企業組合とは?設立方法とメリット・デメリットを紹介

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その会社設立ちょっと待った!企業組合の概要と特徴を知ってからでも遅くない

【保存版】株式会社設立の「全手順」と流れをどこよりも詳しく解説!

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企業組合という事業形態を知っていますか?

平成19年の中小企業等協同組合法改正により、企業組合制度が改善されメリットがたくさんある制度になりました。

株式会社のような個人事業にはないメリットが多数ありますが、企業組合の内容を知らないために損をしている人がいるかもしれません。企業組合を設立・加入することで税制などの優遇を受けることができます。

そこで、企業組合とはどのようなもので、どんな人に向いているのか見ていきたいと思います。

企業組合は株式会社と同じく法人として扱われます。冊子版の創業手帳(無料)は、法人の設立後に必要となるノウハウをまとめたものです。このノウハウは、企業組合でも活用できるものです。冊子は無料で送付していますので、ぜひ手にとってみてください。(創業手帳編集部)

企業組合とは

企業組合とは、個人事業者や勤労者などが4人以上集まり、それぞれの資本や労働力を持ち寄って、あたかも1つの企業体のように活動を行う組合のことをいいます。

そもそも組合には様々な種類のものがあり、それぞれの根拠法に基づいて設立され運用されることが義務付けられています。

その中でも企業組合は、勤労者や主婦や学生など事業者以外の者でも組合員として加入することができ、その行う事業自体も限定されないことから自由度の高いものとなっています。

企業組合は、組合員がともに働くという特色を持っており、自ら安定した職場を確保するという意味合いや、小規模な事業者が経営規模の適正化を図るという意味合いも有しています。

それでは、実際に企業組合はどの程度活用されているのでしょうか。

全国中小企業団体中央会が発行する「中小企業組合ガイドブック(2019-2020 )」によれば、2019年3月末現在で事業協同組合を中心とする中小企業組合全体の数が35,915団体あって、そのうち企業組合は1,724団体となっています。

この数字からいえることは、株式会社を含む中小企業が全国に3百数十万社あるといわれているのに対して、中小企業組合はその1%程度となり、さらに企業組合となるとその中でも特に希少な存在ということになります。

このように超レアな存在の企業組合であり、意外とどのようなものか理解されていないのが実態です。もう少し具体的に企業組合の特徴を見ていきましょう。

企業組合の特徴

1.設立費用ゼロ円でOK!

定款にかかる印紙税や認証手数料、設立登記時の登録免許税が免除されているので、自身で設立手続を行えば、設立費用ゼロ円で設立することができます。

2.最低資本金制度はなし

株式会社と同じで、最低資本金のような制度はないため、少額の出資金額で設立が可能となります。

3.組合員の発言権は平等

企業組合の組合員には出資額の多寡にかかわらず議決権が平等に与えられるので、組織の民主的な運営が確保されています。
この点は出資額に応じて議決権が与えられる株式会社等の組織とは異なりますね。
様々な面で優遇された制度で、活用の仕方によっては非常にメリットのある事業形態なのです。

4.営利を目的にできる組織である

企業組合は株式会社と同様に営利を追求できる組織です。つまり、NPO法人等とは異なり、利益を出資者である組合員に分配できるのです。
また、組合を解散することなく株式会社に組織変更することも可能です。

法人を設立するまでの売上はないが、個人事業のままでは受けられない優遇などを活用して効率的な経営を目指したいと思っている場合、企業組合の形態にしてみるとよいかもしれません。

気の合う仲間同士で起業する際にこの企業組合を利用するもよいですし、すでに事業をおこなっている個人事業主が結束して新しい市場を開拓するために企業組合を設立するのもよいでしょう。

