人事考課制度を上手につくる8つのポイント(2) -どのように評価すればよいのか?

創業手帳

人事評価・査定とフィードバックはセットで!”やりっぱなし”に注意しよう

人事考課制度を上手につくる8つのポイント -第2回 どのように評価すればよいのか?

(2015/2/10更新)

【前回】人事考課制度を上手につくる8つのポイント(1)-何を評価すればよいのか?
人事考課制度を構築する

前回は、人事考課制度をつくるときに最初に考えるステップ「何を評価すればよいか?」について3つのポイントを説明した。今回は、4つ目のポイント「④人事評価・査定」の視点から、人事評価・査定とそのフィードバック、すなわち「どのように評価すればよいのか?」について説明していく。

人事考課エラーとは?

人間が感情の生き物である限り、人が人を評価することには「限界」がある。感情があるから、全てをロジックで貫き通すことは現実的に難しい。自分としては人事制度を理解したつもりでも、間違いや思い違いなどは誰にでも起きる。

また人間には、好き嫌いがあって当然である。だから、考課者はそうした限界のあることを十分に認識し、それを最小化していくことが求められる。それには、「人事考課エラー」についての理解を深めることがとても重要である。

人事考課エラーとは、さまざまな原因によって生じる人事考課上の「誤差」のこと。エラーが起こる原因としては、以下の2つがある。

①考課者による“意図的”なエラー・・・自分の嫌いな部下や友好的でない(反抗的な)部下に対して、わざと厳しい評価を下してしまう

②考課者の“無意識の行為”によるエラー・・・考課者の癖や判断の歪みによって起こる

①については、言語道断であり、考課者失格であり、問題外である。②については、下図のように「人事考課エラー」の存在を事前に理解していれば、自分自身の評価に際しての行動傾向を知ることにより、エラーの発生を少なくすることは十分に可能である。

基本的な「④人事評価・査定」のしかた

人事考課エラーを理解したうえで、人事評価・査定の仕組みをつくっていこう。

1. 評価対象(適切な行動)の選択

  • 仕事と関連する行動、または評価対象項目に該当する行動のみを対象とする(職務外の行動は評価対象とならない)
  • 実際に確認された行動が対象となる(噂話や陰口など耳にしたことは対象としない)
  • 評価対象期間外に生じた事実は評価対象としない

2. 適切な評価項目の選択

  • どの評価項目に、[1]で選んだ行動のうちどれが該当するかを当てはめる
  • 決められた評価項目ごとに評価する
  • 属人的な要素は考慮しない

3. 評価基準・ランク付けのマッチング

各評価項目について、評価がどんな水準であれば、どの評価基準のランクになるか理解する(ある評価項目がどれくらいであれば評価A、あるいは評価Bなのか? etc.)

4. 評価サイクルカレンダーの設定


人事評価・査定を円滑に進めるために計画を立てることが必要だ。特に評価期間を1年間とするのが通例なので、1年間の評価サイクルを具体的にまとめる必要がある。

評価サイクルカレンダーへの掲載項目

  • 昇格・昇給時期
  • 賞与支払い時期
  • 評価対象期間
  • 人事考課期間
  • 「評価資料」の作成・配布時期
  • 本人へのフィードバック

年間スケジュールが固まったら、さらにブレークダウンして、個別評価のスケジュールを作成する。個別評価で面談などの日程が近づいてきたら、社員に評価サイクルを再度周知し、円滑に人事評価・査定が進むように準備するとよいだろう。

人事評価・査定の個別評価スケジュール

フィードバックなき人事考課制度は無意味

フィードバックなき人事考課制度は無意味さて、人事評価をやりっぱなしでいると、評価制度自体がどんなに公正だったとしても、評価される側である社員の納得や理解が得られなければモチベーションは低下し、評価制度自体が意味をなさなくなる。

そこで重要になってくるのが査定結果のフィードバックだ。フィードバックの実施時期については、1年に1度、半年に1度、4半期に1度或いは毎月といったように各社ばらばらだが、あまり頻度が多いと準備が大変になり、面接の内容も希薄になる可能性もあるので、これからフィードバックを実施しようという会社は、賞与の時期を目安にするのも一つのいいきっかけになる。

また、フィードバックを実施する者は、フィードバックを受ける社員の圧迫感を避けるためにも、直属の上司が1対1で行なうのが理想だ。

実際に面接の場においては、単純に評価の数値を伝えるのではなく、どんな行動が評価され、今後成長するためにどのような行動をしたらよいかを一緒に考え、もし今後の仕事をしていく上での阻害要因があればそれを聞き出し対処するようにする。

よい人事考課制度の実現には考課者訓練が必要

人事考課制度をスムーズに運営するため、評価者の「考課者訓練」を適正かつ効果的に行っている企業はあまり多くない。一見、他者を評価することは簡単そうに思えるが、それはあくまで「結果」としてのこと。評価する立場にある人たちが十分なトレーニングを受けず、人事考課の基本となる事項を理解しないまま、評価に当たっていないだろうか?

もし、そうであれば、メンバーのモチベーションや成長への意欲が下がり、組織の活力が失われていくことになる。そうした事態を防ぐために、以下の目的で考課者訓練が必要となり、実施される。

考課者訓練実施のポイントとしては、

人事考課者訓練実施のポイント

  • どういう評価エラーがあるかを理解する
  • 効果対象とすべき行動の範囲の採りあげ方を理解する
  • 上司として必要な「部下を観察する目」を養う
  • 評価結果を、どう部下指導のポイントとするかを理解する

といった点が挙げられる。

考課者訓練の具体的プログラム

わざわざ時間をとって考課者訓練を実施するわけだから、一般的な評価の視点だけではなく、自社の人事考課における評価のポイントを明確に伝えていく必要がある。具体的な様々な事例を用い、例題、映像などを活用し、参加者に考えながら参加してもらう研修形態がおすすめだ。

特に、個人課題→グループ討議という流れを取り入れることにより、自分では気が付かない考え方を他人に教えてもらう効果がある。

一般的な考課者研修のプログラム例
*基礎~評価する意味とルールを理解・体得する

  1. オリエンテーション
  2. 管理者の役割、仕事と行動、部下育成の計画と行動(講義)
  3. 人事考課制度の理解度診断【事前】(テスト)
  4. 人事考課の目的と基本的仕組み(講義)
  5. ケーススタディA(個別研究、グループ討議、全体討議)
  6. 考課者に必要な知識と技術(講義)
  7. ケーススタディB(個別研究、グループ討議、全体討議)
  8. 人事考課制度の理解度診断【事後】(テスト)
  9. 研修のまとめと質疑応答

もちろん、訓練だけで実践を積まなければ意味はない。実施に人事考課の現場で学んだことを活用してみよう。創業期における少人数のベンチャーや中小企業では、経営者が社員全員の人事考課を行う場合が多いかもしれない。そのような場合は、経営者=考課者として、社外研修などに参加するとよいだろう。


【次回】人事考課制度を上手につくる8つのポイント(3) -評価結果をどう反映するか?

(監修:社会保険労務士事務所ALLROUND東京北 北條利男 社労士)
(編集:創業手帳編集部)

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