【プレスリリース編】起業直後や広報初心者でもできる、コスパ最強のPR方法とは?

広報手帳

誰でもできる効果的なプレスリリースとは?

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今までは、プレスへのコンタクトについて説明をしてきた。そこで重要になるのが、プレスリリースというものだ。今までの連載の本文中にも出てきたが、今回から次回にかけては、起業家向けに創業直後のスタートアップベンチャーに特化したプ
レスリリースの作成方法について説明
をする。

起業直後や広報初心者でもできる、コスパ最強のPR方法
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取り上げられるプレスリリースのネタとは?

プレスリリースは記者に記事を書いてもらうためのもの

プレスリリースとは、会社の発表事項を文章にまとめたものだ。

配信先はメディアの記者だ。内容が面白ければ、記事になるが、面白くなければ捨てられる。

大手メディアでも専門メディアでも記者にはプレスリリースが大量に送られてくる。その中で、媒体に取り上げるべきプレスリリースを選別していく。選別の基準は、発表した会社の規模やその業界での影響力だったり、発表した内容の重要性だったり、ニュース性だったりする。

スタートアップ企業にとって、会社の規模や業界の影響力はどうしようもない。そのため、内容の重要性とニュース性でプレスリリースは勝負をしていこう。

古いネタは書かれない

どんな良いネタであっても、日刊のメディアは1週間前の出来事を取り上げようとはしない。

万が一取り上げられるとしても、他の原稿を入れて最後にできたちょっとしたスペースに“埋め草”として小さく扱われる。

もし、これが当日に発表されていたら、大きく取り上げられていたはずだ。発表が遅れればもったいないということを覚えてもらいたい。

ここまで聞いて、当日に発表することが当たり前のように思うだろうが、じつは中堅企業の会社でもできていないことが多い。平気で1週間前、2週間前の出来事をプレスリリースで送ってくる。

ではなぜ遅れるのか?

社内では、プロジェクトをまとめるために必死に動いていたに違いない。まとめるのに必死で、その後のことまで頭が回っていないのだ。そうなると、広報部には、プロジェクトがまとまる直前や直後にしか情報が来ない。

プレスリリースは会社の正式な発表文書なので、役員の確認が必要になる。広報部が文章を作成し、推敲し、役員の確認などを取っていると、プレスリリースの発表が遅くなるのだ。

当日発表ができている企業は、広報が役員会議などの重要な会議に参加をしていたり、部署間で情報を共有する会議を行っていたりする。中堅企業などでは、この仕組みが出来上がっておらず、後手に回ってしまう。

これを逆にとらえれば、スタートアップ企業でも、当日にプレスリリースで発表することを守っていれば、記事に掲載される確率が劇的に上がるということだ。

他社との提携はプレスリリースの狙い目

内容の重要性としては、会社設立だけでなく、M&A、他社との提携、子会社の設立、新規ビジネスの開始、決算発表、中長期戦略の発表などが高い。こういった内容があるときはプレスリリースを配信しよう。

顧客へのサービス導入なども記事になることがあるので、プレスリリース配信するのは良い。その際は、相手の会社の了解を得る必要があるので注意しよう。

重要性の高い事案の中で、スタートアップ企業で可能性が高いのは、他社との提携だ。それぞれの特徴を生かし、新しい事業を開始しようとしているので、ニュースバリューもある。

スタートアップ企業にとって他社との提携のプレスリリースを配信するメリットは他にもある。

それは、相手のネームバリューを借りて、プレスリリースを配信できることにある。相手側のネームバリューがあればあるほど、今まで単独では取り上げてくれなかったメディアでも取り上げてくれる可能性が高くなる。

より効果を高めるために、プレスリリースを配信したあとに、記者から依頼のあった取材対応はしっかりとしておこう。

実際に会えるなら名刺交換をし、プレスリリースの配信リストに追記しておく。

電話取材の場合でも、「次に新しい情報があったときにプレスリリースなどでお知らせをしたいので」と言って、記者の名前とメールアドレスを聞くのは忘れないようにしたい。こちらも同様に配信リストに追加しておくことだ。

プレスリリースの書き方:ひな形サンプルで学ぶ!