また、個人と法人が協力関係を築くためのプラットフォームとして利用することもできるでしょう。

【比較表】企業組合と株式会社の違い

企業組合と株式会社とでは何が違うのか、以下の表にまとめました。

企業組合 株式会社
目的 働く場の確保、経営の合理化 利益追求
性格 人的結合体 物的結合体
事業 商業、工業、鉱業、運送業、サービス業等の事業経営(制限なし) 定款に掲げる事業
設立要件 4人以上の個人が参加 資本金1円以上
組合員資格 個人及び特定組合員
※特定組合員とは、組合の事業活動に必要な施設・物資・技術・人材等の提供を行う法人など
無制限
責任 有限責任 有限責任
発起人 4人以上 1人以上
加入 自由 株式の譲受
増資割合による
脱退 自由 株式の譲渡による
組合員比率 全従業員の1/3以上 ない
従事比率 全組合員の1/2以上 ない
組合員の出資限度 1組合員あたり25/100
特定組合員の出資は全体の1/2未満
ない
議決権 平等(1人1票)
※特定組合員の議決権数は全体の1/4未満
出資別(1口1票)
配当 従事分量配当及び2割までの出資配当 出資配当
根拠法 中小企業等協同組合法 会社法

株式会社は利益追求を目的とするところが企業組合とは大きく違います。資本金も必ず必要であり、事業内容の自由な企業組合に対し定款に定める事業しか取り組めません。
持ち株の多い人ほど強い議決権を持つ株式会社に対し、企業組合は平等です。働く場所の確保が目的の企業組合は比較的自由度が高く、株式会社は範囲が限られています。

企業組合の形態

企業組合は、集中型と分散型の2つの形態に分かれます。企業組合の設立を検討するときは、どちらのタイプに合うか検討しましょう。

集中型

集中型は、事業者でない個人が設立する組合、または元個人事業者の組合員が従来営んでいた事業所を閉め、合同した組合の形です。
組合自体が事業所の集合体になります。

分散型

元個人事業者がそれまで営んでいた事業を組合の事業所にし、存続する方法です。仕入れや販売を各事業所にゆだね、組合本部は主に売上金の収納管理や仕入代金の支払いなどを行います。

企業組合のメリット

1.税務上の優遇措置が適用される

企業組合と組合員の間で発行される受取書に対する印紙税が非課税になる他、株式会社と同じで、普通法人として出資総額が1億円以下の場合だと年間所得800万円以下の部分に対する法人税について軽減税率が適用されます。

2.組合員には有限責任制度が適用される

株式会社と同じで、企業組合には有限責任制度が採用されています。組合員はそれぞれの出資額を限度として組合債務の弁済に対して責任を負えばいいのです。個人事業主では責任の範囲が全てとなるので、企業組合ではリスクが低減されます。

3.事業に従事する組合員には勤労者としての地位が与えられる

組合員は株式会社の株主に該当し、性質上、従業員とは異なるものの、組合員が企業組合の事業に従事したことに対して受け取る所得は事業所得ではなく、給与所得となります。

また、健康保険、年金保険、労働保険(雇用保険・労災保険)の適用についても勤労者と同じ取扱いを受けることができます。

公的保険制度の加入は義務ですが、加入対象者の要件があります。冊子版の創業手帳では、公的保険制度をわかりやすく表にまとめています。また、保険の手続きなどについては社労士に相談すると安心でしょう。冊子の資料請求時に、Web版の創業手帳の無料会員登録が行えます。会員向けに無料で専門家を紹介していますのでご活用ください。(創業手帳編集部)

4.組合員として法人も参加できる

企業組合員は個人だけでなく、特定組合員として法人も参加することができます。これにより資本の充実を図り、企業体としての機能を強化することにつなげることも可能となります。

5.申告・労働関係の事務をまとめられる

個人事業主が集まって企業組合を形成する場合では、従来、それぞれ別個に行っていた事業所得の確定申告が不要になり、法人税申告や社会保険および労働関係の事務を企業組合でまとめて実施することも可能です。
以上が企業組合のメリットになりますが、デメリットも多少あります。メリット・デメリットを考慮してやはり「法人化」が良いと思う場合、創業手帳にはいわゆる法人成りのメリットに関する記事があるので参考にしてください。

