スタートアップ都市・福岡は次のステージへ

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年09月に行われた取材時点のものです。

高島市長が語る、福岡市の最新の起業支援とは?

今注目のスタートアップ特区として、言わずと知れた存在の福岡市。約2年前に開設されたスタートアップカフェではこれまでに2,900件を超える起業相談がよせられ、東証マザーズと福証Q-Boardにダブル上場した『ホープ』のように大きく成長するベンチャーが誕生するなど、日本のスタートアップを代表する都市になっています。
福岡市では今後、『グローバル』『スケール』をコンセプトに、より一層の起業家支援を行うそうですが、その全貌とは。スタートアップ都市・福岡3年目の試みと起業家のメリットを、高島市長に取材しました。

高島市長

(2016/08/30更新)

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高島宗一郎(たかしま・そういちろう)
1974年生まれ。アナウンサー生活を経て2010年福岡市長に就任。2014年史上最多得票で再選し、現在2期目。2013年からスタートアップ都市推進協議会会長。2014年には世界で最も優れた市長を選出するWorld Mayor にノミネート。
新たな価値やビジネスモデルを生み出す規制・制度改革に精力的に取り組む。国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」としてスタートアップビザ,スタートアップ減税を実現するなど,日本のスタートアップをムーブメントと政策の両面から力強く牽引。

「チャレンジすることは素晴らしい」確実に広まる価値観

ースタートアップ都市づくりに向けて、これまでの活動で実現した成果を教えてください。

高島:以前のインタビューでお話ししたとおり、福岡市では、創業しやすい都市づくりを進めています。

まずは、福岡を中心に活躍する起業家とともに「スタートアップ都市宣言」を行い、市としてスタートアップを支援する「旗」を掲げました。その後もありとあらゆる施策を矢継ぎ早に打ってきました。

そしてスタートアップカフェは、気軽に足を運べる福岡市のスタートアップの拠点として、シンボリックな存在となっています。

天神にあるスタートアップの拠点・スタートアップカフェ

天神にあるスタートアップの拠点・スタートアップカフェ

スタートアップカフェでは、開設から2年弱で約2,900件以上の相談を受け、68社以上が起業しましたし、また、福岡市の開業率は3年連続で政令指定都市ナンバーワンとなるなど、成果が出ています。

そして、私自身もスタートアップイベントによく参加しますが、ここにきて、スタートアップ界隈の若いチャレンジャーたちが、ピッチイベントでも自信を持ってプレゼンをしているように見えますし、起業セミナーの申込み数も増えており、確実にムーブメントが広がっていると感じています。

「リスクをとってチャレンジすることは素晴らしい」、こうした価値が確実に浸透してきているのを、身をもって感じています。

世界に通用するベンチャー育成のために

高島市長

ーこれからは、『グローバル』『スケール』が起業支援のコンセプトだそうですね。

高島:これまでの取り組みにより、多くのスタートアップ企業が福岡にも誕生するようになりました。これからは、生まれてきたスタートアップ企業を、国際的に活躍できるよう大きく育てていくステージに入ります。そのためのキーワードが、『グローバル』と『スケール』です。

まず『スケール』ですが、シアトルやシリコンバレーでは、地元企業が、資金・物資の提供やネットワークの構築などで、スタートアップ企業を強力にサポートしています。これによって、シアトルのスタートアップ企業は一気にスケールアップを図り、世界的なメガベンチャーとなっているのです。

また、既存企業もスタートアップ企業の新規性を取り込み、時代のニーズに合った、より高付加価値な製品やサービスを提供することで、自社の成長を実現させることができるというWin-Winの関係を築いているのです。

そこで、福岡市でも既存企業とスタートアップ企業のマッチングを促進するためのイベント『フクオカ・スタートアップ・セレクション』を開始。既に約500社630人が参加するイベントになっています。

ー続いて、『グローバル』についても教えてください。

高島:スケールするためには、創業時点からビジネスのグローバル化が必須となります。そこで、海外から優秀なスタートアップの人材を呼び込むための取組みを進めています。国家戦略特区によって「スタートアップビザ」と「スタートアップ法人減税」という規制緩和、税制措置を実現しました。

「スタートアップビザ」は、外国人が日本で創業する場合に必要な「経営・管理」の在留資格の申請要件を満たしてなくても、市が事業計画を認めたものについては証明書を交付します。その証明書をもとに、入国管理局に申請すれば、特例的に半年間の在留資格が認められるというもので、申請時に必要な要件は、半年間で満たせばよくなりました。

「スタートアップ法人減税」は、IoT、国際、医療、農業の4分野で革新的なビジネスにチャレンジする創業法人を対象として、会社設立後5年間、法人税(国税)の20%が控除されるものです。これにより対象法人の実効税率は24%台と、国際的にも競争力を持つものとなります。

さらに、新たに、「スタートアップ賃料補助」の支援メニューを加えました。これは、有望なビジネスプランを持つ外国人起業家に対して、1年間、「住居」と「事務所」の賃料の一部を補助するものです。

これらの外国人が創業しやすい環境づくりに向けた施策を『スタートアップパッケージ』として積極的にPRし、海外からの優秀な人材やスタートアップを呼び込むことで、市内スタートアップとの交流を促進していきます。

ー福岡市内のスタートアップが海外進出するための施策はありますか?

高島:スタートアップカフェと海外の創業拠点とを連携させ、海外企業とのマッチングや海外進出のアドバイスが受けられるような環境を実現していきます。

さっそく6月から、その第一弾として、福岡市の「スタートアップカフェ」とサンフランシスコのスタートアップ拠点『ディーハウス サンフランシスコ』との連携が実現しました。これによって、福岡市内のスタートアップ企業は、福岡に居ながらにして、サンフランシスコの情報収集や起業相談ができるようになりました。

これまでは、海外展開に関する相談が月平均4件でしたが、サービスを開始した6月から7月までの2か月間では、69件もの相談をいただいています。

今後も、海外への敷居を下げることによって、グローバルにチャレンジしたいスタートアップ企業を後押ししていきます。

世界に通用するフロントランナーに

高島市長

ー最後に、起業家へ激励のメッセージを一言お願いいたします。

高島:福岡、そして九州は今、二つの点において、仕事を生み出すフィールドとしての可能性が生まれていると考えています。

一つは、テクノロジーの進化でどこでもビジネスができる環境になってきたので、ビジネスコストとライフサイクルコストを気にせず仕事に集中できる環境や、雄大な自然などクリエイティブを刺激してくれる環境、そして世界の成長エンジンであるアジアに近いという地勢的な特徴が、非常に大きなメリットになっているということです。

もう一つは、シェアリングエコノミーのような、社会を大きく変革させるサービス・テクノロジーをビジネスや生活に適合させる、つまり社会に実装していく時に、この福岡・九州は比較的、チャレンジしやすいフィールドだということです。東京・首都圏などでは、利害関係の調整が複雑すぎて、機動性に劣る“重たい都市”になっているのではないかと感じています。

超高齢や人口減少、過疎、さらには防災など喫緊の課題が目の前にある中、福岡・九州には、「未知の社会課題を解決し、未来を創造するための実装フィールド」という新しい価値をつくり出し、東京とはまったく異なる存在感を放つ、大きなチャンスが潜んでいるのではないかと思っています。起業家の皆さんには、ここで世界に通用するフロントランナーになっていただきたいです。

(取材協力:福岡市長/高島宗一郎
(編集:創業手帳編集部)



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