プレスリリースのネタができたら、スピードを重視して、プレスリリースを書きあげよう。

ただし、これにも独特なコツがある。普通のビジネス関係の書類などの文章が書けるから大丈夫と思っていても、プレスリリースは普通のビジネス文書とは書き方の要領が異なるからだ。

ヒントは新聞記事にある。

プレスリリースを配信する目的を忘れるな

プレスリリースは記者に配信し、記事を書いてもらうためのものだ。その基本を忘れてはならない。記事にしやすい内容、書き方にすることが重要なのだ。

記事の書き方は独特で、逆三角形の文章と言われる。重要な内容ほど前に書かれ、後ろになるほど重要性が低くなる。一般的に文章の書き方で言われる起承転結ではない。

これは、新聞のスペースが限られているためだ。記者が出す記事は何十行という原稿になっている。それをデスクや校正が、他の記事との関係(重要性の軽重)などを考えながら長さを調整する。そのときに、原稿の後ろの方からカットする。締め切りに追われながら、効率的に長さを調整できるようになっているのだ。

そのため、記事は第1段落に全ての情報が簡潔に詰まっているようになっている。

具体的に言うと、まず「▲▲株式会社は○日、△市で●●を行った」のように書く。その次に、目的や結果(集まった人数、売上)などを書く。新規ビジネスの開始であれば、場所を書くことはないが、狙いや目標とする数値などが必要になる。

第2段落からは、第1段落で書いた内容の補足となる。市場の動向をより詳しく説明したり、社長のコメントを入れたりする。新商品やサービスなどでは、細かい機能の説明を入れることになる。
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ひな形サンプルで学ぶプレスリリース


① 一番伝えたいポイントを見出しにする。太字でフォントも大きく。

② 専門紙の場合、本社と社長名を書くことが多い。県庁所在地、政令指定都市は県の名前を省く。社長名はフルネームで。

③ 日付は必須。過去の内容を遅れて発表しないように。

④ 「発表しました」と書くプレスリリースが多いが、記者から見たら、発表したことがニュースではなく、提携したことがニュースとなる。

⑤ 担当者の名前を漢字で書くが、記者が読めるかどうかは分からない。そのため、読みを( )の中にカタカナで名前を入れる。

抽象的な形容詞は御法度

記者が、はじめの方だけ読んで捨ててしまうプレスリリースがある。それは、形容詞が大量に入っている文章のプレスリリースだ。例えば、「美しい」とか「綺麗」、「すばらしい」といった言葉だ。

記事に書けるのは、データによって裏付けされたものである。例えば、日本一や世界一といった形容詞を使う場合は、その根拠となるデータがついていなければ、記事に書くことはできない。

業界初の場合は、確認が取れない場合が多いので、記事の中では「同社では業界初という」といったぼやかした表現が取られる。この場合は社長のコメントの中に入れると使われやすい。

どうしても、自社が発表した内容を凄いものと思ってもらいたいがために、こういった形容詞を使うことが多いが、記者がプレスリリースを読むときは、この形容詞を飛ばして行く。飛ばして、意味が通じれば良いが、通じなければプレスリリースは捨てられる。その判断は、はじめの第1段落めで行うことが多い。