企業組合のデメリット

企業組合の設立手続においては、発起人が4名以上必要となる点や、事業計画、収支予算等を提出して行政庁の認可を受ける必要がある点は、株式会社の設立とは異なり、ネックとなる可能性もあります。
また、個人組合員の割合や事業に従事しなければならない組合員の割合等も定められており、基準を満たすかどうかも重要となります。事前に十分に基準に対する理解を深めておくとよいでしょう。

たしかに、人を集めたり、決算関係書類の提出等、行政庁への報告義務が要求される点は負担が大きいといえます。
しかし、負担を考えたとしても、企業組合に対する優遇措置やメリットは魅力的なものです。

それでは、この企業組合の設立方法について見ていきましょう。

設立の方法

企業組合の設立には次の6つの手順があります。必要なものをチェックして、計画的に準備を進めましょう。
特定組合員も企業組合に加入できますが、設立発起人は個人から選ぶことが必要です。

1.設立発起人の選定

企業組合設立には設立発起人が必要です。手続きを進めるために、メンバーの中から発起人を4人以上選定します。
できれば創立総会の準備中に行政庁で前もって必要書類を協議しておくと、その後の手続きがスムーズです。

2.創立総会の準備

発起人は設立に同意した者を集めて、創立総会を開かなければなりません。創立総会のために設立趣意書や定款、事業計画、収支予算、組合員名簿などの原案を作成します。

創立総会開催の2週間前までに、開催日時・場所・組合の定款(案)・当日の議題などを、発起人が公告します。

3.創立総会の開催

創立総会は組合員となる資格を持つ者で、総会開催日の当日まで発起人へ設立の同意をした者の半数以上の出席が必要です。
創立総会では、定款の承認・事業計画と収支予算の設定・取引金融機関・事務所の場所などを審議して決定します。

また、創立総会では発起人より引き継ぐ理事や幹事を決定します。

4.設立認可の申請・許可

創立総会終了後、発起人はすぐに設立認可申請に必要な添付書類を作成し、所管の行政庁へ提出して設立の認可を受けます。

5.事務の引き継ぎ

行政庁の認可を受けたあと、発起人から理事へ事務の引き継ぎを行います。必ず引き継ぎをしなくてはなりません。
この手続きをもって、発起人の役目は終了します。

6.設立登記

引き継いだ理事は、出資の払込が完了して2週間以内に、管轄の登記所で設立登記を行います。手続きが完了すると、この企業組合は成立します。

企業組合はこういう人に向いている

このように使い方次第で大きなメリットを得られる企業組合ですが、組合に賛同してもらえる仲間を集めることができる人にとっては大変有効です。個人事業主同士が新たな事業にプロトタイプ的に挑戦しようという時に、会社としてリスクを取る必要もないので活用するとよいかもしれませんね。また、企業組合が、自身の状況に合っているかどうか分からないという場合は、地域の自治体や中小企業団体中央会、企業組合に詳しい士業に相談してみるのもひとつの方法かと思います。積極的に利用していきましょう。

コロナの影響を受けて変化の時代に差し掛かっている中、これまでとは違うアプローチをしていかなくてはならないでしょう。これからの苦難の時代に、企業組合を通じてさらなる発展が期待できるかもしれません。個人事業に留まることなく高みを目指して高いゴールを目指すことが成長をもたらします。是非、周りの力を借りながら成長の歩みを進めてください。

冊子版の創業手帳では、社労士や、税理士などの専門家の活用方法について、専門家のアドバイスを受けながらを詳しく解説しています。無料の紹介相談窓口や、専門家のご紹介サービスもございますので、ぜひチェックしてみてください。

(創業手帳編集部)

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(監修:信濃橋税理士法人 北川ワタル 公認会計士・税理士)
(編集:創業手帳編集部)

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