深刻化する少子化に家事代行サービスを通じて貢献する

創業手帳woman

家事代行サービス、ベアーズ 高橋ゆきさんインタビュー(その2)

(2016/07/14更新)

日本最大の家事代行サービス、ベアーズが創業したのは今から16年前のこと。他人にお金を払って家事を頼むことにまだ抵抗があった時代、創業者の高橋健志さんと妻のゆきさんはなぜベアーズを立ち上げたのでしょうか。創業当時、ゆきさんは0歳と2歳のお子さんの子育て真っ最中。事業を拡大する上でどのように子育てと仕事を両立させてきたのでしょうか。起業に至るまでの経緯や家事代行サービスにかける想い、そしてこれからのベアーズについて話を伺いました。

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高橋 ゆき(たかはし・ゆき)
短大卒業後、IT企業の営業、出版社のマーケティングを経て、1995年に香港の現地商社に入社。妊娠を機に外国人メイドと出会い、帰国後の1999年、その経験を元に夫が家事代行サービスのベアーズを起業する。妻として専務取締役として創業期を支え、主に同社のマーケティング、広報戦略、人材育成を担当。2015年には世界初の家事大学を設立し、学長として新たな挑戦をしている。1男1女の母。

家事代行が出生率アップにつながる!

ーベアーズが行っている家事代行サービスについて詳しく聞かせてください。お客様のところへ出向くベアーズレディと呼ばれる社員たちは、20代の方からいるそうですね。

高橋:下は20代から上は83歳まで、全部で4,300人のベアーズレディがいます。

そのうちおそらく96%ぐらいが日本人ですが、それはこれから変わってくるでしょう。

つい先日、改正国家戦略特区法が可決され、家事代行サービスの分野でも外国人の受け入れ可能な特区を作ることが決まりました。

9月9日に政令指針が発表されて、今まさに解禁されています。

ただ、事業者は国と微調整をしている最中なので、サービス自体を提供し始めてる会社はまだありませんが、今まさにカウントダウンという状態です。

今後ベアーズには多くのフィリピン人やベトナム人が入ってくる予定になっていて、すでにその教官クラスになる人材は育てています。

そうなってくると、国際色豊かになってきますよね。このことを、我々は創業時から見込んでいました。

ーそれはやはり、ご自身が香港でメイドさんにお世話になった経験から?

高橋:ええ。

私たち夫婦は日本人でありながら、香港という海外の地で日本人でも香港人でもないフィリピン人のメイドに家庭をサポートしてもらいました。

そのおかげで育児が辛くて悲しくて孤独なものではなく、楽しく明るく幸せなものになったのです。

だからこそ働きながらも2人目を持とうという気持ちになり、心や体のコンディションもついていき、無事に2人目を産むこともできました。

今の日本は、出生率1.5人という数字すら越えられない現実があります。ところが女性は家庭にばかりいて、なかなか経済の場には出てきてくれない。

でも20年前の香港は、同等の出生率でありながら、みんなキャリアを諦めていなかった。

今の日本は何とかGDPを上げるために、女性の役員クラスや管理職を増やす施策を考えています。

ところが香港には当時からそういった人材がすでにたくさんいました。

つまり、この家事代行が暮らしの新しいインフラとして日本に根付けば、今日本が抱えている少子化問題が少しは解決に向かうのではないでしょうか。

すべての要因は、女性の心のゆとりにかかっていると思っています。

ーここで一度、起業当時のことを聞かせてください。起業した15年前はまだ家事代行サービスという分野が確立されていなかったので、ご苦労もあったと思います。どのように事業を拡大していったのでしょうか。

高橋:実は最初、会社を起こすこと自体、両家の両親から反対されていました。

私の両親は会社を経営していましたが、倒産して破産しまして。

彼の家もやはり商売人の家だったので、商売をやるということは苦労や責任、自覚や情熱が人の3倍も4倍も必要だということを嫌というほど分かっていた。

だから両家の両親は、息子や娘に余計な苦労をかけたくなくて、手堅くちゃんとした会社に入って欲しいと願っていたんですね。

でも私たちはすでにそういう血を受け継いでいるのか、「ちゃんとした会社の“ちゃんと”がよく分からない。

これからは、生き抜く力を自分で持っている方が大事なんじゃないか」と思ったわけです。

ー反対されても起業に踏み切ったわけですね。

高橋:ええ。

そんな反対の中で起業したので、資本金は誰からも集めることができず、創業当初は宣伝費を一切使えなかった。

じゃあどうやってベアーズが産声を上げたことを世の中に伝えていくかということで、まずは200枚のチラシを作りました。

私はもともとマーケティングを得意としていたので、私が作ったものをコンビニで印刷して、それを社長である夫が新聞配達のように配るんですよ。

最初の100枚はすぐに配り終えて帰ってきましたが、次に100枚持って行ったら全然帰ってこない。

同じ枚数なのにおかしいなと思っていたら、夫は配り終えたポストの前で待機して、皆さんの帰りを待っていたと。

マンションのポストの近くには、いらないチラシを捨てる箱が置いてありますよね? 