形容詞だけでなく、意味のない言葉を使わずに、より簡潔にプレスリリースを作成するようにしたい。

Webへ掲載する場合はプレスリリースとは別の文章を用意する

最近では、自社のホームページにプレスリリースを掲載する企業も増えている。そのため、一般消費者や投資家にも分かりやすいプレスリリースにしようと考える企業も増えた。

しかし、そのような書き方のプレスリリースを記者が受け取ると、非常に読みにくい。記事にするために文章を再構成し直さなければならなくなる。

結果として、記事になりにくいプレスリリースとなってしまうので気を付けたい。

もし自社のホームページに掲載したいなら、一般消費者向けに文章を書き直した方が良い。プレスリリースは記者に向けた文章であるという基本を動かしてはいけない。

プレスリリースはいつ配信するか?メディアの締切日のタイミングを考える

知ってて良かったスタートアップPR

ここまでで、メディアリストがあり、プレスリリースもできた。あとは、そのメディアリストにプレスリリースを配信するだけだ。

ここで少し立ち止まって、配信するタイミングを少し工夫すると、よりメディアに掲載される確率が高まる。

次に、スタートアップベンチャーの起業家と広報担当者のために、プレスリリースをいつ配信するとよいのか?について紹介しよう。

日刊のメディアでは金曜日は避ける

メディアに記事が載るプロセスでは、ニュースバリューによってスペースの奪い合いになる。すなわち、重要なニュースがあれば重要なニュースにスペースを奪われるのが常だ。

例えば、一般紙で夏の甲子園の決勝戦の翌日には、1面に優勝校の記事がでる可能性が高い。その分、掲載するスペースが減るという訳だ。

甲子園の決勝戦はあらかじめ予想できることだが、他社のプレスリリースとのスペースの奪い合いの場合、問題はさらに複雑だ。 他社が何をいつ発表するのかはトップシークレットであり、通常では知ることができないからだ。

ただし、(上場企業の)大きなニュースがよく発表される曜日は決まっている。金曜日の15時以降のことが多いのだ。これは、15時以降であれば、東京証券取引所が閉まっている上、金曜日であれば土日を挟むので、発表されたニュースによる急激な株価の影響が少なくてすむからだ。

実は、広報の一つの目的に株価の安定というものがある。株価は実態より安過ぎても、高過ぎてもいけない。適正価格を維持することが広報の責務の一つとして求められているのだ。

専門メディアの原稿の締め日はバラバラ

専門紙や専門雑誌のような専門メディアの場合、日刊ではなく、週刊や週2回刊などの間隔で発行されていることが多い。ただし、同じ曜日の発行でも、締め切りの曜日はバラバラだ。日刊のように締め切り日が前日と考えてしまうが、そのような専門メディアは少ない。

それぞれ記者が書いてきた原稿を新聞や雑誌のように体裁を整えなければいけない。この作業を“組む”というのだが、紙面を組む時間が必要になる。一般紙は自社で組む人が多数いるので、時間を短縮できるが、専門メディアは外注をしていることが多い。校正などをして、印刷所で輪転機を回して印刷をしてもらい、配送をするとなると、どうしても数日必要になるのだ。

具体的な例だと、同じ火曜日の号でも、前の週の金曜日が締め切りという媒体もあれば、前の週の水曜日が締め切りという媒体もある。その場合、木曜日に発表した場合、ある媒体では翌週の火曜日の号に掲載されるのだが、別の媒体では翌々週の火曜日の号にしか掲載されない。後者の場合、発表して10日近く経ってからしか記事にならないことになる。

事前に記者に情報を渡すという裏技

発表から記事掲載まで何日も空いてしまう事態を避けるためには、締め切りが早い媒体の記者には発表前に情報を伝えておくということをすれば良い。もちろんこの場合は、発表までに口外することも、ブログやネットで書くことも禁じなければならない。

前述の例で言えば、木曜日の発表だが、締切が水曜日のメディアの場合は、事前に記者の予定を確認しておいて火曜の夜にプレスリリースする予定の情報を渡しておくのだ。そうすれば、翌週の火曜日の号に、各専門メディアにフレッシュな情報が掲載されることになる。

結果として、スタートアップベンチャーがプレスリリースを配信するのは、月曜〜木曜のうちのどれかになる。そして、基本的に各メディアにはスケジュール的に平等になるように配慮して、各専門メディアの原稿の締切日を考慮し、情報を配信する曜日を選びたい。

どうしても原稿の締め切り日の関係で不公平が出るようであれば、事前に記者にプレスリリースの情報を伝えるなどして、各メディアが同じタイミングで発行する紙面に載せることができるように調整をするようにしよう。

ベンチャーが効果的にプレスリリースを配信する方法

メディアとの付き合いは平等が基本だ。前回説明したように、各社の締め日を考えてプレスリリースを配信するのも、できるだけ不公平にならないようにするためだ。それが、起業後間もないベンチャーがより多くのメディアに記事を取り上げてもらえるコツだ。
ただし、PRの上手な広報担当者は、場合によってはこの基本を崩すこともある。今回は、メディアと関係性がある程度出来上がってからの、より効果的にプレスリリースを配信する方法を紹介しよう。

そのネタは記事になるのか?

