中小企業基盤整備機構(中小機構)ってナニ?起業前に知っておきたい4つのサポート

創業手帳

創業期・新規事業開発で活用したい中小企業基盤整備機構(中小機構)の経営支援サービスまとめ

創業期・新規事業開発で活用したい中小企業基盤整備機構(中小機構)の経営支援サービスまとめ

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中小機構(中小企業基盤整備機構)は、中小企業を支援するためにつくられた経産省傘下の独立行政法人です。正式名称は「独立行政法人中小企業基盤整備機構」。中小機構について企業経営者・起業家に聞いても、実態を知らない場合が多くあります。

しかし、この中小機構は起業家にとってたくさんメリットがあります。創業支援から事業再生、人材育成、販路開拓など、ベンチャーや中小企業の成長段階に合わせた経営支援サービスをたくさん提供しているためです。

今回はたくさんある中小機構の支援サービスの中でも、特に起業に際して活用したい起業支援サービスについてまとめました。

創業手帳の冊子版(無料)では、中小機構(中小企業基盤整備機構)を含むあらゆる機関の創業支援についても詳しく解説しています。この記事と併せて参考にしてみてください。

また、起業を検討している方向けの創業カレンダー(無料)をご用意してます。カテゴリ別と時系列で、事業計画や資金繰りなど「今すべきこと」が確認できます。ぜひご利用ください。

中小企業基盤整備機構とは

中小企業基盤整備機構は、独立行政法人として日本の中小企業の経営を支援するために、2004年に設立されました。全国358万社の中小企業を支援することを目標に、日本各地に9つの地域本部を設置しています。また、登録専門家が約3,000名以上在籍しており、電話やネットを通じて経営課題の相談を受け付け中です。

こうした施設や仕組みを通じて、中小企業や起業家と接点を持ちながら、適切な支援を実現しようとしています。

中小機構の主な事業は次の通りです。

事業 概要 主な事業名
経営相談 経営に関するさまざまな悩み、課題を相談できる ・E-SODAN
・ものづくり支援(Go-Tech)
・EC活用アドバイス
・海外マッチングコンシェルジュ
デジタル化支援 IT化支援策の提供を受けられる ・ITプラットフォーム
・IT経営サポートセンター
・IT導入補助金
事業承継・事業再生支援 事業承継・事業再生に関わるさまざまな相談や支援を受けられる ・事業承継対策
・事業承継・引継ぎ補助金
・中小企業活性化協議会による支援
リスク・災害対策支援 自然災害や感染症、サイバー攻撃などの対策に対する支援を受けられる ・事業継続力強化支援事業
・災害対策支援
・共済制度
人材育成支援 企業の人材育成についての支援や研修を受けられる ・中小企業大学校
・人材育成オンライン相談窓口
起業支援、開業後支援 起業家向けのイベントや相談窓口を利用できる ・TIP*S
・起業ライダーマモル(中小機構チャット)
・インキュベーション施設
・Japan Venture Awards

より細かな業務内容については、中小企業基盤整備機構のホームページをご覧ください。

中小機構のメリットとは?主な支援事業とともに紹介

中小機構の支援事業を活用すると、起業家や経営者にとってさまざまなメリットがあります。自社の目標や課題に合わせて支援事業を活用し、それぞれの恩恵を手に入れましょう。

ファンドによる助成金や補助金が利用できる

中小機構には、都道府県と一体となり造成したファンド(基金)があります。地域貢献性が高い新事業として採択されれば、運用益からの助成を受けることが可能です。

このファンドは「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2種類があるほか、都道府県単位で造成されており、助成対象や助成額がそれぞれ異なっています。助成を受けるためには、各都道府県のファンド運営管理者に事業計画等を提出し、審査会で採択される必要があるので、まずは中小機構のHPで詳細を確認してみるとよいでしょう。

