債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(3)

創業手帳

第3回:田中弁護士の作成サンプルで学ぶ内容証明郵便で送る請求書作成のポイント

債権回収の話をしよう!田中弁護士の白熱回収教室(3)
前回は内容証明郵便の基本的な位置づけ等を説明した。

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今回は、内容証明郵便で送る債権回収のための請求書への記載事項の話をしよう。

監修者の田中弁護士作成の請求書サンプルでチェックしながら、内容証明郵便で送る請求書を作成する際に記載すべき内容について詳しく見ていこう。

図解!債権回収の内容証明郵便

債権回収の請求書のひな形サンプル(前半)

債権回収の請求書のひな形サンプル(前半)

①タイトル

受け取った取引先が「なぬぃ~!督促だとぅ!」と一目でわかりやすいタイトルが良い。今回は「請求書」といったシンプルなタイトルでいいだろう。

「シンプル・イズ・ベスト!」を連呼する人は、「内容を仕上げるのに単に時間がなかっただけ時の言い訳じゃないの?」と注意が必要(創業手帳編集部記者調べ)だが、ことタイトルに関してはシンプル・イズ・ベストだ。内容証明郵便で送る請求書のタイトルとて例外ではない。

②請求内容の特定

請求している側と請求されている側の認識にズレが生じることがある。

例えば、「自社は7月分について請求しているのに、取引先は6月分については払ったと主張する」といった食い違いが起きることがある。このような事のないように、どの時期のどの取引について請求しているのか内容を特定して明記すべきだ。

また、起業してから間もない創業期のスタートアップベンチャーでは、逆に入金を確認する体制が不十分で、入金管理が疎かになっている会社も多く見受けられる。内容証明で支払請求を行う前に、もう一度入金履歴のチェックをして、先方とのどの取引の支払が遅れているのかを再確認しておこう。

③請求したのに支払いがないことを明記

内容証明郵便を送る前に支払の交渉をしていた取引先の担当者と、内容証明郵便を受け取ってから判断を下す担当者が異なる可能性があることも考慮に入れておく。

「ヘイヘイ!これまでしっかり催促してきたが、支払われないのでついに内容証明郵便の送付することにしたんだよ」というニュアンスが伝わると良いだろう。

淡々と、そして簡潔に、これまでの交渉の経緯を記載する。

債権回収の請求書ひな形サンプル(後半)

債権回収の請求書ひな形サンプル(後半)

④支払期限を明記

支払期限を明記することが大事である。既に、本来の支払期限を過ぎているのに、支払期限を設けるのに意味はないのではないか?という考え方もあるが、期限を区切られると、それまでに何か対応しなければならないという心理的効果が生じることは多い。

その点からすると、この書類が届いて、「ヘイヘイ!すぐ翌日に支払え!」と求めても、取引先の手元にあるキャッシュが不足しているような場合等は、取引先が支払うことは出来ないので意味がない。

窮鼠猫を噛む、といっても実際にネズミが猫に噛みつくシーンを見たことがないが(創業手帳編集部記者一同)、いや、そういうことを言いたいんじゃなかった。。。つまり、無理な要求で追いつめられた取引先が開き直って支払い拒否の姿勢を強めてしまうと本末転倒なのだ。

一方で、「支払わなかった場合でも、実際には何も不利益がない」と取引先に思われて、いわゆる「ナメられて」しまうのも避ける必要がある。

よって、場面に応じて記載内容の表現を上手く変えなければならない。

とはいえ、特に起業したてのスタートアップベンチャーでは、キャッシュに十分な余裕があるような企業の方が稀だろう。早くキャッシュを回収したいし、回収に手間もかけたくない。このあたりがとても難しいだろうが、ベンチャー企業の場合は、基本的には強めに請求するスタンスを持ちつつも、状況に応じて対応を変えていく方法がベストだろう。

⑤支払わない場合の不利益を明記

既に支払いを怠っている相手に支払わせるためには、「支払わなければ不利益が生じる」可能性があることを示すのが効果的である。

わかりやすい1つの方法としては、「直ちに支払うのであれば、この金額でよい」という数字を示すことである。

例えば、相手が支払わない場合には、契約書の有無等に関係なく、当然に遅延損害金が発生している(年6%)。よって、「今、支払うのであれば、そこまでは請求しないが、今、支払わないのであれば、今後はその分も請求する」というような方法である。

他にも、例えば、取引先から仕入れた商品の一部に不良品が入っていた等との主張がなされて支払が拒否されている場合があるとしよう。本来であれば、それが本当に不良品であるのか、自社側で交換に応じなければいけない場面なのかといった点を検討すべきであるが、今回に限ってはその分を除外して支払ってくれればよい、といった対応をとる方法もある。

このようにある種、譲歩するという対応のうち、多くみられるのは、本来一括で払うべきである代金について、分割払いを認めるという方法だ。もっとも、これを安易に認めると、取引先の支払への意欲が低下するのが通常であるので、内容証明郵便の請求書には記載しないのがベターだ。

脅迫はアカン!

内容証明郵便の請求書送付三原則

債権回収のために請求書を内容証明郵便で送ろうとした場合、取引先にプレッシャーを与えるような文章を使いたいという気持ちになることもあるだろう。しかし、取引先が身に危険を覚えるような脅迫文言等を使うのを控えるべきであることは言うまでもない。

文章の内容よりも、内容証明郵便で請求書が来たということの方が取引先には影響が大きいのだ。非常に感覚的だが、ヤバイ書類が送られてきて取引先が「ギクリ」とした、という風になれば成功なのである。

結局、内容証明郵便で請求書を送るときの三原則は(取引先を)「舐めず」、「脅さず」、(取引先に)「舐めさせず」だ!(あれっ?なんか上手いこと言ってますよね、コレ)

弁護士が内容証明郵便を送るとより効果的

さて、プレッシャーの効果という観点で言うと、弁護士から内容証明郵便で請求書がきたという事実があれば、支払が遅延している取引先にとっては、より大きな心理的なプレッシャーになる。

支払をしない取引先とのやりとりを続けることによるストレス、本業への影響等が看過出来ないレベルになることもあるので、コストとの関係で弁護士への依頼も検討するとよいだろう。

起業直後の創業期のスタートアップベンチャーでは弁護士へ仕事を依頼するコストも下げたいところなので、弁護士と契約する場合、債権回収できなかった場合の費用が少なくて済むよう交渉するのがお得である。

最後に

督促は相手がいる問題なので、「支払期限」のように相手方の状況に応じて変えていく必要のある項目もあるが、今回説明をしたポイントを押さえて、あなたのビジネスに適した「一子総伝」とも言うべき秘伝の請求書を作ることができるだろう。

先方に送るんだから「一子総伝」でも「秘伝」でもないでしょ?。。。そんな冷静なツッコミは当”白熱”回収教室には不要だ。債権回収に困って内容証明郵便で請求書を送るときは、ぜひ参考にしていただき債権回収を有利に進めてもらいたい。

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(監修:田中尚幸 弁護士)
(創業手帳編集部)

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