「日本一起業しやすい街」北九州市の創業支援 | 北橋市長インタビュー

創業手帳

国家戦略特区の市長が語る、起業家支援の重要性

(2016/11/10更新)

「国家戦略特区」に認定され、創業支援に力を入れている北九州市。「日本一起業しやすい街」を目指して、起業家に寄り添う個別支援を展開しています。その中には「日本初」と言われる試みも多数。今回は、北九州市長・北橋健治氏(第12・13・14代)に、具体的な施策や創業支援にかける思いを伺いました。
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北橋 健治(きたはし けんじ)
1953年生まれ。1986年衆議院議員に初当選し、衆議院環境委員長、行政改革特別委員会筆頭理事などを務める。2007年北九州市長に初当選。2015年より任期は3期目に突入している。

“日本一起業しやすい街”ならではの創業支援

ー北九州市が現在展開している創業支援について、教えていただけますか。

北橋:まず、「新成長戦略」という市全体の産業振興の戦略の中で、ベンチャー企業の支援を戦略の一つに位置づけています。やっぱり北九州市の発展のためにはベンチャー企業の育成などの、創業支援が極めて大切ですから。

もう一つは、よく災害支援なんかで「寄り添う」という言葉がありますよね。やはり創業支援は大変ですから、寄り添う支援をしていこうということで、キャッチコピーとしては「日本一起業しやすい街」を目指すという方針を新成長戦略という大方針の中に明記しています。

ーそのスローガンに基づいて、さまざまな施策をされているということですね。具体的に聞かせてください。

北橋:特徴としては、「北九州スタートアップネットワークの会」というのを平成27年度に設立していることでしょうか。会員の数は、現在545名にのぼります。ここで、毎月「北九州スタートアップラウンジ」と銘打って、メンバー間の交流の場を設けています。ここに来ると、先輩として起業を成功されている方の話が聞けたり、法律相談や融資相談など、企業運営に必要な専門的な話が聞けたりします。

ーなるほど、ネットワークづくりを支援されているということですね。

北橋:具体的な施策で言えば、平成26年に「北九州スタートアップ支援貸付」を創設しました。やっぱり、最初の融資が大変ですから。実は、日本政策金融公庫と連携した無担保・保証料なしの融資制度としては、日本で初めてなんです。

ーそれは素晴らしい!他に、北九州市ならではの試みはされていますか。

北橋:北九州は伝統的にものづくりが盛んで、1世紀あまり日本の近代化を支えてきたという背景があります。そこで、平成26年に日本最大級のインキュベーション施設として「fabbit(ファビット)」の立ち上げを支援しました。これは、小倉駅新幹線口という非常に便利な場所に、民間が設立した施設です。

ーfabbit(ファビット)では、どんなことができるんですか?

北橋:ここでは、3Dプリンターで試作品などの簡易的なものづくりができます。いろいろ話を聞くと、起業した当初に試作品を作るのが大変なんだそうです。だから、ものづくりをされる方にはこういったサービスはとてもありがたいですね。

他にも、国立の北九州工業高等専門学校と北九州市が協定を締結しています。この高専には高度なものづくりができる「ものづくりのセンター」があって、ここでも、3Dプリンターなど多くの精密加工機器を使った本格的な試作品づくりができます。高専と協定を結ぶことで、いろんな方に活用していただくことができるようになりました。

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女性の創業は日本全体の希望

ー女性の創業については、どう考えていらっしゃいますか。

北橋:大変期待しています。女性の創業は、日本全体の大きな希望の一つだと思います。北九州市としても、平成28年の5月に「ウーマンワークカフェ北九州」を全国に先駆けて開始しました。

なぜ日本初かというと、これまで女性が働くことについては、「国」「県」「市」が、それぞれ別々に支援をしていました。場所もバラバラでした。それを国・県にお願いして、集約してもらったんです。

ー集約することのメリットは?

