5億円の機材が使えるものづくり拠点 DMM.make AKIBAに行ってみた

創業手帳

DMMが手掛ける、秋葉原のシェアオフィスの全貌とは?

(2015/06/23更新)

DMM.make AKIBA
「ディ~エムエ~ム~ ドット~コム♪」のテレビCMでお馴染みのDMM.comが、2014年11月秋葉原に、ものづくりのための一大拠点「DMM.make AKIBA」をオープンしました。

ECサイトなどプラットフォーム作りに強みを持つ同社ですが、オープンから半年経った今、DMM.make AKIBAはものづくり起業家にとってどのような場所なのか、取材しました。

5億円の機材が使える!ものづくりシェアオフィス

早速、総支配人の吉田さんにお話を伺いました。

DMM.make AKIBAのオープンにかかった費用は、総額約10億円。ものづくりのための機材には5億円が投じられています。

利用者は3Dプリンターをはじめ、基盤作成や木工、縫製など、あらゆるジャンルのものづくりに必要な機材をいつでも利用できるのです。

更に、PC上でのデザインから、試作、検査まで、あらゆる工程がDMM.make AKIBA一カ所で出来てしまいます。
DMM.make AKIBA

また、オフィスビルの3フロアで構成されるDMM.make AKIBAの延べ床面積は約2000平方メートル

サッカーフィールド半分に相当するこの広い空間に、レンタルオフィス、コワーキングスペース、用途別に分かれた複数の作業場、更にはカフェまで用意されています。

朝から晩まで、入り浸ってしまいそうですね。
コワーキングエリア

オープンの経緯は?

都心にこれだけのオフィスを作ったきっかけは何だったのでしょうか?吉田さんによると、DMM.make AKIBAの原点は、DMM.comが2013年7月に開始した「DMM3Dプリント」にあるそうです。

DMM3Dプリントは、利用者がサイトにアップロードした3Dデータを、DMM.comが3Dプリンターで出力代行するサービスです。

現在では月間数千モデルの発注がある事業に成長したそうですが、その中で「実際の製品を製作したい」というニーズが出てきたそうです。そこから、「もの作りができるリアルな場」としてのDMM.make AKIBA構想が持ち上がったそうです。

3Dプリンタ出力物

3Dプリンターから生まれた作品たち

DMM.make AKIBAの役割とは?

DMM.make AKIBA誕生には、ものづくりスタートアップ企業特有のある問題が関係していました。

ネットの普及により、ITの様なソフトウェアでは、今やPC一台で起業が出来てしまう時代になりました。一方、電化製品やロボットの様なハードウェアの起業は、設備などに膨大な初期コストがかかる、予算で導入できる設備が限られるなどの障壁があり、ものづくりスタートアップ企業の大きなネックになっていたそうです。

ハンドツール

ハードウェアでの起業は工具揃えだけでも一苦労

そこで、ものづくりに必要な一切の機材や場所を用意し、利用者がシェアできるようにすることで「初期投資を言い訳にせず、誰もが製品を市場に出せる」環境を整える、それがDMM.make AKIBAの根底的なコンセプトだそうです。

革新的なものづくりで注目されているベンチャー企業、株式会社Cerevoが機材監修をしているという事実が、コンセプトを裏付けていますね。

DMM.make AKIBAの背景には、「大企業の製品にないユニークな発想や独自の価値観に基づいたグローバル・ニッチな製品を市場に発信するためのプラットフォームになる」という大きなビジョンがあるのです。

入居者に聞いてみた

今回は、DMM.make AKIBAに入居する企業の生の声を聞くために、光と音の新しい表現を可能にする次世代のスマートシューズ「Orphe」を製作している「no new folk studio」のCEO、菊川さんにもお話を伺いました。
菊川さん

「Orphe」とは?

菊川さん:「Orpheは、照明となり楽器ともなる、パフォーマンスに特化したスマートシューズです。

この靴のソールにはモーションセンサー、100以上のフルカラーLED、 無線モジュールなどが内蔵されているので、ユーザは自分のモーションと光と音の組み合わせを自由に入力して、直感的に様々な新しい表現を追求することができます

バルセロナでの留学時代に、現地のタップダンスやフラメンコなどの動きとテクノロジーの組み合わせに可能性を感じ、研究をしていました。

そのころ、バルセロナでは『Music Hack Day Barcelona』というハッカソンが開催されていて、そこでOrpheの前身を披露しました。そこでは幸いにも3つの賞をいただき、それを契機に、Orpheを商品として作るという段階に入りました。」

Orpheを使えばこんな表現も可能

Orpheを使えばこんな表現も可能

DMM.make AKIBAで感じることは?