そこに捨てられた3、40枚を回収して、隣の棟でまた入れて……と繰り返し、もれなく持ち帰ってもらえたことを見届けて戻って来たと。

そんなことをずっと繰り返して、そのチラシ以降、ベアーズは10年間広告宣伝費ゼロで来たんです。今からたった6年前までですよ。

ー広告費ゼロ、しかもネットの力も借りずにここまで知名度を上げることができたんですね。

高橋:一方私は何をやっていたかと言うと、公園で知らない人たちに「家事代行はいかがですか?

もしあなたの代わりに家の中のことをやってくれる人がいたらどうですか」と話しかけていた。

当然そんなの怪しすぎて逃げられちゃいますよね(笑)。

でも「ご主人に愛されていますか」と聞くと食いついてきて、「人生は一度きりだから、愛する人のために最高の笑顔で過ごすことが、私たち女性にとっての最低ミッションであり最大ミッションですよね」と話すと大体10人以上集まってくる。

そうやって何度も何度もベアーズのサービス内容を話すうちに、「高橋さんの思いに共感した。

良かったらうちのマンションの集会所使って」とか、「うちの喫茶店を貸し切りにして説明会開いたら?」なんて言われるようになったんです。

すべての源は「産業を創る」という想い

ー起業した当時、ゆきさんは別の企業で働いていたそうですね。

高橋:これぞまさに内助の功だとあえて申し上げたいんですけど、私はもともとナンバー2気質なんですよ。

だから会社でも家庭でも、自分がこの人を輝かせたい、というのが生きがいであり快感なわけです。

ちなみに創業しようと言い始めたのは夫で、実は私は親たちと一緒になって反対した側。

ところがやはり彼がすごいなと思うのは、本当に謙虚にそして真摯に、努力と情熱と反省に生きる人なんですね。

当時彼はサラリーマンでしたが、ある時急に帰りが遅くなって休日出勤もするような状態になったんです。

ところが聞けば本業ではなく、どこかのハウスクリーニングの親方に付いて、押しかけ弟子として修行していたわけ。

それが2、3カ月後に判明して、私は感動したわけですよ。「そこまでしてやりたいんだ。

じゃあ男が一度夢を持ったらやらせてあげなきゃまずい」ということで、賛成してやり始めました。

「創業しよう」と2人で確信した夜は平和でしたね。数カ月ぶりにワインなんか飲んじゃったりしてね(笑)。

ーそんなやり取りがあったんですね。

高橋:だけどその翌日に何が起きたかいうと、突然業者が一斗缶に入った洗剤を持って来たんですよ。

前の晩にようやく創業しようと合意したのに、もう翌日には新会社のものが届いている。

発注したのは1週間ぐらい前なのでおかしな話ですよね(笑)。

だけど一度賛成したんだから、とにかくうるさく言うのは止めようと思っていたら、今度はその翌日に電話の工事屋さんが来たんです。

よくよく事情を聞いたらフリーダイヤルの契約だと。

ーそこからは順調に?

高橋:お客さんは来るようになりましたよ。そうしたら夫が「僕たちは産業を創るんだよね。

だったら2人で現場に出ちゃいけない」と言って、1人2人と実務をやってくれるベアーズレディさんを雇うようになりました。

ちょうどその頃、創業してまだ半年も経たないうちに、今度は夫が「俺たちは産業を創るんだ。

だから俺は会社から給料なんて取れないし、すなわち君の生活費もない。高橋家の収入は任せた」と言ってきて、あれよあれよという間に他の企業に出稼ぎに行くことになりました(笑)。

だから最初の3年は私の収入だけで高橋家の家計をまかなって、さらにベアーズの備品も全部私から出していましたよ。

最初の立ち上げのときは本当にバタバタで、どうやって子供のおむつが外れたのかなんて全然覚えてないですね。

気が付いたら娘の運動会で「娘走ってるよ」みたいなね(笑)。

これからの社会に必要なのは「斜めの関係」

ー家事や子育ては誰かにお願いしていたんですか?

