元公庫職員の行政書士が語る「資金調達Q&A」

資金調達手帳

創業時の資金調達をスムーズに

funding

(2018/09/06更新)

これから起業する方の中には、「資金調達」について頭を悩ませている方は多いことでしょう。今回お話を伺った行政書士の杉町 徹さんが、日本政策金融公庫に勤務していた22年間、及びその後開業した行政書士事務所を通して寄せられた相談の多くは、やはり「資金調達」に関するものだったそうです。
今回はその相談の中から、創業時に役立ちそうなものをピックアップし、杉町さんに解説していただきました。

Q1:自己資金はどれくらいあったほうがいいの?

必ず聞かれると言っていい質問です。答えは「多ければ多いほどいい」というのが本音ですが、それでは参考になりませんよね。
具体的には、公庫の「新創業融資制度」を利用するには、自己資金が創業資金全体の10分の1以上あることが適用の条件となっています。
しかし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」については、この要件を満たすこととしています。つまり、10分の1以上でなくとも適用できる、ということです。

また、税理士等の認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けていれば利用できる「中小企業経営力強化資金」に至っては、自己資金要件さえありません。

こう見ると、自己資金はそれほど無くてもよさそうに感じますが、決してそうではありません。大事なことなのでもう一度言いますが、自己資金は「多ければ多いほどいい」のです。

融資制度の条件に当てはまるかより、創業計画全体が上手くいくかの方が遥かに大事です。
自己資金が多ければ多いほど借入に頼らない計画となり、返済などの固定支出(売上に関わらず必ず支払わなければならない支出)が低くなって、事業維持に余裕ができます。自己資金を少しでも多く確保することで、事業を軌道に乗せやすくなるのです。

Q2:見せ金はバレる?

バレます。不自然な入金であれば申込人に当然尋ねますし、疑いがあれば意地でも兆候を見つけます。

詳しくは言えませんが、公庫は様々な情報を全国で共有し、不正な手段による融資実行を阻止しています。以前問題となった某地銀のように通帳の写しを偽造したくらいでは、公庫は騙せません。

融資は信頼関係の上に成り立つもの。バレた時の印象は最悪ですので、止めておいたほうがいいでしょう。

Q3:創業計画書は専門家に任せた方がいいの?

専門家に任せるかどうかより、「申込人本人の創業計画書になっているかどうか」が重要です。

経歴に即した創業の動機、的確にまとめられた商品の独自性、申し分のないセールスポイントなどが記載されていても、その創業計画書が人任せのものでは何のプラスにもなりません。事業を行うのはあくまで申込人ですし、融資を受けるのも申込人です。その羅針盤となるべき創業計画書を人任せにするようでは、事業への熱意が疑われます。
専門家の助言を受けることが悪いわけではありません。全て人任せにすることがよくないのです。

どんなに拙くても自分のこととして真剣に考え、練られた創業計画書の方が熱意は伝わります。そして、その熱意は融資判断にプラスに働きます。

Q4:税理士さん等を通したほうが融資は下りやすい?

税理士さん等の関与の仕方次第です。
事業支援のプロである税理士さんの目を通った、しっかりとした創業計画であれば、審査が通りやすいことは明らかです。ただ、それは「税理士さんを通したから」ではなく、「税理士さんがOKを出した計画だから」通りやすいということに過ぎません。

税理士さんを通してもダメなものはあります。この点は誤解しない方がいいと思います。

Q5:法人と個人、融資が通りやすいのはどっち?

同じです。
昔のように法人の最低資本金が1,000万円(株式会社)や300万円(有限会社)であった時代であれば、それだけの資本を準備できたという点でプラス材料でした。しかし、資本金1円でも企業設立できる現在では、どちらでも同じです。

巷では、法人の方が社会的信用度は高いと言われているようですが、融資判断においてはさほど違いはありません。特に実績のない創業時は尚のことです。

Q6:過去に自己破産していたら融資NG?

即NGというわけではありません。
破産宣告を受けて免責(負債を支払う義務がなくなること)が認められていない場合は問題ですが、免責を受けていれば法的には決着がついた状態となっているので、一概に即NGとはいえません。実際、公庫には廃業歴のある方を対象とする「再挑戦支援資金」という融資制度もあります。

しかしながらネガティブな情報であることには間違いないので、その後の着実な生活を示す客観的な材料(自己資金の蓄積経過など)に気を付けて下さい。

Q7:同時に銀行に申し込んでもいい?

問題ありません。
昨今の民業圧迫の批判もあり、公庫は積極的に民間金融機関との協調融資を進めています。
しかし、窓口が二つになることや、公庫と民間金融機関における創業融資への姿勢の違いなどで、手間が増える面は否定できません。

公庫からの融資だけでは事業費用が賄えないような場合には非常に有効な手段ですが、数百万程度であればそれ程メリットは無いかもしれません。

Q8:必要な金額よりちょっと多めに申し込んでおいたほうがいい?

必ずしもそうとは言えません。
融資金額が減額される可能性を鑑みてのことと思いますが、減額の理由は千差万別です。自己資金の準備が不十分で計画自体が過大であるためであったり、事業規模からいってそれ程の返済額が見込めないと判断したり…。

しかし、やや高めの金額で申し込むよりも、減額の示唆が公庫からあった時に対応できる代案を持っておいた方が、融資の可能性を高めることは間違いありません。例えば500万の融資を申し込む時、500万でないとダメな創業計画か、300万でも対応可能な創業計画かでは、融資の可能性は後者の方が高いのです。
創業の際の資金計画は、出来るだけ柔軟に立てたほうがいいでしょう。

まとめ

以上、創業融資の相談でよくあるケースをQ&A方式でご紹介しました。是非参考にして頂き、創業成功への助けになればと思います。

(監修:杉町行政書士総合経営事務所 特定行政書士 杉町 徹(すぎまち とおる)
(編集:創業手帳編集部)

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