7月開始!出国税 もう課税逃れの海外移住は許されない?

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平成27年度税制改正で新設 出国税(国外転出時課税制度)とは?

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(2015/06/23更新)

みなさんは、平成27年7月から始まる出国税課税についてご存知でしょうか?

平成27年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設され、今まで課税されなかったものも課税されることになりました。

今回は来月から適用される出国税(国外転出時課税制度)について説明します。

国外転出時課税制度とは?

国外転出時課税制度は、平成27年7月1日以後に日本から外国に移住する一定の居住者が、1億円以上の対象資産を所有する場合に、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課される制度です。

また、1億円以上の対象資産を所有している日本の居住者から、外国に居住している子供や孫などへの贈与や相続によって対象資産の移転があった場合にも、含み益に対して所得税及び復興特別所得税が課されます。

国外転出時課税制度創設の背景

例えば巨額の含み益を有する株式等を保有したまま外国に移住し、移住した先の国ではキャピタルゲインに対して税金が課されないという税制であった場合、移住してから株式を売却すれば税金を払わなくて済む=課税逃れが現実的には可能になっています。

移住」がどういった状況を指すのかは単純ではありません。

住民票に出国の記載があれば移住になるのか、日本に所有する不動産や家族がある場合はどうなるのか、日本法人の役員をつとめていて、実際日本に年間のうち多くの日数滞在している場合はどうなるのか、など難しい問題はあります。

【参考記事】世界へ羽ばたく企業なら知っておきたい海外赴任の税金入門「所得税は居住者か非居住者かがポイント」

ただ、日本の「非居住者」という判断になれば、出国してから株を売却した場合、その売却益については課税されないという事態も出てきます(租税条約によります)。

そこで、これまでは課税されなかった出国時の未実現利益の部分について特例的に課税することになりました。

これにより課税逃れを目的に香港やシンガポールに移住するということをある程度阻止できるようになるはずと考えられます。

対象となる人は?

国外転出時課税制度では以下の2ついずれにも該当する人が対象です。

  • 平成27年7月1日以降に、国外転出する時に1億円以上の有価証券等を所有している人
  • 有価証券等とは株式や投資信託に限らず未決済デリバティブ取引に係る契約を締結している場合などを指します。

  • 原則として国外転出の日前10年以内に、日本国内に住所・居所を有していた期間が5年を超える人
  • つまりは、日本にずっと住んでいる日本人が1億円以上の有価証券を持っていたらこの制度が適用されます。

対象となる人はどうすればよいの?

もし対象となってしまった場合は、出国までに納税管理人の届出を提出するかどうかで手続きが異なります。

納税管理人を置いた場合には、出国時に確定申告する必要がありません。

しかし、納税管理人を置かない場合は出国までに未実現利益部分についての確定申告をしなければなりません(その年の他の所得についても申告します)。

この国外転出時課税制度に限らず、出国して外国に住むとき、納税管理人を置いて出国すればその時点での申告はせずに、翌年の確定申告時期の申告になりますし、納税管理人を置いて出国しなければ、出国までに自分で責任もって確定申告し、さらに翌年の確定申告時期にも申告します。

【参考記事】教えて木船税理士!海外赴任するときの所得税Q&A「納税管理人って何?」

納税管理人の届出をした場合としない場合でのその他の相違点

申告期限に限らず、その他の面でも納税管理人の届出をした場合としない場合では異なる点があります。

納税管理人を選任しておけば、担保提供の有無によっては納税猶予があり、納税のタイミングも大きく異なります。

納税猶予制度の適用を受けた場合には、さらに減額措置を受けることも可能です。

おカネやモノやヒトやサービスが国境を超えることにより税負担に有利不利が出てくることをなるべく公平にしていくため、現在国際税務関連は制度や様式の整備が進んでいます。

日本国内だけでなくグローバルでも租税回避阻止の動きが出ています。自分は大丈夫、と思わずに、出国時には税金関係はどうなるか、どうすればよいのか、専門家に相談することをお勧めします。

【関連記事】教えて木船税理士!海外赴任するときの所得税Q&A

(監修: 税理士きふね事務所 木船麻衣子 税理士
(編集:創業手帳編集部)

 

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