ほかにも、生産性の向上に取り組む企業向けにいくつかの補助金が用意されています。各補助金においても条件や対象範囲が決まっており、事業にうまく活用すれば効果的に資金を集めることが可能です。

中小機構が提供するファンドや補助金について、詳しくみていきましょう。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

地方の名産品や伝統技術の販路開拓や商品開発に係る費用が助成の対象となります。地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、起業家も助成の対象です。農林水産物や伝統に関わるビジネスの立ち上げに際しては、積極的に活用を検討しましょう。

農商工連携型地域中小企業応援ファンド

中小企業者と農林漁業者が有機的に連携する販路開拓や商品開発に係る費用が助成の対象となります。

農商工連携型地域中小企業応援ファンドについては、中小企業者等と農林漁業者との連携体を組織する必要があります。地域の工芸・特産品・観光資源を活用した地域経済の活性化につながる事業であれば、創業から新商品開発、販路開拓等に至るまで、幅広い経費が助成対象です。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

生産性革命推進事業に係る補助金

「生産性革命推進事業に係る補助金」は、ものづくり補助金持続化補助金IT導入補助金事業承継・引継ぎ補助金の4種類があります。どの補助金も通年で公募があり、十分準備が整った時点での申請・事業実施ができるのが特徴です。

補助金名 概要
ものづくり補助金 革新的なサービス開発や試作品の開発、生産工程の改善に必要な設備などを支援する補助金
持続化補助金 経営計画に基づく販路拡大の取り組みを支援する補助金
IT導入補助金 IT業務の効率化と新たなITツール導入を支援する補助金
事業承継・引継ぎ補助金 事業の承継や引継ぎ後の新しい取り組みを支援する補助金

いずれも制度の趣旨に沿って生産性向上のための取り組みを行ったり、制度変更へ対応したりする際に活用できる補助金です。事業の発展や労働環境の改善にも役立てられるので、各制度の内容をチェックしておきましょう。

各補助金の情報を掲載した記事は以下から!

ものづくり補助金について、詳しくは以下の記事を>>
ものづくり補助金とは
持続化補助金について、詳しくは以下の記事を>>
持続化補助金とは
IT導入補助金について、詳しくは以下の記事を>>
IT導入補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金について、詳しくは以下の記事を>>
事業承継・引継ぎ補助金とは

資金調達に関する情報をまとめた資金調達手帳(無料)では、中小(中小企業基盤整備機構)機構の助成金以外の資金調達方法についても詳しく解説しています。中小機構(中小企業基盤整備機構)以外にも補助金・助成金制度はありますので、ぜひチェックしてみてください。

さらに、補助金・助成金の必須知識や最新情報を掲載している補助金ガイド(無料)や、自分の条件にあった補助金や助成金の情報が届く補助金AI(無料)もご用意しています。起業の成功率を上げるためにぜひご利用ください。


補助金ガイド


補助金AI

経営相談ができる

起業したてのころは、とにかく誰かに相談できることが心強いですよね。中小機構に相談することでこうした不安を解消できるかもしれません。中小機構が提供する主要な相談系支援サービスについて紹介します。

E-SODAN


画像引用元:E-SODAN 公式HP

起業家は、中小機構が運営するチャットサービス「E-SODAN」を使って、無料で経営相談ができます。資金調達、財務、法律、人事、知的財産権など、幅広い経営課題に対して、経験豊富な専門家が相談に乗ってくれます。

AIによるチャットボットを介した相談サービスなので、直接窓口に出向いたり、時間の心配をしたりする必要がありません。早朝から深夜まで、好きなタイミングで相談できるのが魅力です。
平日9〜17時までであれば、ベテラン専門家と直接チャット相談も無料でできます。スマホの場合はLINEでも利用可能です。

経営相談|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

ハンズオン支援

経営者に深く寄り添う相談支援事業として、中小機構はさまざまなハンズオン支援を行っています。主な支援内容は以下になります。こちらのように、中小企業ごとの事情や課題によって複数の支援から選択可能です。