記事になるかどうかは、他社から送られてくる情報の量にもよる。しかし、それでも専門メディアしか取り上げないだろうという小さいネタというものがある。

例えば、「起業してわずか○ヶ月で自社の会員数が1万人を突破しました」とか「当社の製品が○○賞を受賞しました」「今度、○○展に出展します」といったものだ。

もちろん会員数が“社会的に見て”膨大な数であったり、“社会的に”著名な賞であったりすれば、起業して間もないベンチャー企業について大手メディアも取り上げる可能性はある。そういった場合は大きいネタではあるので扱い方は変わる。

しかし、創業期のスタートアップベンチャーが発表できるような「受賞」や「会員数」などは、大したものではないことが多いだろう。社会的な重要性が小さいのだから、専門メディアぐらいしか取り上げないだろうと容易に推測できる。

それでも、プレスリリース発表はしておいた方がよい。専門メディアが取り上げて業界内での知名度アップにはつながるからだ。


小さいネタを大手メディアに配信するかどうか?

ここで意見が分かれるところだが、こういった大手メディアが取り上げないと分かっているものは、大手メディアには送らず、専門メディアにしか送らないという方法がある

記者の立場になって考えれば、理由は簡単だ。記者の手元に大量のプレスリリースが送られてくる。締め切り時間があり、限られた時間の中で情報を取捨選択していく。そんな記者のところに、いつもしょうもないネタのプレスリリースを配信していたら、会社のイメージは良くはないだろう。

いつもしょうもないプレスリリースしか送ってこない会社だと思い込まれてしまう。記者にそう思い込まれてしまうと、せっかく面白いネタのプレスリリースを送っても、見落とされてしまう可能性が高くなってしまうと危惧するからだ。

反論として、プレスリリースは送信先を選択せずに常に全員の記者に送らなければならないという広報担当者がいるのも承知している。「(起業直後の創業期のベンチャー企業は特に)社名を覚えてもらうため」「どんなことをしている会社なのか少しは理解してもらうため」「今は記事にならないが、別の切り口(特集や業界動向などのまとめ記事など)で記事を書こうとしたときに有効」というのが理由だ。

一理あるとは思うので、この判断は読者の方に任せたい。

「情報リーク」を上手く活用する

子会社設立や新製品発売といった大きいニュースの場合も、平等に情報を配信しない例外となることがある。

ある特定のメディアのみに情報を伝えてしまうのだ。それも発表前に記事にして良いよと言って情報をリークする。効果的なのは、発表日の前日や当日の朝(新聞なら朝刊、オンラインメディアなら午前6時など)に記事を掲載してもらうという方法だ。

特定メディアの記者にとっては、他紙を抜くことができる特ダネになる。そのため、より大きなスペースで記事を書いてくれる。場合によっては新聞では1面に掲載されることもある。

この方法は、大手メディアの記者とコネクションがないけれども、大手メディアが読んでいる専門メディアや業界産業紙(日刊工業新聞やフジサンケイビジネスアイ etc.)の記者とコネクションがある段階で使いたい。大手メディアが追っかけで記事化をしてくれることがあるからだ。


記者が連絡してきたらもちろんメディアリストに追加

大手メディアが読んでいる専門メディアや業界産業紙に取り上げられると、広報担当者に対して大手メディアの記者は必ず裏取りの連絡をしてくる。「○○紙に掲載された記事の内容に間違いはないか」と確認を取り、追加の質問をしてくる。この記者はその業界の動きを追っている記者なので、今後も付き合っていきたい。

ここまで「知ってて良かったスタートアップPR」のシリーズの連載を読んできた読者にとっては、あとは何をやるかは簡単に分かるだろう。

そう、大手メディアの記者の名前と連絡先を聞き出して、メディアリストに追加をしていくのだ。

このリークという手法は、あまり使い過ぎると、リークされなかった他紙がそっぽを向く可能性もはらんでいるので注意が必要だ。記者にそっぽを向かれると露出の数が減ってしまう。

よって、今まで掲載してもらえなかった大手メディアに掲載され、担当記者を把握するといった目的に限定して「ここ一番」で使うのが良いだろう。

起業直後や広報初心者でもできる、コスパ最強のPR方法
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(監修:K.I.
(創業手帳編集部)

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