北橋:例えば、一旦結婚して育児のために仕事を離れていた人に対して、再スタートの様々な支援をスムーズに行うことができます。女性の就職相談だけでなく、スキルアップや保育の相談と支援の幅が広がり、「創業相談」の窓口も新たに開設しました。ウーマンワークカフェ北九州では、ワンストップで支援を行っていますから、市民にとっても利用しやすくなりますよね。

創業支援の窓口を通じて、女性の創業支援にかかわる交流が活発になるよう動き始めたところです。

国家戦略特区に選ばれ、市民の意識も変わった

ー北九州市は、国家戦略特区に選ばれていますよね。特区に選ばれることで、どのような支援が充実したのでしょうか。

北橋:国家戦略特区のメニューの中に、「創業・雇用に関する特区制度」があります。これを行うときに、県の信用保証協会と協定を結んで、開業支援の融資で保証料ゼロという制度をスタートしました。これにより、創業時の資金調達がかなり楽になるのではないかと見込んでいます。

他にも、人と人を紹介して引き合わせたり、販路拡大や融資の相談に乗ったりといったことにも、市の職員が寄り添ってきめ細かな対応をしています。

ー市民のみなさんに、何か変化は見られますか。

北橋:創業を後押ししていくことで、コワーキングスペースも生まれてきて、創業に関する機運が高まっているようです。口コミも広がっていますから、街ぐるみで創業・開業を応援しようという心がけで進めていきたいですね。

ー北九州市の支援は、施設を作るというハード的なものより、「寄り添う」というソフト面をかなり重視して展開されているのですね。

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家族連れで起業したい人に北九州市がオススメな理由

ー北九州市は、住みやすさランキングや医療ランキングでもかなり上位ですよね。このあたりも、子供連れで起業したいという方には魅力になるのではと思います。

北橋:今年の夏、宝島社が「田舎暮らしの本」という雑誌で「50歳から住んでみたい地方ランキング」が掲載され、そこで北九州市が1位に選ばれました。決して市役所から手を回したわけではないのですが、これは驚きましたね。

他にも、「女性自身」という週刊誌が「生活天国日本のナンバーワンは北九州市」という記事を書いてくれて。

ーそういった記事の背景には、何があるとお考えですか?

北橋:やっぱり、医療関係が非常に充実していること、物価が安くて生活しやすいこと、春の時点では待機児童ゼロといったことが要因でしょうか。子育て支援については、NHKで「北九州市は環境が一番整っている」と報道してもらって、子育て支援NPOが行っているランキングでも、政令市のなかで5年連続1位に選ばれています。

こういう広い要因が評価されたのだと思います。創業される方にとっても、家族と一緒に生活しやすいという点では、非常に住みやすいのではないかと思います。

ー若い世代も、シニア世代も住みやすいんですね。

北橋:物価や地価が安いので、3大都市圏で生活することを考えると、破格の生活の余裕が生まれます。交通渋滞もなく、移動がスムーズですから、東京に比べると1日が26時間ある感じですよね。こういった点でも、満足していただけると思います。

ー北九州市というと、重化学工業というイメージが強いのですが、実際には積極的に新しいことにチャレンジされているという印象を受けました。東京ガールズコレクションを誘致されたりとか。

北橋:やはり、日本全体が人口減・高齢化・少子化という流れにある中で、地方創生という取り組みは重要視されていますよね。本市の場合も、大学進学や就職のタイミングで市外に出る人が多くて。それをなんとかしようと対策を考えていくときに、「若者から見て、わくわくするような魅力はどの程度あるのか」という視点から考えて、盛り上げる必要性があると感じました。単に職場が豊富というだけでなく、若者や女性がどれだけ定着するかが地方創生の主眼ですから。

そこで、東京ガールズコレクションにつながるんです。北九州市はどうしても「ものづくりの町」「工業都市」というイメージが強くて、ファッションやエンターテインメントといった華やかな世界が欠けているなと思って、県と一緒に誘致して今年2回目。大成功で、1万3千人の若い女性が集まり、大変な熱気でした。実は、この中からファッション・デザイン関係の創業が生まれることを期待しているんですけどね。

経営の“ちょっと未来”を見せるのが行政の仕事

ーマネーフォワードと連携された背景について聞かせてください。

北橋:「北九州スタートアップネットワークの会」がご縁ですね。フィンテック専門の企業と、自治体と銀行(地方銀行・都市銀行)が連携協定を結びました。これも、全国初の事例です。

ーフィンテック企業と連携をすることで、どのような変化を見込んでいますか。

北橋:フィンテックを取り入れることで、中小企業にとってはバックオフィス業務の大幅な効率化につながります。浮いた時間や経営資源は、本来の販路拡大・投資・利益向上に集中して使えるようになるというわけです。

簡単に言うと、業務の効率化を促進して、本来のコア業務に専念してもらおうというのがフィンテックの主眼ですね。まずは多くの人に知ってもらおうと、セミナーを頻繁に開催しています。導入に前向きな若手経営者も出ていますから、今後は市として具体的な導入支援にも取り組む予定です。