菊川さん:「二つあります。ひとつは、やはり充実した機械設備です。

Orpheの場合、靴の縫製などは靴職人さんの熟練技術が使われていますが、靴底などの特殊な設計となるパーツの多くは全てDMM.make AKIBAの機械で作られています。それら機材を自分たちで揃えるとなると大変な金額がかかりますが、ここでは必要な機材をレンタルできるので、助かります。

また、3Dプリンターを使用して実寸大の靴の形状を確認したり、特殊な機材を駆使して屈曲性のあるゴム素材のソールを制作したり、いろいろな試作をその場ですぐに行えることも魅力です。様々な試作を基にベストな作り方や素材を選択する、ということがクイックに出来るというのが素晴らしいです。

Orpheの試作。多くのパーツがDMM.make AKIBA製

Orpheの試作。多くのパーツがDMM.make AKIBA製

もうひとつは、DMM.make AKIBAのテックスタッフさんの協力体制です。

皆さんもの作りをしている方なので、試作にすごく興味を持ってくれて、一緒に良いものを作ろうとしてくれる感じがあります。『商売として考えたらやりすぎなのでは?』と思わずこちらが考えてしまうほどです。

コミュニティのような親密さで協力して下さるので、自分たちだけでやるより何倍も速いスピードでもの作りができたり、自分たちのレベルがどんどん上がったりします。テックスタッフさんの存在は、DMM.make AKIBAの大きな強みだと思います。」

まとめ

総額5億円の機材で、オープン当初から話題になっていたDMM.make AKIBAですが、実際に行ってみて、その凄さがよりはっきりとわかりました。工業用の本格的な3Dプリンターを揃え、実用試験用の機材などが所狭しと並ぶ様子は、未来の工場を彷彿とさせます
DMM.make AKIBA
ただし、DMM.make AKIBAの本当の魅力は、充実した機材を目当てにやってくる人たちのコミュニティにあるのかもしれません

コワーキングエリアに入ると、試作品を片手に、まるで部活動の延長線上のようなフランクさで意見を交わしあう人たちの姿を目にします。

吉田さんによると、個人のクリエイターからハードウェアスタートアップ企業、更には大企業の技術者まで、もの作りに携わるあらゆる立場の人がここを訪れ、意見交換をしているそうです。

DMM.make AKIBA

チームメンバーだけの静かな議論は、こちらの防音スタジオで

もの作りの同志が集まり、活発な関わり合いが、アイデアの製品化を加速させていく。ものづくりを支える一大プラットフォーム、DMM.make AKIBAに、日本のものづくりの新しい形を見ました。

(創業手帳編集部)

おまけ:フォトギャラリー『機材いろいろ』

廊下の床材には、アメリカの廃工場の木材を使用しているそう

オシャレな廊下。床材には、アメリカの廃工場の木材を使用しているそう

5軸の切削機。結構複雑なものが彫れる

5軸の切削機。カメラくらいの複雑なものが一発で彫れる

工業用の3Dプリンター。材質別に8種類ある

工業用の3Dプリンター。こんなのが材質別に数種類ある

3Dスキャナーで立体物を楽々スキャン

3Dスキャナーで立体物を楽々スキャン

製品に水圧をかける試験機。見た目は旧型のUFO

製品に水圧をかける試験機。見た目は旧型のUFO

振動試験機。輸送時の揺れなどを再現

振動試験機。輸送時の揺れなどを再現

布に絵や文字をプリントする設備

布に絵や文字をプリントする設備

プロ仕様のミシン。もの凄く大きい

プロ仕様のミシン。もの凄く大きい

基盤作成マシン。もの凄く細かいはんだ付けが出来る

基盤作成マシン。もの凄く細かいはんだ付けが出来る

コワーキングエリアにある短焦点プロジェクター

コワーキングエリアにある短焦点プロジェクター

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