高橋:自宅と職場が近かったので、週のうち2、3日は子供たちと一緒に食事をしていましたが、頼れるものにはすべて頼ろうということで、お姑さん、私の母、それから当然自社商品であるベアーズレディ、そのすべてに協力体制を仰いでやっていました。

今だから言えるけど図々しい嫁ですよね。

だって自分からお姑さんの家の前に引っ越して行っちゃったんですよ。

その挙句、「私はお義母さんにとって宇宙一大切な健志さんを支えたいから外に働きに行きます。

でもお義母さんにとって健志さんの次に大事な孫の成長のためには、毎日の食事は欠かせませんよね。

お義母さんお願いします」と言って、本当に子供2人が小学校を卒業するまでお義母さんの食卓で育ててもらいました。

ただ、お義母さんにも自分のペースがあるから、ご飯を食べ終わった2人は夫も私もいない家に帰らなくてはいけない。

なので16時頃からベアーズレディさんに来てもらって、掃除や洗濯を済ませておいてもらうわけです。

そこにご飯を食べ終わった子供たちが帰ってきて、温まった家で過ごす、という毎日でしたね。

当時私のところには佐々木さんというベアーズレディさんがいて、家族全員佐々木のおばちゃんが大好きでね。

運動会にご招待すると、周りの友達から「お前の家はばあちゃんが3人いるのかよ」なんて言われていましたよ(笑)。

ーなんだかほっこりするエピソードですね(笑)。

高橋:家の中に何があるのかを一番知っているのは、両家の母じゃなくて佐々木さんでしたからね。

私はこれが、これからの社会に必要な「斜めの関係」と言われるものだと思うんですよ。

これによって血縁じゃない人にも優しくしたり、その人からいろいろな恩をいただいて、それを返せる子になろうと子供たちの心も育まれる。子供たちも、いろいろな人の手を借りて自分たちは大切に育てられているんだということが分かってきたので、結果的には良かったかなと。

ー核家族化している現代において、それは新しい家族の形かもしれませんね。お子さんたちが中学に入ってからはどうしていたんですか?

高橋:中学に入ったら子供たちは家で食事をしていましたけれど、子供たちには2つのお願いをしました。

「私が作ったご飯を2人で温めて食べること。その時は必ず向き合って、テレビを付けずにランチョンマットを敷いて食べなさい」と。

テレビを付けずに向き合うということは、絶対に会話をしますよね。だから兄弟はとても仲良く育ちましたよ。

なのでお母さんが外に働きに出ていると「かわいそうだ」なんて言われる時代はおかしいと思っています。

これからは、やはり働く女性がその背中を子供たちに見せていける時代だと思いますから。

その代わり、企業側は中途半端に働かせちゃいけないと思います。

勤務形態は時短でもフレックスでもいいけれど、働く時には「あなたじゃなきゃダメだ」というやりがいと生きがい、目標を設定してあげる。

さらにその後の管理もしてあげて、その人の成長をきちんと刻んでフィードバックする。

良いことは良い、ダメなことはダメと言った上で、何ができていなかったのかを伝えないと人は中途半端になってしまうんですよね。

こちらが中途半端な働かせ方をしてしまうと、子供を持つ女性は「小さい子に寂しい思いをさせて、私は自分で働きたいから保育園に預けていて、こんなんでいいんでしょうか?」となってしまう。

それを聞いた上司は「よくないなら辞めていいよ。でも続けるならそんなこと言わずに腹をくくってやれ」となる。

少し前までの私がそうでしたが、これはやはり乱暴だなと。雰囲気作りも含め、この仕組みを会社が制度として確立したり、男性社員の理解も会社が作っていかないとダメだなと感じています。

ですから、女性起業家たちの経営者としてのミッションは男性とは違うところにもあって、自分の人生を磨きつつ、女性起業家だからこそ考えられる、社会のロールモデルになるような企業創りをするべきだと私は思います。

ー最後に、起業家へメッセージをお願いします。

高橋:悩んだり疲れたら、1人で抱え込まずにベアーズを心の保険に持っていただきたいですね。

創業したてはとにかくお金がないですよね。じゃあ何でカバーするかというと、愛する心でカバーする。

愛する心が荒みそうになったら、ぜひベアーズにご連絡ください。それは決してお金では買えないプライスレスなものなのですから。

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(取材協力:高橋 ゆき(たかはし・ゆき))
(編集:創業手帳編集部)

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