支援名 概要
ハンズオン支援(専門家派遣) さまざまな経営課題に合わせて専門家を派遣し、アドバイスを提供する
事業再構築ハンズオン支援事業 事業の再構築に取り組む企業を対象に、相談や専門家派遣を実施する
海外展開ハンズオン支援 海外展開を考えている、または海外展開中の企業を対象に、相談や専門家派遣を実施する

ハンズオン支援(専門家派遣)については、専門家1人あたり1日につき17,500円(税込)の費用が必要です。その他、ハンズオン支援の費用については、支援を希望する地域本部に問い合わせて確認しておきましょう。

オンライン相談

中小機構ではオンライン上で相談窓口を設けており、ZoomやMicrosoft Teamsを介して利用が可能です。「人材育成オンライン相談窓口」と「人手不足オンライン相談窓口」の2種類があり、地方からでも専門家と対面で相談ができます。

人材育成オンライン相談窓口は、自社に合った育成方法や育成に使える公的補助などについて相談できるサービスです。求人票の書き方や採用相談機関の紹介など、労働者の確保に関する悩みは人手不足オンライン相談窓口にて受け付けています。

いずれも1社につき1回2時間までで、計3回まで利用可能です。相談費用は無料となっています。

創業手帳の冊子版では、金融機関が実施している創業支援についてわかりやすくまとめています。それぞれ特徴的な支援を展開しているので、中小機構の支援と比較し、ご自身に合う支援をみつけてください。

新事業創出をトータルにサポートしてくれる

中小機構は、新たな事業に果敢に挑戦する中小企業のサポートも行っています。専門家による事業計画のブラッシュアップや販路開拓のフォロー、起業家向けイベントなどを通じて、新事業の創出支援を受けることが可能です。

農商工等連携の支援

農林漁業者と中小企業者が連携すれば、それぞれの経営資源を有効活用できます。中小機構は、農林水産分野でも、連携して新商品・新サービスを共同開発する取り組みを支援しています。

本支援では、専門家による事業計画や商品開発に関するアドバイス、首都圏および全国規模での販路開拓のサポートを受けることが可能です。地方の魅力の一つである農林業とタッグを組むことで、新たなビジネスの道筋が見えてくるかもしれません。

農商工等連携|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

TIP*S


画像引用元:TIP*S 公式HP

中小機構が提供する「TIP*S(ティップス)」とは、創業を目指す人に向けたワークショップやイベントです。新しい事業を考えている人、起業に踏み切りたい人にとって、貴重な学びや実践的スキルを身につけられる場となっています。

これまでに約1,200のワークショップや講座が開かれ、4万人超の参加者がいる人気の支援事業です。起業をはじめとするさまざまなテーマのイベントが開催されており、オンラインで受講できるものもあります。

TIP*S

BusiNest

中小機構では、中小企業の新事業展開を支援する拠点「BusiNest(ビジネスト)」を設置しています。中小企業大学校東京校内にあり、創業を希望する人や創業間もない経営者などの活動・交流を支援する施設です。

創業活動の拠点となるだけでなく、女性の就業率向上を目指しているのも特徴で、女性支援者の登用やキッズルームの整備にも力を入れています。コミュニティールームや会議室、図書室といった豊富なスペースが利用できるほか、専属アドバイザーによる伴走支援を受けることも可能です。

BusiNest

インキュベーション施設が活用できる

中小機構は、起業や新たな事業展開を図る個人事業者、中小・ベンチャー企業等のためのインキュベーション施設を運営しています。新たなビジネスのサポートを目的としており、さまざまな設備や支援を活用できる施設です。

オフィス・ラボ・工場の3種類の施設があり、それぞれに企業支援の専門家が常駐しています。入居に際しては事業計画等の審査が必要で、各施設の空き情報に関しては中小機構のホームページで確認可能です。ただし金融機関によっては、インキュベーション施設のようなシェアオフィスだと融資を受けられない可能性もあるので注意が必要です。