経営の今だけでなく、ちょっと先の未来を見せていくことも行政の仕事ではないかと思っています。それが地場の中小企業の発展にもつながっていくはずです。

ーなるほど。未来を見せるということももちろん、場を提供して、外部(東京など)の企業を引っ張ってくるというのも行政の役割ということですね。

北橋:そうですね。創業支援で私たちが最初に行ったのは、ネットワークづくりでした。関係者が集まって相談しあえて、そこに行政も飛び込んで、和気あいあいと創業について語り合えるような場所です。そこからスタートした結果、行政自体もいろんなご縁に恵まれました。

その中にフィンテック専門会社・マネーフォワードの社長がいたということです。このように、非常に良い出会いが生まれて来ていますね。

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政府が国家戦略特区に期待していること

ーお話を伺って、他の自治体と比べても非常に前向きに創業支援へ取り組まれているという印象を受けました。「日本一起業しやすい街にしよう」というところにも現れていますよね。

北橋:ありがとうございます。私たちは、一言で言うと「個別伴走型の、寄り添うような支援」というのがモットーですから、より強化していって、北九州市で起業したいという相談が増えることを待望しています。

特に、ピーアールする際には「国家戦略特区」に選ばれたということが大きいですね。我々が特区提案した介護ロボットなどを活用した「先進的介護」の実証に向けた取組みも、実際の介護施設で開始されました。

ー国家戦略特区に選ばれたことで、他の地域と差別化できる点はどこですか。

北橋:国家戦略特区の良いところは、国から前向きな発想を期待されているというところですね。例えば、東京など各地域で脂汗を流して、規制改革などの具体的提案を政府に行い、審査を受けてパスした事業があるとします。こうやって他の都市で成功したことを、どんどん北九州市でもやろうと発展させられるんです。

「日本で一番の地方創生のモデルを作るという気概を持って、特区を成功させて欲しい」というのが政府の要請ですから、創業支援というのは重要な仕事だと思っています。

ー創業するなら、ぜひ北九州市でということですね。

北橋:そうですね。今の特区のメニューでは、現実に創業を考えている方にはまだ足りないかもしれません。もっと増やして、もっと未来を先取りするメニューを作って欲しいというのも国の考え。ですから、国家戦略特区の創業支援という項目について、北九州市から積極的に打ち出して成功に導いていこうと考えています。

それで成果が上がれば、今度は日本全体に波及するかもしれません。そういった意味でも、創業支援は重要な国家戦略の一環だと思うのです。

起業したい人は、ぜひ北九州市へ

ー最後に、市長から見た、北九州市の良さについて教えてください。

北橋:北九州市は、明治時代に鉄道が開通して初めて拠点ができました。石炭の積み出しで急速に発展したんです。戦時中には、たくさん軍の拠点があって。要するに、少し遡れば北九州市で生まれ育った人はかなり少ないんです。製鉄所がありましたから、働き手が全国から集まって来て、急速な近代化を支えた地域です。

地方に移り住むにあたって「生まれ育っていないよそ者が入り込んで、上手くやっていけるか」という不安を考える人もいると思います。でも、北九州市は外からの人を受け入れてきた背景があるから、大丈夫。アメリカ合衆国みたいな雰囲気があって、これがある意味北九州市の良さになっていると思いますね。

ーもともと全国から人が集まっていたんですね。

北橋:そうやってできた街ですから。今は2代目、3代目という人が中心ですが、先祖のお墓は別のところにあったりして。この独特なコミュニケーションの良さは、北九州市ならではかもしれません。

ー確かに、その地域の歴史が深いと、外からは入りにくい面がありますもんね。

北橋:ある創業者から「ロンドンの下町に行ったときに、ふと北九州市を思い出した」という話を聞きました。ロンドンの下町にはいろんな出身の人が集まってお互いに励まし合うという、なんとも言えないアットホームな雰囲気があって、それが北九州市に似ていると感じたそうです。

それを聞いたときに、なるほどと思いましたね。いろんな人が集まって作った街固有の温もりがあるというか、ちょっと人間関係が濃すぎるかもしれないけれど、そこがいいところだと思います。

だから、どんどん北九州市に入ってきてほしいですね。

創業のハードルを下げる、独自の取り組みとは?
日本で一番創業しやすい街・北九州市3つの魅力

(取材協力:北九州市長/北橋 健治)
(編集:創業手帳編集部)

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