく厳しいでしょう。会社を成長させていけば、遅かれ早かれ、契約書対応という業務は出てきますので、早めに契約書締結対応の業務への対策を考えておくのをおすすめします。

― 先ほどの話ですが、書式集にのっているひな型が自社の取引に合っているのかわかりません。ネットに載っている契約書例も安易に信用出来ませんし、やはり早い段階から弁護士に頼むのがよいのではないでしょうか?

田中:もちろんその方が弁護士としてはありがたいです(笑)。真面目な話としても、弁護士は、依頼してくる会社と契約相手方との関係、取引の実態等を踏まえ、

  1. 将来裁判になったときにはどのような内容にしておくのが望ましいのか?
  2. もめるとしたらどのような紛争が予想されるのか?
  3. スムーズに取引を進めるにはどのようなスキームがいいのか?

といったことを考えて、ひな型をカスタマイズして個別の契約書を作成しています。

スタートアップ時期における法務・弁護士との付き合い方については、またの機会に。

ココ重要!
  • スタートアップでも下記のような事態に備えて契約書を準備しておくべきた。
    1. 裁判になった際の証拠
    2. 紛争の予防・深刻化の防止
    3. 事務作業・管理コストの削減
  • 自社で頻繁に行われる取引については書式集などを参考にして契約書のひな形を準備すると業務の効率化につながる。
  • 望ましい契約書は、下記のようなポイントを押さえた契約書であり、法律のプロである弁護士に依頼することもできる。
    1. 裁判になった場合を想定している
    2. 紛争となりがちなポイントに配慮している
    3. 会社の実業に即している
契約書関連に精通した専門家をご紹介します

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