中小機構につながりがある金融機関があるはずなので、紹介してくれる可能性が考えられます。融資を検討する際には一度聞いてみるとよいかもしれません。

インキュベーション | 中小機構

東大柏ベンチャープラザ

中小機構が東京大学および周辺地域と連携して運営しているインキュベーション施設が東大柏ベンチャープラザです。「柏の葉国際キャンパスタウン構想」の一角として、さまざまな教育機関・研究機関などと協力しており、共同研究や技術指導といった形で支援を受けられます。

福岡システムLSI総合開発センター

ベンチャー企業等のサポートに力を入れているのが、福岡システムLSI総合開発センターです。IoT・AI・ロボットといった最先端のものづくりを支援するインキュベーション施設として、多くの企業を後押ししています。先進的なビジネスを目指す企業にとって、頼もしい味方となるでしょう。

株式会社さかい新事業創造センター[S-Cube]

大阪府堺市にあるインキュベーション施設「S-Cube」では、多様なニーズに応えられる設備を用意しています。スタートアップ企業や研究開発企業など、幅広い規模・業種でビジネスに挑む人を支援する施設です。オフィスや会議室などを含む本館、多数のラボを構えるラボ館を有し、知識や技術・ノウハウの共有と交流を促進しています。

中小機構支援の活用事例

中小機構が実際に支援を行った事例を2つ紹介します。実際の支援例を見ると、自社が支援を受けた場合のイメージがわきやすくなるでしょう。

【事例①】日笠工業株式会社:新市場の開拓を目指して活用

洗浄・清掃工事業を営む日笠工業株式会社では、新たな販路開拓を目指して中小機構のハンズオン支援事業を活用しました。販路開拓プロジェクトマネージャーとの面談を通じて、提供サービスの可視化の必要性を実感し、新たな顧客を獲得するための準備が不足していることに気付いたといいます。

改善点を踏まえ、中小機構のスタッフとともにマーケティング企画のブラッシュアップから取り組みました。テストマーケティングを実践した結果、企業ならではのサービスに対する評価をもらえた上、想定外の具体的なニーズの発見にも至っています。

同社は中小機構の支援活動により、自社の強みや弱みを正確に把握できたこと、また組織の再構築が図れたことを評価しました。

出典:中小機構(2016年)『工場・設備のアメニティサービスを可視化し、新市場を開拓

【事例②】株式会社トリパス:内部課題の改善を目指して活用

北海道で重機・車両部品、農機具部品関連企業と取り引きしている株式会社トリパスは、人材や品質に課題を抱えていました。システム頼りの現状から脱却し、市場不良ゼロの実現を目指すために、中小機構の専門家継続派遣事業を活用しています。

22カ月間・計44回にわたる支援によって、現場のムダの顕在化とその原因の掘り下げができるようになったそうです。チームリーダーおよびメンバーのムダに対する意識変化も確認できたといいます。また社内不良件数が前年80件に対し220件に大幅増となっており、不良の顕在化によって隠れていた品質不良の発見につながりました。

中小機構の支援事業を活用した経営者からは、現場力の向上を確かに感じられたことから、若手社員への今後の期待が寄せられています。

出典:中小機構(2016年)『3代目若手社長が挑む「人を中心とした現場力強化」への挑戦

まとめ・中小機構は起業家や個人事業主を支援する頼もしい味方


中小企業の活動を支援する中小機構の取り組みは、相談や専門家の派遣、補助金など多岐にわたります。これから起業したい人だけでなく、今壁に直面している経営者にとっても役立つ事業が豊富です。

無料で支援を受けられるものも多く、専門的なアドバイスを事業に活かすことができます。中小機構のホームページから求める支援事業をチェックし、積極的に活用していきましょう。

創業手帳の冊子版では、創業期のオフィスの選び方についてわかりやすくまとめています。インキュベーション施設と比較することで、最適なオフィス選びに役立つでしょう。

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