【第一回】人気漫画家・三田紀房氏に聞く 勝ち続ける漫画家と起業家の共通点

創業手帳

漫画家・三田紀房氏 特別インタビュー(1/2)

競争が激しい漫画の世界で数々のヒット作を生み出し続ける三田紀房氏。ドラマ化され、社会現象ともなった『ドラゴン桜』は未だ記憶に新しい。しかし、もともと氏は漫画家志望ではなく、現場で働くビジネスマンだった。
異例の経歴を持つ漫画家三田紀房氏の仕事に対する姿勢や態度、あるいは美学から、同じく競争が激しいスタートアップ企業が生き残るための戦略を全二回にわたって探る。

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三田 紀房(みた・のりふさ)明治大学政治経済学部を卒業後、西武百貨店に入社。その後父親が体調を崩し、経営していた2つの衣料品店を兄とともに引き継ぐため西武百貨店を退職。経営不振と多額の負債で資金繰りに苦しむ中、漫画雑誌の新人賞の募集を見て、賞金を得るために作品を投稿。3社に応募し講談社ちばてつや賞(一般部門)に入選。店を閉め上京し、30歳で漫画家として活動を開始する。「東大受験」をモチーフにした異色作『ドラゴン桜』で社会現象を巻き起こし、05年第29回講談社漫画賞(一般部門)を受賞。05年7月からTBS系にてドラマ化もされた。主な作品に『マネーの拳』『空を斬る』『銀のアンカー』。そのほか『個性を捨てろ! 型にはまれ!』『汗をかかずにトップを奪え!』などビジネス書の執筆も行う。

他店に置いてない商品を提案する

ー『ドラゴン桜』や『インベスターZ』、『マネーの拳』などの作品は、ご自身の経験を反映されているのでしょうか?

三田:そうですね。自分が生きてきた環境を作品に生かしていく、という感じです。自分の経験や体験は強く持ち出せるひとつの特徴にもなるし、自分の持っている個性がそこにあればどんどん生かしています。いわゆる「経験の商品化」ですね。

一番顕著なのが『ドラゴン桜』です。この作品によって、漫画で知識や情報を得たいという読者のニーズがはっきりと分かりました。情報を獲得するのに、漫画は非常に便利な道具になると自覚したのです。それを作品に生かしていますね。読者のニーズがそこにあるので、こちらもそのニーズに合わせて商品を提供するという感じです。

ー作風から察すると、「空いている席を狙う」ように、人がやらないことを意識されていると感じますがいかがでしょうか?

三田:漫画はまず雑誌に載ることが前提です。雑誌に載らない限り、作品として価値がないわけです。雑誌に載るということが絶対条件になるので、すでにあるものを提出しても編集部は「良い」とは言いません。分かりやすく言えば「ショッピングセンター」みたいなものですね。競合するお店と同じものを置いてもしょうがない。

入っていないお店、やってない業種を提案することが、雑誌に載るための近道になります。早く雑誌に載ることを目指すのなら、自分の書きたいものでチャンスを待つよりも、置いてない商品を提案することが大事だと思います。

漫画の世界にある「ジャパンドリーム」

ービジネスと漫画に共通しているのは「競争が過酷」ということだと思いますが、漫画はピラミッドの頂点で争っている印象があります。

三田:それはちょっと誤解がありますね。漫画は、おそらく全世界中のいろいろな表現媒体のなかで、もっとも間口が広いです。ものすごいチャンスがありますよ。

ー参入しやすいと。

三田:参入しやすい。新人に対してものすごくチャンスがあります。昨日まで素人だった人が、新人賞をとってすぐ雑誌に載るということが可能な業界です。載せてチャンスを与える。読者の反応を見るんですね。反応が返ってきたものに対しては「これはいける」と判断する。つまり、「連載させて・育てて・売っていく」という作業が明確にあるんです。

昨日まで素人だった人が、とつじょ漫画家になれるチャンスがある。もちろん、チャンスを掴めるかどうかはその人次第ですが、間口はものすごく広い。デビューしてステップアップしていくのは大変だと思われるかもしれないけど、一夜にして大金持ちになる人もいますよ。「ジャパンドリーム」のようなものですね。漫画はそういう世界です。間口は広いし敷居は低い。ただ、そこからの競争が激しいのです。

ートーナメント戦のようなものですね。

三田:そうですね。しかも、評価がはっきりしていて、とにかく面白ければいいのです。面白ければ人気投票にもあらわれますし、単行本も売れる。数字が裏付けとなるんです。数字以外の別の要素が全く入らない世界ですね。誰かの推薦だからとか、誰かが良いと言っているからとかは全く通用しない。すべて読者が決める。だからこそ、やってて気持ちが良い世界なんです。

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